VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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出陣




傲岸無礼のハイアタッカー 〜クイッケット・イグニッション〜

『さぁ、エキシビションマッチのボルテージもより高まる中、続いてはシルヴィア選手と顔隠し選手の対戦です!』

『A-Z選手や名前隠し選手と同じく、コスプレをしている選手ですね。どんな戦いを見せてくれるのか…………A-Z選手はどう見ますか?』

『シルヴィ選手の動きは過去一のキレと言っても過言では無く、下手を打てば名前隠し選手の様に一瞬でラウンドを取られてしまう。彼女のペースを如何にして崩し続けるか、其処にも注目です』

 

マイクパフォーマンスで程良く時間を稼ぎ、次なる試合へと状況は進んだ。解説が板に付いて来たと思いつつ、ステージに上がったシルヴィアと顔隠しが何か話している。おそらく此方が慧の到着まで時間稼ぎをしている事を、顔隠しに指摘しているのだろうか?元よりバレる事を前提としていたので今更では有るが。

 

『シルヴィア選手は当然と言うか、やはりミーティアスですね!』

『格ゲーのプロゲーマーの界隈では、シルヴィア・ゴールドバーグのミーティアスに一撃当てられたら初めて一人前…………そんな言葉が生まれるくらいですからね』

『アレを捉えられるプレイヤーは極僅か、更にはラウンドを取るともなれば一握りしか居ません』

 

二人がVRシステムチェアに座り、シルヴィアはミーティアスを選ぶ。そして顔隠しが選んだ『其のキャラ』は、此の場に居た誰もが目を見開くに至らせ、全米一位でリアルミーティアスと称される彼女との戦いに置いて、一種『禁忌(タブー)』として()()()()()が存在する。

 

『えっ、あ、か、カースドプリズン!?カースドプリズンだ!顔隠し選手!ミーティアスの宿敵、カースドプリズンを選んで来ました!』

『コレは………冗談、という訳では無いですね』

『…………同意です。シルヴィア・ゴールドバーグのミーティアス相手に、カースドプリズンを選ぶ事は『彼女の全力と相対する覚悟』を意味する』

 

ミーティアスがスピードタイプのキャラであるならば、カースドプリズンはパワータイプのキャラと性能面は真逆なのだが、ことシルヴィのミーティアス相手に『七割不利』という数値がバースト時代より示され、アメリアとA-Zの戦いでも其れは証明されてしまっている。

 

そして何よりシルヴィア・ゴールドバーグに、リアルミーティアスを相手にカースドプリズンで挑むという行為は、前述した『禁忌其の物』と断じて良い。

 

「…………()()()()()、って訳じゃなさそうだね」

「此方は()()()()だ」

 

画面の中、キャラセレクトによってヒーローとヴィランが対面し、ミーティアス(シルヴィ)の視線がカースドプリズン(No Face)に注がれる。

 

「タブーに付いても知ってるぜ?『シルヴィのミーティアス相手にカースドプリズンを選ぶ、命知らずの愚か者は全力で。そして苛烈なまでに叩き潰された』って事もな。要するに俺が言いたいのは──────『本気(マジ)で掛かってきやがれ、クソッタレ』………って意味だ!」

 

まるで手袋を地面に叩き付ける、或いは果し状を送り付ける。そんな古来よりあらゆる方法で弱者や強者を問わず、敵へ『全力』で挑む時に用いる由緒正しき行動は、シルヴィアの目を丸くさせるには充分で。

 

「あははっ、ケイの友達は皆面白いね」

 

笑い、そして鋭き視線を改めて向け。

 

「此の喧嘩、チップも付けて全部買ってあげる」

 

一言、絶対王者はそう告げたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャラクシアヒーローズに置けるカースドプリズンとミーティアスの勝率比較は、カースドプリズンが三割のミーティアスが七割という、ヒーローに立ち塞がるヴィランとしてはあまりにも『情けない』のが、カースドプリズンの評価でも有る。

 

では、ミーティアスに勝てないのか?と言われれば、ハッキリと『NO』と断言出来る理由が一つ。其れはカースドプリズンがミーティアスを相手にしながらも、決して『勝率三割を下回らせなかった事』が一番大きい。

 

其れは数多のカースドプリズン使い達の確固たる意地と執念、そして対ミーティアス対面の研究と蓄積の数々に裏打ちされた、非公式及び公式戦の結果が物語っているのだ。

 

「つまり三割の中の、更に極少数の事例こそが、勝利を掴み取る為の鍵なんだよなぁ…………!!!」

 

シルヴィのミーティアスは『最速が当然』で、其の動きはTASが操る様に『最適化』され、そして人間であるからこそディレイやリズムを『自在に変え』、あまつさえ其の間隔や波長は常に『更新し続ける』といった、最早『ラスボス』としか思えない人間である。

 

其れを踏まえれば、A-Zとアメリアの先鋒戦は顔隠しからして、対シルヴィアへの『良い研究材料』を幾つも提供してくれた。あの速度やリズムにカースドプリズンで対抗するには、其れを成す為に必要な『最低限の装い』という物が必要不可欠。

 

何より其れをアメリアが戦いの中で示し、A-Zが攻略する中で思考(リソース)を割いた事を含め、其れを此の街に引っ張り出すには第一ラウンドから『其の場所に突撃する』か、第二ラウンド早々に『警察隊が動いてくる』かの二つの方法を取る必要が有る。

 

「ライオットブラッドはサイコーだぜぇ!!!」

 

数十分前に摂ったライオットブラッド、違法と思われながらも合法のカフェインが体内を巡り、魂と脳と神経にリンクして点火する(イグニッション)

 

上がり出したテンションを高めて、スタート地点に配置されたトラックを着地の為の踏み台として潰しつつ、中からガトリングガンのみを取り出すや、近くに居たモンスターバイク持ちの市民をガトリングガンの銃口を向けて脅して強奪。

 

盗んだバイクをフルスロットルでケイオースシティをカッ飛ばし走らせ、ガトリングガンを上空にぶっ放してヴィラニックゲージを高め、弾切れになったのでポイ捨てから爆走して行けば目的地………『白バイ部隊を保有する警察署』が視線の先に、同時にミーティアスの到来を報せる様に蒼い光がバイクのミラー越しに見えた。

 

「おうおう、はえーじゃねぇの!絶対王者!」

「バイク一つで、ビーチフラッグスに勝てるとでも?」

「ハッ、好きに言ってろや!」

「む…………!」

 

バイクを傾け、シャンフロエンジンによって残った速度に乗った鉄の塊が、アスファルトをカーリングのストーンの様に滑走し、其の上にサーファーめいて乗ったカースドプリズンがギリギリで離脱。

 

門の前に居た見張りの警官を轢き潰さん威力で迫ったのを、ミーティアスは建物を足場に跳弾の如く飛んで救出し、離脱したカースドプリズンを警察署に近付けさせんと、最速とディレイを絡めた蹴りで遠くに蹴り飛ばそうと──────「掛かったな、ゼンイチさんよぉ!?」脚を掴まれた。

 

「何ッ!?」

 

リアルミーティアスが市民を救助して警察署から引き剥がしに来るという思考を『予測し』、ダメージ覚悟で『何時でも掴まえられる様に心掛けた』カースドプリズンが脇腹に蹴りを食らいながらも、其の一撃を『ほぼ完璧のタイミング』で捕まえて。

 

「プロレスは古来より一々交換だオラァ!!!」

「ッ、ガハッ!?」

 

救助した警官を両手に持つが故に、ミーティアスは受け身を取れず。流れる様にカースドプリズンによって胴体も掴まれたが故に、警官を遠くへと投げる選択を『強要させられた』刹那、背中からアスファルトの地面に叩き付けられた。

 

パワータイプのカースドプリズンによる、パワーボムに近い衝撃がミーティアスの背骨や背筋を襲い、体力が削られて身体が数回バウンド。バイクが警察署の正面ロビーに突撃し爆発して、カースドプリズンがミーティアスの復帰を前に警察署に突撃から、ミーティアスがバウンドした空中で身体を捻り復帰する。

 

直後に白バイを置く車庫で響き渡る破壊音が数回、中から出て来たカースドプリズンはアメリアがA-Zとの戦闘で見せた、複数台のバイクのタイヤやエンジンにフロントをといった物を取り込み、其の姿は『純白の重装騎士』と言い表せる姿となって現れる。

 

バースト時代はそもそも、カースドプリズンの取り込めるオブジェクトは『三種類』しか出現(ポップ)しないシステムであったが、カオスはシャンフロシステム(日本の神ゲーの力)で其の制約が取り払われ、原作さながらの重武装や高機動形態の姿を再現出来る様になったと、シルヴィはアメリアの戦いを観て感動した。

 

ただアメリアと一つだけ異なるのは、顔隠しのカースドプリズンは通常状態の特徴的な『巨大な両腕』、其れを更に巨大化させた様々な部品で『グローブ形状のガンドレッドを構築して装備した』…………という事だろうか。

 

「くふふふ…………フハハハ、ハハハハハハハ!!!警察署を襲撃するって悪事を潰せねぇたぁ、御星様もノロマかぁ?エェ?」

「言ってくれるじゃない、カースドプリズン。──────ブチのめす!」

「そりゃ此方の台詞だァ!!」

 

正義と悪、宿敵の接敵より始まり、警察署で火蓋は切られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして此の会敵直後、慧は漸く会場へと到着したのである。

 






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