衝撃走る
神ゲーとは何か?其れは其のプレイヤーにとって、人生の転換点となった最高の思い出を持ったゲームを指す。
神ゲーとは何か?其れは其のプレイヤーにとって、他のゲーマー仲間やゲーム友達相手に勝ち越しして、ドヤ顔出来るゲームを指す。
神ゲーとは何か?其れは其のプレイヤーにとって、自分の持ち得る能力の全てを120%引き出せる、或いは己が己のままに生きていける環境を指す。
即ち神ゲーとは何か?其れは百有るプレイヤーにとって百の神ゲーが在る様に、百人がクソゲーと叫びながらも、誰かにとっての理想郷で有ったりするのだ。
『あ、アレックス選手!ビルに突撃して………あぁ!爆弾を付けられた市民が次々と殺到して………わぁ……あ………』
『ハイドロハンズはヒーローキャラの性質上、市民救助と火災鎮火の二つでゲージが貯まるのですが、此処まで名前隠し選手相手に翻弄されているのを見ると、いたたまれない心持ちになり………うわぁ………』
大画面の内で起こされる惨劇が悲鳴と驚愕の色に塗り潰され、会場はブーイングに次ぐブーイングの雨霰の中に在った。既に実況や解説すらも、キャパシティをオーバーした様な状況と、ケイオースシティのビルの中でクロックファイアが市民を爆弾として突撃させながら、自分は悠々と脱出して外からハイドロハンズを煽った後に建物の間に消えて。
何としても一矢報いようとハイドロハンズが
『ビ、ビルジェンガでアレックス選手がやられたーーーー!………第一ラウンドは、No Name選手が取りました!』
『此処まで来ると、恐ろしい以上に感心しますね………。おそらくですけど、クロックファイアはギャラクシアヒーローズ:カオスの環境を取れるポテンシャルが有りそうです…………』
ヒーローが敗れ、ヴィランが笑う──────原作を知る者や知らない者でも、此の光景を一言で言い表すとするならば、最早『絶望』の言葉以外に無いだろう。
「相手アレでもバーストで、世界ランキングトップ10に居続けたプロゲーマーなのに、あんなあっさり…………」
「第一ラウンドは九分四十八秒。本当なら『もう少し早く片付けられたろう』に、敢えて時間を使って『他の建物』にもダメージを与えてたな」
「まぁ十中八九『何かヤベー事』するつもりだろうし、こっから更に『ギア』が上がるぞ。というか、此処からアイツの
「『えっ、そうなの(ですか)!?』」
「うぉっ!?」
「あ、どうも。実況、御苦労様です」
第二ラウンドが開幕し、ヴィラニックタイムでクロックファイアが高層建築物にダメージを与えるのを見つつ、Nu2meg・A-Z・顔隠しが会話をしていた所に、笹原 エイトとカメラマンがやって来た。
突然のアポ無し来訪に顔隠しがキョドり、恵はプロゲーマーの職業柄から慣れている様子で、此方は取り敢えず御疲れ様の意味を込めて挨拶をする。其の横で顔隠しがジャック・オー・ランタンヘルメットの横に付いているボタンをカチカチッと押しており、其処から出てきた声は『少し変わっていた』。
(ボイスチェンジャー機能持ちなのか、あのヘルメット)
「えー、あー……ゴホン。何だっけ?」
「名前隠しがまだ本領発揮じゃないって事」
「あー………はい。えー………見ての通りですがアイツは効率を放棄して、演出の為に効率を優先させると言いますか……。まぁアレですね、一回
恵の視線が『此の人は大勢の前で喋るの苦手なんだ』みたいな雰囲気を含み、顔隠しはキョドりつつもロールプレイで対応しているらしい。
「そもそも此のゲーム、明らかに『直接戦闘を想定してない』ヴィランキャラクターが割と多いですよ。流石に『アレ』くらい酷いのを推奨してるとは思いますが、あー………やっぱ『裏工作を想定してる感じ』?ですかね〜………」
『と、言いますと?』
視線が此方に向けられた。脳のリソースもある程度だが回復したし、彼からのバトンタッチを請け負おう。
「此のゲーム、物凄く簡潔に例えるとケイオースシティは『ノート』で、ヴィランキャラが『鉛筆』、ヒーローキャラが『消しゴム』なんです。ラウンド1開始時点のケイオースシティは真っ更な白紙状態である為、ヴィランキャラは好きな様に余白を塗り潰し………被害を出す事でヴィラニックゲージ獲得が出来ますが、余白が少なくなれば塗り潰しが出来なくなり、獲得量が下がります。逆にヒーローキャラは塗り潰しを消す事でゲージを獲得出来る為、塗り潰しを消せば消す程………事件を解決する程にヒーローゲージを獲得出来ます」
『成程!つまり絢斗さんが仰った通り前半はヴィランが、後半はヒーローが優位になると!』
我ながら良い例え方だと思える解説だ。何か解説の人の視線が突き刺さってるんだけど、パスした方が良いのかなコレは?
「はい。そして此のシステムから『結論』を言いますと、ヴィランキャラはヒーローキャラと『極力』戦わない方が良いんです。解説の絢斗さんはどう思いますか?」
『A-Z選手の言う通りで、此のゲームは『街の被害状況がラウンドを跨いでも引き継がれる仕様』になっており、前の試合にNu2meg選手が使ったユグドライアの
そう──────此れもまたギャラクシアヒーローズ:カオスの特色の一つで、街の修復や減少したNPCの補充は『ゲームの完全決着までは行われない仕様になっている』。
特に設置系のゲージ技や罠持ちのキャラは其の影響を諸に受け、ヴィランキャラのクロックファイアは最大二十体のプリティー・BBを設置し、外的要因で衝撃を与えたり任意爆破を行えるが、其の爆破順は『クロックファイアが設置した順番』で行われるのだ。
『クロックファイアにとってゲージを使わずに爆弾を配置、任意でも爆破出来るという強さは有りますが、配置した爆弾を処理しないと『新しい爆弾を出せません』。即ち爆弾を出せない状態のクロックファイアは、攻撃力や性能を著しく落とす事を意味しています』
「そしてハイドロハンズ使いのアレックス選手は、其の仕様に気付いている可能性が『とても高い』。過去の公式戦映像を拝見しましたが、対クロックファイアに置ける彼の動き方は中々でしたね。…………お、噂をすれば」
『ヴィラニックタイム終了から、アレックス選手が動いた!消火栓をマーキングして、一直線にクロックファイアの居る方向に向かっています!』
ハイドロハンズ使いでトップ10入りのプロ・アレックスの行動は正しく、ハイドロハンズの力の源で有る水を行使する為に『無事な消火栓』をマーキングしながら、クロックファイアが居るだろう爆破現場に向かっている。
クロックファイアしかり、ヴィランキャラしかり、ヒーローの一番の回答は『悪事を働く前に見付け出して叩き潰す』事が、此のゲームに置ける確かな『答え』だ。
だが、アレックスは『気付いているだろうか』──────其の無事な消火栓、クロックファイアが
其の後には顔隠しや恵さんに背中押されてるし、何か済し崩しで其のまんま、なーなーにされてるし。
うん、何で俺、解説席に座らされたの?
え、此のまま解説しろと申すのか??
スポーツ評論家じゃないんですけど???
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