VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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覚悟は良いか?俺は出来てる




龍よ!人よ!生命達よ! 〜其の一〜

8/31、午後八時。

 

シャングリラ・フロンティアというゲームのアイドル的存在、或いはユニークNPCの慈愛の聖女 イリステラによる預言(告知)によって天覇のジークヴルムや残り四色の竜が前線拠点に集う日と宣言された影響が有ってか、新大陸に到達した開拓者達は武器や得物を手に持ち、水平線に太陽が沈んで夜が満ちる中で其の時を今か今かと待ち侘びていた。

 

「やっぱ凄いな、イリステラ様の影響力………」

「ペッパーはんも負けないくらい凄いのさ」

「そうだね。アイトゥイルの言う通りだ」

「同意:契約者(マスター)の他者に与える影響力もまた絶大です」

『グルルン』

 

現実世界(リアル)でバイトを済ませ、夕食を早めに食べてログインし、ラビッツやホルヴァルキンに前線拠点でやるべき事を済ませた彼は、蛇の林檎・新大陸出張店の個室を取り、青と黒に着いて別行動中の秋津茜とレーザーカジキ以外の、他クランメンバーの到着をパーティー達と共に待ち。

 

「やぁやぁ、()()あーくん。君が一番乗りみたいだね」

『グルルルルルルルルルル……………!』

「いつもの」

「様式美」

「日常」

「家のルストがすいません…………」

「何か、安心………します」

 

現時点の京極(キョウアルティメット)秋津茜(アキツアカネ)・レーザーカジキ以外の旅狼(ヴォルフガング)メンバー達がNPC達を引き連れやって来て、サブリーダーのペンシルゴンとリュカオーンの分け身のノワがバチバチと、一触即発レベルの睨み合いをしたのを見て思い思いの言葉を述べた。

 

「さてと、俺とペンシルゴンは此れから七天極星(グランシャリオ)のリーダーやサブリーダーに会って、最終確認を取ってくる。ジークヴルムさんが出現か残りの色竜の内、白と緑が現れたら各自様子見しつつ思いっ切り暴れちゃって」

 

彼のオーダーは非常にシンプル、ジークヴルムが空を飛んでいるなら地上に降ろす為に二体の竜を倒すという物であり。

 

「其れから皆には『コレ』を渡しとく。前以て断っておくけど、コレに関する質問やらは、ジークヴルムさんとの決戦が終わってからで頼む」

 

そう言いつつ、ペッパーは今居るクランメンバー全員に『譲渡申請』を飛ばし、全員から受理され。彼は直ぐに『共有状態にしていないインベントリア』に入れていた物達を皆に渡していけば、驚愕に興奮やらに彩られた表情へと変わって行く。

 

「其れじゃ皆、生きて朝日を拝もう」

 

唯一言そう述べて、ペッパーはペンシルゴンと自分達に付き従う生命達と共に、前線拠点に在る教会へ…………慈愛の聖女 イリステラを守るクラン:聖盾輝士団(聖女ちゃん親衛隊)の活動拠点に向かったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペッパー・天津気とアーサー・ペンシルゴン。旅狼のリーダーとサブリーダーが複数のNPCと共に教会へ向かっているという情報は、瞬く間に前線拠点のプレイヤー達に伝播していき。

 

様々な思惑を抱えども共通して情報を得んとした彼等彼女等に、ペンシルゴンとノワによる威嚇と睨み付けで退けられ、其の二人が仲間と共に慈愛の聖女 イリステラと彼女の親衛隊たるクランが教会の関係者達が常駐する教会に到着。

 

決戦フェーズ開始日の数日前に事前連絡を入れており、聖盾輝士団の案内で顔パスじみた状態でイリステラが居る謁見の間へと通されれば、彼女と共に聖盾輝士団・ライブラリ・黒剣(シュバルツシルト)・ウェポニアのリーダー及びサブリーダーが待っていた。

 

「やぁ、ペッパー君、ペンシルゴン君。いよいよだね」

「はい。此の日の為に準備をしましたから。カローシスUQさんとAnimaliaさんは?」

「カローシスさんはもう少ししたらログインする。Animaliaさん…………いや、SF-Zooのメンバー達は何やらバグマンなる亜人に、道中でドワーフやギガントにリザードマンを含めた多種族と共に、ティアプレーテンまで戻って来たのだとか」

「な、何か凄い事になってますね…………」

 

AnimaliaとSF-Zoo周りの状況が混沌としていた。

 

其れはそうとして、数日前にレオ・ネメアレクス"覇雷業封(サンダルダイン)"と遭遇して戦い、巨人族のNPC・ヴェイノムスのルギニアスとエンカウントしてから、思った以上にシャンフロ周りの人間関係は進行していた様である。

 

「……………コホン。えっとジークヴルムさんとの決戦フェーズの前に、皆さんに渡しておきたい物が有ります。ただコレに関しての質問に付きましては、ジークヴルムさんとの戦いが終わってからで御願いします」

 

そう言ったペッパーが此の場に居るプレイヤー全員に譲渡申請を飛ばし、全員が受理したのを確認した後に共通状態になっていないインベントリアから其れ等を取り出して渡していき、全員が一人の例外も無く驚愕や興奮の色に染まっていくのが解った。

 

「さて、では行きましょうか……………『装骨城砦スカルアヅチ』へと」

 

こうして彼等彼女等が此処に集まったのは、何もペッパーが物品を皆に渡す為だけでは断じて無い。

 

本来の目的、其れは『装骨城砦スカルアヅチ』を挙城し拠点として居る、ノワルリンド討伐派達に。取り分け『笑みリア達』に真っ向から宣戦布告をしに行き、其の上で後腐れ無くユニークシナリオEXを攻略する事なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカルアヅチに向かう道中、七天極星のメンバーにS·F·G·F·Aの面々、更にはペンシルゴンが前々からコツコツと関係構築をしていたという、商人職の上位職:大商人のプレイヤー『ゼニス・ゲバラ』と超農民なる職業:農民達に協力関係のNPCが合流。およそ『二百人に迫るプレイヤーやNPCの大軍勢』と化し、スカルアヅチに押し寄せる。

 

「ひゃーすげーぜ、ゼニちゃん!パレードじゃんコレ!」

「楽しくなって来たぜぇエエエエエエ!」

「一応オレ、合法的に商売してーんだけど!?やってる事が明らかに『魔王側』だよな!?」

「だいじょーぶ!私のあーくんが居るから『勇者側』だよん!」

「何処にそんな根拠が有るんだよ…………」

「ネームバリュー!!!」

「………………さいですか」

 

何か有っては不味いので、聖盾(せいじゅん)イーディスは確り装備中だ。進む道中で超農民が『アヘ顔ダブルピース』し出してスクショされたり、テンションが昂って最高潮一歩手前まで来たペンシルゴンがスカルアヅチの城門をプレイヤー達と力付くで抉じ開け、其れを見たペッパーとサイガ-100は額に手を当て夜空を仰いだりしながらも、一同は場内を勢い其のままに突き進む。

 

「よっしゃ、たのもーかー!!!」

 

ペンシルゴンが扉を蹴り開ける姿に、其の中で作戦会議をしていたプレイヤー達が、一体何事かと振り返り。そして其の先陣に立つペッパーとペンシルゴンの、シャンフロ内で最も凄まじい知名度を誇るプレイヤーに元PKerとはいえ影響力が今尚健在のプレイヤーの登場に、全員漏れ無く『ヤバい』という共通認識を抱くには充分過ぎた。

 

「貴方達は…………」

「廃人狩りに、ペッパー…………!しかもS·F·G·F·Aの面々や、七天極星のリーダー格達も…………!」

「やぁやぁ、笑みリアちゃん!噂は予々(かねがね)、生産職が城まで建てるんだから凄いよねぇ……!其れに久し振りだねぇ、天丼くぅん…………!」

「初めまして、笑みリアさん。そして(てん)首領(ドン)さん。ペッパーです」

 

ノワルリンド討伐派プレイヤーの間で、まことしやかに囁かれていた噂の一つに『ペッパーが青竜エルドランザか黒竜ノワルリンドの何方かor両方を生存させて、其の状態でジークヴルムを打倒する』という物が有る。

 

シャンフロで最も有名なプレイヤーが一体何を思い、何が目的で二体の竜を生かした状態でジークヴルムを倒さんとするかは、笑みリアや天首領には解らない─────────だが解らないなりに、今の状況でハッキリと解っている事が一つだけ有る。

 

其れはノワルリンド討伐派とジークヴルム打倒派の戦力とイニシアティブの比率、大多数が向こう有利として持って行かれて、自分達が『圧倒的少数派閥の状況に在る』といった十全たる事実だ。

 

ペッパーというプレイヤーはユニークモンスターの討伐実績や、シャンフロでは前代未聞の最大高度(スカイホルダー)最大潜水(ダイヴホルダー)の、前人未踏の二冠を戴いた盾の勇者武器・聖盾イーディスの所持者である。

 

口から出て来る情報や様々な奇行の数々で、プレイヤー達の間に波乱を巻き起こす凶人とも奇人とも揶揄されながら、其の実は愚直にシャンフロというゲームを楽しんでいるプレイヤーらしい。

 

そんな彼の口から放たれる言葉は─────────

 

 

 

 

「俺達はユニークシナリオEX【来たれ英傑、我が宿命は幾星霜を越えて】のクリア条件①にある、『ユニークモンスター・天覇のジークヴルムさんの打倒』を狙い。其の過程で『青竜エルドランザと黒竜ノワルリンドの両方を生存させて』、此のユニークシナリオEXを攻略します」

 

 

 

 

明確な『宣戦布告』……………決戦フェーズ開始前に不意打ちで事を済ませるのでは無く、余裕の有る今の内に相対する存在へ真正面から堂々と宣言する其の姿勢は、一対一の果たし合いを所望する武士や、手袋を地面に叩き付けて決闘を申し出る騎士を彷彿とさせる。

 

『事実』と『真実』、そして宣言を成し遂げる『自信』を以て、骨骸の城主と其の者に付き従う者達へと『宣言』し。其れは城の主たる笑みリア達にとって、旅狼を中心とするプレイヤー達が『敵対存在』としてカテゴライズされた瞬間で。

 

「……………上等です。例え『何百人がジークヴルムを狙おう』とも、我々が其れより先に『ノワルリンドを倒せば良いだけ』。…………ええ、えぇ………。其の為の『スカルアヅチ』であり、そして其の為の『此迄なんです』から…………!」

 

あまりに静かな声音、表情筋は笑みの形を作っているにも関わらず、彼女の目はあまりにも『無機質』だった。

 

ペッパーは此の手の感情を良く知っている───────此れは『怒り』、其れも『キレると炎が延々と消えないタイプ』に良く見られる、謂わば『復讐者』に近しい存在であると。

 

「ノワルリンドが生きて明日の朝日を見る事は無いと、此処で宣言させて貰いましょう」

「ジークヴルムさんを倒し、俺達が先の未来に抗えるだけの力を持つと彼に証明する」

 

互いにそう宣言し、此処に二つの勢力は決定的に決別したのだった。

 

 






堂々と宣言を


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