絶望の中の希望
「ありゃ、負けちまったか………」
「此処まで、ですね」
ノワルリンド討伐の要、或いは切札として用意していた装骨天守スカルアヅチ。其れがアヴァランチをトップに据える
即ち此処からどう足掻いても、彼等彼女等のノワルリンド討伐という可能性は塵の一欠片程、砂漠の中で一粒の砂金を見付け出す事に等しいレベルの、極悪難易度のゲームをさせられる事に等しいのだから。
「さて………どうするよ、盟主殿?」
「そう………ですね。流石に此処まで徹底的にやられたら、悔しさ以上に御見事と、賞賛以外に言葉が有りませんね」
「だろうなぁ……。いやー、流石にメタられ過ぎた!参った参った、ハッハッハ」
「…………其の割には楽しそうですね、
「そりゃあ、まだシナリオは終わってないしな」
そう、例えノワルリンドの討伐が最早叶わぬ願いだとしても、シナリオ自体は未だ終わっていない。
何よりジークヴルムが『六体の分身を加えて七体になった』という光景は、建築職最上位職:大棟梁の笑みリアに、天ぷら騎士団団長の天首領からしても『ヤバい』と判る程度には、状況が逼迫の渦中に在ると確信していた。
「おぉ、居たで御座る!御主等、ノワルリンド討伐派の諸君で御座るな?」
そんな折、笑みリアや天首領含むノワルリンド討伐派の面々の前に音も無く現れた影一つ。日本に伝わる忍装束に其の身を包み、背中に忍者刀を背負った一羽のヴォーパルバニーが居たのだ。
「えっ、ヴォーパルバニー………?!」
「しかも喋ってる………!」
「忍者装束だ!」
「かっけぇな…………」
「拙者エストマと申す者。そちらの派閥の頭へ『書状』を渡しに、遥々馳せ参じたで御座るよ」
「書状、ですか?」
コクリと頷いたエストマが、シュタタタと近付いて綺麗に折り畳まれた書状を笑みリアへ手渡し。木枯らしが吹き荒れたと思えば、彼等彼女等の前から何時の間にか消えてしまった。
書状の裏には名は無く差出人は未明であり、ハラリと開いて文章に目を通し。其処には『ジークヴルムに関する秘密』が書かれおり、其れを見た笑みリアの表情は───────一瞬で固まる。
「此れは………
「どうしたんだ?」
「簡潔に説明します。───────────」
書状の内容、笑みリアというプレイヤーの行動原理、ジークヴルムの秘密。其れ等を加味したノワルリンド討伐派閥のメンバー達は、下手すれば『取り返しが付かない状況不可避』という事態を知って。
「本当に我儘ばかりで、方針すら変えてしまって申し訳無いです。………でも此のまま、ジークヴルムを放置する事は絶対に出来ません。行きましょう、皆さん!」
『『『『『『『応ッ!』』』』』』』
笑みリアの号令にノワルリンド討伐派閥プレイヤー達も、一致団結の元にジークヴルムを止めるべく、再び戦場へと向かい進み出したのであった…………。
家具職人系最上位職:風水導師。一生産職ながらも自身が製作した
天守閣に置かれた家具が何かしらのギミックで有り、其れを破壊した場合に此方にデメリットが発揮される、見えない地雷の可能性を加味した
だが其れでも……………アヴァランチ達が城内全フロア制圧から三分後、オブジェクトと壁に天井を利用した剣道としては邪道の、幕末としては王道の『三次元式空中殺法天地逆転一刀両断』によって漸く餡ジュを斬り果たし、京極は勝利を収めたのである。
「京極さん、御疲れ様だ」
「京極じゃない、京
「ジークヴルムが分身した、ペッパーさんの掲示板でディプスロさんが情報投げで共有された、角の本数が分身の総数になる奴」
「あと、其の分身する前にジークヴルムが角を
「…………クターニッドの宝玉と同じ、か」
「え?」
「唯の独り言」
ジークヴルムの魔法無効化やスキル無効化に加えて分身生成と、其のギミックを封じる鍵が『角』に在ると確定したと見て良い。
そして伝令として無線では無く、自らの脚で走って情報を齎したプレイヤーによれば、スキル・魔法・分身の能力の何れも『他能力との同時併用は不可能』との事で、まだ付け入る隙は残されている。
「スカルアヅチのバフ先変更は?」
「今やってる!」
「S·F·G·F·Aにライブラリの対城戦研究プレイヤーが居て良かったよ…………」
「銃火器で屋内制圧戦、サ終までに一度はやってみたかったシャンフロのやりたい事リストを埋めさせてくれたので、ペッパーさん達には感謝してますから」
プレイヤーの一人が手慣れた手付きでウインドウを操作、制圧戦時間のロスタイムを補う様に僅か四十二秒で強化付与画面に到達し、アヴァランチに操作権を譲渡するのを見届けた京極は、ジークヴルム達が居る方角を見定める。
「行くのかい?」
「うん。ペッパー御兄様達は今も戦ってる。戦力は一人でも多い方が良い」
「此方もバフを振り撒きつつ、動ける人員を当てに行くよ」
専用パワードスーツを纏い、特殊戦術機竜ドラゴメンと合体した京極はスカルアヅチの天守閣を飛び出して、分身六体含めた七体のジークヴルムが居る戦場へと向かって行き、スカルアヅチ制圧戦に携わったS·F·G·F·Aのメンバーもまた、樹海を駆けて戦地に向かい走り出す。
「さてと、此方も役目を果たさなくてはね」
「やっちゃいましょ〜!」
アヴァランチの指先がバフ項目を選び取り、そしてスカルアヅチはジークヴルムと戦う者達へ、遍く加護を齎す城となって再稼働した。
・敵対対象:天覇のジークヴルム
・強化対象:敵対対象と戦闘状態にあるプレイヤー及びNPC
強化内容
・十五秒ごとにHP、MPを回復
・全ステータスの強化
・ダメージボーナス
・リキャストタイム20%軽減
・魔法発動コスト20%軽減
・攻撃スキルの威力上昇
・攻撃魔法の威力上昇
・補助スキルの性能上昇
・補助魔法の性能上昇
「──────諦めるな!」
「──────諦めません!」
「角を狙え!今の奴は、スキル無効と魔法無効の力を使えねぇ!!」
ジークヴルムが分身生成で七体に増え、戦況を大混乱に陥る中で三人の勇士が声を上げる。
龍王の鎧を其の身に纏い、一直線に超高速で飛びながらジークヴルム本体の角を叩くペッパーと、ノワルリンドが差し出した手に乗って、再び空へと舞い上がる
「ペンシルゴン!サイガ姉!本体は俺とペッパーに秋津茜とノワリンで対処する!今居るクラン連盟連中と野良連中で分身六体の対処頼む、そっちまで手が回んねぇわ!!」
「オーケー、任されたよ!」
「全く、面倒を押し付けてからに…………だが乗ってやろう!
サイガ-100が高らかに号令が発され、六人のプレイヤーが武器を掲げて居場所を報せる。分身ジークヴルムが動き出し、プレイヤー達もNPC達も移動して六つの分隊へと分かれ始めて。
『激流砲撃ッ!』
「【ハリケーン・ブラスター】!!!」
「【アポロン・バースト】!!!」
戦場に叫び、爆流と竜巻と灼熱が混じりて飛んで、ジークヴルムの分身の背中を撃つ。ダメージは入れども分身は消えず、一体何だと視線が其の方角を見れば。
『ようやっと着いたわ………!妾はエルドランザ!蒼き群青の海を覇する王と成る者ぞ!!さぁ、ジークヴルムよ!覚悟せいっ!!!』
「皆さーん!!!おまたせしました〜!!」
「ブロッケントリード撃破に手間取ったが………、来たぞジークヴルム!」
「SF-Zoo、後もう一踏ん張り!ジークヴルムを倒すわよッ!」
青竜エルドランザと"
戦いは更なる混沌を成していく…………。
光を魅せる