空の戦い
『クハハハハハハハ!ハーッハッハッハッハッハッハッハ!!!素晴らしい、素晴らしいぞ、ペッパー・
満月が浮かび夜空にて、赤い機鳥と青い機龍のコンビと、漆黒の黒竜と一人の忍者を相手取って尚も余裕の表情を見せる天覇のジークヴルムが、今宵一際大きな声と高まったテンションで空へと駆け上がる其の者の姿を見ていた。
『素晴らしい、実に素晴らしい!英雄は、英傑とは、まさに『至高の輝き』!嗚呼、そうとも!其れは『お前達』とて同じだ!赤き鳥を、青き龍を、ノワルリンドとエルドランザと共に戦う者も、俺にとって等しく『輝ける英雄』にして、そして『時代の英傑』に至り得る者ぞ!!フハハハハハハハハハハハハハハハ!』
『余所見をしてるなら寝首を掻くぞ、ジークヴルムがっ!?』
『無論、貴様からも目は放さぬよノワルリンド!俺を『超える』のだろう!?さぁ、掛かって来いッッッ!!!』
ノワルリンドの噛み付きを右腕差し込みで受け、左手ビンタで吹っ飛ばしながらジークヴルムが叫ぶ。
ジークヴルムにとって自分の威を恐れず、武器を手に立ちて牙を向き、対峙出来る者達は人だろうと獣だろうと、竜であろうとも遍く勇者だ。全力を以て倒し、全霊の一撃を以て沈めるべき相手である。
そして勇者の中でも一際輝き、他者を照らす強く眩き光を持つ者こそが、彼にとって来たる始源の胎動に抗う中で人々の希望と、英傑へと至り得る者と成り得るのだ。
「…………何かジークヴルムのテンションが滅茶苦茶高い」
「そうだね、ルスト。後視線からして『ペッパー』を見てるみたい」
「……………ジークヴルムの『ヘイト』が向いてる?」
「多分だけど」
「ジークヴルムを地上に落とそう」
「うん、やろう」
規格外戦術機鳥【
「秋津茜さん、ノワルリンドさん。今ペッパーにヘイトが向いてるから、ジークヴルムを地上に落とすよ」
「は、はい!」
『…………フン、良いだろう』
「ルスト、そろそろ青龍のエネルギーが不味い」
「此方も同じ。節約の為に『アレ』を使う。幸いペッパーがジークヴルムのパワードスーツ使ったから、心置き無く扱える」
より強い光にジークヴルムが惹かれているなら、其れを逆に利用する。戦術機鳥と戦術機龍を動かす規格外エーテルリアクターの残存エネルギーを加味して、決戦フェーズ開始前に彼から渡された『特殊戦術機竜ドラゴメン・対応パワードスーツ・専用リアクター・操作マニュアル』を駆使して戦う決断を下した二人は、空中で合体解除から装備を切り替える。
ドラゴン何たるかという王道のデザインからなるドラゴメンに、専用リアクターを空中で嵌め込み可動させれば、エナジーウイングと後ろ脚と各部ブースターが音を上げて動き、背中に乗りつつパワードスーツを纏って空を飛翔し、ジークヴルムと向かい合う。
『今度は何だ!?』
「わぁ、ジークヴルムさんみたいですね!」
「ペッパーが持ってるジークヴルムのパワードスーツ、其の量産品らしいという事くらいしか解らないんだけど………。でも此方の動きに支障は無いから、此のまま援護するよ」
ドラゴメンに乗り、サーフィンでもするかの様に飛ぶモルドと、ドラゴメンと合体してジークヴルムに突貫しながらビームを放つルスト、そして遅れる形で続くノワルリンドと秋津茜に、後方から黄金の輝きが追い着いた。
「すまない、遅れた!」
「ペッパーさん!」
『やっと来たか、ペッパーよ!ジークヴルムを地上に落とす!今奴の視線を集めている貴様と、あの羽虫達で隙を作れ!』
「任された!よろしく頼む、ノワルリンドさん!」
黄金は飛び出し、ジークヴルムの視界にペッパーが飛び込む。
其の右手には五つの星の力を宿せし、二つの宝玉を納めた朋友が創りし『聖剣』と、左手には同じく朋友が創っただろう『弩弓ながら剣という変わった武器』を握り締め、緋色の炎と白雲の羽衣を纏いながら飛んで来る姿で。
嘗ての日に見た神代の技術の結晶の再臨と、己が見定めた好敵手の到来に、ジークヴルムのテンションは更に昂り
『来たか、ペッパー・天津気よ!!』
「貴方と交わした約束を、今!
龍王を模した鎧と、其の鎧を量産化した戦術機達が飛び、黒竜と秋津茜が隙を伺いて、ジークヴルムがペッパーにヘイトを向けながらも周りにも目を向けている。
『だが其れで良い』……………光が強く眩しくなる程に、影もまたより強くなり、己が放つ光に紛れて他の者達が攻め込む空隙を作るのだ。
「はあっ!」
星帝剣グランシャリオが煌めき、ジークヴルムの翼膜の突風と爪の切り裂きを越えて、彼は太腿を通り様に斬り裂き飛んで行く。
白竜を倒すという行動、其れによってB.I.G.値が大幅に上昇した影響で、ジークヴルムのヘイトが一定時間向けられている事から『ジークヴルムの目を潰したり角を折ったりすれば、更にヘイトを稼げるのではないか?』という仮説が生まれ。
仮説の実証とノワルリンドの組み付きをさせるべく、ブースターを一気に吹かせて飛び上がったペッパーがジークヴルムの真上を取れば、ルストとモルドの視点からも『逆鱗』が見えた。
「おおおぁ!!」
『狙いは『俺の角』か!』
「貴方の角から放つ光は、スキルや魔法の封殺や分身にも関係する!前の戦いで宣言した『約束』を!貴方の角を圧し折ってみせる!!」
左側の角にグランシャリオの鋒で刺突を打ち込み、レディアント・ソルレイアでブーストを掛けた回転でノワルリンドとルストとモルドの位置を把握から、敢えてグランシャリオから手を離して柄尻を右手で押し込む事で空中に飛んで。
「モルド!」
「逆鱗!」
『ぐおっ!ほほぅ、僅かな隙を穿つとは!』
「いや、僕の狙いは『其れだけ』じゃ無いよ…………!」
グランシャリオが角に刺さり、ペッパーが生み出した僅かな隙を、モルドの狙撃が逆鱗付近に命中によってジークヴルムの視線がモルドに移った、其の瞬間。
『ジークヴルムゥウウウ!!!隙有りだァァァアアアアア!!!』
『ぬおおぉ─────────!!』
「ちょっ、これ私も巻き込まれわあぁああああ!?」
「ルスト、モルド、秋津茜を助けるよ!」
「状況変化が激しい………!」
「ルスト、速く!」
ジークヴルムの背後を取ったノワルリンドが羽交い締めから、ジャーマンスープレックスの要領で地上に落ちて行き、ノワルリンドの背中で悲鳴を上げた秋津茜を救うべく、ペッパー・ルスト・モルドもまた地上へと降りて行く。
戦場は空中より地上へ、決戦フェーズは更なる熱と勢いを増して、生きる生命体の全てに『己が輝きを見せよ』と問い掛けんとしている…………。
龍と竜に龍の擬きが落ちる