白竜を倒す為に
時間は多種族大軍勢が戦場到着よりも少し前に巻き戻る。
「ハーベストだぁああああああ!!」
「ヒャッハー!トリガーハッピー!」
「たーのしー!」
「気分は無双ゲー!」
「んぎも"ぢぃいいいい!!!!!」
「擬似人型に銃ブッパー!!!」
ペッパーからの情報伝達によって、白竜ブライレイニェゴには群体系特攻武器や防具が有効と知らされたプレイヤー達は、我こそが勇者に英傑に足る者ぞ!とR.I.Pを掲げて変身し、武器を手に取って子竜達を次々と討ち取っていく。
大剣が振るわれ、子竜が開きにされる。
槍が突き出され、子竜達が串刺しにされる。
ハンマーが落とされ、子竜がペシャンコにされる。
銃火器なる物が音を鳴らし、子竜が蜂の巣にされる。
遠くから矢が、魔法が、弾丸が当たり、チクチクと刺さっていくのが、ブライレイニェゴからすればウザ過ぎて仕方無かった上に、己の子等が潰れていく光景は堪え難く。
『何なんだ貴様等わぁああああああああああああ!?!よくも愛しき我が子達を次々と奪いやがってぇぇぇええええええええええ!?!』
ブライレイニェゴが悪夢でも見るかの様な悲鳴を上げ、先程以上の子竜達を産み出す。蟻の様な極小サイズから人の背丈と同じくらいの大きさ、更には三メートル級の巨人タイプまでも産み出して、虫達が用いる前線という『戦略』を用いて
「やっべ、調子に乗り過ぎたか!?」
「怯むな!空中移動出来る奴は空から叩け!遠距離持ちは本体を切り崩すんだ!」
「軍隊に風穴開けてやらーーーーー!」
「よっしゃ
ブライレイニェゴは困惑した。此の虫等は死ぬのが怖くないのかと。子竜に群がられて、子竜に焼かれ、子竜に食い千切られる事を、何故此の虫達は恐れないのかと。
そして何よりも─────────
「どけどけどけぇぇぇぇええええええええええええええええええええい!!!」
「ツチノコさんだ!」
「剣燃えてないかアレ!?」
「テンションやばない?」
「何か
今の自分にとって『竜狩りの剣と赤と碧の大剣を振るう黒装束の虫』こそ、此の場に居る虫達の中で『最も脅威と言える存在』と、白竜はハッキリと確信している。
「フハハハハハハハハハハ!!!ハァーハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッアアア!!!」
素晴らしい、素晴らしいぞアラドヴァル!
朽ち果てから火を灯し、修復を経た後に元々の持ち主との決別を選び、ホルヴァルキンの地下神殿で黄金のマグマを入手し、ビィラックの手によって更なる強化を遂げたアラドヴァル・リビルド!現時点で
リビルド時代から随分『回りくどく』なったり、能力が色々『複雑』になったりはしたが、其れを加味しても充分過ぎる対竜モンスターへの『アドバンテージ』を、此の竜狩りの
槍焔剣アラドヴァルには幾つかの能力が搭載され、アラドヴァル・リビルドの頃は常時高熱を纏った
其れもオフ状態では熱も纏わず、切れ味も極端に落ちている『鞘に入った状態』の為に、持ち主である自分の手でアラドヴァルを着火し燃え上がらせる必要が有る。
着火の合言葉は【
次に
……………のだが、此の能力がサンラク的に見て『相性は良くは無く』、幸運と敏捷重視のクリティカル狙いのアタッカーで有り、焔を蓄積と加算を行う都合から意図的にクリティカルを『外さなくてはならない』。
「意図的峰打ちィ!」
シャンフロというゲームに置けるクリティカル発生原理は、プレイヤーの間での議論で幸運の数値が関係しているという。
そしてクリティカルの発生条件には武器を振るう、或いは打ち込む時の正しい角度と、対象への出所を問わない運動エネルギーに依存している。
だが一部のプレイヤーによればクリティカル発生原理は、幸運と技量の二種類のステータスが高い程に発生しやすくなるという派閥が有り、存在している理論を加味して『一点を突く』のでは無く『面で大きくぶつかる』事で、クリティカル発生を『意図的に抑える方法』も確立されていた。
─────────ふむ、わざとクリティカルを発生させない方法、か…………。成程………、実はライブラリのプレイヤーの中にも、技量に長けた者が何人か居てね。であれば、高い幸運持ちのプレイヤーのクリティカル発生解明について、ライブラリとして協力しよう。代わりにと言っては何だが、ペッパー君とサンラク君に『ある検証』の為の協力をして貰いたいのだが…………、無論君達二人に相応の報酬を支払うと約束しよう。
ライブラリの検証とやらで、サンラクとペッパーは『ある種の地獄巡り』を体験したが、其の甲斐も有ってかサンラクは『剣武器と鎚武器』に関しては意図して、クリティカル発生と非発生をスイッチ出来る程度には技術を獲得したのである。
「シャアオラァ!」
右手に握った武器を放り投げ、
だが其れだけでは効率が悪い、故にサンラクはもう片方に
「エムル、サイナ!一瞬で良い、目の前の巨人型の動きを止めろ!」
「はいな!【マジックエッジ】!」
「武装展開、近接切断武装:
人間で言う所の弁慶の泣き所に魔法と機械の刃が刺さり、巨人型の子竜の動きが崩れる。
「おりゃさぁ!!!」
アラドヴァルでダメージを与え、勇輝の晶剣で後詰めを取る。巨人型が自重と大剣の斬撃に腹を裂かれて倒れ、ポリゴンの崩壊と黒いエフェクトが喪服に吸われ、取り込まれて行く。
「サンラク!皆さん!」
「サンラク君、随分暴れてる様だねぇ。手貸そうか?」
「アレがブライレイニェゴか……………何と言うか、女王蟻だな」
そんな折、子竜達をブッ飛ばして蹴散らしながら、ペッパー・ペンシルゴン・サイガ-100に、途中で彼等彼女等と共に加わったサイガ-0と他プレイヤーにNPCが合流してくる。
「おぉリーダー、ちょっと悪いが周りの連中を捌けてくれ。エムル、サイナ、今から『プランB』で五分間大暴れする。サイナはリスポーン地点、エムルはペッパー達と戦いまくれ」
「……………!解った、皆さん!サンラクが戦うので、此処から離れつつ子竜を倒して下さい!」
片や銀に燃える剣を握り、片や赤と碧に煌めく剣を収納して、取り出したのは巨大な墓標の剣。地面に突き刺し、空いた其の右手に持つは『赤い奇妙の髑髏』とも言える物。
多くのプレイヤーはアレは何だと首を傾げる中、其れが
「其れじゃあ、そろそろ『第三形態』と行こうか!…………【
黒いヴェールの上から頭蓋を被ったサンラクが力を行使する言霊を放てば、個体であるはずの頭骨より血とも言える『赤い液体』が染み出し、軈て地面に滑り落ちたと思えば其の身体を這いて、染み込み、溢れ出て、纏わり付いて。
血液の凝固作用により血の脈動は野獣の下顎を、重量級の肉食獣が狩りに用いる腕と指を、背中や肩に棘の様な突起を、腰の後ろから尻尾が生えて伸び、六つの瞼が開き、六つの眼球が戦場を、ブライレイニェゴを睨みつける。
「
先程まで『人だった者』が、突如として『人の形を捨てた事』に目撃者が困惑する中、当の本人は一分一秒すら惜しいとばかりにブライレイニェゴと子竜へ突撃し。
そんな中でペッパーもまた、新しい装備の力を試すべくゴルドステラ・スーツシリーズや武器達を切り替えつつ、インベントリアより新たなる一式装備へ、鉱人族のガンタックが作った装備へと身形を整え。
「白竜ブライレイニェゴ、緑竜ブロッケントリード!!貴方達は自然を、動物を破壊する存在……!であれば、私の拳で打ち砕くのみ!!!」
「ペッパー殿ぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!我等が英雄よ、ドゥーレッドハウル打倒の大恩を今返しに参った!!!」
「偉大ナル先祖ヨ!バグス・プライド二誓イテ、我等ノ戦イヲ御覧アレッ!!!」
「ブロッケントリード!同胞が世話になった借りを、返しに来たぞ!!」
「ブライレイニェゴ、我らから逃げ切れると思うな!貴様の首を断つは我ら巨人族! 英傑オディヌとドルダナの意思を受け継ぐ、我らオディヌ氏族が!此の無双の双剣モラ・ベガルタのフィオネと知れ!!」
「同じく!無双の双剣モラ・ベガルタのディルナディアもまた、此処に居るぞ!!巨人族の勇士達、今こそ武器を掲げよ!!竜を狩りて、我等の証を立てるのだ!!!」
其の直後、総勢四百五十名越えの人と亜人種達の大軍勢が、戦場に到着した。
嵐の如く暴れよ