VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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援軍来たりて




龍よ!人よ!生命達よ! 〜其の三十〜

「サイガ-0、君はジークヴルムに当たってくれ。ジークヴルムの分身対処グループは僕が請け負うよ」

「良いん、ですか?」

「あぁ。シャンフロの最高火力(アタックホルダー)の一撃は、ジークヴルムの本体にぶつけてこそ意味が有る」

 

ジークヴルムの分身六体・ジークヴルム本体・エルドランザ・ノワルリンドの合計九体の龍と竜が集い、少数精鋭で本体の対処と角破壊、残りが六チームで分身達の対処へ当たる事となり、エルドランザの頭に乗ったレーザーカジキが青竜と共に本体を狙い、サイガ-0の元へとカローシスUQが引き継ぎを申し出て来た。

 

彼の言い分は的を得ており、カローシス()記憶に在るサイガ-0が持つ最高火力の『アルマゲドン』………シャンフロの世界観からしても『切札』たる一撃は、ジークヴルムの分身を一体持って行くよりもジークヴルム本体に大打撃を与えた方が理に適っているのだから。

 

「では…………よろしく、御願いします」

「任された。サイガ-0の元に来たプレイヤー達の皆!此処からは僕が陣頭指揮を執る!此処に来た近接職と魔法職を最上位・上位・下位の三つに分けて、ジークヴルムの分身に三段撃ちの要領でダメージを与えに行く!其れとジークヴルムの分身で何か解った事が有ったら、遠慮無く言ってくれ!!」

 

カローシスの指揮が木霊す中、サイガ-0は緋鹿毛楯無(ひかげたてなし)にエクシス&ウォットホッグ、そして特殊戦術機竜ドラゴメンのリアクターと直結してパワードスーツを纏い動かすレイカ=イクサと共に、ジークヴルム本体と戦う者達へ……………恋人のサンラクを助ける為に戦地を駆ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秋津茜(アキツアカネ)という人物は、ジョゼットや聖盾輝士団の達の様に、心の底から役に成り切り、此の世界(ゲーム)の一員として生きる事を(プレイ)しない。

 

秋津茜という少女は、サンラクや他の半裸なプレイヤー達の様に、ゲームだからこそ出来ると意識をした、立ち振る舞いをする事は無い。

 

秋津茜というプレイヤーは、ペンシルゴンやディープスローターの様に、グラフィックが数字の羅列で動いているだけの存在と、完全に割り切ったプレイをする事も無い。

 

「ノワルリンドさん!」

『何だ!!』

「此れはとても大切な御話で………此れから起きる事も、とっても『大切な事』なんだと思います」

『何………?』

 

ペッパーとサンラクに其の仲間達が、そして彼等二人を援護する様に空を泳ぐ船から矢と、地上より放たれる莫大なる水流と四色の魔法が飛ぶのを見ながら、秋津茜はノワルリンドに話し掛ける。

 

彼女の言葉に脚色は無く、そして心という海の水底から浮上した言葉を飾る事をせず、真摯な思い口にして黒竜へと伝えていく。

 

「ノワルリンドさんはノワルリンドさんです、ジークヴルムさんを超えるために戦って……ジークヴルムさんに憧れて、追い掛けて……今、其の直ぐ近くまで来ています」

()()は……っ! 今、言わねばならんことか!!』

「はい!其れでも前だけを、上だけを向いて生きていく事は………決して『出来ない』んです。ノワルリンドさんはノワルリンドさんの、()()と向き合わなきゃダメなんです」

 

彼女はロールプレイを行わない、そしてNPCを侮らない。現実に生きる自分達(プレイヤー)とは明確に異なる、虚構の世界の存在(NPC)である事を理解した上で、其れでも現実と何ら変わりない言葉を紡ぐ。

 

其れ故にこそ、彼女のスタイルはシャングリラ・フロンティアというゲーム……否、シャンフロのシステムに於いては『此の上ない価値と力と意味を持つ』。

 

「……………!」

 

ノワルリンドの背中に乗り、ペッパー達とは違う形で上空より視点を向けられた彼女だからこそ、此方に向かって進んで来る者達の姿を発見する事が出来た。自分の記憶が正しければ、ノワルリンドを討ち取る為にスカルアヅチを築城した生産職達と、ノワルリンドを討ち取る志を共にした戦闘職のプレイヤー達だろう。

 

「……………!」

 

集団の先頭を行くクレリック姿の女子プレイヤーと、秋津茜の目が合った。決戦フェーズ開始前の準備期間中、旅狼(ヴォルフガング)のチャットで情報共有した際に挙がっていた、ノワルリンド討伐派のトップである『笑みリア』なるプレイヤー…………其の特徴と一致していた事で、秋津茜もまた()()を決める。

 

『アレは………成程、此の我を弑する者だとでも?』

「はい、きっと………ペンシルゴンさんとかがしっちゃかめっちゃかにしても、ペッパーさん達が引っ掻き回したとしても………きっとあの人達は『諦めない』。きっと其れはノワルリンドさんが『ジークヴルムさんを越えようとする想い』と、()()()一緒なんです」

 

秋津茜は知っている。別の世界(ゲーム)でも有った展開(コト)だが、人には人の其々が掲げる『正義』が在る。正義と悪とのぶつかり合いの本質とは、互いが互いの『正義を懸けた戦い』で、同時に『譲れない物を押し徹す為の戦い』でも在るという事を。

 

秋津茜は諦める事が嫌いであり、諦めない者が好きであり、そして諦めない者同士の激突は、()()()決着を付けなければならないと考えている。 

 

そう、そうなのだ───────双方に譲れない物や辿り着きたい場所が在って、何方しか至る事が出来ないと言うならば。誰かが進み、誰かが止まらねば………伸ばした其の手が、永遠に()()へ届く事は決して無いのだから。

 

『あの輩なぞ、我が息吹で一蹴し…………』

「ノワルリンドさんはジークヴルムさんを!あの人達は……私が何とかします!」

『…………って、何だと?………おいっ、秋津茜!!』

 

狐面の向きを変え、顔の下半分だけを露出した秋津茜はノワルリンドから飛び降りて、樹海の中の木を挟んで地上へ着地しながら黒竜に告げる。

 

「私は、ノワルリンドさんを応援してます。ノワルリンドさんには、ジークヴルムさんだけを見て前に進んでいて欲しいんです。だから………私は其のお手伝いをするんです、だから、だからこそ………私に任せて下さい!私はノワルリンドさんの臣下………いえ、下僕?………えっと代理としてケリ?………じゃなくてケジメですかね?其れを付けて来ますっ!!!」

 

振り返らず秋津茜の視線は真っ直ぐに、ノワルリンド討伐派の面々を見据えて。

 

『秋津茜、貴様──────!』

『どうしたノワルリンド!我が眼前で惚ける愚かさを、其の身を以て贖うか!?()()()()背負いながら………、何をしているか!!!』

『ぐぬぉあ!?くっ、おのれェ……!!』

『貴様は一度、自分の過去に『ケリを着けて来い』!戦うのは…………其の後、だぁッ!!!』

『ぐおぉおお!?!』

 

開拓者達の攻撃に晒され、身体や角にも少なくないダメージを受けども、衰え知らずのジークヴルムの口から灼滅のブレスが放たれ、ノワルリンドに直撃。

 

怯んだ其の隙を続け様に接近から、ノワルリンドの首を掴んだ上でジャイアントスイングで近寄る者達を引き剥がし、ジークヴルムが力任せに放り投げる。

 

黄金覇龍に投げ飛ばされ漆黒の竜は秋津茜の頭上を越えて、ノワルリンド討伐派の笑みリアや(てん)首領(ドン)達の目の前に着弾し、彼等彼女等と目が合った。

 

「ノワルリンド…………!」

『───────っ、貴様等か。どさくさに紛れて、此の我を討ちに来たか?』

「あの、あのっ!?待って待って、待って下さ〜い!!」

 

ジークヴルムはノワルリンドに関わる事と見てか、邪魔立てせずに他の者達を相手にしている。笑みリアはノワルリンド討伐のチャンスをほぼ失い、エストマなるヴォーパルバニーからの書状でジークヴルムが起こし得るアクションを知った。

 

モンスタートレインをやらかし、前線拠点に壊滅的な大打撃を与えた事を加味しても、彼女は未だにノワルリンドを赦した訳では無く……………其れでも彼女は慈悲とも言える『最後のチャンス』を、ノワルリンドに提示する。

 

「─────────どうか『謝罪』を。此処が()()()()()()()()

 

其の鋭く研ぎ澄んだ視線()()で秋津茜を、天首領を、そしてノワルリンド討伐派のメンバー達をも止めた女は、ノワルリンドに其の一言をぶつけた。

 

世界から隔絶され、此の空間にだけ沈黙が訪れた様な状況の中、ノワルリンドが口を開いて…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『くだらん─────────と言いたい所だが、慈悲を与えるもまた『強者の務め』。其れが貴様を満たすならば、言ってやろう……………ゴメンナサイ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまりにもあっさりと、あまりにも緊張感のない謝罪を以て、ノワルリンドが笑みリアに対してそう言った事は、笑みリアも天首領も秋津茜も、多くの討伐派プレイヤーも目を丸くした。

 

 

 

『───────謝る事が大事なんです! 例えどれだけ気持ちがこもっていなくても、ゴメンナサイって言った事実が大事なんです!』

 

 

 

何時だったかノワルリンドに対して言った自分の言葉を、本来はペンシルゴンから受け取った言葉を此の瞬間に思い出した秋津茜だったが、超大型体躯でジークヴルムに匹敵するドラゴンが『物凄く不機嫌な顔で謝罪』する光景は、笑みリアからしても予想外だったらしい。

 

そして再び訪れた沈黙と、そうして『吹き出した』のは笑みリアであり。

 

「………ぷっ」

「あ………」

「ふっ、ふくくくくく………解りました。ふふふ………えぇ。『謝罪を受け入れます』、ノワルリンド」

 

まるで刺々しかった雰囲気が一瞬で霧散して、朗らかな雰囲気に変わった様子の笑みリアに、秋津茜や天首領は問い掛ける。

 

「あ、あの、良いんですか?」

「良いのか、盟主殿よ?」

「………えぇ。何だか『実家で飼ってる犬の事を思い出しちゃって』………ふふふ、怒り続けてるのが『馬鹿馬鹿しく』なってしまいました」

「わんちゃんを飼ってるんですか?」

「えぇ。ラブラドールレトリーバーなんですけど………ふふふふふ、あの仔が壺を割った時とか、正にこんな感じ………あっ、ツボに入って………ッ、…………ふふふふふ!!」

 

深夜テンションで壊れた様な笑いをする笑みリアに、他の討伐派プレイヤー達も肩の力が抜けていた。ノワルリンドを潰すと決意し、スカルアヅチという城すら建てた決起人が、元凶からの謝罪を受けて『赦した事』は、想像上に効果を持っており。

 

『って、何をするか貴様ァ!』

「あ、ごめんなさい。つい癖で………」

 

頭を下げたノワルリンドの頭を撫でた事に対し、キレて大声を上げたのを見た秋津茜は一人と一匹の間に仲裁役として入り、確認を取る。

 

「えっと、ノワルリンドさんはジークヴルムさんを討ちましょう!えっと、エミリアさん達も、ジークヴルムさんを止める?って感じで良いんでしょうか!?」

『ジークヴルムめ、此方のゴタゴタを済ますまで待ちおって………だがまぁ、良いだろう。其の分の力は温存出来たのだからな………!』

「はい。私達はジークヴルムを止めに来ました」

「此方の盟主がノワルリンドを許したんだ。此方も寛容な心で許してやるのも必要だろう」

 

少なくともノワルリンドが背中から撃たれる可能性は、此れで大きく抑えられた。秋津茜は続けて、現在のジークヴルムの状況と攻略に関わる情報を彼等彼女等へ共有して行く。

 

「えっと今ジークヴルムさんは分身してて、ペッパーさんやサンラクさんが言うには、ジークヴルムさんの角を破壊するか分身にダメージが反映されてる事から、一定以上?ダメージを与えられれば分身を消せるそうなので、皆さんの力を貸して下さい!」

「成程………、今は角が六本だから六体と………」

「でもジークヴルムの角ってさっきまで四本じゃなかった?決戦前にペッパーへ一本渡したとかで」

「いや分身前に角を再生させるリプロなんちゃら?とかのアクション起こしたって、フレンドから連絡来たわ」

「マジで?!そりゃヤベェ………!」

「だが逆に考えれば、角破壊のチャンスも増えたって事だろ?一丁チャレンジしてみるか!」

「ジークヴルムの角が報酬として手に入るなら、色々使えそうだよな………!」

「よし、取り敢えずジークヴルムの分身一体を集中攻撃するぞ!被害がデカい場所優先狙いで!」

 

ジークヴルムが七体になる絶望的な戦力差なれど、逆に角を破壊すれば消せる&ユニークモンスターの部位ともなれば、其れを獲得せんとやる気に満ちるプレイヤー達は、天首領の指示の元に動き出して戦場へ走り出す。

 

「頑張って下さい、秋津茜さん。ノワルリンド」

「はいっ!エミリアさんも、頑張って下さい!」

『精々死なぬようにな』

 

ノワルリンドに乗って夜空へと飛び立つ秋津茜を見送り、笑みリアはエールを送った後に天首領達を追い掛けて進んで行く。

 

竜と龍に生命達、其の戦いは佳境へと移ろい進む………。

 

 

 






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