VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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あくのあとしまつ




悪は滅びて、しかし食欲は消えず

「フッフゥ~!きーもちいー!!!」

「おぅおぅ、名前隠しさんよぉ??第三ラウンド開始から三分も経過して無いんだが〜???当初の目的御忘れになられたか、んんん~???」

「なーに言ってんの、カボチャ頭君。コレはゲームで御祭りだし、楽しまないと損でしょ?」

「清々しいまでに開き直りやがったよコイツ…………」

「えっと、取り敢えず御疲れ様…………で良いのかな?」

 

ギャラクシアヒーローズ:カオスから現実に戻り、ファンキーな口調と口元だけで端から見ても大満足と受け取れる、名前隠しが爆薬分隊(ニトロスクワッド)側の控え席に戻って来て。

 

会場はあまりにも恐ろしい、名前隠しの血も涙もない外道大魔王プレイに観客達の大ブーイングが飛び交い、アレックスは泣きながらに彼女とイチャラブコメディを繰り広げるという、異常でカオスな光景が広がっていた。

 

「あれ、A-Z君は?」

「解説が丁寧過ぎて、解説役に抜擢されちゃった………」

「え、マジで?あ、マジだわ」

 

解説席で軽く手を振りながらも、真剣な眼差しを向けて戦いを見届けた恋人を、彼女は嬉しく思う。そして自分の次なる相手は、自分でもラウンドを取れないと確信している、全米一位のプロ格ゲーマー『シルヴィア・ゴールドバーグ』。

 

「さて、と。顔隠し君、後の事は任せたよ」

「任された。派手に散ってきやがれ」

「……………え、其処は頑張れじゃないの?」

「悪は華々しく散ってこそ美しいんだよ、メグちゃん」

 

悪とは栄えず、最後は滅びてこそ美学。

 

其れが刹那主義者の彼女ならば、散り様も派手であってこそなのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五分の休憩の後、遂に出動した絶対王者に会場が沸きに沸き立ち、名前隠しをブッ飛ばせやらの声援が轟く中で、両者キャラ選択を行い、名前隠しはクロックファイアを、全米一位はミーティアスを選択。

 

ヴィラニックタイム開始早々、クロックファイアは栗きんとんアイスの幼女と近くに居た男の子を連れ去りながら、近場の建物をトラップハウスに変えていき。

 

幼女の母親の叫びが、ケイオースシティに降臨した流星を呼び込む道標となって──────

 

『此れは、凄まじいですね……………』

『えぇ、此処まで()()()とは正直思いませんでした』

 

屋上でクロックファイアがぶん投げた人質の背中にくっ付いたベアーボムを『完璧な角度と力加減で蹴り剥がし』、建物に逃げ込むヴィランへと『最短かつ最速挙動で先回りから、空中に蹴り飛ばしてコンボを繋ぎ』。

 

空中に放り出された人質を確保しつつ、あまつさえクロックファイアの爆弾自爆による空中体勢調整は愚か、罠を張り巡らせたビルに逃げ込む事も許さず、最後は確保した爆弾をクロックファイアの鳩尾に全力で蹴り込んで爆殺するという、『会敵から僅か十秒足らずかつ総計四十秒の電撃決着』で、シルヴィアのミーティアスは第一ラウンドを取っていった。

 

(おまけに俺が見せたミーティアスの挙動…………、アメリアとの戦いで見せた疑似(エセ)臨界速(ブラディオン)疑似(エセ)超速流星(シューマッハ)、使ったのは数回だってのにシルヴィは此の短時間で『模倣(コピー)』している…………!)

 

完璧なまでのキャラコントロールに、方向転換時の入射角や力加減にタイミングを瞬時に理解する反射神経によって、A-Zがアメリアとの戦いで用いた『二つの牙』を己なりに解釈(アレンジ)し。

 

ウォーミングアップがてらクロックファイア相手に『片手間練習で物にしまう』という、紛れも無い『天才』っぷりを彼女は披露したのだ。

 

『A-Z選手がアメリア選手相手に用いた変則加速挙動、シルヴィ選手は一ラウンドの中でまだ荒削りながら、接敵までの移動とクロックファイアへの攻撃中に習得していましたね………』

『何と言うか………『ミーティアス使いならコレくらい余裕でしょ』って、遠回しに宣告された気がします。ある意味『宿題』という奴……………でしょうか』

 

プロの世界に置ける『才能の差』は、どう足掻いても覆せない。だからこそ、其の世界に置ける者達は変革する環境の中、生き残る為に進化と変化を余儀無くされる。そして其の中で新たな自分を見付け出し、見出す事が出来た者にのみ先の次元に進む道は拓かれるのだから。

 

(リアルミーティアスからの宿題か………良いぜ。そっちが此の挙動を真似るなら、此方は其れを完璧に物に仕切ってやろうじゃない………!)

 

シャングリラ・フロンティアや、ギャラクシアヒーローズ:カオスで身に付けるべき事を示されたと、A-Zは一人燃え上がる中で第二ラウンドが開幕する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー…………映像と体験じゃ、まるで違うなぁ…………」

 

第一ラウンドで成す術無く倒され、第二ラウンドはトラップを仕掛けた建物内に引き込めたは良いが、プリティー・ベアーボムは尽く躱されて、FPSで『二十五キル』を記録した予測爆撃も真正面から突破される。

 

爆弾を付けた市民の救助も、崩落する天井から逃げ遅れた市民も、此の戦場に居るNPCの『誰一人例外無く完璧に助けて』は、室内で有るにも関わらず速度が低下する所か、逆に加速を続けていく様たるや『意志を持ったスーパーボール』と表すに等しい。

 

(ただまぁ…………ハッキリしたのは、彼女が『リアルミーティアス』って事だね。うん)

 

ミーティアスにボコボコのギタギタにされながら、クロックファイアは近くの鉄パイプを力任せに引き剥がし、シャンフロの悪名高き廃人狩りの得意とする槍捌きを放つも、スルスルと回避からの蹴りが首に叩き付けられる。

 

「第一ラウンドはあっさりだったから、第二ラウンドは貴方のホームで戦ったんだけど。………ちょっと『期待外れ』だったかな、小悪党さん?」

「ズバズバと言ってくれなさって…………!」

 

此処まで手も足も出ないとは、いっそ清々しい気持ちに満たされつつも、名前隠しはヴィランとして役割を遂行するべく奮闘する。

 

(私の役割は顔隠し(サンラク)君に繋げる為、シルヴィちゃんの情報を『一つでも多く引き出させる』事………!そして此処で貸しを作っておけば…………!)

「『特上寿司』を、()()()()()()一緒に食べられる………!(カッツォ君の金で)」

「…………………は???」

 

戦いの最中にクロックファイアが言った言葉が、ミーティアスの動きを止める。其の瞬間を利用してクロックファイアは自ら建物のガラスをブチ破り、空中で超必殺技(ウルト)おはよう私の道化師(Wake up Clone)』を使用、自らエスケープアイテムの風船を手放して。

 

「今日の打ち上げは、特上寿司ーーーーーーーー!!!グワーーーーーーーー!!!!!」

「………………何でジャパニーズフィッシュオンザライスの話?」

 

自分が手を出すまでも無く、自分で発動した超必殺技で盛大に自爆しながらも、何処か愉しそうに笑って吹き飛んだクロックファイアに、ミーティアスは疑問符を浮かべて首を傾げた。

 

プロゲーマーの中にも『ヒールプレイ』をメインとし、勝率以上に観客達を楽しませ、会場を盛り上げる事を生き甲斐とする、そんな『エンターテイナータイプのプレイヤー』は少なからず存在するが、あの名無しの魔王は過激さ度合が一周回って振り切れていた。

 

そして最後は発動した自らの超必殺技に突っ込んで、打ち上げに寿司を叫びながら爆散するという奇行に出て退場していった彼女に、さしものシルヴィアも試合に勝った物の、何故か『勝った気がしない気分』を抱く事になったのである……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やはり強い!圧倒的!シルヴィ選手、名前隠し選手のクロックファイアをほぼ完璧に封殺し、ノーダメージ勝利だーーーーーーーー!』

 

ギャラクシアヒーローズ:カオスから現実世界に戻り、会場が全米一位の勝利に沸き立つ中、爆薬分隊の控え席に戻って来た名前隠しは、口元からやれやれと取れる『参った顔』だった。

 

「いやぁ、やっぱ強いねぇ。…………あーくんとは別方向の怪物ですよ、シルヴィちゃん」

「具体的には?」

「ナーフ前のウェザエモンに、スタミナバフと思考加速系スキルの補助が加わった感じかな?」

「控え目に言ってクソボスじゃねーか」

 

ナーフ前を経験した身ながらアレは正直クソ過ぎたのだが、其れに当て嵌まる事例を言われれば、其れ以外に言葉が見付からなかった。

 

何より問題なのは、三人がおよそ『百三十分近い時間』を算出しても尚、本命の魚臣 慧(カッツォ)が現れない事が『大問題』である。何せログアウトしてVRシステムチェアから立ち上がったシルヴィの表情は、かなりの『不満気』という物であるのも『非常に不味い』のだから。

 

と、此処で解説席からA-Zが陣営に戻って来て、三人の話し合いに加わって来る。

 

「さて…………未だに現れない慧に、我々はどう責任取らせましょうか?」

「特上寿司注文し放題」

「最高級焼肉食べ放題」

「えっと…………あっさりパスタとガッツリフライドポテトの山盛り………かな?」

「最高級のフレンチフルコース、オードブルからデザートまで全部超一品。…………とまぁ此処から先、彼が何時到着するか解らないが、何とか場を繋いで時間を稼ぐよ。顔隠し、カフェインの効き具合は?」

「そろそろ点火するな、やるとしても機は逃したくねぇ」

「解った、程良く時間稼いで来るよ」

 

言うが早いかA-Zと名前隠しが動き、A-Zがビルジェンガやビルドミノのコツを質問し、名前隠しが其れに幾つかの方法を以て答え始め、そして顔隠しはリアルミーティアスの動きから、使うキャラを決めたのだ。

 

彼女を相手に『其れを使う事の意味』を理解しながらも、男には決して避けてはならないイベントが有るのと、同じ心持ちで居たのだから。

 

 

 






エンジンは高まる


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