VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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世界が起きる


※今章のエピローグです




(いろ)よ、(わざわい)で世界を染めよ

◇右の地に立つ赤◇

 

 

同時刻、旧大陸・栄古斉衰(えいこせいすい)死火口湖(しかこうこ)

 

 

「不公平だよなぁ〜。新大陸に行けなくちゃ、そもそもシナリオ参加も出来ないなんてさ」

「始めたての俺等が居たって、流石に役立たずだろ?」

「まぁそうだけどさ……さっきっから鳥が追っ掛けて来てるんだけど!?」

「しつこすぎ…………ん?」

「何だ?揺れ………」

「いや、此処って死火山じゃ─────」

 

轟音、衝撃、激震………同時に『超高温の水蒸気』による熱波が到来し、開拓者と大口を持つ駝鳥達が吹き飛ばされて火山から消え。

 

 

『─────────Folololololololo』

 

 

誰も知らぬ嘗ての赤竜、天覇のジークヴルムによって物理的に潰され、火山の蓋として火口湖の底へと沈んでいた先代の赤竜クレプトクルム『だったモノ』が、此の瞬間を以て木っ端微塵に砕け散った。

 

海とは比べるまでも無く、しかし大量の水が溜まっていた火口湖は今や『其の全て』が跡形も無く蒸発し、中央には『一匹の焔蝶の姿』が其処に居た。

 

世界より大きな意思を受けた、其の『赤の蝶』は……………『(にら)がる大赤翅(だいせきし)』は此の場所で、静かに敵を待つ。

 

 

 

 

◇右の地に立つ青◇

 

 

 

 

同時刻、旧大陸某所。

 

 

『Brrrrroooooo………』

 

 

現れた其れは、青に褪めた身体を燃やすのでも無ければ、放電する訳でも無く………只々前に向かって歩いていた。

 

「なん、え………」

()()()()が削れッ………」

「待っ─────!」

 

歩き続けるという『唯一の行動だけで』、其の歩いた道程には『死』が積み上げられていく。

 

黒霧の鬣を風に流し、頭を垂れながら歩く眼の無い馬は……………『彷徨(さまよ)大疫青(だいえきせい)』と呼ばれる存在は、静かに歩き続ける。

 

───────嗚呼、もっと殺せ。もっともっと、殺すのだ。

 

そう大地が………己を生み出した()()が囁いて、其れに応えるかの様に『青の馬』は、此の先に居る生命達を嘲笑うかの如く嘶いた。

 

 

 

 

◇右の地に立つ黒◇

 

 

 

 

同時刻、旧大陸某所。

 

 

「あっぶ!?スマン、回復助かった!」

「サンキュー!」

「え?私、回復魔法なんて使ってないけど……」

「え?」

「ぇ?」

 

熊型のモンスターと戦い、瀕死状態だったプレイヤーが回復職のパーティーメンバーに礼を述べれば、自分は回復していないと言う返答が返って来て。

 

 

『MrrrFFFffffffff………』

 

 

「へ?」

「えっ、何()()……!?」

「か、()…………なの?」

 

フワフワと宙を風船の様に浮遊し、全身が『黒色で六つ足を持った蛙の様な何か』は、プレイヤーとモンスターと戦っている戦場に突如乱入し、いきなり『傷を癒して始め』。

 

「ちょ、どこまで体力が回復して……」

「ま、待っ…………」

『グギャバ!?』

「……え?」

 

傷を癒し、傷を癒し、傷を癒して癒して癒して。

 

癒す傷がなくても癒し続け、其の果てに『過剰な回復力』で肉が弾けようが、癒して、癒して、癒して癒して癒して癒して癒し続け─────────。

 

最後はプレイヤー達が風船の様に爆ぜた熊型モンスターと、同じ末路を辿ったのを見届けた『黒の蛙』………………『圧恵(おしめぐ)大富黒(だいふこく)』は、其の光景を喜悦と共に目を細めて、ずっと見て居たのだった。

 

 

 

 

◇右の地に立つ緑◇

 

 

 

 

同時刻、旧大陸・神話(しんわ)大森林(だいしんりん)

 

太陽の陽射し、或いは月明かりが差し込む事で、神秘的な光景が生まれる場所で在りながら、同時に木々に遮らる事で視界の悪くなると言う、旧大陸の最終の街に向かう為に突破を必要とする終盤エリア。

 

出現するモンスターも軒並み強力ながら、角がハイエスト・ポーションに片手剣のアセンションブレードの素材となる『アセンション・ホーン』や、其の上位種の『エルダー・アセンション・ホーン』。

 

武器破壊効果を宿す魔剣ラス・ペガシアスの素材となるレアエネミー『イーティバル・ペガサス』等のモンスターが存在する地で、()()は遂に動き出したのだ。

 

星明かり差す泉で水を飲む一角獣の背後、一つの木が……………否、極めて高度な擬態で木に化けた『孔雀』が居り。

 

しかしながら駝鳥に見られる『異様に長い足』と、孔雀の代名詞とも言える尾羽には『奇妙な形をした果実を生やして』、其れが連なった様な形をしているという『異質な姿形』をしている事だろうか。

 

 

『Kyokyokyokyokyokyokyokyokyo』

 

 

孔雀の尾羽に実る果実を、其の長い首と嘴で器用に咥えて投げ付け、一角獣の背中に緑色の液体がブチ撒けられた。

 

一体何事かと振り向いた一角獣は、自分の体毛が『緑に穢された』と理解しながら、然して此の地で生存競争て勝ち抜き生き延びてきたが故に、水風船が爆ぜた程度の痛痒で揺らぐ様な柔な生命力はしていないと、緑の孔雀に対峙し。

 

次の瞬間、バサリと開かれた孔雀の両翼……………其の羽毛の一枚一枚が『振動』し、其処から『金切り声にも似た音』が発せられた事に気付いた瞬間──────一角獣の身体に()()は起きた。

 

「……?、…………!!?、!!?!?─────────!?!?!??!───────………………」

 

緑の液体が紙に染み込む様な速さで、一角獣の体内へと染み込み、駆け巡りながら魔力を、膂力、体力を()()して、全てが『足らない』と判別され…………最後には()()()()()()と降された。

 

そんな理不尽極まる『自己破産』に、一角獣が絶叫を上げながら悶え苦しみ………しかし其の声は誰にも気取られる事も無く、森の中に融けて消えて行き。

 

其れから暫くして木々の隙間を『緑の孔雀』が……………『(なぶ)縁大緑(えんたいりょく)』と呼ばれる其れに付き従う、『緑一色に堕ちた一角獣』は新たな獲物を探し、木々の先に消えたのだった。

 

 

そして時は同じくして、新大陸の各地でもまた変化は起きていた。

 

 

 

 

◆左の地に立つ黒◆

 

 

 

 

同時刻、新大陸某所。

 

 

「Oiiii」

「Oiiiill?」

 

 

地面を割って現れた()()()は、単眼巨躯で人型の黒一色のモンスター……………一言で言えば『サイクロプス』であった。

 

顔の大部分を占める一つの眼球で辺りを見回し、()()()は自分以外に『自分と同じ同族』が存在する事を認識した。

 

 

「Oiiiiiilll………!」

「OiiiiIIIIIIIII!!!」

 

 

眼と眼が合ったらやる事は一つしかないと、筋骨隆々のサイクロプス達がクロスカウンターの形で初撃を交わし、其処から生き残りを賭けた闘争を開始する。

 

殴り合い、殴り合い、殴り合い、殴って蹴って頭突いて、殴って蹴って頭突いて、殴って殴って蹴って殴って蹴って殴って殴って殴って……………………暫しの果てに、勝者と敗者が決まった。

 

全身を粉砕された黒い一眼鬼の一体が地に伏せ、勝ち残った一眼鬼は死体(それ)を凝視した後に首元へ顔を近づけ…………躊躇う事無く同族の喉笛を『食い千切った』。

 

 

「OOOooooooo……!!!」

 

 

肉を貪る、肉を貪る、肉を貪る。

 

骨は無く、身体を『筋繊維()()で構築した』一眼鬼が、他でもない同族に貪り食うという悍ましいまでの『共食い』を続けていた捕食者(一眼鬼)の身体は、共食いの中で変化が起きた。

 

筋肉がより強固に肥大化し、メキメキ………!バキバキ………!と音を立てて腕が、一眼鬼が必殺として多用した右腕が、更なる凶悪な形状へと変貌していく。

 

 

「Oooiiiiiii……」

 

 

肉片の一つすら残さず同族を食い尽くし、筋肉的に一回り巨大化した一眼鬼はゆっくりと立ち上がると新たな同胞(エサ)を探して歩き出す。

 

其れは『原始的な強さへの欲求』であり、其の果てに己の膂力で己自身を滅ぼす『末路』が待っているとしても、『黒の一眼鬼』が……………『嵩増(かさま)大黒繊(だいこくせん)』が止まる事は『決して無い』。

 

大黒繊とっては『勝利し続ける事』でのみ、己の存在意義(レゾンデートル)を満たす事が出来るからこそ…………だからこそ、其の身が止まる事は無いのだから。

 

 

 

 

◆左の地に立つ白◆

 

 

 

 

同時刻、新大陸某所。

 

 

ぷにょん、ぷにょん、ぷにょん………そんな(SE)を鳴らして跳ねる()()は、柔らかで、流動的で、貪欲な()()である。

 

木を飲み、土を食い、岩を溶かし。口はなく、目もなく、臓器すらも見当たらず。まるでゼリーの如き『流体と固形』の中間たる身体をぷにょんと蠢かせ、見た目は『真っ白なスライム』たる其れは、()()()()()を繰り返しながらに動き続ける。

 

十秒経てば一は二に、二十秒で二から四、一分経てば更に増え、放置したなら増えに増えて、一匹()()取り逃したならば、もう『手が付けられない』…………何時しか荒野に空いた『白い穴』が出来た時には数千、否『数万の白』が、其の地を埋め尽くす。

 

増えた白のスライム達からは、感情を読み取る事は出来ない。彼等は無機質に喰らって増えて、そして自分達が作り出した穴へと自ら身を投げ、重力という摂理に従いながら落ちて行き。

 

穴の底に叩き付けられた『白』が飛び散り、後続の『白』と融合し始め。穴に張り付いたスライムは『壁』となり、広がって『床』となり、積み上げられた物は『柱』や『階段』となり………最後の一匹が其の身を『閂』に形を変え終えた頃には、新大陸の荒野に『巨大な純白の塔』が完成した。

 

彼等は知っている…………嘗て此の地に足を踏み入れた者達は、此の様な物を『作り上げていた』と。

彼等は覚えている…………自分達の手による物では無い物を見ると、殆どが『調べずには居られない』と。

 

『白の流体達』……………『(へだ)てる大白壁(だいはくへき)』は、己が創り出す(モノ)を調べようと訪れる、愚かなる来訪者(エサ)を口を開けて待ち続けるのだ。

 

 

 

 

◆左の地に立つ緑◆

 

 

 

 

同時刻、新大陸某所。

 

ペンヘドラント大樹海地帯とは異なる、樹木が生い茂る樹海の地を『虫達』が飛んでいる。

 

新大陸で虫系統のモンスターは探せば幾らでも見付かり、其の特色も新大陸での生存競争の中で、西に向かえば向かう程に『巨大化する傾向』を持っている。

 

だが其の虫達は通常の其れと異なる特徴を宿しており、身体の全てが『緑一色』であり、種類や種族の全てが異なれども『完璧に統率されている』おり、そして『殺すのではなく生け捕りにして何処かへ運ぶ』という特色を宿す。

 

だがしかし、()()を説明する上で『そんな事』は重要では無いのだ。

 

「くっ、そ………!離せ!!離せ!?!」

 

決戦フェーズに参加していない獣人族(ビーストマン)(NPC)が、蜂とも蜘蛛とも蠅とも取れる見た目ながら、しかし其の何れの虫の特色にも当て嵌まらない『奇妙な巨大羽虫』に獅噛み付かれ、拘束された状態で樹海を運ばれたさきで『ある場所』に辿り着く。

 

彼は見た…………己の視線の先の大地に根座し、あまりにも肉々しい大口を花弁で彩る『異様で巨大な花の姿』と、周りに同じ様にして運ばれたモンスター達が無感情に投げ込まれ、其の口により噛み砕かれる瞬間を目撃した事で『自分の末路』を悟った。

 

「ひっ…………や、やめっ………!」

 

解放された束の間、花が持つ唇すら備えた巨大な口から細長くも触手に似た()が伸ばされ、獣人族の男の身体にに巻き付くや、コード付き掃除機のコードを引き込むが如く、口の中へと摺り込む。

 

遺言も断末魔も上げる(いとま)も無く、ミキサーに掛ける様に粉微塵に咀嚼し、生命だったモノを嚥下した花は『甘ったるい腐臭を帯びた()()()をする』と、其れを『合図』としてか虫達が再び樹海へ散り散りに広がって飛んでいく。

 

虫と花は嘆きて、『緑』の其れに()()は言う。

 

 

─────────こんな(もの)では()()()()

─────────もっともっと()()()()()()

 

 

そうして『緑の花と虫達』は………………『蟲喰(むしば)大緑宮(だいりょくきゅう)』は、其の『願い』を叶える為に行動する。

 

 

 

 

◆???◇

 

 

 

 

同時刻、某所。

 

「そうかぁ、ジークヴルム………オメェさんは『越えた』かぁ…………」

 

見上げた先に空は無く、在るのは果ての見えぬ暗闇のみ。然して『其れ』は何かに思いを馳せて、其の口より吐き出されるのは、果たして如何なる感情か。

 

「どうやら、そん時がぁ『近ぇのかも』知れねぇなぁ……」

 

彼等彼女等は力を以て、今を生きる者達に問い掛ける存在(もの)であり、其の一つに座する『最古の兎』は口に咥えた煙管に火を灯した事で、見上げた先に在る()()は僅かながら照らし出された。

 

「……『花』に『風』に『月』は、活きの良いのが居る。時間は掛かったが漸く『鳥』も、善いのが見付かった。……………俺等(おいら)ァにゃあ出来なかったが、彼奴等(アイツら)ならってぇ…………『信じたくなっちまうもんだ』なぁ」

 

其れはあまりに『巨大』で、其れはあまりに『禍々しく』、そして其れは…………深く深く『眠っていた』。

 

人一人ならば簡単に圧し潰せてしまえそうな、あまりにも巨大な鎖によって雁字搦めにされた『其れ』は、今は眠りし『神の玉座』………………或いは、()()()()()()()()

 

「あと少しだぁ………。待っててくれよなぁ、()()()

 

煙管の火が消え、兎の姿もまた消えて。

 

そうして眠れる神は、再び暗闇に封じられる。

 

しかし其の目覚めの時はそう遠い未来では無いのだと、其の兎は…………不滅の名を掲げる最も古い一羽の兎だけが知っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界は前へ、また一つ進んだ。

 

 

人の巣立ちを前にし、天を覇する龍王が立ち塞がり、戦いの果てに斃れ…………しかして蘇り。

 

神代に封じた始源達は、胎動より鼓動と変わりて、世界を彩り蔓延り、厄災を齎していく………。

 

目覚めた始源に接敵した者、成す術無く倒された者、其の者達が手にした情報は微細に放たれ、そして拡がり根付いていく。

 

 

 

 

 

 

人よ、人よ、嘗ての人が成し得なかった抵抗を成せ。

 

始源に抗い、越えて往け。

 

其れが現在を生きる者の、果たすべき責務なのだから…………。

 

 

 






変わる情景



※新章準備期間の為、一ヶ月半程の休みを頂きます。

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