其の杖の逸話
事の発端は、ユニークシナリオ【
そんな宝探しとロマン溢れるユニークシナリオは、多くの魔法職プレイヤーを熱狂と白熱の渦中へと誘い、当時を知る古参プレイヤーの間でも今尚『良い意味と悪い意味』の二つの意味を以て、語り草として紡がれている。
其れは『魔法職プレイヤーのみ』で構成されたクランたる『
─────────が、温められた鉄が一気に冷めて冷たくなる様に、夢から覚めて現実を見る様に、其の熱は『ある時期』を境として消えたのである。
魔法使い最上位職の賢者プレイヤーの過半数から『究極魔導の断片』を受け取り、座標を解析して漸く実現杖ザ・デザイアーの在処を突き止めた、魔女の教会のクランリーダーが場所で見たのは……………既に何者かによって杖を持って行かれた後の、空虚な祠だけだったという結末で。
其の一件以降、魔女の教会には「実現杖ザ・デザイアーの所有者は出禁」という
此れが俗に言う『実現杖空振り事件』の主な概要だ。
「実現杖ザ・デザイアー………、空振り事件の………!」
「ほ、本物………?」
「そうだよぉ〜………魔女の教会のプレイヤー達に、人気の無い場所に連れ込まれちゃうかも、ねぇ………?」
自然体、然しながら底無し沼と言わざるを得ない様な深い闇を内封した彼女の笑みが、動物好きなAnimaliaと魚好きなレーザーカジキに向けられるが、其れでも姉弟達には解る事が一つ有る。
「……………ディープスローターさん、
「必要な事を言って下さい。やりますので」
「おや意外、悩むかと思った……………じゃあAnimaliaさん達には足止めに三分、レーザーカジキ君にはさっきの門魔法を教えて欲しいのと、今の君に出せる最強クラスの水属性魔法を御願いしようかなぁ。あ、エルドランザさんにも水流砲撃援護をよろしくネ?」
「解ったわ。SF-Zoo各員!ブロッケントリードを三分間足止めするわ!カローシスさん、他プレイヤーの陣頭指揮を!三分時間を稼いで!」
「了解した!皆、三分間を稼いでくれ!」
プレイヤーとNPC達が一斉に動き出し、ブロッケントリードの足止めを担わんと武器を、魔法を振るい出す。だがブロッケントリードは沈まない、倒れない、揺らがない。レーザーカジキとエルドランザが貫いた穴も、背や腹に生えた茨触手を成長させて伸ばし、縫い繋ぎ合わせて塞いでいく。
『おのれ、エルドランザ!おのれ、レーザーカジキ!おのれ、トットリぃいいいいいい!』
「何で俺なんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?」
「さっき以上にキツくなってない!?」
「茨触手が面倒過ぎる!」
「園長!アレ使って良いっすか!?!」
「許可する!!思いっ切りやりなさい!」
「「「「「ラジャー!!!」」」」」
「巻き込むから避難してー!」
「よっしゃやるぞー!!!」
「皆、退避ー!」
「傷だらけ、此方に来い!」
ブロッケントリードを包囲する様に、SF-Zooのタンク五人衆が五角星を作る位置取りを行い、振るわれる茨触手や地面の叩き上げによる衝撃派を食らいながらも、彼等彼女等は沈まない。
其の視線は真っ直ぐにブロッケントリードを捉え、構えた大盾とプレイヤー達から受け取ったバフによる強化に背を押され、あるスキルを……………シャンフロ内で現時点で確認されている物理防御スキルの『一つの臨界点』たる大技を繰り出す。
「スモーク!」
「了解だ!」
「来た、スモーク!」
「3、2、1……………今だ!せーのっ!」
「「「「「
因果積撃とは敵の攻撃を受ける事を是とした『
そして此のスキルの真髄は、其の『範囲』にこそ有り………何より戦闘開始からログアウトしても『戦闘状態が維持されている』という特性と、広範囲を巻き込むブロッケントリードに子竜を産み出すブライレイニェゴ、更には傷だらけの熱波の余波に巻き込まれたりと、此処に来るまでにかなりのダメージと戦闘時間が経過していた事も有り─────────
『ごぐぉおおお!?!?』
「ぐおわあああああ!!?」
「衝撃波強すぎぃいいい!」
「魔法でしょ、どう見ても!?」
「おにゃあーーーーーー!?!」
「タンク五号が吹っ飛んだーーーーーー!?!」
五点より放った絶大極まる衝撃波が、巨大なブロッケントリードを完全包囲して閉じ込め切る程度には、スキルエフェクトで出来た『壁』は巨大過ぎたのだ。
鈍重で速く動けないブロッケントリードは茨触手所か、自分自身さえ潰れてしまう様な感覚を抱き、当然ながら其の壁から発せられる反動も巨大極まる物であり。
「良くやったわ、皆!……………【
『な、ごぬぉ!?』
Animaliaが持つユニークウェポン・
「【ハイドロ・ブラスター】!!!」
『激流砲撃ッッッ!!!』
『ぐおぁ!?』
レーザーカジキとエルドランザが、持ち得る水属性魔法と大火力の放水攻撃をブロッケントリードにぶつけて行く。大地が水に濡れ、ブロッケントリードを水浸しにし、巨体の大部分が水気含んで行く。
「─────────で、こっからどう決めるの!?」
「実現杖の効果は『攻撃魔法が適用外』だけどねぇ。レーザーカジキ君と
ディープスローターは笑う、其の為の準備は出来ていると。
他の者達が稼いだ時間の中、レーザーカジキより教わった【
「万雷の如くってね……【
【加算詠唱】の効果を其のままに、使用者の次に放つ魔法の火力を高める魔法が発揮され、彼女の背中に在る
レイドモンスター・
「植物って『凍っちゃえば』止まるんだ。時間停止物の八割は大体『ヤラセ』らしいんだけどぉ……………、本物の時間停止ってこんな感じだよねぇ!─────────【クライスタガミー・フリーゼ】!!!」
四十倍、否、其れ以上に高められた氷結魔法が四十倍に増強された門に吸い込まれ。其の中で増大と乗算を一瞬で行われた事で放たれた魔法は、寒冷の極限たる『絶対零度』すら容易く越えて。
『な、なん』
バキン!!!という、瞬間冷凍じみた凍結がブロッケントリードを襲い、自分自身が凍ったという事すら認知する間もなく、ブロッケントリードの身体が一瞬の内に凍て付き、其の巨体の細胞一つに至るまで『凍結』し。
『規定魔術影響確認、条件達成』
『達成者プレイヤー名:ディープスローター』
『称号【
緑竜を……………其の近辺さえも氷河に変えた、魔術による絶大なる光景と共に、新たなる『極点』が此の日生まれ落ちたのだった。
絶対零度の氷結を