目撃者達は
『ま、まさかの大番狂わせが起きたーーーー!シルヴィ選手のミーティアス相手に、何と顔隠し選手がカースドプリズンを使い、第一ラウンドを先取する予想だにしない展開が起きましたーーーー!!』
名も知らぬ、しかもプロかアマチュアですらも解らない、ライオットブラッドに愛を叫んで終始興奮と暴走気味の雰囲気を漂わせた名無しの傭兵が、絶対王者相手にラウンドを先制し奪取した。
其の瞬間を目撃した者達は興奮し、驚愕し、絶叫し、そしてあのカボチャ頭は一体誰なのか?と、知りたい感情を抱くのは当然の帰結でもあり。
『シルヴィ選手からラウンドを奪えるプレイヤーは、プロの中でも極僅か…………更にカースドプリズンで第一ラウンドを奪えたプレイヤーは、今の今迄『唯の一人』も居なかった。我々はある意味、歴史的瞬間を目撃した…………と言っても良いでしょう』
『絢斗さんの言う通り、此れがもしラウンド一本制で有ったなら、シルヴィ選手を初めて倒すという『文字通りの偉業を成した』と言えます。たらればは禁句ですが、いやはや本当に凄まじい…………あ、慧選手が居ますね。漸く到着した様です』
『あ、本当ですね!慧選手、御腹は大丈夫でしょうか?』
「あー…………、はい。えぇ、大丈夫ですよ」
解説席に座り、プロに混じって解説するレトロゲーマーがやっと戻って来たプロゲーマーに注目し、エイトが声を掛けて慧が答える。
『其れにしても随分凄まじい試合を見せて居る三人ですが、もしかしてプロゲーマーの方なのですかね?慧選手』
「其処も含めて『シークレット』と言いますか。其の方が謎感が増すじゃないですか?」
さらっと毒舌を吐いた此の男には、取り敢えず最高級の特上寿司とフレンチフルコースを奢らせると、名前隠しとA-Zは心の内にて決心を固める。
『もしかしたら顔隠し選手、誰も成した事の無い快挙を達成してしまうのでしょうか』
「うーん…………アイツが勝てるなら僕でも勝てますよ。奴相手でも僕は総合勝率七割確保してますし…………と言いたいですけど、アイツは『初見かつ初戦に限れば』僕より
『ちょっ、おま!?!?!』
慧から爆弾発言が投下され、絢斗やエイトに観客席の人々の視線が此方にブッ刺さる。
別のジャンルのゲームで自分に勝ち越し、あまつさえ『普段寝ている間に脳内で仮想戦闘や反復学習を数年に渡って繰り返せば、此れくらいの思考は誰にだって出来る様になる』と、さも自分は『凡人だ』と宣った
そう言いたげな視線を向けた後、慧はサンラクが自分へのバトンタッチという『当初の目的』を忘れてないかと心配しつつ、巨大スクリーンに映って現在進行系で激闘を繰り広げる、顔隠しとシルヴィの戦いを見上げたのだった。
第一ラウンドは正直に言うと顔隠しは、自身の『初見殺しの手を見せ過ぎた』と思っていた。
「深夜テンションでエナドリの衝動飲みして、頭ギンギンになったのを思い出したわ…………」
アレはアレでヤバかったが、シルヴィア相手に時間稼ぎする所かブッ倒してしまったという事実は、想像以上にやっちまったという後悔と同時に、もう最後まで突き抜けるっきゃねぇ!という決意を顔隠しに固めさせていた。
「ヨッシャ、御大層な金メッキを剥がしてやろーじゃねーか!」
第二ラウンドの暴れっぷりから出動した警官隊と白バイ部隊をガトリングガンで屠り、パトカーやバイクのエンジンや外装を取り込みつつ、第一ラウンドと同じグローブ形状のガンドレッドを作り、其処から更に両足と腰回りを固めて『ブーツとアーマー』を纏い、重量重装形態とも取れる姿へと変貌を遂げたのだ。
「今度はロボットみたいな姿ね、カースドプリズン!」
「オラ来いや、ミーティアス!」
アスファルトを踏み付け、横転したパトカーを力任せに踏み潰し、瓦礫を持ち上げぶん投げながら、警官隊に迫る姿はまるで『JAPANESE KAIJYU MOVIE』の如く。あれ程の重量形態で複数のエンジンの同時稼働ながら、歩くだけで近辺を揺らして被害を出す様は、ミーティアスに………ヒーローに『守ってみやがれ』と叩き付ける。
「良いね、もっと
「ハッ!勝手に自分の
「其れじゃ……………、いっくよー!」
「ぐおぁ!?」
持ち前の機動力で警官達を救い出し、其の速度を乗せたままミーティアスが空中で『五度煌めき』、迸った光が残影を残して、カースドプリズンに蹴りが入る。あの挙動はA-Zがアメリアで使用した変則加速技、もっと言えばシャンフロの
名前隠し相手時点でも荒削りだったのが、第一と第二ラウンドを通じてより鋭く・強く・靭やかに研ぎ澄まされ、此の瞬間にも確実かつ着実に『進化し続けてる』と悟るには充分で。
そしてA-Zが語ったリアルミーティアスの、シルヴィア・ゴールドバーグの『真の強さ』を教わったからこそ、此の手の相手には弱みを可能な限り『見せない事』も必至だと知った。
「ッ…………だが此方も、まだ『見せてねぇ技』やらが色々あんだよなぁ…………!」
顔隠しがカースドプリズンで此の形態になったのは、何もギアを上げに上げまくっているミーティアスから、無抵抗のままサンドバッグにされる為では無い。
第二ラウンドで『報道ヘリ』が出て来ない事を加味して、第三ラウンドで今のミーティアスの速度へ対抗する為に『ヘリを取り込んだ場合の重量を疑似体験して』、進化するミーティアスの速度に攻撃を当てられる様に準備をしているのだ。
(怪物だろうが、超人だろうが、人間である以上は正確な一手を常に打ち続ける事は『絶対に出来ねぇ』!其の僅かな『綻び』を見付け出せるか否かにこそ、クソゲーのボスを倒せる状況になる!)
「其処だ!」
「あはは、残念!」
「ぐぬぉ……まだだッ!」
予想して振り翳すも擦り抜けられる、ギアが一秒毎に上がっているのかと感じてしまうリアルミーティアスの挙動は、A-Zが用いた臨界速の挙動と超速の挙動を切り替え、フレキシブルに組み込みながらの縦横無尽の攻撃を叩き付ける。
「だがっ…………!お前には一つ、計算外が在るぜゼンイチさんよ…………!」
今のカースドプリズンは、シルヴィが蹴りを入れても浮かばない程に『重い』。即ち空中でミーティアス相手に無防備状態にされないという、ダメージを食らう事を前提としつつ『浮かされない』事がポイント。
そしてシルヴィがミーティアスを使って、此の状態のカースドプリズンの体勢を崩すか吹っ飛ばすには、臨界速か超速の何方か一方or両方を用いた加速で蹴り込む必要が有り、ミーティアス自身が
「良いぜ、どんどん打って来いよ!もっとギア上げやがれ!ただし…………高く付くぞ!!」
「わっ!?」
二歩の臨界速、一歩の超速、一歩の臨界速を絡めた超加速からの蹴り込みに、顔隠しはシルヴィの動きを待ち構えて蹴りを真正面から受け止め。ガンドレッドグローブで片足を固めて蹴りによる反撃を後頭部に貰いながらも、其の体勢は柔道で言う所の『一本背負い』。
されど其れは
「
「ッくぅわ─────────!?!?」
全身のエンジンをベルトコンベアーの連動稼働、或いはネフホロで造った『あるじゃじゃ馬ネフィリム』の如き連鎖ブースター点火で、呪われし監獄が捕まえた流星を射出した瞬間に近くの建物に突っ込んで。
「まだまだぁ!」
「マジかよ…………!」
壁を幾つかブチ破った音が響いたと思えば、五秒待たずにミーティアスが上空を走って復帰してきた光景を目の当たりにし、顔隠しはシルヴィの化物じみたポテンシャルとラスボス具合に、仮面の下で冷汗と理不尽に対する硬い笑みを浮かべたのである。
ヒーローは終わらない
晴天流【波】奥義「
墓守のウェザエモンことウェザエモン・
晴天流の波系統の根幹たる投げる事に着地点を置きながら、此の奥義は『対象を射出する際の速度』に比重が置かれ、掴んで即座に叩き付ける