VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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いざ参る




突撃ダヨッ!アタックホルダー!!!

9/7の日曜日、午前十時より少し手前。

 

陽務(ひづとめ) 楽朗(らくろう)は自室にてスマホで幕末イベントの情報や、シャンフロの最新情報にプロジェクト・オブ・ペパ子ちゃんの進捗具合を調べていた。

 

「幕末イベントは『バトルロイヤル』、シャンフロは神話(しんわ)大森林(だいしんりん)に『緑の群れ』、プロジェクト・オブ・ペパ子ちゃんはペンシルゴンによると『編集最終段階』ねぇ…………」

 

何時だったかサイガ-0が言っていた『サイガ-100率いる黒剣がハイエスト・ポーションの原材料で、別の角から作るアセンションブレードに使われるアセンション・ホーン、最上位職:剣聖や其れを目指すプレイヤー達の御用達たる、破壊属性をデフォルトで持つ魔剣ラス・ペガシアスの原材料のイーティバル・ペガサスが出現する場所』。

 

そして『ペッパーが持つユニーク小鎚三兄弟の内の一つの強化素材の鉱石が採掘出来る、サーティードとフィフティシアの間を結ぶ背丈の滅茶苦茶高い樹木が生い茂る視認性最悪のエリア』…………との事らしい。

 

(後は…………あー、確か『サードレマ大公と第一王子が人間関係でうんたらかんたら』だったっけ。えーと………あぁ、思い出した。レイドモンスターの対処に当たらずに、何か『娘さんください』って言ってたんだったか)

 

プロジェクト・オブ・ペパ子ちゃんの写真集に使う撮影の時、サードレマの上層エリアの貴族街にてペッパーとペンシルゴンがサードレマの大公と話をしていたのを、エムルの聞き耳で挟んだ事を楽朗は思い出した。

 

曰く『サードレマ存亡に関わる緊急事態に娘を要求しに来た第一王子に、サードレマ大公は其れは其れは激怒していた』らしく、結果的にレイドモンスターの彷徨(さまよ)大疫青(だいえきせい)を自分達が撃破した事で事無きを得たが、レイドモンスター達が『リスポーンする存在』である以上、再び其の脅威がサードレマに襲い掛かるのは火を見るより明らか。

 

サードレマ大公によれば『もし第一王子が現国王から王位を簒奪したならば、今代で王国との関係を断絶するのも辞さない覚悟である』…………との事だ。

 

人間関係がギッスギスのドロッドロの不協和音(シンフォニー)を奏でているのは目に見えて明らかな上、ペンシルゴンに至ってはラスボススイッチがバチコーンとONになったかの様な、獰猛な()い笑顔を浮かべていたので色々とヤバい事をして来そうな予感が有る。

 

と、そんな折に『ピンポーン♪』と自宅のインターホンが鳴って、楽朗が窓から外を見ると白いワンピース姿に少し大き目な手提げ鞄を持った斎賀 玲が立っているのを目視し、直ぐに玄関へ向かえば妹の陽務(ひづとめ) 瑠美(るみ)と顔が合った。

 

「あ、お兄ちゃん。何か郵送届いたの?」

「郵送じゃねーよ。あー……………うん。瑠美、父さんと母さんは?」

「お母さんはギラファノコギリクワガタの幼虫の世話、お父さんは今仮眠してるよ。で、どったの?」

「取り敢えずリビング集合させといてくれ」

「……………?????」

 

兄が一体何を言っているのか解らない妹だったが、数十秒後に家に招かれた兄と同い年の女の子を目視し。リビングに家族全員集合からの「俺の彼女の斎賀 玲さんです、仲良くして欲しい」と、何処か照れ隠しをしているかの様な表情で紹介し、全員驚きからの顔を見合わせた後に自己紹介を含めて挨拶を交わし。

 

そして楽朗の父である陽務(ひづとめ) 仙次(せんじ)は、玲の祖父である斎賀(さいが) 我能(がのう)と『釣友の間柄』という思わぬ接点が合った事が判明し、今日の夕食は彼が釣り上げた初秋刀魚を火鉢を使って串焼きにすると張り切り出し、玲は『家からは外出許可を貰ってますので』と一言述べ、此れも全て才色兼備の彼女の計算済みか、はたまた偶然偶々こうなったのかは解らないが、玲は陽務家の皆と夕食を取る事が決まったのであった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

玲の心はポワポワと、喜びの感情と緊張の感情の二つの間を反復横跳びする、ある意味『心地良い酔い』を体験していた。

 

ヘッドギア型のVRシステムの寿命を口実に、勇気を出した結果として前々からのストーキングで想い人の実家に堂々と向かい家庭訪問、そして俗に言う『恋人を御両親に紹介&御挨拶』を済ませて顔と名前を覚えて貰った上に、自分の祖父と彼の父親が釣友の間柄で在った事による『家族ぐるみの御付き合いなシチュエーション』の、一口で十所か一日は幸せになる甘味に似た味と思えて。

 

「えへ…………エヘヘ…………」

「玲さーん…………、玲さーん?大丈夫ですかー?」

「は、ひゃい!今なら瓦五十枚は割れそうでシュッ!?…………ッッッッ!!!」

 

噛んだ、思いっ切り舌を噛んだ。解っていても言わぬが華と言葉が在る様に、取り敢えず彼女が落ち着くのを待ってから、本題のヘッドギアの確認に入る。

 

「あー………確かに出力系がイカれちゃってるね」

「解るん、ですか?」

「まぁ。家の知り合い…………もとい遠い親戚が機械関係に強くて、ちょっとヘッドギアを弄ってたのを見た事が有るんすよ。そん時に其の辺りを教えて貰ったって………感じかな」

 

陽務家の人間や其の血筋の関係者達は、其々が何かしらの趣味に没頭し、其々の世界を持っている者が多い。父は川や湖に海等の釣りキチ、母は昆虫の飼育や採集に力を注ぎ、妹はファッションガチの邪教徒と、楽朗が知っている限りにはなるが親戚には車集め・酒作り・プラモデル・エクストリームマシン・エクストリームスポーツ。

 

他にはミニカーコレクション・盆栽・汎ゆるギャンブル・乗馬に馬を飼ったり、犬や猫に鳥や魚を飼ったり、世界中の化石や鉱石に宝石を掘ったりと、兎にも角にも血筋が趣味狂いの為に色々と世の中の勉強にもなったのだとか。

 

「あ、あのっ…………ずっと気になっていたんです、けど。彼処に置いて在るVRシステムチェアは、此の間のGGCの参加して、其の時に貰った、のでしょうか………?」

「うん。カッツォが所属してるプロゲーミングチームのトップから直々のプレゼント、しかもミーティアスの原作者直筆のサインにカースドプリズンのイラスト付きの、世界で一つしかない一点物なんだとか。他にもライオットブラッドの開発元のガトリングドラム社から、ライオットブラッドの詰め合わせを贈呈されたんだよな…………」

 

GGC………楽朗が顔隠しとして挑み、全米一位のプロ格ゲーマーのシルヴィア・ゴールドバーグを倒し、輝かしい無敗伝説を終わらせた今尚記憶に焼き付き離れない、凄まじい一戦が行われた年に一度のビッグイベント。

 

クランメンバーとの話し合いを通じ、ペッパー・サンラク・オイカッツォ・ペンシルゴンの四人が参戦して、其々が持ち得る力をぶつけてアメリカのプロゲーミングチーム相手に大金星を飾った事も、当時のSNSやネット記事の閲覧数も爆発的に伸びていた。

 

部屋のド真ん中、領域の大多数の占める其れを見て。玲は改めて、自分の彼氏が本当に凄い事を成し遂げたのだと、誇らしく…………そして朗らかに微笑んだのである。

 

 






彼は凄い人


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