VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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当龍から秘話を聞け




武器に宿るは持ち主の想い、其の想いを知る事は鍛冶師の役目

夜空を駆けて、スカルアヅチの天守の屋根に両の脚を着け、満月から少し欠けた十六夜の月が照らす中、骨と鱗と皮を鞣して作った屋根に座ったジークヴルムと隣り合い、ペッパーがアイトゥイル・ディアレをコートから出し。

 

インベントリアからヒトミを呼び出して、ノワが天守に存在する影から出て来て彼の真横に座った所で、死を越えて兵器から生物となった金の龍は口を開いた。

 

『さて、確か鍛龍の事…………だったか』

「はい。ヴァイスアッシュ先生からお前さんなら俺等(オイラ)ぁの鎧を使って、鍛龍を作り出せるらしいので作ってみせろと宿題を託されました」

『……………クッハハハ!ハハハハハハハハハハ!おぉ、そうかそうか!ヴァイスアッシュは君に、其処まで言ったか!フハハハハハハハハハ!!!』

 

ペッパーが述べた言葉にジークヴルムは目を丸くし。しかしながら不滅の名を冠した朋友が、時代の英傑に足り得る勇者に課した試練なれば、成程納得とばかりに高らかに笑ったのだ。

 

『ククク…………!いや見事、俺を模倣した鎧の力を引き出し戦い抜いた其の実力を買っているという訳か。フフフフ…………ならば俺も答えねばなるまい。ヴァイスアッシュが俺が渡した角を使い、鍛龍にして持って来た時の事をな』

 

話を始める前に予めジークヴルムに許可を取ったペッパーは、録音アイテムをヒトミに複数持たせて彼と向き合い。そうして金の龍が語り出した、ヴァイスアッシュと鍛龍の話はペッパー達にとって『非常に価値の有る』、ユニークモンスター達の永く遠く過ぎ去った過去の話ながら、鍛龍へと関わる『本当に貴重な話』であり。

 

当時のヴァイスアッシュによれば………『ジークヴルムの角にマナ粒子の()()()()()()()()()()()を加えて、概念形成(コトナリ)で偉業という概念たる角に質量を加えた事で物質化、其の角を加工して芯として余す事無く使って鍛えに鍛え、鍛え抜いた其の果てに造り上げられた逸品』────────其れこそが天下五剣(てんかごけん)の一工となった鍛龍の話なのだと。

 

ヒトミは其の会話を録音アイテムを使ってジークヴルムの話を記録し、ペッパー・アイトゥイル・ディアレは興味津々の時折目を輝かせたりし、ノワはゴロンと寝転がりながらペッパーの太腿に頭を乗せてジークヴルムに視線を向けていた。

 

『……………という訳だ。此処まで熱く語ったのは、俺とて随分久しいな』

「ありがとうございます、ジークヴルムさん。御陰で鍛龍作りに俄然気合が入りました」

「凄いですね、ノワルリンドさん…………!」

『フン。だがまぁ、貴様の昔話として聞いておこう』

 

此方がジークヴルムの話を聞いて居た時に、何時の間にか目をキラキラに輝かせた秋津茜と、ツンデレムーブのノワルリンドが近くで話を聞いていた。

 

装備を黒之十束(クロノトツカ):百刻式(ヒャクコクシキ)に変えて、アクセサリーだろう狐面を頭に乗せた秋津茜では有るが、よく見ると今まで顔に刻まれていた火傷痕たる『ジークヴルムの呪い(マーキング)』が無くなって、快活な年相応の女子と言える顔となっている。

 

「秋津茜とノワルリンドさん、何時の間に?」

「ジークヴルムさんが高笑いして、天守閣から外に出てみたら屋根でペッパーさん達が話してたので、ノワルリンドさんと一緒に聞いていました!」

『やっと眠れると思っとった所に、ジークヴルムの笑い声が聞こえたのだ』

「…………すいません。唐突に大声出しちゃって」

 

流れで秋津茜とノワルリンドに近況を聞いてみた所、ノワルリンドは竜災大戦の後にスカルアヅチの天守閣でマスコット扱いとして崇められる立場になり、秋津茜はノワルリンドと心を通わせた事で『ドラ姫』なる異名がくっ付いたらしい。

 

また彼女の頭部に在ったジークヴルムの呪いは、ジークヴルムを討伐した事で何かしらの条件を満たしていたのか、今現在は『ジークヴルムの祝福』へと名前を変えただけで無く、彼女の意思によって祝福⇔呪いに切り替えられる他、該当部位無装備時に『黄金に煌めくエフェクト効果』が出る様になったのだとか。

 

更には大戦時に同じく活躍したエルドランザ、彼女はクラン:スペリオルアビスを主体とした建築職プレイヤー達による『彼女を祀る海上社』が構築されている最中で有る事と、魚人族(マーマーン)達から『海の守り神』として称えられる偶像となったらしく、より良い品質や鮮度の魚介類を渡せば『鱗や牙を報酬として恵んでくれる』のだとか。

 

「ペッパーさんはジークヴルムさんとお話してたんですか?」

「あぁ、ヴァッシュ先生が持ってる武器に関する事をジークヴルムさんから色々聞いてね。一応録音アイテムで記録したのを幾つか持ってるけど持って行く?」

「良いんですか!?わぁ、ありがとうございます!」

 

ヒトミが録音したジークヴルムの話が込められたアイテムを彼女に渡し、取り敢えずやるべき事を成したペッパーはヒトミをインベントリアに入れて、アイトゥイル・ディアレ・ノワを抱えた後にジークヴルムへ礼を述べ。

 

空中機動系スキル達を点火して、スカルアヅチの天守より魚人族達が前線拠点の海に面した場所に構えた居住区画を目指し、猛スピードで駆け降りて行く…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ、ペッパー!我が友ペッパーではないか!無事だったか!」

『ブジだったみたいだね』

「ル・アラバさんにネレイスさん。無事みたいですね」

 

前線拠点内の海に面し、クラン:スペリオルアビスが作った港街的な魚人族達の居住区画に降り立ったペッパー達に、竜災大戦を乗り越えたル・アラバとネレイスが声を掛けて来た。

 

そんなル・アラバの声に釣られてか、他の魚人族や亜人種NPCにプレイヤー達もゾロゾロ出て来ては、何時の間にか此方をグルリと囲んで包囲網が完成し、話を聞く気満々な状況が出来上がっている。

 

「ル・アラバよ。もしや彼が…………」

「ル・ケーネ、彼がルルイアスにて我が種族の英傑・ゲネテレが振るった『アスカロン』を拾い、今し方直しているのが、我が友の一人たるペッパー………正しくは『ペッパー・天津気(アマツキ)』なのだ」

 

四本腕と四本脚の蛸の魚人族らしい男がル・アラバに問い、彼が答えたのを見たペッパーはインベントリアからアスカロン・リペアを取り出して見せれば、此の場に居た魚人族達はおぉっ!とざわつく。

 

「まさかゲネテレの得物が残っていたとは…………!」

「荒ぶる深海の帝王を退けた際に失われたと伝承が有ったが…………」

「ふぅむ。此の感じからして、今のアスカロンは『武器として振るえる』だけの力は取り戻しているのぉ…………」

「解るのか、ル・ザナガ」

「此れでもワシとて魚人族の鍛冶師だ、良い鍛冶師と巡り合って直されていると解るわい」

 

魚人族のNPC達による会話、プレイヤー達もペッパーとアスカロン・リペアに着目する中、魚人族の鍛冶師と名乗ったル・ザンガはペッパーに言ってきた。

 

「御主の事は我等が英雄のル・アラバや鉱人族(ドワーフ)達、地上に生きる多くの戦士から聞いた。アスカロンを拾い、深き海の底の果てまで潜り、其の剣身を直していると…………」

「えぇ。アスカロンがリペアの状態になったのでル・アラバさんに報告と、魚人族の国王へ御報告をしたいと思いまして。故にル・アラバさんに会いに来たのです」

 

ジークヴルムのユニークシナリオ、決戦フェーズ前に約束を交わしていたので確認をしに来たのも有り、ル・アラバも頷いていたのも有ってかル・ザナガも納得の表情で。

 

「魚人族の国には何時出発する?私も同行しよう」

「アスカロン………!魚人族の英傑ゲネテレが生前振るった得物、其の起源を紐解くならば我々が同行しない手は有りませんよ………!」

「ヒュクノティム院………!」

「うわでた、武器狂い!?」

 

何時の間にか其処に居たクラン:スペリオルアビスのリーダーのヒュクノティムと、クラン:ウェポニアのリーダー・SOHO-ZONEが声を上げ、プレイヤー達からは御決まりの台詞返しに恐々とした声が零れる。

 

「まぁ、はい。なので日時の調整をしようと思いまして。あぁSOHO-ZONEさん、武器に関してはありがとうございます。竜災大戦でエンジリング・ブレードとボーリングストライカーを使いましたが、とても良い性能だったとジョットさんにタイニー・アルティックさんへ伝えて下さい」

「御気に召してくれて何よりだ。ちゃんと伝えておくよ」

 

武器コンペに置ける素直な感想を伝え、ペッパーはヒュクノティムとSOHO-ZONEを含めた話し合いを行い、リアルの予定や海中戦等含めた準備期間を加味して『三週間後の9/22』に魚人族の国へと向かう事が決定から、ヒュクノティムやSOHO-ZONEがクランメンバーにEメール等で情報を共有。

 

彼は其の一瞬の隙に上空ジャンプから空中疾走でサササッと包囲網を脱出から、ティアプレーテンの近辺到着とファストトラベルで鉱人族の国・地下都市ホルヴァルキンに移動し、其の脚でミダス二十八世と謁見。

 

ヴァイスアッシュから課された宿題と彼が作った一式装備と鍛冶道具を見せつつ、旧大陸の水晶巣崖(すいしょうそうがい)に生える宝石塔と、シグモニア前線渓谷(フロントライン)の最上部に在るツァーベリル帝宝晶を前金として提示した上で『高性能な鍛冶に用いる炉と金床の建造を依頼』すると共に、決戦フェーズ開始前の準備期間中に掘り出した鉱石達から選りすぐりの品々を素材として提出した事で、其の場に居たミダス二十八世並びに其の場に居た鉱人族を誰一人の例外も無く戦慄(ドン引き)させたのである。

 

無論此の交渉はイニシアティブ含めてクリティカルヒットの大成功となり、国王直々に『我が国の威信に掛けて最高峰の炉を作ってみせる』との確約をいただき、ペッパーもまたよろしく御願い致しますと述べて国内に在る借屋へと移動し、セーブ&ログアウトを行なって本日のシャンフロを終えたのだった……………。

 

 

 

 






一つ一つ、コツコツと


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