VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

853 / 1074


イッツ、ショータイム!




彼女は大魔王にして、悪魔にして、そして可憐なる外道

第三ラウンド、三十秒のヴィラニックタイム。此処こそが第一及び第二ラウンドでコツコツ貯めた『貯金』の使い所と名前隠しは心得ているが故に、彼女は開始早々『最後の準備』を整え切る。

 

「さぁさぁ、遠からん者は音に聞け!近くば寄って目にも見よッ!クロックファイアさんによるスペシャルパレードの始まり始まり〜!!……なーんってね♪」

 

ベアーボムの一部を任意爆破し、黒幕魔王(クロックファイア)は自らの位置を宿敵(ハイドロハンズ)に報せる。其れから僅か十五秒、ヒーローは水流サーフィンでやって来た。

 

「どういうつもりか知らんが、何故自らを晒したクロックファイア………!」

「おやおや、御早い御到着。良いね、ヒーローとしての自覚が有るじゃない」

 

まるでヒーローの登場を待ち侘びた様な心持ちで、瓦礫の上に乗ったヴィランは高らかに謳う。

 

「人間誰しも、一度はやってみたいと頭の中では考える!でも柵やらが邪魔をして、出来ないって諦めさせる!だけど此処(ゲーム)でなら!ヴィランならば出来る!さぁ…………『ゲームを楽しもうか』!」

 

外道仲間が、己の恋人が、何時だってゲームをする時に抱く、大切な心意気。クロックファイアがハイドロハンズに居場所を報せる為に爆破した其れは、自分の視線を『設置済みのベアーボムに通す事が真の目的』で。

 

第一ラウンドで柱や柱周辺に爆弾付きの市民を待機させ、第二ラウンドで其れを爆破しながら最終調整を行い、そして第三ラウンドで整えた舞台を稼働させる最後のスイッチを押す事が、彼女の狙いでもあった。

 

「っ、なぁ………!?!ビルが崩れ…………!?」

「其れで終らないんだよねぇ!…………さぁ、ビッグスケールの()()()やろうぜ!!!」

「オイオイオイオイオイ!?!!」

 

さしものアレックスも、名前隠しが此処まで全てを計算尽だった事に漸く気付いた様子だが、正直に言えば彼は既に『詰んでいる』。

 

瓦礫の上にベアーボムを一つ置いたクロックファイアのヴィラニックゲージが、連鎖して薙ぎ倒される巨大建築物により一気にMAXまでチャージされた。

 

其の上ハイドロハンズの持って来た消火用のホースは瓦礫に押し潰され、近くの己の逃げ道すらも塞がれた事でアレックスはやっと『自分が置かれた状況』に気付いたのである。

 

「マジ、か…………なんつー事を………!誘い込んだのか俺を!」

「んふふふ………、御明察。勝利の鍵は『場所と仕様』を知る事。そして相手の思考をほんのちょっぴり『信用する』事。スペシャルパレードはピークに至る、という訳で…………『おはよう私の道化師(Wake up Clone)』!」

「此処で超必殺技(ウルト)を切るか!」

 

クロックファイアの超必殺技『おはよう私の道化師』──────原作でもクロックファイアが、ハイドロハンズの職場の消防署を襲撃・爆破してスクラップにした際に使用したという、巨大で不気味な二頭身のピエロの風船爆弾。

 

必殺技発動後から五秒で十メートルの位置まで浮上し、ブクブクと膨れて弾けると同時に仕込まれた『大量の小型ピエロ爆弾を撒き散らして広範囲を(クラスター)爆撃する』という、ギャラクシアヒーローズシリーズでも『屈指の火力と範囲』を有する強力な超必殺技かつ、発動後にはクロックファイアはエスケープアイテムの風船によって、安全圏まで逃げられる。

 

バースト時代のクロックファイア使い達は、コレを『確実に相手へ当てられる』かが、超一流と三流の使い手達に敷かれた『境界線』とされ、設置爆弾でスタンから超必殺技で爆殺するというムーヴが一般的とされているのだ。

 

「……………ふっ、勝ちを確信して油断したな!」

 

ハイドロハンズが走り出す、其れは名前隠しがやらかした事に気付いたから。空中へ離脱前に『プリティー・BBを置き去りにした』という、ある意味『詰めが甘い呆気の無いミス』をしていた事。

 

ピエロ風船が膨れて蠢く中、ハイドロハンズが瓦礫を登って爆弾を踏み抜いて、爆発の衝撃と共に跳躍したヒーローは超必殺技の唯一と言って良い『道化師の頭上』まで飛び上がった。

 

「残念だったな、クロックファイア!起死回生の一手も、俺には届か…………」

 

 

 

 

()()()()()()()。貴方なら此処で爆弾を踏み抜いて、私の頭上を取ろうとするってさ。

 

 

 

 

刹那──────仮想空間のアレックスを、現実世界のアメリアを襲ったのは、クロックファイアの声で。エキシビションマッチの初戦、全世界に其の読みの深淵具合を見せ付け、恐怖や驚嘆に等しき衝撃を与えた、あの声と同じ物で。

 

「──────は?…………あ?!な、んだ、………コリャ………!?」

 

眼前でクロックファイアの超必殺技のピエロ風船が、突如として()()()()()()という、およそゲームでは『有り得ない光景』。

 

其れ所か超必殺技を使うと、ほぼゲージ技一発分まで削れる筈のヴィラニックゲージが()()()()()()という『異常事態』が、全ての者達の前にて敢然たる事実として示され。

 

そしてクロックファイアは、ハイドロハンズへと『タネ明かし』を行うのだ。

 

「私が第一から第三ラウンド、ケイオースシティ中を走り回らなきゃならなかったのは、何も『ドミノ倒しが全てじゃ無い』んだよ」

 

 

 

『此のゲームはヴィランやヒーローによる戦いで、街に『一定以上の被害』が出ると、市民は『避難』をするんですが…………其の被害が大きくなる程に『より安全な場所に逃げよう』という、ある種の『思考ルーティン』が組まれているみたいなんです。彼女は其れを利用し、第一から第三ラウンドに掛けて市民(NPC)達を『ある場所』に、クロックファイアは()()しました』

 

 

 

「位置としても充分だったし、狙えるなら狙ってみたいし、だからビッグスケールビルドミノで、()()()のスポーツコロシアムに『ビルでスイカ割り』したんだ。こう…………『グシャッ』と、ね♪」

 

 

 

『ビル内に残っていた市民、コロシアムに避難していた市民や警察、其れにメディア関係者…………およそ数万か多くて十万弱の人命を一瞬で奪い取る悪行は、ヴィラニックゲージを『オーバーフロー』させた。何故なら『クロックファイアがビルドミノを行い、市民に甚大な被害を出したという結果が成立した』からに他ならない』

 

 

 

「私の『真の目的』…………其れに気付けなかった時点で、君は既に『負けてたのさ』ハイドロハンズ君。此れに敢えて名を付けるなら──────『ゲージバースト』、かな」

 

 

 

『あの技に名を付けるなら『ゲージバースト』、でしょうね。まぁ流石に製品版で建物の位置含めて、色々と『修正不可避』なトンデモ技ですし。自分がヒーローキャラでやったのも、彼女がやったのと似ていますから』

 

 

 

 

画面の中、消防コスチュームの下で唖然とした表情のハイドロハンズと、数万人のNPCを踏み躙って得たヴィラニックゲージで超必殺連打から、クロックファイアがピエロ風船を『二十三個』生成と一斉炸裂によるクラスター爆撃のオーバーキルを行い。

 

ラウンド開始から一分半という、過激で劇的過ぎるスペシャルパレードはフィナーレを迎え、クロックファイアの最高の笑顔と共に幕引きとなったのである。

 

 

 

 

 

 






ド派手な幕引き


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。