ジークヴルムを止めるには
最終試練という名の『盛大な自爆宣言』を行ったジークヴルムに対し、タイムリミットを切る前にジークヴルムを止めると、そんな事は絶対に許さないとばかりに分身が戦場から消えた事で漸く解放されたプレイヤー達が戦線に到着し、持ち得る力や技を以てジークヴルムへ攻撃を叩き付ける。
対するジークヴルムは其の身を刃に斬られ、槍の穂先に突かれ、杖より放つ魔術に焼かれ、重火器により身体を穿たれようとも、其の巨体は崩折れる事も無ければ、膝を付く素振りすらも見せない。
己の打倒を望みつつも、生きとし生きる全ての生命達へ『力を示せ』と堂々たる叫びと、今の己が繰り出せる有りっ丈を注ぎ生み出した光の球体は、黄金の太陽其の物に等しい自分にも劣らぬ程に膨張を続け、鼓動する度に放たれた無作為の黄金閃が戦地を走り、大地に着弾して被害を撒き散らす。
「───
「逆鱗、ですか?」
『『逆鱗だと?』』
「はい」
聖盾イーディスを握って護衛するペッパーとレーザーカジキに
「私が顔の傷を受けた時、初めてジークヴルムさんと対峙して、偶然『逆鱗に攻撃が当てられた』んですけど………。其時にジークヴルムさんが言ったんです。
えっと、確か……『我が逆鱗は流動する魔力の要。穿たれたところで死にこそしないが、全身の魔力流動が一時的に
ジークヴルムの呪い付与条件が逆鱗を撃つ事、そして
『そうか。………だがどうする?お前は
無作為に飛ぶレーザー、余波でも大ダメージ不可避な上に、掠れば瀕死に追い込まれ、直撃すれば有無を言わさず消炭にされる。其の中を掻い潜って接近する難しさを、秋津茜はよく理解している。
「其れは………其の、気合いで………!」
『何れ出来たとしても今出来んのならば、どう足掻いたとて出来んのだ。流石に諦めろ』
「でも………!」
ノワルリンドの言い分は正しいと、秋津茜は充分理解している。だが其れでも、絶対に自分から『諦め
そんな狐の面を付ける少女をノワルリンドが、ペッパーがジッと見つめ…………声を放つ。
「俺に良い考えがある………あ、すいません」
『俺に良い考えがある………む』
「ペッパーさん?」
「ノワルリンドさん?」
『ほぅ。あのレーザーを潜り抜けて肉薄する術が、貴様等には有ると?』
「えぇ………。此方は時間制限付きですが、届かせる為の盾になるくらいなら出来ます」
イーディスをインベントリアに収納するペッパーが纏う一式装備、ジークヴルムを模倣し神代の叡智を結集して造られた
ペッパーによって見付けられ、不滅の名を冠した最強種によって一つとなって甦り、世界を動かし、封じられた機能を解禁され、漸く最後となる『真の切札』を使える段階まで昇華した。
「すぅ…………ふぅ……………!よしっ、頼むよレディアント・ソルレイア……………!」
レディアント・ソルレイアの
だが此の一式装備中限定条件下で発動を許される其れは、ペッパーがジークヴルムとの空中戦に置いて単身で彼に挑み、ジークヴルムが数百人のプレイヤーを相手取る切札の
「超過機構…………!」
発動の為に胸に手を当て、胸部に埋め込まているエネルギー生成機『
ペッパーは頂星煌炉心がエネルギーの過剰生成によるオーバーヒートを起こさず、同時に生成リミッターを外した上で、尚もフルパワーで起動可能な『十分間』の間に、秋津茜をジークヴルムの逆鱗が在る場所まで送り届けると決意の下、遂に光輝へと昇る金龍王装の持つ『最強の切札』を切ったのだ。
「……………【
彼の言葉と共にレディアント・ソルレイアがけたたましく稼働し、パワードスーツの各部に着いた
オーラは輪郭を成しながらに巨体を成し、巨体は軈て龍の様相を成し、そして行き着いた其の先に…………最終試練を課す前の『六角を掲げたジークヴルムと同じ姿形』を成して、龍の頭部の中にペッパーが立つという、端から見ればもう一体ジークヴルムが現れたと誤認する様な状況となった。
「わわわ…………っ」
『ほぅ………』
「わぁ………!」
『ジークヴルム………と思ったが、どうやら違う様だな………』
「さぁ、乗って!」
ペッパーの動きにシンクロし、巨大なエネルギーの塊たるジークヴルムの質量を持った残影とも言える巨手が、秋津茜達の前に伸びて。
二人と二匹の竜が掌に乗れば『ゼリーの様な半固形の液体の中にダイブした』感触を受けど、呼吸や身体が動かせる摩訶不思議な感覚を体感していれば、掌は胸まで移動した直後に無作為のレーザーが此方に飛んで来る。
「っ………、ぐぅん!!!」
脚や翼膜に直撃して巨体が削られながらも、翳して乗せた方とは別のもう片方の掌で、ペッパーはレーザーを振り払う。
同時に溢れ出すエネルギーが欠損部分に注入から、即座に補修して形状を元通りとしたのを感じつつ、ペッパーはジークヴルムの元へと向かい、一歩また一歩と大地を踏み締めて前へと歩み始めて。
ペッパーが秋津茜にレーザーカジキ、ノワルリンドとエルドランザを守りながらに進む中、ノワルリンドは秋津茜に己の策を提示した。
『秋津茜よ。今の俺でならば、お前の
「え?」
『アレだ。使う為の条件が『よくわからん』と、泣き言を言っておったアレだ』
「使い方……あっ、アレですね!」
小さくなった黒竜が言った『アレ』とは、秋津茜の代名詞となりつつある【
ベヒーモスのレベルキャップ解放装置を利用し、レベル上限を解放した事で就職時より持っていた、巻物状のアイテム『秘解・虎の巻』に出現した新たな奥義。其処に記された文章にはこう在った。
『───────其は心を同調するに至った人ならざる
と………。
「でもアレは……あれ?え、使える!?何で!!?」
其の奥義を使う条件は、ただモンスターと『仲良くすれば良い』………という訳では無く、要求されるのは隠しパラメータの一つであり、モンスターに対する自身の
群体系のモンスターのコミュニティや、其の地域に住まう生命達に対し、環境を変化させて進化や思考の変化を与える事によって、初めて高まる『野生値』という数値を要求する事。
其れ故にこそ秋津茜が手にした此の奥義は、実戦の中でこそ
「えと……やっちゃっていいんですか?」
『悩む程に奴の自爆が近付くぞ』
「俺は大丈夫、秋津茜!ノワルリンドさん!御互いの整理を付けるまで、キッチリ前に進むから!」
「防御魔法で少しでも負荷を減らします!」
『ならば妾も、少しばかり力を貸そう』
ジークヴルムの質量残影の前に、レーザーカジキの水属性防御魔法が展開され、エルドランザが己の持つ能力で其の水を自在に操る事によって、擬似的なウォーターパージアーマーを構築。
無作為のレーザーをレーザーカジキが自身のMPの許す限り展開しつづけ、エルドランザは自身のスタミナが持つ間は自在に動かして、黄金閃光の進路を捻じ曲げる。
「の、ノワルリンドさん!………行きますッ!!」
『来いっ、秋津茜!』
黄金の残影に抱かれ、
「刃隠心得………奥義─────【
其の言葉を放った瞬間、秋津茜の衣服が一瞬で『弾け飛んで』。同時にノワルリンドの身体が秋津茜の身体に吸い込まれたと思えば、質量残影の中で『竜巻』が巻き起こる。
其の竜巻の中で『黒い花弁の様な物が混じっている』というエフェクトと、直後に爆ぜて姿を見せのは秋津茜…………
青白さ以上に青『其の物』と言える青さの肌と、四肢や胸部を鎧の如く鱗が覆い。胸元や臍に太股の一部だけ『肌が露出している点』に、此れをデザインした製作者の『邪念』を感じずにはいられない。
そして彼女の身体には、人であるならば存在しない筈の『漆黒の尾や翼に角が生え』、明らかに其の姿は『人ならざる存在』と成っており。
静かに開かれた彼女の両目は白目と瞳の色が反転して、開かれた口は『全ての歯が牙へと変貌』し、僅かに見えた舌は『先端が割れた蛇の様な状態』。
女性としての人間味を残し、其の実『
「……………」
「……………」
『……………』
『……………』
変貌した秋津茜に、ペッパー・レーザーカジキ・エルドランザが衝撃に止まって。
『ワン!』
「やぁやぁ、あーくん達!随分凄い状況になってるけど、此れもジークヴルムのパワードスーツのびっくり機能なのかなぁ〜〜〜〜〜〜???」
「………君のクランには人外以外、入れない縛りか何かを付けているのか?」
そんな状況下、何時の間にか残影内部に侵入していたリュカオーンの分け身のノワや、アーサー・ペンシルゴンにサイガ-100含めた数多くのプレイヤーにNPC達の先頭に立つ女は、其れは其れは獰猛で非常に
切札起動
【
稼働時間は十分という制限が設けられているが、一時的にリミッターを解除した事で、光輝へと昇る金龍王装に搭載された機能の影響範囲や威力も数倍レベルに拡大しており、レーザーブレスの
イメージとしては『NARUTO』の人柱力が尾獣と心を通わせチャクラを結び付かせた形態、所謂『