新章開幕
強者との戦いは、記憶に焼き付く程に強く残る
世界に落ちて来た
紅い閃光が宙を舞う。
戦士が地より弾丸を射放つ。
『操作の基本は出来ている』
「此れでも其れなりに練習したんだ…………よッ!」
赤く燃える炎のエフェクトペイントを宿し、アンシンメトテリーの翼より火を噴く巨大な機人が、堅実なる戦機を狩らんと迫り。
対する戦機もまた敵機の誘い込みを建物に自ら飛び込みつつ、装備された機人用のハンドガンを抜き撃ちするも、不死鳥は容易いとばかりに悠々と回避して制空の元に、其の鋭牙を戦士に振るう。
「見方によっては『初心者狩り』してる様にしか見えないんだけど、其処の所は大丈夫ですかねぇチャンピオンコンビ!?!」
『貴方程のプレイヤー相手に手を抜く事は、此方が狩られる事に繋がる。ので、チャンピオンとして『全力を以て』相手をするのが礼儀……………!』
『本当にすいません…………!』
「随分高く買われるなぁ…………?!」
『獅子は兎を狩るにも全力を尽くす』──────そんな言葉が有る様に、今のシチュエーションが丸々当て嵌まる光景もそうは無い。
ミサイルによる左右挟撃、レールガンの正面攻撃という王者からの三面対処要求を、戦士は建物を盾にしたミサイル回避と、積載された装甲をアーマーパージによってレールガン回避のデコイに利用。
着弾による砂塵と轟音を目眩ましに、背面に懸架された最高火力武装『
だが………其れでも不死鳥には届かない。不死鳥を操る者と不死鳥が乗る風と目となる者には、其の砲弾もスルリと抜けて砲塔が右腕と右肩と共に斬り刻まれ、刹那に距離を取ってレールガンで片脚を粉砕し、再度の接近で✕の字斬りが其の身を四等分に切り分ける。
「……………何時になるか解らないが、必ず其の不死鳥に傷を負わせてやる。チャンピオン────────!」
『……………楽しみにしてる、チャレンジャー」
決意を込めた捨て台詞を吐き捨てた直後、堅実なる戦士は爆散の末路を辿り、不死鳥の勝利を報せしアナウンスが鳴り響いた。
満月が夜闇に昇り、江戸の町を見下ろし照らす。
銃弾が飛び交い、斬閃が迸り、破砕音が鳴り響く。
「天!」
「誅!」
「だうぇい!?」
「わっ!!」
前線を張る剣士を背後から、敵諸共突き刺し斬り殺さんとする殺意の攻撃に、狙われた者達は冷や汗を伝わせながら回避する。
ある者は血煙と、ある者は勇者と、ある者は祭囃子と、ある者はレイドボスと呼ばれ、江戸時代の末期・幕末の様相を成した世界で鎬を削り合う。
「斬星竿だと『相性悪い』………。だから此れから、
目を完全に見開いたレイドボスが、笑いながらに武器を切り替える。手に取るはガチ武器の大太刀、其れより変わるは柄尻同士を縄で繋ぎ、湾曲した刀身の短弧側に刃を持つ内反りと呼ばれる様式の刃物たる『ククリ刀』、刃の衣装は合わせる事で『二対の双魚』。
其れを見た時、勇者と祭囃子は確信する……………自分達はレイドボスという眠りし猛虎の尾を思いっ切り踏み抜いて、荒ぶり昂る龍の逆鱗をブッ叩いたと。
「オイオイオイオイ、嘘だろ!?マジか!?!」
「『
「え、何ですかアレ」
「節分血風録の一位報酬、此のゲーム唯一の『
「「は…………ッ?」」
一言、同時に江戸の街に風が吹き抜け、先程まで立っていた筈の勇者のズタズタに斬り裂かれ、青天井で倒れながら身体アバターが崩壊し…………脱落。
あまりにも呆気無い、あまりにも無情と言える、絶対不変の『死刑判決が下された瞬間』だった。
「本当に、本当に楽しい。だから─────『
「ハハハ……………!」
「コリャやべ…………「天誅ぅぅう!!!!!」ッ!?」
そんな状況、勝機と捉えた幕末ランカーで範囲爆撃のスペシャリストが、着火した大玉花火を屋根の上から大量に放り投げて参戦し。
「天誅」
「ばぶれば!?!」
距離が離れているのにも関わらず、投げられた全ての花火玉の導火線の、着火場所と着いていない場所の境界線を、寸分狂い違わぬ飛翔斬撃で其の全て諸共、三分クッキングならぬ三秒斬殺で仕留めた。
「「うわぁ…………」」
恐怖や絶望、離れに離れた格、天賦の才の違い…………其れをまざまざと、残された二人は見せ付けられ。
「………………やる?」
「「ッ、当たり前だ!!!」」
ヤケクソ気味ながら、然して獰猛な飢えた獣の如く叫びて突撃し…………レイドボスより無慈悲なる斬撃暴風雨が襲い掛かった。
ゲームにはエンドレス組手という物がある。此れは別のゲームならば勝ち抜き戦、或いはボスラッシュといった名称で呼ばれる『エンドコンテンツ』であり、ゲームクリア後の『御楽しみ要素』でもある。
「まさか此処までとは…………!」
「ありがとうございました、良い剣筋でした」
「ぐっ…………此の敗北、忘れはしない…………!」
木剣による組手、其れも『エインヴルス王国騎士団の騎士達相手』に戦い、剰え騎士達の持つ『木剣を叩き落とす』や『相手に降参を言わせて決着を付ける』と言った方法で、勇者は連勝を重ね続けていた。
「ちょっと休みたい…………」
縛りプレイは緊張感を以て挑める反面、物凄く神経を使う。其処にタイムアタック要素まで加えると、縛りを破らない為のチャート構築とサブプランを幾つか用意等も加え、破綻すれば即終了の恐怖も加算されるので心臓に悪い。
何より此の組手イベントの性質が無限組手タイプと確定した時から、確実に副団長や団長クラスが出て来るとの認識の元に戦っていたが、流石に限界が近いのでそろそろ切り上げたい所であった。
「ッ……………!
「「「「「「「「「「アレックス王子!?」」」」」」」」」」
「呼びましたか、陛下」
まるで世界が、勇者に更なる力を示せと宣告する様に。第一王子の一言、騎士団団員や今し方下がった第二騎士団団長すらも声を上げる中、其の騎士はまるで転移魔法でも使ったかの様に現れた。
風に揺れる金髪に海の様に透き通った蒼眼、凛とした顔立ちと顔以外に騎士鎧を纏いて、手に持つは水晶で作られた堅牢なる盾と、腰に吊るすは業物たる剣の柄と鞘。
数多くの騎士達が羨望や尊敬、一部が嫉妬に彩られた視線を向ける中、他の者達も驚愕に駆られた表情で呼ばれた騎士を見た後、勇者に視線を向けて居る。
騎士達が武器や鎧を預かり、彼は木剣を持って蒼空を舞う勇者へと歩み寄る。
誰が呼んだか『当代無双』、誰が呼んだか『王認勇士』。
エインヴルス王国第一騎士団団長にして、栄光在る王国騎士団最強のNPC。
王が認めし最も勇猛なる騎士の称号を、王より直々に授かったという設定を持つ『王認勇士アルブレヒト』が、勇者の前に立ち塞がり……………そして其れを見たペッパーは、心の内にて呟いた。
(此れは…………流石に『やり過ぎた』って感じかな)
此れは彼に息付く断片