ユニーク小鎚の派生と、最後の一つの製作の為に素材集め
アイトゥイルの開いたゲートを潜り、ファイヴァルの裏路地に出たペッパーは、アイトゥイルに物陰で隠れるよう指示を出しつつ、付近一帯に不審な影や人物が居ないか確認。
風が吹き荒ぶ街中を駆け抜けて、武器屋に突入するとカウンターより此方を見つめる、鍛冶師の老婆が一人で店番をしていた。
「おやおや…ペッパーさん。そろそろ来る頃だと思っていましたよ…ホホホ」
「お婆様、御久し振りです」
ペコリと一礼してカウンターに歩み寄ると、彼女は語らずとも静かに、ペッパーが何を求めて来たのかを察し。カウンターにゴトリ…と一本の小鎚と、忍者ゲームでよく見るジャパニズムを感じる、一本の巻物を乗せる。
其の小鎚は『相剋』という言葉が、似合う存在であった。
片面は灼熱を帯びるマグマの様な、身体を流れる血脈の如き
片面は轟流の流れを感じる怒濤の水の様な、しかし淀み無き
持ち手と繋ぐ場所を挟み、其の両面は互いに相容れる事は無く。然れどて、其の身より放つ熱と冷は、互いが負けじと力を出し合う事で其の力を伸ばし合い、一つの武器の
「名前は……そうさね。炎と水、相反する属性同士。『ヴァンラッシュブレイカー』とでも名付けようかねぇ…。
そして…此の小鎚の製造工程を記載した、巻物も渡しておくわ…。ペッパーさんなら、正しく扱えると思うからねぇ……ホホホ」
其の台詞がトリガーと成ったのか、ロックオンブレイカーの製造秘伝書が飛び出して、巻物が其所に吸収されて消滅。ペッパーはヴァンラッシュブレイカーをアイテムインベントリに収納し、其の性能をチェックする。
ヴァンラッシュブレイカー(ユニーク
灼熱の焔たる赤と波濤の如き青の、相剋せし属性を一つの小鎚に宿した其れは、人の成せし御業の形であり、放つ一撃は触れた物質の悉くを焼き付くし、放つ一撃は触れた物質の悉くを押し流す。
鉱石を喰らう大蚯蚓の魂は、異なる力を一つの石に納めた神秘すら食らい尽くし、其の権能さえも己の力に取り込み、進化していくのだ。
攻撃時にインパクト部分によって、炎属性と水属性の属性攻撃能力を
此の武器で鉱物系アイテムを砕いた場合、其のアイテムを破壊し、希少度合に応じて耐久値を回復する。
ロックオンブレイカーの製造秘伝書・改弐式:ユニーク武器・ロックオンブレイカーの生産、及び成長形態を製作する際に必要となるレシピ。武器屋で鍛冶師に見せる事で、素材を用意すれば生産可能となる。
此のアイテムはアイテムインベントリには含まれず、他者によるPKをされても、プレイヤーの手元を離れない。破棄不可能。
(ギルフィードブレイカーがある意味で『正統成長形態』とするなら、ヴァンラッシュブレイカーは『属性特化形態』への成長って感じなんだな。
火属性と水属性の両方を使えるようになるのは、普通に戦略の幅が拡がるし、光と闇を従える的な物に通じる、中二病チックなロマンを感じるぞ…!
というかムカデミミズの奴、鉱物の権能さえ食い尽くして、其の力にさえも適応するとか…どんだけ進化に対して貪欲なんだよ……。いや、其れがマッドネスブレイカーが3つの成長分岐に対して、大きな影響を与えてるんだろうけども)
「ありがとうございます、大事に使わせていただきます」とペッパーは老婆へと礼と頭を下げて、武器屋を跡にし裏路地へと走り去り、アイトゥイルと合流。
アイテムインベントリに在るMPポーションを手渡し、兎御殿に帰還。其所からシクセンベルクの裏路地へとゲートを繋いで、千紫万紅の樹海窟に走って行く。
全ては、マッドネスブレイカーに残された最後の成長派生形態、其の育成に必要となる
もう何度目になる見慣れた樹海へとやって来た、ペッパーとアイトゥイルは、他プレイヤーに見付からないように草木の影を利用しながら、視野を広く持ちながらフィールドを散策する。
木の根元や苔が生えた壁を、注視して虱潰しに見つめ続けて、彼は地表に競り出した人の背丈程の高さがある、白い山を発見した。
其の山は所々に小さく、翡翠の光を放つ緑色の粒が光を放っており、ペッパーはアイテムインベントリからマッドネスブレイカーを取り出して、連続で打撃を叩き込みながら、採掘を開始。
ドロップしたのは、表面が鶏卵の殻のような肌触りと、翡翠の粒が無数に点在する白い楕円形の丸石で、アイテム名には『
目的の鉱物を掘り当て、アイテムインベントリに入れながらペッパーはふと、生命碑石の内容から此れを用いて育てたマッドネスブレイカーの、成長形態の能力予想が出来ないかと考え、早速確認してみる事に。
石の中にある翡翠の粒達は其の昔、取り出して細かく砕き、薬草と共に煎じる事で万能の薬としても機能し、毒草と共に万物を死に至らす劇物とも成った。
強すぎる回復力は、他者を活かすも殺すも可能なのだ。
(まぁた、とんでもない鉱石だなぁ………しかも人の病を直せる薬にも、人殺せる劇物にもなるって……薬と毒は表裏一体って訳ですかい。
という事はだ、生命碑石で作る成長形態って『
ちょっと怖いね…うん。でも、そうならないかも知れないから、大丈夫だろう…そう思おう………)
生命碑石を用いた、マッドネスブレイカーの成長派生形態に不安を覚えつつも、ペッパーは採掘ポイントを粗方堀尽くし、十分に育てられるだけの量を確保。
このまま帰るのも味気無いと思い、
およそ1時間程の捜索&戦闘で、クアッドビートルを4匹とエンパイアビー・クイーンの
4匹目のクアッドビートルを、ギルフィードブレイカーで頭殻を打ち砕いて倒した瞬間、ペッパーはレベルが1つ上昇。
致命魂の首輪により、通常の2倍必要となる戦闘経験の積み重ねが、此迄のスキルを更なる高みへ昇華させ、新たなスキルの開眼が、彼をより強くする。
「よっし、こんなもんで良いかな。素材も此れだけあれば、改修も少しは捗るだろう」
「ペッパーはん、何時も以上に気合が入ってるのさ」
「そうかな?クアッドビートルや、エンパイアビー・クイーン達。呪いを受けた身の俺と戦ってくれた事に感謝してるし、そんな感謝を全身全霊全力全開で示してこそ、意味が有ると思うから」
『獅子は兎を狩る時も全力を以て行うべし、其れが王たる者の生き様であるが故に』
百獣の王者・ライオンとなって、広大なサバンナを駆け回り、己の手で王国を築くレトロゲームで、先代の王者にしてプレイヤーが操作するライオンの父親が、王位を譲り渡す際に贈った言葉をペッパーは思い出す。
「さてと!フォスフォシエに戻ったら、マッドネスブレイカーの育成を依頼して、奥古来魂の渓谷を越えて先のエイトルドと、兎御殿を繋げられるようにしよう。アイトゥイル、行こう!」
「はいさ、ペッパーはん!」
こうして1人と1羽のパーティーは、新たな街を目指して進軍を開始する。目的地はエイトルド、立ち塞がるは奥古来魂の渓谷のエリアボス、合唱髑髏の異名を持つ『
胡椒は戦う、己が持ちし武器の為