VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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状況流転




龍よ!人よ!生命達よ! 〜其の二十六〜

「ノワルリンドッッッ!」

「ノワルリンドさん!!!!」

 

ジークヴルムの放った灼滅威吹(ブレス・オブ・ベイン)から秋津茜(アキツアカネ)とペッパーに、次いでに他多数を守って真正面から攻撃を受け止め。

 

吹き飛んでプレイヤーやNPCを巻き込み地面を転がったノワルリンドに、空からペッパーが地上では秋津茜が全力疾走で彼に近付いた。

 

『ぐ、がっ…………』

「ノ、ノワルリンドさん…………」

「生きる事を諦めるな、ノワルリンド!回復ポーションを使う、秋津茜も手伝って!」

「は、はいっ!」

 

封熱の撃鉄(ニッショウトリガー)(スペリオル)を切って、グランシャリオを鞘に納めてRE:Vil∀=TAM(リ・ヴィア=タン)双極撃銃斧(パラボラル・ガナックス)と共にインベントリアに収納し、入れ替わるように回復ポーションを次々取り出しては、ノワルリンドの受けた胸部の傷を癒し倒す勢いで使い潰していく。

 

『ごぉ………、ぐ…………ッ…………』

「死なせない、絶対に貴方を死なせたりしないっ………!」

「ノワルリンドさん、頑張って下さい………!」

 

致命傷では無いが、一目で瀕死に近いと解るダメージ量。此処までジークヴルムの攻撃に晒されてきたノワルリンドは、既に限界が近く……………そして灼滅威吹によって満身創痍まで追い込まれた。

 

其の様子はプレイヤー達にある感情を抱かせ、感情は言葉となって発露する。

 

 

 

────────チャンスなのではないか?

────────ヤツはクリア条件の一体

────────今なら倒せる

────────千載一遇の好機だ

────────ノワルリンドを潰せ

 

 

 

秋津茜の思考が警鐘を鳴らし、ペッパーは持ち得る回復ポーションから一部を残してインベントリアから取り出し、彼女に譲渡しながら言う。

 

「俺が彼等彼女等を止める。秋津茜はノワルリンドさんの回復と、彼の傍に居てやってくれ」

「ペ、ペッパーさん…………」

 

唯其の言葉を述べて、ペッパーがノワルリンドを倒さんと躙り寄る者達の前に躍り出て、勇者は盾を取りて力強く声を発する。

 

「聞けッ!此の骸の大地に立ちし、数多の知恵を持つ生きとし生きる全ての者よ!ノワルリンドに復讐せんと牙を見せんとする剛の者よ!ノワルリンドを討ちたければ、先ずは俺を踏み越えて行け!此方も全力で抵抗させて貰うがなッ!!!」

 

龍王の威を纏い、シャンフロという世界で数多の偉業を成した勇者の叫びが、此の場に立つ者達に響き轟く中、其の手に勇者の盾たるイーディスは手に取られ、美しい鏡面が者共を写し出す。

 

パワードスーツの頭部の双眼の奥に宿る人の眼が睨み、胸部のエネルギー生成装置から溢れるエナジーが蒸気の如く揺らぎ、有象無象を圧倒する様はリュカオーンの愛呪(寵愛)による影響も有ってか、其の凄まじさに拍車が掛かり。

 

『グルルルルルルルルルルルルルルルルル…………!!!』

「ペッパーはんを倒しても、ワイ等も居るのさ!」

「ペッパーさん一人に背負わせないよ」

「拙者も居るで御座る!」

「サンラクさんが来るまで、やってやりますわ!」

契約者(マスター)、何なりと御命令を。一切の躊躇無く、敵を排除します」

「やぁやぁ、あーくん。堂々と言い切ったねぇ!ヒューヒュー!」

肯定(だねー!):かっくいー!」

「茶化すな、ペンシルゴン。…………気乗りはしないが、私も相手になるぞ?」

「あ、えっと…………俺も居るぞ!」

「私も居るよー」

「其の、私も…………居ます」

『ヴルルルル………!』

 

リュカオーンの分け身のノワ、ヴォーパルバニーのアイトゥイル・ディアレ・シークルゥ・エムル、征服人形(コンキスタ・ドール)のカルネ=ヒトミ(103)、カレドヴルッフを振るうアーサー・ペンシルゴンにリリエル=ニーナ(217)とひょっこり顔を見せたゼッタ、エクスカリバーを抜剣しているサイガ-100とフェイルノートを握る草餅(くさもち)

 

そしてアスクレピオスを見せる火酒夏(カシューナッツ)緋鹿毛楯無(ひかげたてなし)に跨る最大火力(アタックホルダー)のサイガ-0と、其の背中に隠れたヴォーパルバニーのエクシスと爆走猪(スロットルボア)の瓜坊・ウォットホッグに征服人形のレイカ=イクサ(193)を含めた、沢山のプレイヤー達が肉の壁として立ち塞がり、ノワルリンドと秋津茜を囲う様にして討伐派の面々を遮り。

 

「悪いなプレイヤー諸君、こっからはイベントシーンだぜ」

「聖女様の御前だ、武器を下ろせ!!」

「邪魔はさせん!」

契約者(マスター)、命令を。インテリジェンスに撃滅してみせましょう」

 

其処に到着するは、黄金で荘厳なる装備を纏って身の丈程有る奇妙な棒を握る最大速度(スピードホルダー)のサンラクと、純白の鎧に純白の盾を握りし最大防御(ディフェンスホルダー)のジョゼット。

 

瑠璃色肌の鉱人族(ドワーフ)に改宗した、ムジョルニアを腰に吊るすシャンフロ最高峰の名匠及び古匠鍛冶師のイムロンに、特殊戦術機竜とパワードスーツを纏いし征服人形のエルマ=サイナ(317)、其の四方に護られた中心で慈愛の聖女イリステラが、ペッパー達の側として防衛網へと加わったのだ。

 

「聖女様の為、悉くを妨げるモノを弾く!其れこそが我等が聖盾輝士団の務めッ!今より此の場において、何人たりともノワルリンドに手を出す事、叶わぬと知るが良い!!」

 

ジョゼットの号令を元に、聖盾輝士団団員達が前に出る。同一規格の同一装備によって一致団結の意向を示す、シャンフロ内でロールプレイガチ勢クランによる一体感は、ノワルリンドを擁護する者達の心強い味方となり、敵対する者達には越え難き分厚い壁となりて立ち塞がった。

 

「み、皆さん…………!」

「おぅ、秋津茜。確り前を向け、ジークヴルムとの戦いは此処からだ。お前や其処の黒いの含めて、キリキリ働いて貰わねーとな」

「あ、えと、其の…………」

「───────少し、よろしいでしょうか?」

「ふえっ!?あ、はい!」

「申し訳有りません。彼の方へ………黒き竜へ少々問いたい事が有るのです………」

「え、えと、ノワルリンドさんに………ですか?は、はい…………どうぞ………」

 

凛としながらも、神々しき気配を纏い…………だが同時に、彼女を邪魔してはならないと、彼女に逆らってはならないと、そんな得体の知れない雰囲気に気圧された様に、秋津茜が横に逸れる。

 

「黒竜ノワルリンド。天覇のジークヴルムに()()、其の手を伸ばす者よ。………御聞きしても宜しいでしょうか?

『ぐ、ぉ………む………ッ…………』

「言葉は必要有りません。ただ、貴方の『心のままに』。………其れだけで、私には『通じます』から」

 

満身創痍地に伏せども闘志は折れずに消えず、イリステラを睨み付けるノワルリンド。他のプレイヤーの動向に目を光らせる者達の中で、ノワルリンドとイリステラの話を聞く事が出来たのは、ノワルリンドの近くに居た秋津茜とヴォーパルバニー達のみで。

 

戦場に沈黙が訪れ、其の果てにイリステラが『決意を固めた』様に片手をノワルリンドに翳し、其の唇で言葉を紡ぐ。

 

「──────どうか、どうか。今一度立ち上がって。傷付き倒れた其の身体、今再び戦う力を………【事実改変(オモウガママニ)】」

『うぉ、オオオオオ、オオオオオオオオオッ……………!!!』

 

イリステラの掌から光が溢れ、奔流の如くノワルリンドへと流れ込む。まるで『録画した建築映像を早送りで見せられているかの様な光景』と共に、満身創痍だったノワルリンドのダメージは『最初から無かった』という()()でも見ているかの様に、万全の状態まで()()()()()()()黒竜が力強く、再び大地に立ち上がる。

 

「貴方の()()、確かに私が聞き届けました。──────どうか御武運を」

『フン…………元より『其のつもり』だ。我はジークヴルムを倒す!そして此のノワルリンドこそが、唯一絶対の『真なる竜王』たる事を此処に証明するッ!!』

 

翼を広げ、ノワルリンドはジークヴルムを睨む。己の願いを叶える為に、もう遅れは取らないと宣言するが如く在る。

 

「ノワルリンドさん! えと、治ったんですか!?」

『何を突っ立っている秋津茜よ!貴様………此のノワルリンドと共にジークヴルムを討つならば、無様を晒すで無いぞ!』

「は、はいっ!げんこつさんかい?で、頑張ります!」

 

粉骨砕身とツッコミするべきかと思ったが、直後に膨れ上がった威圧がプレイヤーにNPCの視線を向かせる。其処に居たのはやはりジークヴルムで、其の龍の双眼はノワルリンドを見た後にイリステラを見ていた。

 

『………ほう、貴様。…………いいや、()()生きるならば『多くは問わぬ』。だが………俺の前に立つか?』

「偉大なる黄金の龍王。人を『愛するが故に』世界を焼く者よ。こんな私とて、唯()()()()立つ事は出来ますから」

『………そうか。今宵は本当に『善き日』だ。長く永く、そして遠く、幾星霜の悉くが満たされていく。ならば─────!我が灼滅の前に立つので在れば、其の悉くは『灰燼すら遺らぬ』と知るが良いッッッ!!』

 

ジークヴルムが宣言し、翼を広げて夜空に黄金を満たす。睨み付け立つ………そんな至極単純な姿でさえも、凄まじい威圧が放たれて、更に強く重く身体に伸し掛かる。

 

プレイヤーやNPCの大多数がヘタれたり後退り、巻き込まれぬ様にと下がりて逃げ出す中、勇者武器持ちや一部プレイヤーにNPCはジークヴルムを前に、怯む所か逆に睨み返す。

 

「嗚呼、どうしましょう。私、死んでしまうかも………?」

「いいえ、いいえ聖女様。………此の私が貴方の前に立つ限り、如何なる滅びも厄災さえも。貴女を傷付け、そして穢す事は決して叶わぬと。黄金の龍王に、天覇のジークヴルムに証明して見せましょう」

 

最大防御を冠せしシャンフロプレイヤー最強の防御を持つ、騎士系職聖騎士派生の最上位職業:聖輝士(パラディオン)が、プレイヤーやNPC達の誰よりも前に進み出て。

 

ジークヴルムへ其の矜持を示すべく、立ち塞がったのだった。

 

 






輝士は立つ


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