鍛冶を試す時
プロジェクト・オブ・ペパ子ちゃんの写真撮影及びASMRの収録の完遂により、残りは編集と販売の工程のみとなった事で参加メンバー達は一旦の解散となった。
写真集やASMRの編集はベヒーモスにて行い、其の編集データをリヴァイアサンに持って行く事で、旧大陸と新大陸で同時販売開始を狙い。更に写真集とASMRの同時購入でASMRのNG集含めた『様々な特典をオマケとして付ける』そうで、見本第一号が出来たら自分に確認して貰うとの事。
ペパ子ちゃんに対する他プレイヤーの視線やら、色々ネチョさを含んだ感情やらを今後は向けられる事になると思いつつ、ペッパーがヴォーパルバニーズとリュカオーンの分け身に契約した
「おぉ、ペッパー殿。貴方が依頼した鍛冶の炉と金床、我々が持ち得る技術と貴方が持ち込んだ鉱石達で、昨日完成させる事が出来た」
「ありがとうございます。大事にします」
熱伝導率の高い鉱石や保熱性の高い鉱石、耐久耐熱含めた鍛冶に適した物を使って最高の鍛冶炉に金床、焼入れ用のタンク等の鍛冶に関わる必要設備の全てを彼等彼女等は、持ち得る技術の粋を結集して作ったのだと解る程度に、出来上がった物のフレーバーテキストと性能を見た事で確信を抱くには充分だったのだから。
鉱人族の現国王・ミダス二十八世と多くの鉱人族達に深々と頭を下げて礼を述べ、鍛冶の国で売られている石炭や燃料に砥石を買った後、新大陸を走って近場に在る川にてカイザーバケットを用いて水を掬い上げ、焼入れ用のタンクに水を満たした後、致命兎の国・ラビッツに帰還から自分に与えられた休憩室に仲間達を待機させ、リヴァイアサンで手に入れたインベントリアに入って鍛冶環境を整える。
「いよいよ『コレ』を扱う時が来たか…………」
指を振るい、己が手元に引き寄せた其れは、ラビッツの大親分で七つの最強種の一角・不滅のヴァイスアッシュからの宿題で、リヴァイアサンの最奥区画を目指して一夜で踏破した事により託された、ヴァイスアッシュの権能と技術の粋が込められたパワードスーツ、
一式全てを装備している間に限り、シャンフロ生産職の中でも最もポピュラーな職業:鍛冶師の最上位職で、武器の真化や別武器への派生に武器に関するユニークシナリオで重要な立ち位置を担う『名匠』。
神代技術により出来た
そして二つの匠を極めた先、修繕と強化を繰り返して偉業を成した英傑武器を唯一『神化』させて高みへと導き、概念を物質へと変える御業の
頭・胴・腰・脚の四部位に鎧を纏えば、自身の背後にて専用武装のケが有る
「鍛冶魔法は…………
鍛造は武器の製作、進化は武器をアップデート、真化が武器其の物を変え、神化が武器を至高の領域に押し上げる。武装破壊は武装の解体か分解、破損修復が剣や刀等の刃の欠けを直したりフレームの歪みを修繕する………なのだろう。
鍛冶魔法を確認している内に鍛冶炉に熱が巡り、炉全体の温度が鍛冶を行うに『充分な状態に成った』事を、頭装備の
遥成鍛冶道具の中から炉に鉱物を入れて熱し、取り出す為の平箸と呼ばれる道具がまるで『意志でも持っているかの様に』自ら手元へやって来るや、私を使ってと無言ながらも訴えており…………仰せのままにと彼は手に取るや、沼棺の化石を炉に入れて、平箸と鎧を通じて化石から感じる熱の入り具合を読み取る。
頂鳳兎角の大きな耳を象ったパーツが炉に入り、熱によって加工に適した状態になった事を感知から、炉より取り出し金床に乗せて、右手で装備するのでは無くオブジェクトと認識した状態で平箸を握り、左手で金槌を装備し握って深呼吸すれば炉の熱が鎧を通じて外気がスーツ内へと入り、肺や喉をチリチリと焦がす感覚が襲うが、其の程度で音を上げる様な軟な精神はしていない。
「やっぱり沼棺の化石で作るのと言えば、
長く世話になり、苦難を乗り越え、数多の敵を屠り、アトランティクス・レプノルカを倒す偉業を成し、
金槌を用いて熱した沼棺の化石を叩き、己がシャンフロを初めて携え戦っていた湖沼の短剣のイメージを呼び起こし、イメージを汲み取った旅兎王装が製作の為のルートを脳内に描き、彼は其のイメージと自らが描く思考をぶつけ合わせて研磨し、更に研ぎ澄ませて『より具体的な完成形』を描き紡ぐ。
沼棺の化石と豊潤な鉱石を使って、短剣の攻撃部位となる堅き刃を、握りし者が扱い易くとも頑丈な柄を、刃と柄を隔て分ける鍔を、金槌を打ちて、炉に焚べて、また打って。
焼き入れから炉へと入れ直し、再び打って、更に強く頑強な剣刃へと変え、再度の焼き入れによる急冷から鍔と柄を組み合わせて形にし、そうして粗研ぎから仕上げ研ぎに刃取りの段取りを終えた頃、数時間が過ぎていた。
「………………完成、か」
炉の火を消し、煤けた道具達を鍛冶用の布で綺麗に拭き上げ、砥石同士を擦り合わせて平らに直したペッパーは、金床に乗せた自作の湖沼の短剣を見る。
セカンディルにてNPC鍛冶師が作った湖沼の短剣、今の自分なりにやれるだけの事を全力でやり切って産み出した、頑丈さ故にこそ使い手と長く旅路を共に歩む武器は、不滅の最強種の力の一端たる神の鍛冶師の御業を、擬似的に扱う鎧によって此処に完成へと至ったのだった。
(物凄く疲れた………。ビィラックさんは何時も、こんな程度の比じゃない疲労感と戦い続けてたんだな…………)
武器を壊さず乱雑に扱ってボロッボロにしてから直しを要求するサンラクや、武器を大事にしながらも小破と中破の中途半端な耐久にして持ち込む自分が、彼女にどれだけ苦労を掛けたのかを認識したペッパーは、今度からはもう少し良く考えてから修繕依頼をしようと心に誓ったのであった…………。
心の儘に鐵を打つ