幸を渡そう
新大陸前線拠点内某所、海に面した場所より海上へと伸びる百メートル弱の長さの桟橋の先に、海上で暮らす南国風味有る此の建築物はある存在を……………先の竜災大戦にて活躍し、
「お〜、夜なのに人並んでるねぇ〜」
「海上社って感じだな…………あ、レーザーカジキとSF-Zooにスペリオルアビスのプレイヤー達が、行列対応に当たってるみたい」
「ホントだ」
ノワルリンドの謁見の為にスカルアヅチに並ぶプレイヤーも多いが、エルドランザに謁見する為に並ぶプレイヤーも相応数居るらしい。
ノワルリンドは
海上社に近付いて見れば行列の中の一人が此方に気付き、其処から連鎖して他者の視線も一気に向く現象を目の当たりにすると、今迄の行動と先の大戦にプロジェクト・オブ・ペパ子ちゃんの影響力は絶大の一言に尽きる。
「あ!ペッパーさんにペンシルゴンさん!」
「やぁ、レーザーカジキ。此処に並んでいるプレイヤー達はエルドランザに会いに来た人達なのか?」
「はいっ!皆さんお魚さんを釣ったり、エルドランザさんの訓練に付き合ったりして、報酬を貰おうとしてるので其の御手伝いをしてます!」
青い竜の鎧と言える威厳を纏った装備を纏い、頭装備を持ち上げて顔を出したレーザーカジキが笑顔と共に、ペカー!とも表現出来る後光を放つ姿にペンシルゴンや他のプレイヤーが悶えていた。
流石は秋津茜と同じ光属性側に居るプレイヤーで在り、他のゲームでも外道連中を浄化して綺麗にするプレイヤーと言える。
「ペッパーさん、もしや貴方もエルドランザさんに会いに?」
「あ、ヒュクノティムさん。先の大戦ではエルドランザさんに助けて貰いましたので、其の御礼に海の幸を渡そうと」
そう言ってペッパーはウェザエモンの討伐報酬で獲得したインベントリアを操作、彼が取り出した『其れ』を見たヒュクノティムを始めとするSF-Zooにスペリオルアビスの面々は目をかっ開いた所か、一部は口から泡を吹き始めて。
「やっぱり最大限の礼儀を払うなら、一番良いのは『キリューシャン・スフュール"
「待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待てぇええええエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!?!???!!!何つーかモノを取り出してるんすか、ペッパーさぁん!?!!?!?」
ペッパーが取り出し見せた其の規格外過ぎる衝撃の逸品に、SF-Zooとスペリオルアビスにヒュクノティムが凶乱と大慌てになり、そして其の価値を知る者達は全員纏めて「ペッパー(さん)さぁ…………」と言霊を零したのである。
キリューシャン・スフュール…………海洋生態系の調査及び水中海中探査活動を主とするクラン:スペリオルアビスの中でも、其のモンスターは未だ幻として海中での遭遇も程遠いアルクトゥス・レガレクスや、魚人族との取引を重ねて英雄のル・アラバから聞いた深海の頂点捕食者、或いは環境の整地者たる深海三強と恐れられるアトランティクス・レプノルカにアーコリウム・ハーミット、そしてスレーギヴン・キャリアングラーと並ぶ『途轍も無く低い遭遇率と希少性に、食として用いる肉が凄まじく甘露で、此の世の物とは思えぬ程に美味』とされるモンスターだ。
浅瀬付近までやって来る事すら稀であり、其れを運良く仕留めた物が市場に流れよう物なら、此の世界に置ける王国の『エインヴルス王国』が真っ先に買い取り、残された粗悪部分ですらも闇市やオークションでは『常に数百から数千万マーニ』での取引は下らない、かの危険地帯たる
クラン:スペリオルアビスはシャンフロ三大NPC商会の一つで、主に海産・畜産・農耕と言った在りと汎ゆる食の全般に関わる『カルカダ=コラス商会』と深い関係を持ち、クランの資金源として商会からの依頼を………新大陸側の浅瀬や海洋生物の調査を請け負って、食用となる魚や貝類に海藻の散策を行っている。
一生に一度出遭えるか否かとされる、成体まで生き残る事すら極僅かなキリューシャン・スフュール…………其の不世出個体である"
「…………ペッパーさん。其れをエルドランザさんに渡すのは、ちょっと待って貰って良いでしょうか?」
「希少だからですか?」
「希少なのも有るんですが………。キリューシャン・スフュールの肉は物凄く、其れは物ッッッッ…………凄く高価な逸品で、成体の肉ともなればエインヴルス王国が
頭を抱えるヒュクノティムと、既に
「…………取り敢えずキリューシャン・スフュールの肉は置いとくとして、アルクトゥス・レガレクスかスレーギヴン・キャリアングラーの肉なら大丈夫ですかね?」
「…………其の両方ですら、我々スペリオルアビスやカルカダ=コラス商会視点、凄まじ過ぎる案件なんですが…………。まぁ其の二つなら良いですけれども、取り敢えずクランメンバーとのメールでカルカダ=コラス商会の会長から『明日にでも蒼空を舞う勇者のペッパー殿と面会したい』と言った返信が返って来たので、御時間を頂けますでしょうか?」
またしてもとんでもない案件が転がり込んで来て、王族絡みの騒動不可避な状況に進展しているのを犇々と感じ、取り敢えずペンシルゴンの手綱を握って置かなくては、後々に大変な事が起き得ると確信し。
其の後レーザーカジキによって顔パスで社に通されたペッパーは、大型犬サイズに縮まったエルドランザと謁見、先の大戦の活躍の礼としてスレーギヴン・キャリアングラーの上質肉を渡した所、彼女は其れを食べ始め。
最初の一口は咀嚼しゆっくりと、次第に食べるペースは早まり始め、最後は一口サイズになった肉を丸呑みにして食事を終え、彼に『美味であった』と述べた後に自身の牙と鱗に鰭の一部を報酬として渡したのだ。
レーザーカジキによると、どうやらエルドランザが渡す部位は『彼女の満足度合いを示す指標』で、中でも鰭の一部や歴鱗と言った部位は彼女が『満足した証』なのだと言う。
………………他のプレイヤー達の視線が背中に突き刺さったり、スペリオルアビスとSF-Zooのクランメンバー達が何か企んでるとしか言えない表情をしていた事に、ツッコミでもしたら負けな気がしたので黙っていたが。
大事に至る