VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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角を斬れ




龍よ!人よ!生命達よ! 〜其の三十二〜

ジークヴルムの龍王機関(Dragon×Driver)による分身生成、其の攻略法とも言える要素に気付いたペンシルゴンによって、分身対処のプレイヤーやNPCが行動を変える中、ジークヴルム本体との戦闘を継続する者達は前を向いて、其の輝きに手を伸ばし続けていた。

 

「ノワルリンドさん、秋津茜(アキツアカネ)!ジークヴルムさんの六本有る内の左上・右中央・右下・左下の四本のダメージが重なって来た!俺は今から右上の角を斬り落とす!」

「確か分身?にも関係が有るんですよね!?」

『斬り落とせんかったら(かばね)の一つくらいは、我が慈悲によって拾ってやろう。感謝して行って来い、ペッパーよ』

「ありがとうございます、ノワルリンドさん。秋津茜や皆を頼みます。ヒトミさんはノワ達の護衛を、よろしく御願いします」

『……………ふん』

「了解:契約者(マスター)、御武運を」

 

此の技を使うと言う事は、少なくとも反撃を食らう可能性が引っ付いている。ヒトミがサイナやイクサと連絡を取り合い、ノワルリンドと秋津茜のコンビがジークヴルムに接近しての組み付きによる力比べをする中、ペッパーはインベントリアに仕舞っていた星帝剣グランシャリオを取り出し、鞘を引き抜き抜剣。

 

二つの宝玉が収められた聖剣が夜明けの白を混ぜた夜空の元に其の姿を示す中、彼は今使えるバフスキルの全てを点火しつつ、剣を掲げて空を飛びながらに述べる。

 

「ウェザエモン・天津気さん。貴方が選ばなかった絶技…………使わせていただきます。晴天流【雷】、第二奥義───────成神(なるかみ)ッ!!!」

 

聖剣に在る七つ穴の内、持ち手より二番目の位置に収めた宝玉は輝き、空を舞う勇者の体力を削りて雷神に等しき雷の加護を与え。全ての準備を整えた構えを……………剣道で言う所の『最上段切り下ろし』の構えを取って、言霊を乗せて詠唱を紡ぐ。

 

「我が一閃は天に届く──────其の刃は風を裂き、其の刃は曇を割り、其の刃は霧を晴らす」

 

言葉に力は宿り、雷と共に放たれる覇気が爆発的に増大し、両手で力比べを続けるジークヴルムとノワルリンドの双方共に、其の気配を察知した。

 

「流天抱きて剣を掲ぐ、心血一念身捧ぎ信ずる斬撃。天も地も、過去も未来も、因果と輪廻の(さかい)を分かつ………!」

 

一言一音の言葉を紡ぐ程、闘気と覇気は昂り渦を巻き、彼の視線はジークヴルムの右上に在る角へ。嘗てヴァイスアッシュが話した己が作りし天下五剣の一工…………ジークヴルムを除けば『神代最強のマナ・キラー』と呼ぶに相応しき鍛龍(タンリュウ)の元となり、黄金覇龍の特殊行動:超速再形成(リプログライズ)で再生した角が在る場所を見見据えている。

 

「我が剣刀(つるぎ)は獣を斬り伏せ、巨なる敵を果たし斃す牙。天に轟きて、地すらも頒つ光と成らん…………!」

『我が角を斬り飛ばすつもりか!』

 

加速し、高く舞い上がり、夜空を背として上段切り下ろしの体勢其のままに、ペッパーが光輝へと昇る金龍王装(レディアント・ドラゴニウス)の持ち得るブースターとエナジーウイングの出力を最大化から、一気呵成の烈火の如く空を降り落ちる。

 

「魂の一刀!渾身の一剣!我が命を徹して(はがね)と共に!」

 

黄金の竜星は天を走り、真界観測眼(クォンタムゲイズ)を点火。過ぎ往く世界の光景をも線にして、向かうはジークヴルムの右上に輝く角、其れ唯一つのみ。

 

視線の先、映るはノワルリンドの首に噛み付いたジークヴルムが力任せに組み合いを振り解き、同時に口内にて灼滅の威吹が収束される光景で。

 

ビビって早出しすれば回避を許し、逆に遅過ぎてはレーザーブレスに焼き尽くされて死ぬのみの、刹那を切り取る居合の勝負。

 

「竜を、龍を。そして………神をも断つ!!!」

灼滅威吹(ブレス・オブ・ベイン)!!!』

 

轟き疾走(はし)る黄金の赫焉が、聖剣を掲げし勇者を飲み込み焼き尽くし─────────

 

 

 

 

 

 

『ッ!?』

 

 

 

 

 

 

 

仕留めたと感じたジークヴルムだからこそ、威吹で焼いた勇者が『おかしい』と感触を察知して。

 

其処に有ったのは、星々の輝きの如くマナを固めて遺し、本体の感触と何ら変わらぬ一つの虚像が…………朋友(ポポンガ)が扱う星が燃えて出来た空気の幻想(星天秘技のコスモ・ネビュラ)が消える様で。

 

 

 

 

 

 

 

 

「八連結同調─────────絶天(ぜってん)

『な…………!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間転移の移動技能(レーアドライヴ・アクセラレート)と、迸る稲妻に過ぎ去る雷光、更には夜空を飛んで行く金色の閃。

 

そして……………己の角が、右上の角が叩っ斬り飛ばされ、粒子と化して戦場から消えて。同時に分身として戦場に在ったジークヴルムの分身の一体が、本体の角と連動していると答えを示すが如く、戦場から『消滅した』のだ。

 

『おぉ、…………おぉ、見事!凄まじい………!素晴らしい………!まさか俺の角を、一閃の元に唯一撃を以て斬り飛ばすとは!ペッパー・天津気(アマツキ)ッッッ!!!』

 

遠くへ飛んで小さくなる龍装の勇者に、ジークヴルムは叫んで。

 

「ブッ!飛ばせェェェェェェェェ!!!」

 

黄金の仇討人の声が轟いて、戦場に立つ全ての指揮(ボルテージ)を高める。ペッパーが成した結果の提示、昂り荒振る激動と激情の連鎖反応が、次なる結果を示さんと動く。

 

「取ー舵ー、いっぱーい!!突貫する!!ヤシロバード、角は君に譲る!サンラクさん、修理費全額補填させて貰うよ!!!」

「構わねぇ!思いっ切りヤッちまえ、SOHO-ZONE!ヤシロバード!」

「良いね良いね、そう来なくちゃ!」

『我が威吹に焼かれる事を恐れぬか!』

 

ブリュバスが夜空を泳ぎ、船首に掲げし槍の穂先が黄金覇龍を狙い定め。ジークヴルムが再び壊滅の灼焔を放たんとするが、武器狂いが操りし魔導推進征海船は止まらない。

 

「孤島出身者を…………嘗めんなぁああああ!!!」

「信じてるよ、ブリュバスッ!」

『ォオオオオオオオオ──────!!!』

 

備え付けのバリスタでは無く、リヴァイアサンでカスタマイズした、威力と貫通力に重点を置いた自作の回転射弾機装(スピンバレットライフル)を構え、ジークヴルムから放たれたブレスへ銃手(ガンナー)スキルの補助を乗せて引金(トリガー)を引く。

 

魔力と魔力の激突、力の差は歴然。炎と光は船体を貫き、ヤシロバードの身体とブリュバスの船体は半分が焼け落ち、SOHO-ZONEの右腕も焼かれて消えた。

 

だが、だが…………先んじる形で撃ち込まれた弾丸がブレスの軌道を極僅か、些細な程度でしか無い物の船体の致命傷を避け、船を傾かせながらに鰭を模した『近接ブレード』がジークヴルムの片目を進路上に捉えて見せて。

 

「嗚呼、完璧だっ──────()()()

 

熱に焼かれて体力が尽きるまで、ヤシロバードに残された残りワンアクション。六式魔導弩砲(タイプシックスバリスタ):鯱光(レプノルカ)の狙いを残された顔半分の目で捉え、樹海の合間からマスケット銃で敵をブチ抜いた時と同じ感覚を抱き、彼は迷う事無く引き放ち。

 

「格闘戦武装、付いててくれて助かった………!」

 

傾いた船の制御を残った片腕で成し、焼ける身体と船の墜落まで幾ばくかの最中であっても動じない、生きるか死ぬかの一撃必殺のかくれんぼの中で培い続けて磨かれた精神を以て、ブリュバスが擦れ違い様で敵を斬る『刃翼』はキラリと閃いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ガッ………………!?!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

焼け落ちながら大地に墜落するブリュバスと、船外へと放り出されてポリゴンを撒き散らしながら落ちる、ヤシロバードとSOHO-ZONEの二人の視線の先には。

 

 

 

 

ジークヴルムの右中央の角が砕けて宙を舞い消え、ジークヴルムの片目を刃翼の一閃が潰したという、射手と操者の矜持というべき結果を戦場にて示したのだ。

 

 

 






閃光、龍を射貫く


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