白竜をブッ飛ばせ
赤獣化した女サンラクが暴れ出す中、多種族大軍勢が戦場に到達した。
彼等が彼女等が白竜ブライレイニェゴ討伐派と緑竜ブロッケントリード討伐派の二手に分かれる様は、オールスター映画で有りがちながら『最も燃えるシーン』と言っても差し支えが無い。
「此方も白竜に一発デカいのをブチ噛ますとしよう………!エムルさん達はペンシルゴンと共に子竜の迎撃を、俺はあの女王蟻ドラゴンをブッ飛ばしてくる!」
ペンシルゴンやサイガ-100含めて他のプレイヤーやNPCが見たのは、ペッパーが全身に装備した一式装備で。全体が乳白色で赤み掛かった金のラインの意匠がアンダースーツに走り、艷やかながらも超逸品と解る其の鎧は、両腕はグローブ型の篭手が、両脚には分厚くデカいブーツを一体化させてくっ付けた様な物であり。
ヘルメットらしき頭装備は、蜘蛛の頭を上から写真を撮って見る方向を上下逆にした様なイメージの、ある意味で『鬼面』を着けている印象を抱かせる物だった。
「あーくん、何其の一式装備!?」
「鉱人族のガンタックさんに御願いして、フォルトレス・ガルガンチュラ種達の素材に黄金のマグマを使って作ったっていう、グローブみたいな状態だけど両腕両脚が『素手と素脚』扱いとして働く、グラップラータイプの一式装備『
「
「了ッ、解ッ、だァ!」
城帝闘壁爆技鎧シリーズはグラップラータイプの装備であり、製作者のガンタック曰く『赤竜ドゥーレッドハウルとの戦いを見た同胞達から、ペッパー殿が此のモンスターの素材を使った一式装備を纏っていた』という話を聞いたらしく、彼に拵えるならば『前線に突貫して敵をブッ飛ばせる装備こそ相応しい』との考えから、此の装備を作ったのだとか。
此の一式装備は四つの能力が搭載されており、一つ目がプレイヤーの敏捷を300ダウンする代わりに、肉体の筋力・耐久を三倍にし、物理耐性:超及び衝撃耐性:超を得る。此の装備自体も総耐久値が35000も有るので、
二つ目は此の一式装備を装備中、装備者は『武器を装備出来ない』。グラップラー系列に良く有る特性&自分の拳や脚で勝負する職業柄なのと、右手はグランシャリオ入手まで投擲や拳撃に用いた事も有り、此の能力は苦にならないが両手が拳で固定されるので、インベントリ及びインベントリアの操作に影響が出るのは否めない。
「おらっしゃあい!」
右拳が振るわれ子竜の鳩尾に着弾、同時に右腕全体がブルルンと
城帝闘壁爆技鎧シリーズ一式装備中の三つ目の能力が、装備者の攻撃時に一定以上の火力を出す、もしくは被弾時にダメージが10以下の場合に対象をノックバックし、確率で爆破属性の追加効果が発生する。此れにより下手な殴り合いでは敵が一方的にダメージを負い続けて、此方に殴られ続けるという理不尽を強いる事となるのだ。
ガンタックの話によれば『フォルトレス・ガルガンチュラ達の素材と一緒に渡した、アーミレット・ガルガンチュラのゼリーマテリアルを溶かして固めて組み込んだ』そうで、ガルガンチュラ種達は此のゼリーマテリアルを全身に流動、衝撃を受けると瞬間的に硬化させたり爆発のパワーに変えているらしく、謂わば『ニトロと水溶き片栗粉の特性が融合した物』と言っても差し支えない。
そして其の特性が黄金のマグマによって引き出された事で発現した四つ目の能力こそ、装備者のMPを一定数値消費する事で一定時間、ノックバックの強化及び爆破属性の追加効果発生確率を強化する。つまり此の一式装備は敵陣に突っ込んでノックバックと爆破で敵を退けつつ、本丸を殴り蹴り飛ばすというコンセプトなのだろう。
「ガルガンチュラ種達がまぁ鈍重なのは割り切るとして、女王蟻ドラゴンの元に進むッ!!」
ゴリラの四足歩行をイメージし、ペッパーがダメージ覚悟で白竜ブライレイニェゴに突き進む。子竜達もブレス攻撃を絡めて此方を圧殺せんとするが、一式装備の力でノックバックと共に弾かれ、爆破属性による追加効果発生で仲間を巻き込んで吹き飛んでいく。
「私も良いかしら〜?」
「マッダイさんも一緒かいな、盛り上がってきたなぁ!」
「カカカ!オレも居るぜ!」
「やってやるわよ!」
そして更に加わるは、プレイヤーのバフ盛りに盛ったマッシブダイナマイトと、巨大な竜骨の籠手を装備したムラクモ、SOHO-ZONE曰く叩き斬る槍………薙刀らしい『方天戟』を持ったサバイバアルに、致命武器を抱えたイムロンであり。
子竜達相手に他の者達が露払いを成して、六人が進む道を切り拓く。
「其の白の身体、血染めにしてやらaaaaaaaaaaaaaaa!!」
「今から貴女をブッ飛ばす!!」
「私も居るわよぉ〜…………!」
「おおおおお!!!」
「忘れて貰っちゃ困るなぁ!」
「行くぞオラァ!」
『何なんだ、何なんだお前等はぁあ!?!』
片や子竜をキルし続け、時間経過と共に怪物味を増していく赤い獣が二本の剣を携え迫り、片や子竜達の戦線を真正面から突破して着実に距離を詰める、乳白色の剛腕剛脚の巨大な四肢を持つ鬼人と其の付き人四人という、恐怖しか感じられない光景だろう。
そしてブライレイニェゴは忘れている、自分を狙っているのは二人だけでは無い事に。
「隙を見せたなブライレイニェゴ!食らえ…………【
『ごアァアあぁああぁぁああ!?!』
ブライレイニェゴの真上、意識外から落とされた雷の獣が脳天に喰らい付く。レベルキャップを解放し更なるパワーを得たサイガ-100の完全詠唱の大火力雷属性魔法が、白竜の上半身に突き刺さる。
「姉さんッッッ!」
「よし、…………いくぞぁ!」
『ぐごぉおおおおオォぉォぉ!?』
子竜を蹴散らし、巨人の姉妹が武器を握り、其々の手に渡って今此処に交錯した対の刃が、ブライレイニェゴの丸々太った腹部に深い×字の斬撃が叩き込まれる。
「貰うぞ、白竜!
『ごっぶぷぅおアアアああアアアアア!?!?!!』
墓標の大剣たる
二振りの刃の鋒、子竜を屠りて重ねた赤き獣と死の力を乗せて、スタミナが底を尽きるまで幾ばくがの、限界ギリギリで放った
「後詰めだ、ブライレイニェゴ!」
使用者の視界内で望む場所まで凄まじい勢いで自動移動を行うスキル『
マッシブダイナマイトがハーキュリー・ブラスター、ムラクモがハーキュリー・ストライク、サバイバアルが覇断制界にイムロンがフォートレスブレイカーと、其々持ち得る補助スキルを乗せた最大火力のスキルを点火。
ペッパーも
最期に
『パぎゃ─────────!?』
「うん、良い火力になったかな」
「此れでも最大火力は取れなかったわぁ〜」
「ヨッシャ見たか、しゃんなろー!!」
「やっぱ沈まへんな、白い女王蟻のドラゴンは…………!」
「見た目よか、だいぶタフだなオイ!!」
サンラクが起こした爆発程では無いが、大きな爆砕音とノックバックの融合から、顎に強烈窮まる一撃を受けたブライレイニェゴの首が『後ろに曲がって関節が外れ』、更には『顎と首の骨砕けて口が裂けた状態』となって。
対するペッパーは、サマーソルトキック体勢からフリットフロートとグラヴィトン・レイで体勢を立て直しつつも、城帝闘壁爆技鎧シリーズからゴルドステラ・スーツシリーズに着替え直して、ミルキーウェイの効果適応時間内で一気に皆の元へと戻る。
「やぁやぁ、あーくん。凄い火力だねぇ?」
「もうちょっと威力は出せた気がするんだけどね。如何せん同調連結スキルって凄いけど、使い辛い
「同調連結スキル?」
「決戦フェーズが終わったら御話します」
ブライレイニェゴを挟んだ向こう側では、巨人族達がサンラクを空高く掲げて大騒ぎし、此方ではプレイヤーやらNPC達が次々と、我先にと押し寄せて来る。
『ゆ、ユるザない……………!許さない、赦さない、ユルサナイ、ユルザナイィイイイイイアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
!?!!!!』
が、そんな彼等彼女等の前でブライレイニェゴの腹部が突如として『上下に裂けた』。此のチャンスを活かそうと戦術機を操縦したり、子竜の戦線を越えて取り付いたプレイヤーが張り付いた所で起きた、突発的な行動に巻き込まれたプレイヤー達が『ブライレイニェゴの上半身ごと纏めて喰われ』。
後に響くはゴキャリ………!グチャリ………!と言う、生々しいまでの『咀嚼音』と、十数秒後には『口の内側』から生えた太い筋繊維によって産まれし、前脚後脚を突き出して地面を這う『白色の肉塊』という姿に変わった瞬間、プレイヤー達の前にブライレイニェゴの『発狂モード』が伝えられたのである。
『白竜ブライレイニェゴの肉体が、生命の危機に裏返る』
『
「ブライレイニェゴの発狂モード!ドゥーレッドハウルの時にも同じ事が起きたので、後少しです皆さんッッッ!!!」
ペッパーの声が戦場に届き、プレイヤーやNPC達も後一息と、もう一踏ん張りと気合を入れ直す。
自らを喰らいて変貌した白竜と、白竜を狩らんとする者達の戦いはいよいよ佳境に入る。
白竜が狂う
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