言霊に宿る力
「四の道は無数への可能性、四の光は夢幻への道筋を示すもの…………。水は渇きを癒し、火は温もりを与え、土は芽吹きをもたらし、風は揺蕩い命を運ぶ」
緑竜との戦いが更に激しさを増して、白竜に当たっていた一部のプレイヤーやNPCが此方にやって来た中、大地に杖の柄尻を着けて四色の球体が渦を巻く杖を前にレーザーカジキが詠唱し、其の彼を守る様にエルドランザが操る海流の渦が、彼と外界を隔てて子竜達の進撃を退けて詠唱の邪魔を許さない。
シャングリラ・フロンティアというゲームに置ける魔法属性の内、基本となる火水風土の四属性を宿し顕れる精霊『クインタ・エレメンツ』からドロップする最高レアの武器…………其のドロップ率も『極端に低い』為に、一部武器コレクターや魔法使いプレイヤーから熱望され、或いは渇望し、もしくは切望の逸品として広く知られる『
其の超貴重なドロップ武器を素材としてヴァイスアッシュが
「巡り満たす水よ。暗闇を照らす炎よ。生命を育む土よ。音色を奏でる風よ。四の素と輪廻は廻り、歯車は噛み合い、大いなる力の奔流は出で顕る………」
兎花【四季】のゲージをMAXにする事で始めて発動出来る能力には、『一定時間の間に使用者の用いた魔法によるMP消費を0にする』という、
だが此の魔法によるクリティカル発生によるゲージの蓄積は、使用者の魔法発動による消費MPの数値が影響を与え、弱い魔法ではクリティカルを出してもゲージ蓄積は少なく。逆に強い魔法はクリティカルを出せばゲージ蓄積は高まるが、強い魔法には詠唱等の前準備に当たらなかった場合のリスク管理等の、別の問題を常に抱えた状態で属性魔法を常に当て続けていくという『苦労』が、持ち主たるレーザーカジキに伸し掛かっている。
「水と火は弾きて、土と風もまた弾き。水と土は交わり、火と風もまた交わり。水と風は融けて、火と土もまた融ける。四にして偉大なる素、其の理は我と共に在らん…………!」
其れでも彼は折れない。此の程度の苦労等、彼からすれば『レジェンドオブクソゲーのフェアクソを、もう一度始めからプレイして正攻法でラスボスの邪神を倒す事』をやらされる方が、彼自身は余っ程難しいと感じる程度でしか無いのだ。
此の魔法が必要とする詠唱の難易度も、フェアクソを攻略し切ってエンディングまで辿り着いた自分ならば、絶対に乗り越えられるといった『確信』が彼に宿っているからこそ、発動成功率は極めて高い数値を叩き出せる。
「万里を越え、円環の門は開かれる……!潜り抜けし水よ激流へ…!潜り抜けし炎よ爆轟へ…!潜り抜けし土よ鳴動へ…!潜り抜けし風よ暴嵐へ…!雄々しき波動となりて困難を砕く導と成らん━━━━━!【
致命兎の魔法を込めた四色の杖がレーザーカジキの魔力損失を抑え、エルドランザが海流と共に渦巻く激流の内側で、文字を刻んだ巨大な魔法陣が彼の前に出現し。
彼は休む間も無く『更なる詠唱』を開始したのだ。
「……………果てを知りしは黒き
火水風土とは異なる其の魔法のエフェクトは、夜空に煌めく『星々の輝き』に似ていて、変色し溢れる暴れる様な大流が、レーザーカジキを中心に展開。初めは二つより始まり、続けて四つ、更に続けて六つに変わり、其処から八つを越えて、軈て十へと変わり混ざり出す。
「流転する空、変わり廻る星、昇りて沈む太陽と月。無窮に浮かびし星の軌跡を辿り、我は此の地に神秘を刻み、其の威光を知ら示さん……………!!」
今のレーザーカジキはエルドランザとのレベリングの最中、隠しエリアに気紛れで訪れたユニークNPCながら、ペッパー達からはユニークモンスター疑惑を持たれているゴブリン、『
彼によって魔法使い上位職の魔術師は
レベリングの先で手にせし、其の魔法の一つを行使する。
「遠き陽を唄い、遠き陰を唄い、今も尚をも
完全詠唱の完遂、兎花【四季】によって齎されるMP消費の免除、増乗幅響門の先に産まれしは『更なる輝きを放つ巨大な光の渦』。
『行くぞ、レーザーカジキ!』
「はいっ!やっちゃって下さい、エルドランザさん!!!」
エルドランザが其の身を水へと変える、海岸線の先に在る海より海水を吸い上げ、レーザーカジキを護った回転する渦を加えて更に加速させていく。
カローシスUQが、Animaliaが、SF-Zooが、数多のプレイヤーと亜人種NPCが刮目し、液状化と回転による運動エネルギーを高めに高めたエルドランザが真っ直ぐに増乗幅響門へと飛び込み。
増大と乗算が一瞬の後に行われ、コロニーレーザークラスにまで巨大かつ質量を得たエルドランザが飛び出し、間欠泉じみた凄まじい速度で小宇宙綺羅渦に吸引された瞬間、一秒経たずにブロッケントリードの真上で『新たな小宇宙綺羅渦が出現したのだ』。
『あ?なん『遅いわ老害ッ!』ごぶぉぉぉオオオオオオアオオオアアアアアアアアアアア、ゴグががぁアアアアアアアアアアアアアアア?!!!?!?!』
刹那、小宇宙綺羅渦によって『擬似的なワープドライブ』と、増乗幅響門による増大乗算を果たした『超々巨大大瀑布の一閃』が、ブロッケントリードの巨体を座標として落下。
夜空から地上へと『時速250km』は優に超え、回避しようにもエルドランザ自身の意思でルート変更すら可能にする『生きた水の砲弾』が、絶大極まる破壊力を内封してブロッケントリードの背中に回転しながら着弾。
積み重なれば巌ですら貫き、流れ続けば川底は深まり、打ち寄せれば山すらも削る水の流動は、最も長く古く生きた緑竜の背に生えた木々や岩に大地を砕いて削り、体内をグチャグチャに掻き混ぜながら貫通。激流はブロッケントリードの股下を擦り抜け、レーザーカジキの後ろに在る海へと戻りて着水からの、青竜エルドランザの形を取り戻す。
「ブチ抜いた!?」
「ヤッベ、スゲー威力だ!」
「ブロッケントリードが止まったわ!」
「多分致命傷だ、此処で畳み掛けろ!!」
「よっしゃ、削れ削れー!!!」
「うぉおおおおおおおおお!!!」
『『『『イェァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』』』』』
『『『グォォァァァァァアアア!!!』』』
『ぐぬぉおおおおおおおおおおおおおお!?!』
レーザーカジキと青竜エルドランザ、人と竜の合体攻撃で此処までリジェネによる回復で、其のタフさが際立ったブロッケントリードに『明確な大ダメージ』が入った。
プレイヤーにNPCに
「エルドランザさん、大丈夫ですか!?」
『妾は問題無い。其れよりも老害め………直撃する瞬間に足元の地面を砂漠に変えて、砂地でダメージを『和らげおった』か………。御陰で奴の奥の手を引き出せんかったわ』
「ほ、本当ですか…………?」
『あぁ、突撃してブチ抜いた感触が『随分軽くてな』。今し方も耐えている辺り、其の線が妥当じゃろう』
最も長く生きた竜で有るが故の直感か、或いは長く生きるからこそ持った生存本能の賜物か。何にせよ此のままではまた回復され続け、傷を塞がれて振り出しに戻ってしまうのは目に見えている。
(どうすれば良い…………?どうすれば……………!)
悩み、思考し、其れでも決して諦めないレーザーカジキ。そんな彼に、悪魔が静かに微笑み掛ける。
「じゃあ、ボクの力を貸しちゃおうかな?ブルードラゴンボーイ?」
「あ、貴女は……………!」
「ディープスローターさん。貴女もブロッケントリードが狙いかしら?」
『また新しい虫が来たようじゃな…………』
「ンフフ〜♪いやはや、凄まじい火力だったよねぇ。もう少し破壊力を上げられれば、確実に致命傷は狙えてたと思うよぉ〜。な・の・で………………今からオイラが『手本』を見せたげよう!」
そう言って背中に生えた赤い手を振りつつ、彼女は『其れ』を取り出した。
其れはまるで『歯車を無理やり捻ってメビウスの輪にした上で、其の周囲に人の掌サイズのモノリスが五つ浮遊する長杖』という、一目で量産品とは一線を画す『ユニークウェポン』と解る物。
だがレーザーカジキは、Animaliaは、此の長杖の事を
「其れって、まさか……………!」
「『
『何じゃ其の杖は』
「エルドランザさん以外は、やっぱり知ってるよねぇ?ウフフフフ…………♪」
シャンフロ世界に名を轟かせし、悪辣極まる事件の主犯たる其の女は、動物狂いの女園長と青竜と心を通わせし煌星魔術師に、其れは其れは綺麗で深い闇を宿した笑顔で呟いたのだった。
女は悪魔