VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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時間は過ぎて




人は未踏の山を登りたがる生き物で、金山ならば一番手に掘りたい生き物

事の顛末を語るなら、エキシビションマッチは大盛況と大番狂わせに狂乱と熱狂の果てに、立席拍手堂々終劇(スタンディングオベーション)閉幕(フィナーレ)を迎えた。

 

全米一位のシルヴィア・ゴールドバーグの輝かしい無敗伝説は、リアルカースドプリズンとなったカボチャ頭の名無しの傭兵こと顔隠し(No Face)が終わらせ。

 

其の瞬間は生放送で世界各国やSNS等を通じて配信され、名前隠し(No Name)からは御祝いと煽りに、慧からは恨み節を込めた御祝いと煽り、恵からは驚愕やらが含まれ、A-Zは普通に祝っていた。

 

当の本人は自分がやらかした事に頭を抱えていたが、シルヴィからむすくれつつも握手を求められたので応じ、其の後にスターレイン側の大将たるジョンソン相手にストレート負けを喫し。

 

其の後にジョンソンは自棄酒ならぬ自棄エナドリでブーストした慧相手に、ボッコボコのストレート負けを喫するという、起承転結が急転直下で次々と起こる形となって、エキシビションマッチは過去類を見ない盛り上がりと興奮の渦中に終わりを告げたのである。

 

「……………まぁ世界レベルのゲーマーと戦えて、本当に楽しかったっていうのが感想かなぁ」

 

A-Zの頭装備類を外して、ふかふかのベッドに寝転がりつつ天井を見上げる。

 

数日間世話になった此のベッドや業務用VRシステムチェアとは今日で御別れ、ヘッドギア型以上の性能の影響で数日は確実にプレイ時の違和感と戦わねばならない上、シャンフロでは8/31に『天覇のジークヴルムとの決戦』となるので、其れまでに間に合わせねばならない。

 

「そろそろ時間か」

 

GGC一日目とは別に、二日目に行われた様々な世界大会の参加者達による『打ち上げパーティー』。全米格ゲーチーム・スターレイン相手に大暴れした爆薬分隊(ニトロスクアッド)の助っ人三人も招かれており、各自部屋で待機になっていたのだ。

 

スマフォで時間を確認から頭部装備類を改めて付け直し、身形を整えて部屋を出てパーティー会場へ。到着したエレベーターには名前隠しと顔隠しに、恵が既に乗っていた。

 

「やぁやぁ、A-Z君。シルヴィちゃんを倒す偉業を先越されたカッツォ君に、なんて言ってあげますかー?」

「素直に御愁傷様でしたとか?」

「正論だわな」

「所で顔隠しは大丈夫か?疲れてない?」

「取り敢えず家に帰ったら寝て、暫くゲームは休むわ………」

「同意………」

「私もー」

 

最高峰のプロ相手に戦い勝利するという事実と疲労感の対比は3:7とよく言うが、実体験する事で強ち間違っていないと確信出来る。

 

そんなこんなしている内にエレベーターが目的の階に到着し、通路を進めば会場となる部屋とスターレインのマッチョマンにも劣らない、複数人のボディーガード達がスーツに身を包んで厳重警備に当たっていた。

 

「ん?君!シルヴィア・ゴールドバーグに勝った、顔隠しじゃないか!?其れに君はA-Zだね、アメリア・サリヴァンに勝利した!」

「うぇ!?」

「あ、ハイ。そうです」

「いやぁ、まさか勝っちゃうとは思いもしなかった!良い試合を見せて貰ったよ!さぁ、入ってくれ!既にパーティーは始まってる!」

 

エキシビションマッチの会場で警備をしていたか、其れともメディアを通じて知ったのか、ボディーガードの男の一人が此方に気付いて顔隠しとA-Zの肩に手を置いた後、会場へと招く。

 

其処には既に到着していた慧やシルヴィアにアメリア、マッチョマン達含めて沢山のプロゲーマーや取材陣に関係者達によるパーティーが行われ、前人未踏の偉業を成し遂げた顔隠しに注目の大多数と、残りの面々もアメリア相手に殆ど完封に近い勝利をしてみせたA-Zに視線が注がれる。

 

人前に注目に晒されるのは、やはり慣れないと緊張やらで口が乾く。そんな中、慧が此方に歩いて来るや開幕早々に毒舌を吐いてきた。

 

「冬眠中に目覚めた熊かリスみたいな雰囲気出して、何やってんのさ顔隠しにA-Zよぉ」

「やぁやぁ雇い主(マイボス)、シルヴィちゃん攻略を顔隠し君に先越された気分はどーですかー?」

「取り敢えず一言、ゴシューショー様でーす」

「君達二人はホント、ケンカ売るのが上手な商人だねぇ!」

 

外道三人の会話はある意味『豪速球による顔面狙いのキャッチボール』だ。受け答えをミスった瞬間にマウントの取り合いが始まり、最終的にはイニシアティブの奪取に発展する、そんなスリリングキャッチボールなのである。

 

「焼き肉は?」

「特上寿司はー?」

「フレンチフルコースはまだですか?」

「良かったね、此処に有る物を腹一杯食べると良いよ。まぁただ……………」

 

スッ………と、慧が横に移動する。まるでカーテンを開く様に、其処に居たのは沢山の取材陣の姿。

 

「喉が枯れるまで皆さんと『オハナシ』すると良い、特に顔隠しとA-Z」

「謀ったなカッツォテメェ!?!」

「何て事するんだ慧ッッッ!?!」

「コッテリ搾られて来いよ、ばーかばーか!」

「ええい、レトロガード!」

「あ、ちょっま………ウワー!?」

 

ピラニアに集られる魚、或いはゾンビに群がられる市民の気持ちはこんなのかと思いつつ、其れは其れとして今度レトロゲームで対戦する時は、慧にストレート勝ちしてドヤ顔マウント取ってやるとA-Zは決意した。

 

此処からは記者達の質問、其の一部を抜粋した物である…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Q.貴方ってレトロゲーマー・A-Z御本人?

A.あ〜………はい、そうです。御本人です

 

Q.魚臣 慧とはどんな関係?

A.大体二年前にゲーセンで遊んでたら、挑戦状を直接叩き付けられました。其れ以来ゲーム友達の間柄です

 

Q.エクストララウンドでアメリア選手を、ほぼ完封してましたが凄かったです!

A.アッハイ、どうも。アメリア選手も本当に強かったです

 

Q.プロゲーマーですか?

A.レトロゲーマーです

 

Q.成人してる?

A.慧と同い年。なので御酒は飲めません、飲酒は二十歳になってからなので

 

Q.魚臣相手にレトロゲームで勝ち越してるって本当?

A.はい、五割強ですが勝ち越してますね。けど数年しない内に勝ち越されると思いますよ。彼は負けず嫌いですから

 

Q.其のコーデはオリジナル?

A.はい、オリジナルです

 

Q.VRゲームを始めたキッカケって?

A.シャンフロとの出会いが始まりですかね…………

 

Q.私、ギャラクシー・ブレイダーズの開発元のクレストローズカンパニーの者で御座いますが、此の度A-Z選手と是非一度御話をしたいのですが…………

A.え、あ、はい…………え??

 

Q.思考深度凄いですけど、チェスとか将棋とかしているの?

A.フリーゲームですがやってますね。とても勉強になります

 

Q.A-Z選手がアレだけの読みを通すのに心掛けてる事って、何か有りますか?

A.そうですね………。自分のやり方ですけど………─────────

 

Q.初めまして。私、Nephilim Hollow(ネフィリム・ホロウ)の開発元のブラックドールの者ですが、A-Z選手と是非御話をさせて頂きたく……………

A.えっ、アッハイ…………へ???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「疲れた…………喉乾いた…………。アセロラジュース美味しい…………」

 

色々喋ったのもあって、ドリンクバーにてアセロラジュースをグラスに注いで氷を投入し、程良く冷ましてマスクをずらして喉に流し込んだ後、軽めに何か口にしようと刺身が有る和食エリアに向かって歩いていると、所在なさげに立ち竦む恵が居り。

 

視線の先、シルヴィア・ゴールドバーグとアメリア・サリヴァンにマッチョマン達が慧と絡んでいるのを見て、肉エリアでは顔隠しと名前隠しが何か作戦を立てている様子。そして─────────

 

 

 

「いやぁー!其れにしても凄かったね、顔隠し(ノーフェイス)君!いやホント、まさかプロゲーマーですらない『アマチュア』なのにねーっ!えぇ、今すっごい気分良いから何でも質問に答えちゃうってマジー!?」

 

 

 

名前隠しが恵の恋のキューピッドになるべく、顔隠しを売り飛ばした。其の一瞬に会場中の視線が彼に注がれ、マイクや録音機に名刺を持って我先にと突撃して、其れに乗じてマッチョマン達も動き出し……………いや待て、一人だけ此方に来てる、アメリアが此方来てる!?

 

『よぉ、AZ。楽しんでるか?』

『まぁ、はい』

 

ペンシルゴンさん助けて!独占欲パワーで俺を助けて!!断じてコレ浮気じゃないからね!?…………そんな事を思っていれば、猛禽類の鋭利な視線が突き刺さって。

 

『必ずお前を越える。もっと強くなれ』

『………………言われるまでも無いです』

 

高い壁はより高く在った方が良いというのは良く有るパターンで、次はシルヴィア越えを目標にしてみるのも一向としたA-Zは、当初の目標たる天覇のジークヴルムの角破壊と打倒を成し遂げるべく、決意を新たにするのであった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尚此の後A-Zは顔隠しに─────────

 

 

『いやぁA-Z君、本人は普通って宣ってるのに凄いんだよなぁー?何せ『VRゲーム初めてからまだ半年も満たない』なのに、さも凡人ムーブ噛ましてる『マジモンの超天才』なんだもんなー!?』

 

 

─────────と言った形でスケープゴートを食らい、物の見事に様々なプロゲーミングチームのスカウトマン達から名刺を貰い、更には沢山の取材陣に取り囲まれた事を此処に記載しておく。

 

 






喧騒は冷め止まず


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