新章開幕。墓守のウェザエモン攻略へ向け、準備が始まる
鉛筆が語るは、永劫の墓守人
「ふぅ~…大変だったけど、充実した日に成ったなぁ……」
特殊クエストを攻略し、激動の一日を終えたペッパーはシャンフロからログアウト、現実へと戻った梓はVR機材を頭から外して大きく息を吐いた。
外は既に夕闇が帳を降ろして、肌寒さが残っていた風は夏へと向かう暑さが混じった物になり、季節は春から夏へ移ろうとしている。
「いやぁ、またとんでもない事になったわ…」
天覇のジークヴルムに名を覚えられ、彼を模倣したユニーク
現状スキルや魔法等を一切用いずに、ノーリスクで浮遊・飛翔・空中移動といったアクションが可能な一式装備は、地上系統のフィールドギミックやモンスターを全無視して、目的地に突き進む事が出来る。
もっと言えば、空中から『写真を撮影する』事が出来る様になるので、自分が居るエリアにはどんな物があり、採掘ポイントや敵のスポーン位置は何処か、最適なルートは何れなのかを導き出す事が容易になった。
古来より情報とは、其の時の状況により価値が変動する。戦局を覆し得る物には、多大な報酬が贈られる程で、スパイを送り込んでの収集も盛んに行われている訳だが。
「空中からの写真は、ライブラリに持っていったら買い取ってくれるだろうか?……いや、レディアントシリーズに気付くだろうから、絶対に駄目だ。
唯でさえ悪目立ちしてるのに、更に目立つ事になる。そうなったら俺のシャンフロライフは間違いなく崩壊して、最終手段のラビッツに雲隠れするしか無くなるわ」
『好奇心は猫をも殺す』という諺を思い出し、梓は己が浅はかな考えをした自分を罰する。と、彼のスマフォが『ピロリン♪』と、Eメールアプリに電子メールが1件着信して、其の内容を確認。
其所にはアーサー・ペンシルゴンことトワが、自分に送った『墓守のウェザエモン』に関する、とんでもない超機密事項満載の重大情報の数々だったのである………。
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件名:墓守のウェザエモンの事
from:鉛筆
to:胡椒
やぁやぁ、ペッパー君。ペンシルゴンお姉さんだよ~。今何処に居るのかな、君とたぁ~っぷりオハナシしたいんだけど、ログアウトしちゃったかな?
まぁ、後々でやるとしておいて…だ。取り敢えず…待たせたね。ユニークモンスター・墓守のウェザエモンの攻略について、詳細を伝えていこうと思うよ。
先ずウェザエモンとの戦闘に関して言うと、問題点が幾つもある。
1つ目、墓守のウェザエモンとの戦闘開始時に、参加プレイヤー及びNPCに対し『レベル上限を50にする』スキルが発動する。此れは
2つ目にウェザエモンが繰り出してくる技。私ともう1人の経験者が、今までウェザエモンと戦ってきた時に確認出来た技を下に記載しておくから、ちゃんと目を通しておいて。
3つ目が、戦闘開始から10分経過でウェザエモンが呼び出す『戦術騎馬・
コイツは広範囲にミサイルやレーザーを撒き散らしながら暴れ回った挙句、ウェザエモンに合流して『合体』する。万が一にでも其れを許したら、ウェザエモンはケンタウロスみたいな見た目に変化。スーパーアーマーと馬の機動力でゴリ押しされて、其の時点で私達は負ける事になる。
ウェザエモンはおそらく『時間経過』を勝利条件とする、特殊なユニークモンスターと見て間違いない。此の戦いは一発勝負、ウェザエモンと麒麟各々で担当を設けて、セッちゃんを困らせる頑固者のアイツをブン殴るよ。
其れと、前にラーメン屋で話したサンラク君だけど、彼フェアクソを攻略して5月初めにシャンフロを始められる事がメールで届いたんだ。カッツォ君の方にも来たから間違いないので、ペッパー君の暇が出来た日が在ったらサードレマで、オハナシしましょ?
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「オハナシって絶ッッッッッッ対、ジークヴルムさんの事についてだろ……。あの時は他のプレイヤーも来てたから、スクショ撮る可能性は有った訳だしなぁ……」
メールの文面から絶対にロクな事にならないと、嫌な顔をする梓。そして彼は、トワが此迄に戦い得てきたウェザエモンの技の数々に目を通していく。
「ウェザエモンの攻撃、何れも此れも回避必須の即死攻撃のオンパレード。レベル差150の強要って、まともに殴り合うつもりも無しってかい…」
レベル差とはゲームに於いて、絶望を演出するには十分な要素だ。圧倒的な力を見せ付け、心を減し折って、反逆の意志を奪い取る。嘗ての世界の海を船で渡り、数多の国で植民地支配を進めた、列強の国々のやり方に似ている。
「だが………雷鐘に関して見れば、レディアント・ソルレイアの電撃吸収能力が役に立つ。装甲貫通能力持ちじゃなければ、雷を吸収して飛翔エネルギーに変えられるし、入道雲と灰吹雪も上空に飛べば、問題無く回避出来る。
其れに灰吹雪は、上に留まる雲を攻撃発動前に吹き飛ばせれば、ワンチャンだけどキャンセル出来るんじゃないか?」
無論、ユニークモンスターとの戦いでユニーク遺機装を持ち込み、大暴れ等した日にはペンシルゴンに、あれやこれやのオハナシ案件が待ち構えている。
しかし彼女は、本気でウェザエモン攻略を狙っている。其の為の準備を着々と進め続け、攻略メンバーも揃えつつある。ならば、此方だけ手を抜く等という無粋な真似は、失礼の極みに他ならない。
自分に出来る事は、今の自分が作れるマッドネスブレイカーや他ユニークウェポン、他にも攻略に役立つだろう武器製作、武器の改修をビィラックに依頼して、其の時に備えて準備を整える事だろう。
「問題は断風…攻撃発生激速・ガード貫通のおまけ付き。コレは本番で、刀とウェザエモンの腕の長さから、射程距離を測るしか無い……か。
………其れにしても、頭を使い過ぎた。…返信メール送ったら、シャンフロの事から離れて、今日の夕飯作ろう……」
トワへの返信として『攻略に役立つか解らないが、麒麟に効果が出せる武器を造れるかも知れない。作って欲しい武器のオーダーが有れば、聞いておくよ』と文章を綴り終え、梓は夕食の調理に取り掛かったのだった……。
レベル差150は、ステータスによる暴力の極み