変わった脅威
「脱皮したな」
「したねー」
「なぁ、エムルとアイトゥイルにゼッタよ。アレどう思うよ」
「アンデッドよりも悍ましい姿ですわ…………」
「骨だけの奇っ怪な姿なのさ」
「ぴぇぇ…………」
初心者プレイヤー達が突撃し、次々と倒れていく様を見ながらもペッパー達上級者プレイヤー達は、
見た目は『骨だけのペガサス』と断じられる様相をしながら、其の異様はより悍ましい姿となっており。皮を脱ぎ捨て骨のみの姿となり、其れで居ながら撒き散らす病もまた『強化』されていたのだ。
「いや~………ある程度の距離まで近付けたんだけど、いきなり『即死効果付与』されてアボンですよ」
「範囲はどのくらいでしたかね?」
「俺が第一形態でタライ落としアタックをした時、病が発症する範囲と同等範囲で起きてたから、多分大疫青の病起こしは『ドームタイプ』と見て良い。発症は落下時の速度的に『およそ五百メートル前後』、本体に近付く程に発症率が上がるなら其れ以上の距離から叩くのが吉」
「即死付与なら、俺とペッパーなら対抗は出来るだろうが………まぁ保っても数秒かそんくらいだろう」
得られた情報を元にライブラリを中心にしたプレイヤー達が動き、考察と考察からの攻略法の導き出しに掛かる。
「銃火器は高レベル帯プレイヤーだとマナ注入で爆発、低レベル帯プレイヤーの魔法攻撃でぶん殴る?」
「すまん。さっき突撃して倒れて戻って来たんだが、初心者連中が放った魔法攻撃が『魔力耐性が高い敵に当たったみたい』に弾かれた」
「第二形態は実質『魔法封じ』かよ…………」
「……………今し方ベヒーモスとリヴァイアサンの最奥のデータベースで調べ物をしていた、ライブラリメンバーから連絡が来ました。彷徨う大疫青、奴はどうやら『攻撃を受ける程に抵抗力』が上がり………其の挙動が『病原菌に対する免疫作用が働くみたいな感じ』らしいです」
「あぁ成程。魔法に対する『抵抗力を高めてるから効き難くなった』…………と」
「本格的にペッパー氏が言った事が『現実味』を帯びてきたな…………。何れにしても始源関係を『全種ブッ倒そう』とする奴も居そうだ」
新旧二つの大陸に居る始源眷族と始源眷属達は、遥か昔に斃れて大陸となっている『始源獣エレボスと始源獣アイテールの身体の一部』といった構図がハッキリと成り立ち、放置し続ければ確実に取り返しが付かない可能性も有る。
だからこそ…………ジークヴルムに人の輝きを示し、証明した者達は止まらない。例え死んだとしても『ゲームだからこそ出来る事』も有り、魔法が駄目ならば『最も原初的な方法』で奴を叩けば良い。
「ライブラリの皆さん、弓矢持ちのプレイヤーを有りっ丈集めて下さい。幸い大疫青自身は『かなりゆっくり歩いている』…………故にバリスタや剛弓に弩弓剣といった『物理弓関係』に秀でた人で、奴を撃ち抜きます」
「了解しました。此方でも準備します」
まだまだ空きが有る大疫青討伐参加枠と、其の大疫青にペッパー達が参戦しているとの情報がプレイヤー達に伝達して行く中、ペッパーはインベントリアより大疫青を倒す為の武器を─────────水晶を身に纏う蠍と昼夜で水晶の色を変える蠍、そして水晶の蠍達の皇帝たる蠍の素材達を用いてビィラックの手で造られし、
右手に着けた
「すぅ…………ふぅ…………!『開け』、『伸びろ』、『弦を張れ』!宝鍠趙弩剣、
当然初心者プレイヤーや低レベル帯の者達からすれば、シャンフロプレイヤーの中で最も知名度を誇り、そしてトップクラスの実力者が『自分達が見た事も無い超高レアなトンデモ気配を纏ったユニーク武器を取り出し』。
剰え上級者に廃人プレイヤー達にとって、シャンフロでは未だ発見されていない『バハムート等の神代の技術に頼らない変形機構搭載のトンデモ武器』ともなれば、其の注目は一気に此方へと向くのは『当然の帰結』であり。
「やぁやぁ、あーくん。其の変形武器なぁーに〜???」
「二つ前の会談で言った、
「こりゃ刃の部分は『キンイロソードの鋏』か?」
「正解、尻尾の聖剣とは違う意味で凄いからね」
「な、何か凄いですわ…………」
「そうだね、エムル………」
「いやはや、凄まじい限りなのさ」
『グルン』
質問に対する返答、口から出て来る未知の情報の数々に耐性を持たないプレイヤー達が混乱する中、水晶の矢を弦に乗せて雲の手腕と共に引き絞りながら、用いる力を足に込めて高く跳躍。
遠距離から大疫青の頭部ド真ん中に狙いを定めて、雲の手首を捻って弦と矢に回転力を付与し、刹那を貫きし一射を戦場に放つ。
『Brroa!?』
「おっ、効いた。どうやら今の奴さんに、物理系の矢は効果有りっぽいな」
空気抵抗軽減による射速向上と射程距離の増大、水晶群蠍の甲殻を加工し作られた通常の矢の『二倍以上の飛距離を誇る』水晶の矢が大疫青の額に直撃。
サンラクの超スピード魚雷頭突きに、ペッパーの超重量タライ落としアタックと比べれば其の威力は幾分劣れども、大疫青の身体を後ろへと後退させる程度の力を示したのだ。
「物理遠距離攻撃手段持ちで奴を削る!骨だけとはいえ未だに歩いてるから、兎にも角にも『奴の脚』を崩して進行を遅らせつつ、次の形態に備えよう!」
此の戦いが終わったら、漏れ無く参加者全員との『オハナシ』が待っているのだろうが、攻略法が判明している状況で攻勢に出ない程、愚かな選択肢を出せるプレイヤーは此処には居ない。
物理弓や剛弓に弩弓剣含んだ物理的射撃武装組が前に出て、ペッパーも其処に雑じる形で大疫青に矢を叩き込んでいくのだった………………。
殺り様は幾らでも