VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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王者 対 挑戦者




鶴は千年、亀は万年、スパルタンは幾星霜

緋翼連理(ヒヨクレンリ)───────此のNephilim Hollow(ネフィリム・ホロウ)というゲームに置いて知らぬ操り手(プレイヤー)は居ない、ランキング一位のプレイヤー・ルストが駆るネフィリム。

 

ゲーム開始前の事前調査で解っているのは、此の機体自体が装甲を削って機動力に富んでいる事と、左肩に搭載された巨大ブースターと右脚に積載されたブースター、メインとなる背中のブースターによる左右非対称(アシンメトリー)の突発的な軌道変更を可能としている事。

 

武装は左足と左太腿に在る遠距離攻撃可能な三連装ミサイル・中距離では曲げ撃ちを可能にするレールガン・近距離は両腕に実体剣を装着して刺突と斬撃に用いると、機体重量と機動力に戦略を事細かに調整したと一目で解る、凄まじく素晴らしい出来栄え。

 

更にはルストはモルドと組む事で、阿吽の呼吸と未来予知レベルの読みをジークヴルム相手に通せる程の強さを持ち、残っていた片目を他プレイヤーの攻撃行動等の不確定要素が常在する戦場下、朱雀の炎刃でピンポイント斬り裂いて潰した確たる実力を持ち合わせている。

 

伊達にネフホロの頂点に立っているチャンピオンコンビ、そんな二人が自分がネフホロにログインしたのを知ったのかは定かでは無いが、わざわざ緋翼連理を引っ張り出してまで直々の挑戦状を開始数時間の新参者に叩き付けてきた事実は、並大抵の事では無いと自覚するには充分過ぎた。

 

「見方によっては『初心者狩り』してる様にしか見えないんだけど、其処の所は大丈夫ですかねぇチャンピオンコンビ!?!」

『貴方程のプレイヤー相手に手を抜く事は、此方が狩られる事に繋がる。ので、チャンピオンとして『全力を以て』相手をするのが礼儀……………!』

『本当にすいません…………!』

「随分高く買われるなぁ…………?!」

 

ミサイルが射出されてレールガンが挟みに来る中、建物を盾にしてミサイルを防ぎつつ、レールガンは装甲の一部を脱衣(パージ)してデコイに利用。タイターン MK-1stが持つ最高火力武装『折り畳み式大口径砲塔(フォールディングバーストキャノン)』を展開から、建物越しに引き金(トリガー)を引いてはブチ噛ます。

 

当然ながら緋色の不死鳥には当たる所か掠りもせず、逆にワンアクションで接近戦に持ち込まれ、三度の閃光が迸ってバーストキャノンだけで無く右腕と右肩までも斬り飛ばされ、コンバットナイフに切り替えた最中に距離を離された瞬間にレールガンが着弾し、片脚を壊された所に緋翼連理が変速挙動で突貫様にX字斬り。

 

其れによって御世辞にも頑強では無い、タイターン MK-1stが四等分にされた事で耐久値が底を尽く。

 

「……………何時になるか解らないが、必ず其の不死鳥に傷を負わせてやる。チャンピオン────────!」

『……………楽しみにしてる、チャレンジャー』

 

決意を込めた捨て台詞を吐き捨てた直後、タイターン MK-1stが盛大に爆散して、緋翼連理の勝利を報せるシステムアナウンスとウィンドウが表示、此処に勝者と敗者が決定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャンペーンシナリオを、まだ終わらせていない………?」

「俺は基本的に、ゲーム全体の特徴やシステム周りをちゃんと経験した上でストーリー攻略をするタイプだから、大方把握し切るのに一日か二日は掛かるのよ。意外かも知れないけど」

「其れでも基本的な挙動が出来てる辺り、やっぱりペッパーはVRゲームの適正が有るのかな………?」

「いやいや…………俺の本懐はレトロゲームだし、シャンフロをキッカケにVRゲームを始めた身だからね………」

 

リスポーンしてルスト&モルドの青春コンビと御対面。

 

シャンフロでの小柄なダークエルフガールと長身快活系男子の二人組を見ている事が多かったが、ネフホロのルストは女性アバターで赤髪ショートカットの大人な雰囲気を醸し出した鼻の上に斬り傷、赤と黒を基調としたスーツと小物入れを複数装着した現役軍人な見た目。

 

逆にモルドはサングラスを着けて目元を隠し、ガッチリとした巨体にコートとロングズボンに厚皮のシューズ、コマンドパッドを持つ姿が似合う参謀的アバターな姿をしていた。

 

「此れからどうする?」

「先ずは当然ストーリークリア、次に不死鳥落としの新ネフィリム製作かな。ちょっと時間掛かるから、流石に今直ぐの再戦は無理だ」

「じゃあ新ネフィリムが出来たらやろう」

「即決かよ…………まぁ良いけども」

「家のルストが本当にすいません………」

 

サンラク曰く『妖怪ネフホロ狂い』と呼ばれているルストが、シャンフロと異なりガツガツ来るスタンスに良い意味で凄まじいギャップを抱く。

 

そして当然ながら、ネフホロチャンピオンが直接挑戦状を叩き付けたプレイヤーに、先輩プレイヤー達が殺到した挙句にルストが『さっきやって来たばかりの新規プレイヤーで、GGCでネフホロ宣伝したA-Zだからヨロシク』と一言呟いた事で、ホットペッパーはプレイヤー達からの質問攻めを食らう羽目になり。

 

取り敢えず今日中にストーリークリアしてやると決意を固め、プレイヤー達の追跡に追われながらも行動を開始したのである…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リトライ数十回&日付が変わるまで残り二秒というギリギリで、ストーリーモードのラスボスである、此の世界に一番最初に堕ちてきた原初のネフィリムの『グリゴリ』を解体し、エンディングを見終えて就寝し朝を迎えた。

 

本日はバイトのシフトが休みの、大学の講義も午前で終わりなので、予定通り『対緋翼連理用新規ネフィリム製作』に取り掛かる。

 

朝食を取って身形を整え大学に、天音(あまね) 永遠(とわ)の彼氏という肩書きが付いて回るので、一挙手一投足に置いても意識する事は確定事項で、同じ大学に通う者達や講師陣の視線も有るので注意せねばならない。

 

此の日の講義も特に何事も無く終え、帰宅から手洗い嗽に水分補給から講義の軽い復習をしてからネフホロへとログイン、タイターン MK-1stを駆って新機衣人(ネフィリム)製作の為に『野生の機衣人捕獲』に移る。

 

此のゲームは世界的に有名な某モンスターゲームと同じく、ネフィリムを捕獲して着飾る事で自分の持ちネフィリムとする事が出来、あちらと違って個体値等の要素が無い代わりに武装重量や積載限界が諸に機体に現れるので、プレイヤーは常に其れを意識したビルドを要求されるのだ。

 

ゲーム内で確認されているネフィリムは敵状態(エネミー)として判定がされている開眼個体と、プレイヤーが捕獲・操作可能な瞑目個体の二種類が居り、後者の瞑目個体を使って新しいネフィリムを用いて新機体を作る…………というのが、ネフホロの流れである。

 

「複数候補は見付けたし、後は着飾る為の武装やらを探さなきゃな…………」

 

野生のネフィリムを捕獲し、ネフィリム・カンパニーで買い取ったならば、いよいよネフィリムをビルド…………つまり『着飾る』ターンに入る。

 

ネフィリムの部位は大まかに分けて頭・胴・腰・右腕・左腕・右脚・左脚の七つで構成され、其のパーツもプレイヤーやNPCが製作した物、カンパニーや闇市に物々交換等の方法を用いて購入し、其れをネフィリムに着せて作り上げるのだ。

 

「お、噂の新入り君(ニュービー)じゃねーの!新しいネフィリムのパーツ探ししてるのか?」

「えぇ、対緋翼連理を見据えて。ちょっとパーツについて質問して良いですかね?」

「おぉ良いよ良いよ。で、パーツってのはどんな奴?」

「ありがとうございます。其のパーツ何ですけど…………─────────」

 

そうしてパーツを揃え、ネフィリムを着飾り、出来上がった機体へ最後に『名前』を与える事によって、初めて『完成』と成るのだ。

 

「俺なりに導き出した、緋翼連理含めた高速機動ネフィリムへ対抗する機体。其の名も…………『ギガノトフォートレス』だな」

 

新ネフィリムに名を付け、ホットペッパーは他のプレイヤーに御願いして、ルスト&モルドへの挑戦状を叩き付けた事を伝えて貰い。一足先に指定の場所へギガノトフォートレスを駆って移動して行ったのである…………。

 

 

 






いざ、リベンジへ

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