仔馬が変わる
嘗て存在していた其の
意外かも知れないが、
彷徨う大疫青となる前の馬は、自身を害する
弱者が強者を
旧き時より根源より返された肉を得て、青褪めた天馬は我が身を害する者達へ『病魔を乗せた風』を放ち、今を生きて己の前に立ち塞がりし生命達へ病という名の災禍を齎す。
其れは此の馬が、太古の時代より『己を害し殺せるのは強者である』という、一貫した理念を持つが故であり…………故にこそ強き個体を殺せる力に秀でた馬を殺すのは、自身より劣る弱者の群れであり、そして死を前にしても死を恐れぬ英雄だけなのだ。
『Bururururururururururururururuaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa…………………!!!』
「ッ、全員一回退避!大疫青の
勇者の声と共に、戦う者達はワァッ!と一斉に距離を取る。そうして下がる中でプレイヤーが見たのは、骨だけの姿である仔馬が嘶き、変貌を遂げ、其の身を変えて行く光景だった。
骨だけの身体、空洞の頭部、目が在るべき場所に目が無い状態だった其れが、ギョロリ!と両の目を開きて此方を見定め、視線を向ける。
続けて骨より滲み、染み出した『青色』の半固形の液体が、骨だけの大疫青の身体を包む様は、まるで外付けの鎧を身に纏うが如く……………否、
蹄を、四肢を、関節を、頭部を、胴体を、腰部を、そして翼に半固形の液体を纏った大疫青は、太古の時代の姿を取り戻し、そうして嘗ての日に神代人類に猛威を振るった災禍の悪夢を現出したのだ。
「大疫青が変わった……………!」
「なんつーか『ゲル状素材を纏った模型馬』…………に見えるなアリャ」
「奴が病を発症させ、感染ルートが皮膚を含めた呼吸感染であるならば、当然『翼を用いて風を利用した感染』すらやって来る筈!風属性魔法所有者は羽搏かせたら、大疫青の『風下の位置取り』に注意を!サードレマに飛ばさない様に!『厄を抑制せよ』!!」
プレイヤー達が
「っ、風魔法!!!」
「【ウインドショット】!!」
「【ハリケーンストライカー!!!】」
「【
高レベル魔法職プレイヤー達は初心者プレイヤー達の手本となる様に、魔法職を鍛えれば此の様な事も出来ると示すが如く、青の病風を同じく風の力で押し退けながら、サードレマに届かぬ様に立ち回る。
「さぁ、レベル30台のプレイヤーと物理遠距離攻撃持ちの勇敢なるプレイヤー諸君!!!此処が大疫青討伐の正念場だ、サードレマ大公から『御墨付』貰ってる
『『『『『『『おぉおおおお!!!!!』』』』』』』
口車や嘘と真実を絡めた言動で人を動かすペンシルゴンの号令を受け、我こそが大疫青を打倒せんとする者達が突撃して。
「いけいけ、ブッ飛ばせ!!」
「うええ、苦し…………」
「負けるかアアア!!!」
途中で病の発症に倒れる者や、接近せども無抵抗では無い大疫青に踏み付け蹴り飛ばされ、噛み付かれて地面に叩き付けられる、傍から見ても『ゾンビアタック』としか形容出来ない光景を産み出しながらも、屍を踏み越える者達が大疫青にダメージを与え続けていく。
『BarororororoAAAAAAaaaaaaAAArrrrrrrrrrrrrrrrrr!!?!?』
「ダメ入ってる!?」
「肉付いてるから判定増、ぐえぇ…………!」
「ゲルに触れたら状態異常オンパレードじゃねーか!?」
「攻撃に対するカウンター搭載してんのコイツ!?」
「物理弓職、矢を射って!打撃斬撃武器はそんなに効いてない!!!」
「カスダメでもチリツモだ!此際魔法職もやれぇい!!!」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
青い肉を着けた事により、大疫青自身の『当たり判定』が増大したという発見と、攻撃を受けた瞬間に攻撃を与えた側に『倍近い威力のカウンターが襲い掛かる』という第三形態、或いは最終形態の能力が判明すれども、プレイヤー達の死を是とした突撃敢行によって、大疫青は着実に体力を削られ続けた。
大疫青の持つカウンターは『プレイヤーの攻撃に対して反応して倍以上の威力にして返す』のだが、其のカウンターは『攻撃を放ったプレイヤーが大疫青の視界内に居る事』と、プレイヤーの攻撃が『大疫青側に認識されている事』の二つが成立する事により発生する
其のカウンターは大疫青自身が『対象者を補足しなくてはならない』ので、プレイヤーが『多方面』から『同時』に、そして『大多数』による物ともなれば─────────大疫青の、免疫器官が敵対対象の
「『厄を抑制せよ』!一点集中じゃなくて、多方面から同時かつ波状攻撃を!大疫青のカウンターは『奴の視覚情報に依存』している可能性が高い!弓矢持ちと魔法職は三段撃ちの要領で、風魔法持ちは引き続きサードレマに飛ばない様に御願いします!」
「氷魔法持ちは居ないのか!?奴のゲル装甲止められりゃ、ダメージ高められる
「はいはーい!私、氷魔法で行きまーす!」
死を恐れぬ者、英雄に至らんとする者、数多の有象無象の者共による不死たる波の連続に、病によって生命達を唯々屠った大疫青も
一人一人の出来る事は小さく微弱なれど、一人一人が出来る最高を追及し、互いが互いを見つめて肩を並べ、競い合いながら此の瞬間にも進化を続ける姿は、押し寄せる始源の胎動に立ち向かい続けた神代人類の防人達の如く在り。
『Baro、AAArrrrrrrrraaaaaaoooooooooo……………─────────』
多大なる攻撃の連鎖に継ぐ連鎖の果て、死の病魔を放ち続けてプレイヤーを屠りし青の天馬が地面に崩れ落ち、遂には立ち上がる事は無かった。
「……………彷徨う大疫青。病を撒き散らし、死を運び、数多の開拓者を屠った、青の始源眷属よ。例え再び此の地に現れようと、俺達開拓者が再びお前を倒しに立ち塞がる」
戦いを指揮し、其の散り様を見届けたペッパーの、嘲笑うでも無く、再び相対する時を見定めた言葉と共に、半固形のゲル装甲と骨の天馬は粉末に変貌し、其処から更に塵になって吹き飛んで、跡形も残らず消えた彷徨う大疫青だったモノを見送り。
此処に彼等彼女等の、一つの戦いが終結した。
『青く、青く、青い病魔、滲み出し、空と地と生命を蝕む、青き病の災禍は消えた。だが忘れる事無かれ、病とは月日を重ねて、再び世界に顕る物だと言う事を…………』
『モンスター
『討伐対象:
『レイドバトルが終了しました』
『参加人数∶874/1000』
『次レイド開始:719:59:50………』
『ユニーククエスト【我が身は人と共に、色災を破る】が進行しました』
青の災禍を鎮めて