VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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Show Must Go On




天地開闢のビッグバン 〜ハロー・ニューワールド〜

緋の凶星と蒼の流星が、ケイオースシティを飛び交う。

 

一秒の経過が十秒にも百秒にも思えるカースドプリズンとミーティアスの激闘に、誰もが息を呑む事を忘れてしまう。

 

「速っ………!?」

「生憎バトルスタイルは悪食なんでなぁ!」

 

画面の中のカースドプリズンとミーティアスに至っては、一秒がゼロコンマか或いはフレーム単位とも言える刹那の中、超高速と高機動戦闘を繰り広げていく。

 

「驚いた、貴方の『本来のスタイル』はスピードタイプなんだ!」

「別ゲーじゃ『最速』張らせて貰ってんでね!遠慮無く死ね!」

「御断りだよ!」

「マジか!」

 

プリズンブレイカーというカースドプリズンの本来在るべき姿、ミーティアスの完全上位互換相手にシルヴィの動きも更に『速く』なる。

 

其れでもプリズンブレイカーならば追い付ける、プリズンブレイカーだからこそミーティアスに届く。相手が二秒で八回の壁キックと一回の空中ジャンプを行えるなら、此方は一秒で五回の壁キックと空中ジャンプ一回で追い抜かし、回り込んでダメージを叩き込める。

 

「先へは行かせねぇ!」

「おっとと!もっとギアを上げて来なよ、プリズンブレイカー!!」

「やってやんよォ!!」

 

飛び蹴りをギリギリで回避したミーティアス、反撃の蹴りの乱打は体幹を捻って脚にヤクザキック。互いに壁を走り、空中で交錯し、プリズンブレイカー維持可能時間は残り二十秒。

 

カースドプリズン側がミーティア・ストライクによる削りで一撃食らえば倒される状況、ミーティアス側もプリズンブレイカーに突入からダメージを受けた事で一割を切った中、御互いに『前のめり』の攻めの姿勢で二十秒以内に決着(ケリ)を付けると決意。

 

ミーティアスが空を駆け、カースドプリズンが走り、互いにケイオースシティの開けた路地に躍り出る。高速で動く視界の中、乗り捨てられた車や折れ曲がった街灯と標識が点在し、人影も無い此の場所をミーティアスは『決戦の地』にしたのだろう。

 

相手にとっての十八番の場所、だがミーティアスのオリジンたるカースドプリズンにとっても十八番の場所。

 

「行くよ!」

「っしゃ来い!」

 

スタートはミーティアス、臨界速(ブラディオン)超速(マッハ)を絡めた超高速挙動で、オブジェクトを蹴り跳ねて空とアスファルトを駆け走る。

 

(一撃デカいのを食らえば負ける!だが其れはゼンイチとて同じ!)

 

完璧なキャラコントロールで操っているシルヴィアだが、アレだけの挙動を繰り返せば当然ながら、相応の『リソース』を持っていかれる。無尽蔵の継戦能力(スタミナ)は有れど、操作する側は『人間』という事実は覆らないからこそ、完璧に回答を出し続けられるのは『機械』だけだからこそ。

 

其の隙を見付け出し、穿つ事で始めて流星を落とせるのだから。

 

「俺が『お前の動きを真似出来ない』とでも思ったか?!」

「わっ!?」

 

シャンフロで使ってきた臨界速、A-Zやシルヴィが真似をしたが一番最初に用いたのは己であると、空中を壁をオブジェクトを踏んで、五歩目でミーティアスの背後を取れば回し蹴りをカウンターで合わせに来た。

 

「んなもん織り込み済みだぜぇ!」

 

身体を屈め、回し蹴りを避ける。残り十秒という状況、空中に走って頭上を取らんとするミーティアスを追い越し、逆に此方が頭上を取った。

 

「食らえ、イアイフィスト流ッッッ!!!」

 

プリズンブレイカーの拳によるラッシュ、空中という簡単にガード移行出来ない中で降り注ぐ打撃をガードする、そして便秘の地で鍛えたイアイフィスト流の『フレーム単位の差し込み』が火を噴く。

 

「其処ッ、だぁ!!!」

「がッ!?」

 

連撃のガードによる体幹や腕のブレで僅かに出来た隙間へと、五指を伸ばした貫手を以て風を貫き、プリズンブレイカー渾身の一撃がミーティアスの『喉』─────────を狙うと見せ掛け、無防備となった『鳩尾』へと叩き込まれた。

 

指先の感触、横隔膜か心臓近く、硬直、好機、届く、残り五秒、決めろ、行け、ブチ抜け!!

 

「くたばれァゼンイチぃいいいいいいいい!!!」

 

勝利の確信、思考が吹き飛び、大事な事を忘れてた様な気がするも、全てが虚空の彼方に消えて行く。蹴りの体勢とミーティアスの位置、其の全てが完璧……………そう思った。

 

だが、だからこそ─────────顔隠しは『其れ』に気付けた。

 

ミーティアスの………シルヴィアの瞳の内に有る炎が、絶対王者の矜持(プライド)と共に業火と化して、一気に爆発したと。

 

「ヒーローを、なぁめるなぁああああ!!」

 

飛び掛けた意識を理性で引き上げ立たせ、ミーティアスが空中で半回転で体勢を立て直すや、横回転の蹴りを放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

此れがもし後一秒早ければ、ミーティアスの蹴りはプリズンブレイカーに届いていた。

 

此れがもし顔隠しが完全に集中していれば、シルヴィの反撃を受けてダブルノックアウトになっていた。

 

此れがもしカフェインが途中で切れたならば、倦怠感で鈍った所をカウンターされて負けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺様が!カースドプリズンだァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

最後の最後、体内に燃えながら走るカフェインの残滓が消え掛けの花火の如く爆発し、顔隠しの意識と身体を動かして。身体を横に捻り、ミーティアスの横回転キックを紙一重で回避しつつ、緋色の凶星は伸ばした其の手で蒼く輝く流星の脚を、首を捉えた。

 

「なっ……………!?」

「最期にヒーローが勝つなんてのぁなぁ!作られた台本(ストーリー)の上でしかねぇんだよぉ!!!」

 

正義は必ず勝つ……………コミックに置ける『御約束』に唾を吐き、同時に終わるは脱獄(プリズンブレイク)猶予(タイムリミット)。プリズンブレイカーの身体に弾け飛んだ装甲が、何処からとも無く飛来し纒わり、其の姿は呪われし監獄(カースドプリズン)へと戻る。

 

そして何よりも…………二人が居るのは『空中』で、真下に在るのは舗装された『アスファルト』。カースドプリズンに戻った事で襲い掛かる、シャンフロエンジンによって再現された、現実世界さながらの落下エネルギーと落下速度に晒された。

 

「往生せぇやァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?!」

「ぐうぅううううううううううううううう!?!」

 

落ちて、落ちて、落ちて行く………まるで星が宇宙を越えて、夜空に光の線を描き、地上へと落下して行く様で。

 

似非超必殺(エセウルト)───────衝撃変換(インパクトコンバート)!!!!!」

 

時間にして僅か一秒、超絶なるフィニッシュホールドがミーティアスの身体をアスファルトへと叩き付け、続いてカースドプリズンの身体が地面に落ちた。

 

そして此のダメージ判定は、先に地面と接触したミーティアスの体力が0となって底を着き、次にカースドプリズンの着地による衝撃で体力が削られて0となって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『WINNER! カースドプリズン』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアルミーティアスと称された、蒼の流星を。

 

世界に現れてから不敗神話を立て続ける、誰もが認めた絶対王者を。

 

誰も知らない、名も無きカボチャ頭の傭兵が墜したという事実を以て。

 

 

 

此の日、世界中のゲームプレイヤーや、ゲーマー達へと示されたのであった。

 

 

 






其の時、歴史が動いた




※尚、此の瞬間を見た名前隠しは取り敢えず煽ると決意し、慧は先を越された事を含めて取り敢えず煽ると決め、A-Zは素直におめでとうと言う事にして、恵やマッチョマン三人衆は唖然となって、アメリアとシルヴィは感情やら情緒がグチャグチャになり、観客や視聴者は熱狂に沸いた。


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