いざ征かん
『全く、妾とて地上を往くは得手では無いのだぞ!』
「でもジークヴルムさん達は内陸で戦ってますから、最短距離で向かうには地上を進まないとですから!」
緑竜ブロッケントリードとの戦いを、青竜エルドランザにドラクルス・ディノサーベラス"
多くの者が地を蹴り走り前へ前へと進む中、地上を前鰭で地を掻きて巨体を進むエルドランザはゆっくりと、しかし下手な機動系ステータスのプレイヤーや機動力に秀でたNPC達を安々と抜かしていく様は、流石レイドボスの能力値を持つ色竜の一体と言えるだろう。
『黄金や黒は倒れとらんだろうが、老害相手に手を使わされたわ』
「ですね…………。でも、エルドランザさんが協力してくれていなかったら、もっと時間が掛かってましたし、本当にありがとうございます!」
『……………フン。兎に角、此の戦いが終われば美味い魚を馳走する事、決して忘れるなよ?』
「はいっ!任せて下さい!」
改めて釘を刺す様に宣ったエルドランザに、レーザーカジキは力強く言葉を返した。緑竜を討ち取りし者達が、ジークヴルムが立つ戦場へ到着するまで、後少し───────。
「──────我が血潮は熱く燃える」
「っ、此れは…………!」
ジークヴルムとジョゼットの間に炎のラインが、古き世界の戦場でも見掛けられる『一本道での決闘』が如く引かれ、同時に陽炎が浮かぶ程の熱量を帯びて、軈て其れは『人の形』を作り上げる。
兜を被り、マントを靡かせ、腰と頭に脚のみに防具を纏うスパルタの戦士達は、其の手に火炎の剣を、火炎の槍を、火炎の盾を持ち、一致団結のファランクス体勢となって、ジークヴルムを阻む『門』となった。
『
「
始源を屠り滅せしジークヴルムの灼熱のレーザーブレスと、右手を掲げてシャンフロの魔術の極致たる門魔法を使用したジョゼットが、互いの持ち得る力を以て激突する。
天覇の威吹がファランクスを崩し、されど其れ以上の速度で武器が飛び出しては、其の威吹を真正面から受け止め、押し込み、そして門魔法の発動者たるジョゼットの額に汗が一筋伝っている事からも、ジークヴルムの攻撃の重さを物語るには充分であった。
「…………いけそう?」
「無論ッ!例えユニークモンスター、何する物ぞ……………!」
物理型のタンクとしての最高峰がSF-Zooのタンク五人衆であるならば、ジョゼットは魔法による防御で前線とイリステラを守る
自分の背に守るべき者が、イリステラが居る………彼女と出逢って、彼女を守護する事がシャンフロプレイの原動力となり、自分と志を共にする同志を集めて結成したクラン:
其の団長として、時に不届きなプレイヤーやNPCから彼女を守り、巡礼の旅路でモンスターから守る為に磨き続けた防御魔法、其の極致たる門魔法はジークヴルムの灼滅の威吹を前に屈する事は無く、イリステラに心配を掛けさせぬと決意は揺るがず。
「スゥッ……………!聖女ちゃん、サイッッッコーーーーーーー!!!」
「「「「掛け声、其れで良いのかよ!?!」」」」
気合を入れて、ロールプレイとは異なる『地声』で高らかに叫べば、プレイヤー達からツッコミが入る。そんな中、一気呵成の戦士の火炎が力を増して、息継ぎ無しで放ち続ける灼滅の炎は勢いを弱め。
『ぬっ……………!?』
「此の魔法は…………カウンター魔法だぁああああああああ!!!」
『クハハ、ぬぉあ!?!』
其の熱量を真正面から受けたジークヴルムは、其れを誇らしく笑いながらも、しかし予想以上の威力によって黄金の巨体が浮かされ吹き飛び、此の決戦フェーズで初めて背中から『青天井に転ばされた』のだ。
「おぉぉ!?」
「やべーぞ、吹っ飛んだ!?」
「凄い………!」
「ぐぇえ…………暫く、回復しないから、後、頼んだ〜………。滅茶苦茶ダルぃい…………」
「今だ!此処でジークヴルムを削るぞ!」
渾身の門魔法、体力がミリまで削れたジョゼットが気怠い表情で地面に倒れる。此の好機を逃さぬとサイガ-100の一声をトリガーに、プレイヤーにNPCが動き出す。
「グッジョブ、ジョゼット!こりゃ俺も活躍しなきゃ、立つ瀬がねぇよな!?エムル!サイナ!持ち得るもん全部使って、ジークヴルムにカチコミ駆けるぞ!」
「了解:」
「はいなっ!私もやってやりますわ〜!」
「ありがとうございます、ジョゼットさん。貴女の頑張り、絶対に無駄にしません」
「がんばえ〜…………」
サンラクが、ペッパーが。ジョゼットに礼を述べて、パーティーメンバーと共にジークヴルムへと向かって行く。他のプレイヤー達もまたジークヴルムに向かう中、ノワルリンドと共に戦う
「あ、あの、ジョゼットさん!ノワルリンドさん達を守ってくれて、ありがとうございました!頑張りますッ!」
「おうふ!?が………、頑張って〜…………」
『秋津茜!出遅れるぞ、早うせい!』
「はい!今行きます!」
純粋で混じり気の無い礼を述べた彼女にジョゼットの表情はネチョクなり、そして其のままノワルリンドと共にジークヴルムへと挑んで行った。
熱血門は『プレイヤーのステータスを捧げて発動され』、捧げた数値によってはジークヴルムのブレスを真っ向から跳ね返す程の力を持つが、其の代償として『発動時間に比例して体力の回復が始まらず』、更には『捧げた分の経験値が
「門を開いた代償と、彼女の笑顔………収支はプラスだぁ〜…………」
「御疲れ様、ジョゼット」
「ぽひょ!?せ、聖女様………?」
「貴女の決意を私は否定出来ない…………。熱き炎血の門を開いた代償を消す事は出来ないけれど、御礼をさせて下さい」
「ほわぁ〜…………黒字も黒字、大黒字だぁ〜………!」
そっちのケ、其れもガチなジョゼットにとって、守るべき対象からの御褒美というべき『膝枕』は、此の瞬間はたった一人の独占状態というシチュエーションを含め、彼女を天国に誘うかの様な空間だった…………。
(嗚呼、素晴らしい。実に善い、凄まじい………)
ジョゼットのカウンター魔法によって吹き飛び、青天井を向かされたジークヴルムは、倒れた大地からのっそりと起き上がりながら、そんな想いを抱いていた。
一人一人の輝き、道を極めに究めた果ての頂点への到達、そして頂点の到達者が放つ栄光………、其の全てがジークヴルムにとって誇らしい物だった。
(おぉ
もしも『願い』が叶うならば…………彼等の、彼女等の『輝き』を、其の先に在る『未来』を此の眼で見ていたい。
だがジークヴルムは決めている──────自分は彼等彼女等の前に在りし山であり、そして越えるべき壁であり、そして立ち塞がる門なのだと。
神代の人類が始源に敗れ、滅び去った『あの日』から。過ぎ去った悠久の年月より己の意義と、存在理由を見出した自分は、決して揺らぐ事は無いのだと。
「ようジークヴルム、ノッてるか?」
「ジークヴルムさん、来ましたよ」
『ほう、貴様は狼傷の………、否、其の威風………我が盟友が言うた食客、確か『エンラク』………いや『ボウラク』、だったか。そしてペッパー・
「サンラクだ、ジークヴルム。後、俺は何時だって
「ジョゼットさんはホルダーとしての力を見せた。なら俺もホルダー持ちとして、己の力を全開で擲つ
奇妙な棒としか見えないながらも、神代の鍛冶技術の粋を集めて造られた
『ほぅ………?
「片や『
「俺達は『先生に背中を押して貰った』。ならば其の思いに応える、其れが『
アレ程の業物、其れを造れる鍛冶師は此の世に『数人』と居ない。強いて言うならば、其の武器の纏う『気配』をジークヴルムは知るが故に、作り手が誰なのかをハッキリと『知覚出来た』。
「俺は軽く叩かれるだけで普通に死ぬが、
「貴方と相対と敗れた日より、俺の心に灯った決意は
『……………ハハハ、フハハハハハハハハ!!クハハハハハハハ!!!おぉ、おぉ!よくぞ『其の名』をほざいた!!ならばサンラク!ペッパー・天津気!貴様等が宣った
夜闇纏う狼王の傷と、寵愛を纏う二つの戦士が肩を並べ立ち、天を覇す黄金覇龍もまた堂々と宣言する。
両雄待った無し、此れより其の輝きは深みと熱さと勢いを帯びる。
テンションをブチ上げろ