夜空より龍王落ちて
大地に黄金の龍王と漆黒の竜が落ちる。
一際大きな衝撃音と共に巻き上がった砂塵の中、ノワルリンドと友情を育み結んだ
「ぺ、ペッパーさん!」
「秋津茜、舌噛むから確り口を閉じるんだ!話はちゃんと聞くから!」
「は、はいっ!」
急ぎ飛んで雲の腕でキャッチし、地上に降下して秋津茜を降ろせば、砂塵が凄まじい風と圧により払われ、其処にはジークヴルムとノワルリンドが地に足を着けて相対していた。
『嗚呼、そうだ……そうだとも!人よ、我を超えるか?竜を討つか?もしくは異なる答えを見せるのか?ならば、また良し!其の輝きこそが我の…………俺の『幾星霜の答え』となる!遠き悠久の時より継がれ、流れし生命の潮流は、嘗て在りし神代を越えたのか──────否!人よ、お前達は『越えねばならん』のだ!!おぉ、
ジークヴルムが叫び、彼を中心に黄金の円はドームと化し、黄金の重力圏の全てに重なる様にして広がり。そして其の黄金のドームにより『弾かれるプレイヤーとNPC』と、『そうでない者達』に分け隔てられたのだ。
「B.I.G.値一定以下と以上で選別されたのか!」
『そうだ!此れより先は真の英雄、真の英傑に成り得る者のみが挑める領域ぞ!』
『死ねぇ、ジークヴルムッッッ!』
『フンッ!』
『ごぁあ!?』
「ノワルリンドさんッ!」
「援護する!」
組み付かんとしたノワルリンドを、ジークヴルムが逆にぶん投げて地面に叩き付ける様は、まさに『怪獣映画の一番盛り上がるシーン』と思わせる迫力だ。
そんな状況を目視しながらも秋津茜はノワルリンド援護に走り、ルストはモルドとの連携で攻め込む中でペッパーは右手にグランシャリオを持ち直し。
雲の指先でインベントリア操作を行いつつ、金龍王装のエナジーウイングとブースターで空を飛び、左手に握る
今のジークヴルムは『魔法に関する全てを無効化する能力』を発動しており、其の状態ではノワルリンドのブレスや秋津茜の忍術、ルストの魔法弓にモルドの様々なバフ魔法が発動不能となっている為、其れをスキルアタッカーが解除出来るかが『鍵』を握っていると見て良い。
「見せて貰うよ、ラピスさん!貴女が作った此の矢の力…………『
水晶蠍の矢───────其れは宝石匠が持つ宝石及び鉱石の加工技術を用いて、
相応の硬度と耐久性を持つが故に、アイテムながら至近距離での刺突武器として用いれるだけに留まらず、此の矢を弓から放たれた場合には『空気抵抗による威力減少と速度減衰が大幅に軽減される』という、シンプルながらも『射程距離と射速に対する強力な補正を持っている矢』だ。
ラピスは言った……………シャンフロに置ける弓使いや魔弓使いがあまり人気ではない理由の一つに、魔法職の様に手軽にポンポンと放てない点が有るのと、威力が保証されてても確り当たらなければ意味が無い点が、弓使い達の間では今尚『大きなネック』として横たわり続けているのだと。
弩弓剣という新武器がシャンフロに広まり、対人戦界隈の弓使い達にとって長らくの課題だった要素…………『
だが自分が宝石匠となり、弟子を育てる中で其の弟子が作った武器が、そんな弓使いや魔弓使い達の長らく伸し掛かり続けていた問題を解決する『最高の一手』となったのだと。
「ジークヴルムさんの魔法無効能力は、彼の『角』から発生している。スキル無効は角が『縦列』で発生した事を考えて、魔法無効は『横列』に関係する
ルストとモルド、秋津茜とノワルリンド、そして自分とジークヴルムの位置関係を見定めつつ、迷う事無くスキルを点火して左手首を捻って弩弓剣の弦を捻り、雲の指先から水晶蠍の矢を回転力を与えて射放つ。
『むおっ!?』
「長射程&大火力&高機動の三権分立は、ゲームの中じゃ一つの答えってね!」
ガズッ!という音を立てて、ジークヴルムの首筋付近に水晶群蠍の甲殻より作られた矢の穂先が突き刺さり、世界樹の如く分厚い首が衝撃に揺れて、明確に『怯み』という結果が四人と一匹に提示される。
ジークヴルムの黄金の巨体に浅く刺さったのは、水晶甲殻をより洗練して芯の部分を用いたからか、自分のスキルがクリティカルで入ったからか、或いはジークヴルムの身体の鱗と鱗の間に在る僅かな隙間を穿てたからか、はたまた僅かにしか刺さらないジークヴルム自身の肉体なのかは解らない。
『良くやった!オオオ!!』
『ぬぐっ!?』
「もう、一、発ッッッ!」
「此処だね!」
「撃ち、抜く…………!」
『ぐぬぅ、だが効かぁん!』
『ぐぉあ!?』
ノワルリンドがタックルを決め、ジークヴルムに組み付きから噛み付いて、其れを引き剥がさんと暴れる龍王の集中力を削る為、ペッパーとルストが弩弓剣で矢を放ち、モルドがリヴァイアサンでカスタマイズした狙撃銃で目元や頭部を叩く事で、秋津茜とノワルリンドを援護する。
其れでもジークヴルムは崩れない、ノワルリンドにヤクザキックを叩き込んで引き剥がしから、顔面に渾身の右ストレートを叩き込まんとした所へとペッパーが割って入り。
剣モードに戻したRE:Vil∀=TAMとグランシャリオを重ね合わせ、瞬間的なブーストを吹かせた出力を乗せた
「此のまま一気に…………いや違うッ!」
『逃がさんッ!』
そして直ぐ様離脱から、自前のスキルで空を駆け走り出した所で、ジークヴルムの左側の角二つが光り輝き、あの日の戦いで使用されたスキル封殺空間『
だがペッパーの狙いは、ジークヴルムに狂騒領域を
『ドラゴンブレスッ!』
「刃隠心得【
『おぉお!!』
魔力を封じる光が消えた事でノワルリンドの反撃の狼煙と言わんばかりの黒炎放射が、そして秋津茜の放つ鼠花火の如き小さな火球が空を走り、其の後に続く巨大な火の玉が飛んで行き、火球が破裂からの巨大火の玉が連動爆破による熱が放たれて、ジークヴルムの身体を焼く。
此の場に居る四人の中で見れば、秋津茜の火力は決して高いとは言えないが、ペッパー・ルスト・モルドの三人が隙を作り、ノワルリンドが体幹を崩す事で彼女の攻撃でもクリティカルが入る様に仕向けているのだ。
無論ジークヴルムの攻撃をタンクとして受けるノワルリンドへの負担は大きく、故にこそペッパーは雲の手腕でインベントリアから『進化した小鎚』を取り出す。
其れはユニーク小鎚三兄弟の中でリジェネとスリップダメージに秀でた進化を遂げた、ライダメイズブレイカー……………
「ペッパー!ウェポニアの者だけど、援護に来たよ!」
「ペッパーさん。午後十字軍の使いですがブロッケントリードは任せて下さいと、カローシスさんからの伝言です」
「同じくSF-Zooも
「ペッパー、大丈夫か?」
「あーくん、来たよー!」
「ペッパーはーん!」
「ペッパーさん!」
「契約者、問題有りませんか?」
『ワゥン!』
「皆さん!」
そんな中、ジークヴルムの放った黄金の波濤を乗り越え、此の戦場で輝いた者達がやって来て戦力として加わり、ジークヴルムを取り囲む様子を見ているノワルリンドは、鬱陶しそうな視線を向けつつ言う。
『ふん、ワラワラと湧いてきおってからに………。踏み潰したとて、文句を言えると思うなよ虫共め』
「でもノワルリンドさん、同じ相手と戦ってるんですから、あれですよ!『敵の敵は味方』で、えっと………『ごえつどーしゅー』ってやつです!!」
『む?………あぁ、そういう事か。上手く利用しろと』
「はい!でも皆さん、凄く強いですから!」
『………まぁ良い。邪魔立てせぬなら、我が爪牙の威には晒さぬとだけ言ってやろう。感謝するが良い』
秋津茜とノワルリンドの会話、圧倒的光属性の眩しさに身悶える者達も居れば、そんな光に当てられたノワルリンドのツンデレっぷりに驚きを隠せぬ者達も居て、そしてやはりジークヴルムの鎧を纏っているペッパーと其の量産品らしき鎧を纏う者達に注目している者達も居る。
ただ今の段階で、ノワルリンドに対する『敵意の感情』は少なからず霧散した様で、ペッパーが好機と声を上げた。
「皆、今のジークヴルムさんは『スキル封殺能力』を纏った状態に在る!魔法攻撃を持っているプレイヤーはジークヴルムさんへ攻撃を!そしてジークヴルムさんの魔法無効とスキル無効、そして分身生成は全てジークヴルムさんの『角の数と位置』が起因していて、最終的に残り一本まで減らせば『スキルと魔法無効は使えなくなる』可能性が有る!」
『クハハハハハハハ!よくぞ其処まで『見抜いた』!如何にも、我の能力の大半は『此の角』に起因する………人よ、英傑に至り得る者達よ!掛かって来るが良いッッッ!!!』
前回の単身での空中戦、そして今回の仲間達との協力による空中戦及び地上戦で、ジークヴルムの持ち得る能力が『角の残存数』に関係していると理解したからこその発言は、プレイヤーやNPC達に伝播していく。
其れを見たジークヴルムもまた獰猛なる笑みを浮かべつつ、背に在る四翼を広げた上で『取れる物なら取ってみよ』と、挑戦状を叩き付けたのである。
そしてほぼ同時に─────────
『緑竜ブロッケントリードの肉体が、生命の危機に根を巡らす』
『
ブロッケントリードが発狂モードに突入した事を報せるアナウンスとシステム画面だった。
此の戦いは、一人では無い