VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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いざ征かん




龍よ!人よ!生命達よ! 〜其の二十七〜

『全く、妾とて地上を往くは得手では無いのだぞ!』

「でもジークヴルムさん達は内陸で戦ってますから、最短距離で向かうには地上を進まないとですから!」

 

緑竜ブロッケントリードとの戦いを、青竜エルドランザにドラクルス・ディノサーベラス"傷だらけ(スカー)"と共に乗り越えた者達は、休む事を早々に切り上げてジークヴルムとの戦いに向かっていた。

 

多くの者が地を蹴り走り前へ前へと進む中、地上を前鰭で地を掻きて巨体を進むエルドランザはゆっくりと、しかし下手な機動系ステータスのプレイヤーや機動力に秀でたNPC達を安々と抜かしていく様は、流石レイドボスの能力値を持つ色竜の一体と言えるだろう。

 

『黄金や黒は倒れとらんだろうが、老害相手に手を使わされたわ』

「ですね…………。でも、エルドランザさんが協力してくれていなかったら、もっと時間が掛かってましたし、本当にありがとうございます!」

『……………フン。兎に角、此の戦いが終われば美味い魚を馳走する事、決して忘れるなよ?』

「はいっ!任せて下さい!」

 

改めて釘を刺す様に宣ったエルドランザに、レーザーカジキは力強く言葉を返した。緑竜を討ち取りし者達が、ジークヴルムが立つ戦場へ到着するまで、後少し───────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────我が血潮は熱く燃える」

「っ、此れは…………!」

 

最大防御(ディフェンスホルダー)のジョゼットが述べた、たった其れだけの言葉(ワード)…………其の言葉一つのみでフィールドが変わる。

 

ジークヴルムとジョゼットの間に炎のラインが、古き世界の戦場でも見掛けられる『一本道での決闘』が如く引かれ、同時に陽炎が浮かぶ程の熱量を帯びて、軈て其れは『人の形』を作り上げる。

 

兜を被り、マントを靡かせ、腰と頭に脚のみに防具を纏うスパルタの戦士達は、其の手に火炎の剣を、火炎の槍を、火炎の盾を持ち、一致団結のファランクス体勢となって、ジークヴルムを阻む『門』となった。

 

灼滅息吹(ブレス・オブ・ベイン)ッッッ!!!』

開門(来たりて取れ)……………【熱血門(テルモピュライ)】!!!」

 

始源を屠り滅せしジークヴルムの灼熱のレーザーブレスと、右手を掲げてシャンフロの魔術の極致たる門魔法を使用したジョゼットが、互いの持ち得る力を以て激突する。

 

天覇の威吹がファランクスを崩し、されど其れ以上の速度で武器が飛び出しては、其の威吹を真正面から受け止め、押し込み、そして門魔法の発動者たるジョゼットの額に汗が一筋伝っている事からも、ジークヴルムの攻撃の重さを物語るには充分であった。

 

「…………いけそう?」

「無論ッ!例えユニークモンスター、何する物ぞ……………!」

 

物理型のタンクとしての最高峰がSF-Zooのタンク五人衆であるならば、ジョゼットは魔法による防御で前線とイリステラを守る魔法型(マギア)タンクだ。

 

自分の背に守るべき者が、イリステラが居る………彼女と出逢って、彼女を守護する事がシャンフロプレイの原動力となり、自分と志を共にする同志を集めて結成したクラン:聖盾輝士団(聖女ちゃん親衛隊)

 

其の団長として、時に不届きなプレイヤーやNPCから彼女を守り、巡礼の旅路でモンスターから守る為に磨き続けた防御魔法、其の極致たる門魔法はジークヴルムの灼滅の威吹を前に屈する事は無く、イリステラに心配を掛けさせぬと決意は揺るがず。

 

「スゥッ……………!聖女ちゃん、サイッッッコーーーーーーー!!!」

「「「「掛け声、其れで良いのかよ!?!」」」」

 

気合を入れて、ロールプレイとは異なる『地声』で高らかに叫べば、プレイヤー達からツッコミが入る。そんな中、一気呵成の戦士の火炎が力を増して、息継ぎ無しで放ち続ける灼滅の炎は勢いを弱め。

 

『ぬっ……………!?』

「此の魔法は…………カウンター魔法だぁああああああああ!!!」

『クハハ、ぬぉあ!?!』

 

盾を壁とし突貫する(シールドチャージ)を彷彿とさせる、渦を巻きて爆ぜ奔る炎がジークヴルムのブレスを押し返し。

 

其の熱量を真正面から受けたジークヴルムは、其れを誇らしく笑いながらも、しかし予想以上の威力によって黄金の巨体が浮かされ吹き飛び、此の決戦フェーズで初めて背中から『青天井に転ばされた』のだ。

 

「おぉぉ!?」

「やべーぞ、吹っ飛んだ!?」

「凄い………!」

「ぐぇえ…………暫く、回復しないから、後、頼んだ〜………。滅茶苦茶ダルぃい…………」

「今だ!此処でジークヴルムを削るぞ!」

 

渾身の門魔法、体力がミリまで削れたジョゼットが気怠い表情で地面に倒れる。此の好機を逃さぬとサイガ-100の一声をトリガーに、プレイヤーにNPCが動き出す。

 

「グッジョブ、ジョゼット!こりゃ俺も活躍しなきゃ、立つ瀬がねぇよな!?エムル!サイナ!持ち得るもん全部使って、ジークヴルムにカチコミ駆けるぞ!」

「了解:」

「はいなっ!私もやってやりますわ〜!」

「ありがとうございます、ジョゼットさん。貴女の頑張り、絶対に無駄にしません」

「がんばえ〜…………」

 

サンラクが、ペッパーが。ジョゼットに礼を述べて、パーティーメンバーと共にジークヴルムへと向かって行く。他のプレイヤー達もまたジークヴルムに向かう中、ノワルリンドと共に戦う秋津茜(アキツアカネ)がジョゼットに走り寄り。

 

「あ、あの、ジョゼットさん!ノワルリンドさん達を守ってくれて、ありがとうございました!頑張りますッ!」

「おうふ!?が………、頑張って〜…………」

『秋津茜!出遅れるぞ、早うせい!』

「はい!今行きます!」

 

純粋で混じり気の無い礼を述べた彼女にジョゼットの表情はネチョクなり、そして其のままノワルリンドと共にジークヴルムへと挑んで行った。

 

熱血門は『プレイヤーのステータスを捧げて発動され』、捧げた数値によってはジークヴルムのブレスを真っ向から跳ね返す程の力を持つが、其の代償として『発動時間に比例して体力の回復が始まらず』、更には『捧げた分の経験値が赤字(デバフ)として計算され、其の数値をゼロにするまでは決してレベルアップしない状態』になる。

 

「門を開いた代償と、彼女の笑顔………収支はプラスだぁ〜…………」

「御疲れ様、ジョゼット」

「ぽひょ!?せ、聖女様………?」

「貴女の決意を私は否定出来ない…………。熱き炎血の門を開いた代償を消す事は出来ないけれど、御礼をさせて下さい」

「ほわぁ〜…………黒字も黒字、大黒字だぁ〜………!」

 

そっちのケ、其れもガチなジョゼットにとって、守るべき対象からの御褒美というべき『膝枕』は、此の瞬間はたった一人の独占状態というシチュエーションを含め、彼女を天国に誘うかの様な空間だった…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(嗚呼、素晴らしい。実に善い、凄まじい………)

 

ジョゼットのカウンター魔法によって吹き飛び、青天井を向かされたジークヴルムは、倒れた大地からのっそりと起き上がりながら、そんな想いを抱いていた。

 

一人一人の輝き、道を極めに究めた果ての頂点への到達、そして頂点の到達者が放つ栄光………、其の全てがジークヴルムにとって誇らしい物だった。

 

(おぉ親友(とも)よ………。小さき朋友達(ともたち)よ………。此の世界に産まれ落ちた者達と、遍く広がり拓く者達は此程までに『強き光』を宿しているぞ)

 

もしも『願い』が叶うならば…………彼等の、彼女等の『輝き』を、其の先に在る『未来』を此の眼で見ていたい。

 

だがジークヴルムは決めている──────自分は彼等彼女等の前に在りし山であり、そして越えるべき壁であり、そして立ち塞がる門なのだと。

 

神代の人類が始源に敗れ、滅び去った『あの日』から。過ぎ去った悠久の年月より己の意義と、存在理由を見出した自分は、決して揺らぐ事は無いのだと。

 

「ようジークヴルム、ノッてるか?」

「ジークヴルムさん、来ましたよ」

『ほう、貴様は狼傷の………、否、其の威風………我が盟友が言うた食客、確か『エンラク』………いや『ボウラク』、だったか。そしてペッパー・天津気(アマツキ)…………、ふむ………。ククク、成程な………どうやら『本気』と言う訳か』

「サンラクだ、ジークヴルム。後、俺は何時だって()()さ。強いて言うなら、何時だって()()だ。今在る全部を使って、お前をブッ飛ばしてやるよ」

「ジョゼットさんはホルダーとしての力を見せた。なら俺もホルダー持ちとして、己の力を全開で擲つ()()を貴方に見せる」

 

奇妙な棒としか見えないながらも、神代の鍛冶技術の粋を集めて造られた機装(デバイス)の柄尻を地面に立てたサンラクと、インベントリアより取り出して地面に機装の刃の鋒を突き刺しつつ、ペッパーがジークヴルムを見上げて言う。

 

『ほぅ………?()()()()()()()()で、か?』

「片や『百足式(ムカデシキ) 8-0.5(タウゼント)』、片や『鯱弩燈剣(シャドウコウケン) RE:Vil∀=TAM(リ・ヴィア=タン)』………()()()()()()、アンタなら『心当たり』は有るんじゃねーか?」

「俺達は『先生に背中を押して貰った』。ならば其の思いに応える、其れが『(イキ)』って物ですから」

 

アレ程の業物、其れを造れる鍛冶師は此の世に『数人』と居ない。強いて言うならば、其の武器の纏う『気配』をジークヴルムは知るが故に、作り手が誰なのかをハッキリと『知覚出来た』。

 

「俺は軽く叩かれるだけで普通に死ぬが、炉心(ココロ)情熱(モチベーション)()()の焔が残る限り、何度だって立ち上がる、立ち上がれるのさ。天覇のジークヴルム、お前を倒すまでな。………死ぬ気で掛かって来やがれ、俺は最初から其のつもりだぜ!!」

「貴方と相対と敗れた日より、俺の心に灯った決意は()()となり、そしてあの日から強くなった…………貴方を越える為に、貴方と交わした約束を守り徹す為に。其の約束を、今此処で果たします!御覚悟を…………、天覇のジークヴルムッッッ!!!」

『……………ハハハ、フハハハハハハハハ!!クハハハハハハハ!!!おぉ、おぉ!よくぞ『其の名』をほざいた!!ならばサンラク!ペッパー・天津気!貴様等が宣った()()とやら、俺の全身全霊と全力全開を以って燼滅してくれよう!!!見るが良い………、()()たる俺の持つ機能(チカラ)───────『龍王機関(Dragon×Driver)』を!!!』

 

夜闇纏う狼王の傷と、寵愛を纏う二つの戦士が肩を並べ立ち、天を覇す黄金覇龍もまた堂々と宣言する。

 

両雄待った無し、此れより其の輝きは深みと熱さと勢いを帯びる。

 

 






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