VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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戦況は如何程に




超絶怒涛のハイパーストライド 〜マックスフルパワー〜

「オラオラ、どうしたどうした!?攻め手が欠けてるじゃねーの、リアルミーティアスさんよぉ!?」

「さっきのは人生で『一番ヒヤッとさせられたよ』、カースドプリズン!其れでこそ、私の宿敵に相応しい!」

「ハハハハハ、俺様の技にビビってやんの!」

「言ってくれるね!」

 

前後同時挟撃に動揺させられたシルヴィだが、会話を絡めたローターブレードの連刃の中で落ち着きを取り戻している。ダメージを最小限としながらも着実に持ち直し、虎視眈々と此方に傾いた戦況を己の手中に引き寄せんと、劣化しないパフォーマンスで動き続ける姿は『バケモノ』と断ずるに等しい。

 

(こーなるとカスプリの超必殺(ウルト)を何処で切るかが、マジで重要になってくる………!)

 

先程の挟撃居合で体力ゲージ比率はカースドプリズン微有利に傾けど、リアルミーティアス相手に其の微有利すらも誤差の範疇にしかならず、一瞬の隙で逆転される可能性が常に張り付き続けるという状況。

 

ヒーローゲージ及びヴィラニックゲージは、互いに超必殺技を発動可能なラインを既に超過し、此処からは本当の意味でシルヴィとの『読み合い』になる。何せミーティアスの超必殺技『ミーティア・ストライク』は高いホーミング性能を誇り、此れを『通常形態のカースドプリズン』が回避するのは先ず不可能。

 

よって回避するには、ミーティアスの超必殺の直撃前にカースドプリズンの超必殺を被せて『プリズンブレイカー』に移行し、ミーティア・ストライク以上の機動力で回避するという脳筋理論が、バースト時代のカースドプリズン使い達の認識であるらしい。

 

先手を取ればミーティアスに超必殺を使わせるのを躊躇させられるが、三十秒以内に体力を削り切れなければ敗北不可避の状況に。

後手を取ればミーティアスの超必殺を確実に避けられる保険は作れるが、凌いだ後にゲージが無い中でダメージソースを稼ぐ手段に苦心する。

 

何方も正解であり、同時に不正解という、何方を取るにしても一長一短、ハイリスクハイリターンが表裏一体で存在しているのは確かだ。

 

「隙有りッッッ!!!」

「しまっ………がっ!?」

「楽しかった、本当に楽しかったよカースドプリズン。此れで…………(ヒーロー)の勝ちだ!」

 

考え過ぎた隙を突かれ、ヘリのフロントを咄嗟に正面に戻したカースドプリズンに、超変則加速からのミーティアスによる蹴りが入って吹き飛ばされる。

硬直と痺れが襲い掛かり、空中という戦場で無防備にさせられた中、ミーティアスが決めポーズを行って跳躍した刹那に超必殺の輝きが視界一杯に広がった。

 

「いや、()()()!」

 

変則キックの受け方が良かったのか、はたまた乱数の女神の気紛れかは知らないが、硬直と痺れが一秒しか発生していない。だが一秒という時間ではオブジェや物を投擲しての妨害は間に合わず、必然的に超必殺を被せてミーティア・ストライクを躱す選択を取らざるを得なくなった。

 

残ったカフェインを燃やせ、此処が集中の使い所ぞ!!

 

「焦ったなゼンイチ!超必(ウル)─────────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ママぁ、どこぉ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刹那…………極限まで研ぎ澄まされた集中力か、はたまた乱数の女神が自分に対して『あっかんべー』をしたのか。

 

自分が居る真後ろの瓦礫の影、ミーティアスの死角で自分は横目で見えた場所、名前隠しに誘拐されて爆殺の生贄にされて不憫な目に遭い、ゲーム故に新しくスポーンした『栗きんとんアイスの幼女』が取り残されていたのを、カースドプリズンは目視した。

 

自分はヴィランである事、シャンフロエンジンを搭載したゲームである事、脳裏に浮かんだ相棒達(エムルとサイナ)の笑顔、其れが高速で回り動く血潮と共に脳内で演算・算出された答えは、ミーティアスの攻撃から『絶対に逃げるな』という物で。

 

「此処で見捨てたら─────────、目覚めが悪いんだよッッッ!」

 

カフェインの残りが全て燃える、欠片にならんばかりの集中力と共に掻き集め、タイミングを合わせてローターブレードをミーティアスの足裏目掛けて『ぶん投げて』、其処から瓦礫やオブジェをカースドプリズンは立て続けに引っ張り寄せ、次から次へ重ね合わせて『押し返しにいったのだ』。

 

ミーティア・ストライクの判定は『足裏が接触する事でエネルギーが流し込まれる』、謂わばシャンフロのサンラクのフェイバリットウェポン『煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)』の超過機構(イクシードチャージ)超排撃(リジェクト)】と似ており、毒液にせよ星のエネルギーにせよ接触・流し込み・爆砕するの三段階を経る事で初めて『現象』が起こる。

 

星のエネルギーが流し込まれる際に発生する、衝撃波までは瓦礫の盾を作れど防げないが、攻撃エネルギーは瓦礫に流される度に『消耗』されて消えていく!

 

(普通の奴では考え付いても出来ないと考える………だが此処は『ゲーム』だ、他の奴が無理だとしてもカースドプリズン、お前だからこそ…………いや()()()()()()()!こんな無茶や無謀にも、唾を吐いて我を徹し切れる!!!)

 

「テメェのヒーローパワーなんざ、瓦礫達(コイツ等)だけで弾き返してやるよ!ミーティアス!」

「カースドプリズンッ……………!」

 

己の纏ったガンドレッドに鎧の全てもレイズし、ミーティア・ストライクを防ぐ壁として捧げ、星の輝きが最高に到達した瞬間─────────ケイオースシティに一際大きな輝きと風が、ビルや建物の窓ガラスを叩き割って降り注ぐ。

 

捧げた装甲やオブジェの悉くが爆砕され、体力も一割を下回りながらもカースドプリズンは耐え切り、巨大な腕の片方を翳し、栗きんとんアイスの幼女に傘を差す様に遮る姿は、彼女からすればミーティアス以上に『ヒーロー』の姿に見えて。

 

「邪魔だ。あっち行ってな、ガキンチョ」

「う、うん……………」

 

日本に古来より伝わる『雨の日に不良が子犬を拾うと、何故だか良い奴に見える』的なロールプレイを展開。ミーティアスからは目を離さず、栗きんとんアイス幼女が離れて行くのをカースドプリズンは見守り。改めてミーティアスに視線を向け、思った事を口にする。

 

「其の顔………『何でヴィランなのに真正面から超必殺技(ミーティア・ストライク)を受け止めた?』って感じだな。そっちこそ市民(NPC)を助けないたぁ、御星様も随分堕ちたじゃねーか」

「アハハッ、カースドプリズンは『人助けする』奴じゃなかったとは思うケド?」

 

シルヴィア・ゴールドバーグとの会話や戦闘を通じて、顔隠しが彼女に抱いた感想は『原作準拠に煩いプロ格ゲーマー』という印象で。こういう輩には一度ハッキリと、アメコミで良く在る設定を言ってやるのが良い。

 

「ったく…………口を開けば原作やら傲慢やら、お前の『理想を押し付けて来んじゃねぇ』。此処は()()()だ、世界線(ユニバース)が違うんだよ………!」

 

体力は圧倒的に不利、装甲も必殺を阻む為に使ってしまい、衝撃波でオブジェクトも吹っ飛んで周囲から無くなった。其れでも一つ、ハッキリと解る事が有る。

 

「んな事より、ヒーロー…………超必殺(ウルト)を使ったな?」

 

ピンチの後にはチャンスが来る。其れは此のラウンドの戦況が、ミーティアスからカースドプリズンに優位が移ったという、敢然たる事実で有り。

 

「此処からは()()()()()()()…………!」

「来なよ、カースドプリズン。私が勝つには『其れ』に勝たなきゃ意味が無い!」

 

片手で仮面を握り締め、力任せに引き剥がす。

 

ギャラクセウスに力を封じられ、歩けども大半の力を失ったカースドプリズンが、ケイオースキューブ獲得という勝利条件をも手放す事で初めて発動を許される超必殺技によって、其の身に纏いし力と身を縛る鎧を弾き飛ばし、三十秒という僅かな時間に限り『本来の力』を取り戻す事を許される。

 

「超必殺………脱獄(プリズンブレイク)!!!」

 

アーマーがパージされ、周囲に飛び散り、緋色の凶星が鼓動する。ミーティアスのオリジナル、ギャラクセウスすらも予期しなかったイレギュラー、其の設定故にこそ三割の勝率を譲らなかったヴィランは、此の刹那の時間で流星を打ち砕くと宣告するかの如く立ち。

 

「プリズンブレイカー………使ったね、超必殺を!」

「行くぞ、ゼンイチ。こっからは()()()()だ」

 

燃え尽きたカフェインの残り香という灰を集め、モチベーションの炉へと放り込んで更に強く燃やす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして観客達は、出場者達は、此の戦いの結末の目撃者となる─────────。

 

 

 






勝負の三十秒


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