龍王を崩す為に
「おるやぁアアアアアアアア!!!」
「迅速救助:キャッチします」
紫の斧刃が黄金覇龍の角の根元を刈っ裂く、振り抜いた余力でサンラクが飛んで、専用のパワードスーツとリアクターに特殊戦術機竜ドラゴメンを直結させたサイナが、空中を行きて黄金の仇討人の身体を包んでジークヴルムから距離を取る。
「エムル、やれぇ!」
「アイトゥイル、ディアレさん!」
「【マジックエッジ】!」
「【
「【クーウェル・ボルディオラ】!」
戦地を駆け走る黒い影と、放たれる魔力と風の刃に迸る雷がジークヴルムの頭部を撃つ。そして其の隙を突いた勇者の一閃と竜装の機械人形の攻撃が、ジークヴルムの角に叩き込まれて其のまま離れ。
更に其の空隙を穿ち、ブリュバスから矢が飛んでジークヴルムの角へとダメージを加え続ける。
『我が角を折らんと企む、か…………。ククク………嗚呼、
人が、兎が、人形が、犬の分け身が。種族は異なれど、互いに肩を並べ合い、一つの目的を達成せんとする光景をジークヴルムが懐かしむ。
「ペッパー!角壊せる『切札』か何か有るか!?」
「有るには有るが、繰り出すのに『ちょっと時間』が要る!あと此方の
「レイさんは!?」
「通信:…………回答受信。レイカ=イクサより、個体名サイガ-0はアルマゲドンよりも『更に凄いのが有る』との事」
「よし…………お、ルスモルコンビ!丁度良いトコ飛んでるじゃねーか!サイナ!」
「了解:」
サンラクの行動にスイッチする様にして、ペッパーがジークヴルムのヘイトを請け負い、其処へ漸く復帰したノワルリンドと秋津茜が戦闘に加わる中、サンラクはサイナに抱えられてルストとモルドの青春コンビと合流する。
「何?サンラク」
「ブリュバス動かしてるのとバリスタ撃ってる奴に伝言だ!左上・右中央・右下・左下!」
「……………暗号?」
「其れもしかして角の位置?」
「モルド正解!バリスタ撃ってる奴なら、此の中でもピンポイントでブチ抜く事くらい余裕で出来る!伝言頼んだぞ!」
月は傾き、夜空は少しずつ白みを帯びる。夜明けはまだ遠くとも、刻一刻と時間は過ぎ行き、されど己が纏いし
「至高思金は………まだ保ってる。賦活醒の性質は『ある程度』だが理解出来た。鏡盾の魔力吸収、撃鉄達、後はタイミングを合わせて………いや先行するべき………」
「
「最高に
ダメージを重ねたジークヴルムの角、不確定要素が漂い混じり状況が回る中で、サンラクはどの場所を狙うかを見定め吟味し、再び戦線へと戻りつつも其の時を…………ジークヴルムの角を圧し折る為の刹那を、静かに動きて虎視眈々と待つ。
「いやぁ、コレ効いてるのかなぁ………?」
「
「ニーナちゃんもそう思うかぁ………」
「ひょええ…………」
ペッパー達がジークヴルムの本体を押さえ、エルドランザがジークヴルムの分身の一体を本体と勘違いして激突する中、別の分身に他のプレイヤーやNPC達と対処に当たるペンシルゴン・リリエル=
(分身を抑えるにしても、人数が居ようとキツいのには変わり無い。こういう時にあーくんなら多分『切札』を切るのも視野に…………って、おやっ?)
戦場を駆け、ジークヴルムの分身に対処する雑多の人や亜人の間を走って、逆手に持ったクナイで斬り込む一人の男の姿に、拳に多色の炎を合わせて色を満たす女達の姿、そして対処中のジークヴルムの分身の頭上に輝く『角の一本が光っている』のを、ペンシルゴンは見た。
片や樹海窟で見た貧相な格好から忍者装束になっている『オルスロット』と、其の付近には嘗ての阿修羅会に所属していた下っ端プレイヤー数人が銃火器を用いて撃ちまくり。
片や
善は急げとばかりにペンシルゴンはジークヴルムの攻撃から距離を取り、黄金の巨体を睨み付けているオルスロットや元阿修羅会のプレイヤー達に声を掛け、そして『わざと』オイカッツォとアージェンアウルの目に映る、そんな位置取りを以て策を講じる。
「やぁやぁ、オルスロットに愉快な仲間達諸君!!久し振りー、元気にしてた?」
「あぁ!?って、姉貴!?」
「アーサー・ペンシルゴン…………!!」
自分達のクランを滅ぼした元凶の登場、此処で逢ったが百年目とばかりに銃口を向けるが、其処にオイカッツォとアージェンアウルがやって来た。
「ペンシルゴン!ジークヴルムの分身、ダメージは入ってるけどあんまし効いてない!………って、絶賛立て込み中?」
「HEY!何かシュラーヴァ?ナノかな??」
「やぁやぁ、カッツォ君にアージェンちゃん!此方オルスロットと元阿修羅会のクランメンバー達だよん、其れなりに仲良くしてやって頂戴な」
澄ました笑顔が相変わらずオルスロットの癪に障るが、こんなんでも自分に向けられていた視線やらが前よりも恋人に向いた御陰で、自分に対する心労はかなり軽減されている。
「…………で、何だよ姉貴。俺等も協力しろってか?」
「お、鋭い。ジークヴルムの分身を観察したんだけど、六本の中でアレだけ『光り方』が変じゃない?」
聖槍カレドヴルッフの穂先で示した先、今も尚暴れに暴れてプレイヤーやNPCを吹っ飛ばし続ける、ジークヴルムの分身が居て。其の分身の背中に飛び乗り引っ付いて、振り落とされない様に踏ん張っているイムロンの姿が見え、頭上に光る六本の内の『左中央だけが』輝いているのだ。
「…………何か光ってる?」
「アレ、もしかして分身の『弱点』だったり?」
「多分ね。おそらくジークヴルムの本体の『角の位置と
ペッパーやサンラクの話によれば、ジークヴルムのスキルや魔法を含む無効化能力に角の本数と位置が関係し、光っている角を破壊すれば分身へ大ダメージ、もしくは消滅に繋がる可能性が極めて高い。
「銃火器や遠距離持ちに伝達して、分身の六本の中で光ってる角を集中攻撃する様に指示出し!タンク職はジークヴルムの分身の足止めで、遠距離攻撃が当て易くなる様に動く!さぁ、全員キビキビ行くよッ!ホレホレ、オルスロット達も働けー!!!」
「突くな突くな!?あっぶねぇ!?ホント止めろってクソ姉貴ッッッッッ!?」
ペンシルゴンの気付きからオルスロット達に情報は伝わり、他のプレイヤー達を通じて戦場へと一気に拡散し、遠距離攻撃手段持ちとタンク職に戦術機の乗り手達が動き出す。
戦いは続き、其れでも不動不変の事柄は無く。
状況と情勢は少しずつ流転し変革して行く。
分身崩しの突破口