VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

950 / 1072


会いに行こう




神業振るう鍛冶師を訪ね

キリューシャン・スフュール"恕志貫徹(ファースリィオ)"の新鮮な肉や深海産の魚介類を、カルカダ=コラス商会の八代目会長ことエリムス・ティルテェナに卸し、交渉によってペンシルゴンは王城への立ち入りを、ペッパーは神匠に至ったという鍛冶師が居る場所の情報を手にした。

 

ティルテェナから紹介状を貰った二人は現在仲間達を連れて、旧大陸最後の街で第二の旅立ちの場所たるフィフティシアから、ペッパーが夜空を駆け走ってペンシルゴンを御姫様抱っこしつつ、ノワも抱えてシャンフロ第十四の街でPVPの地として有名な『フォルティアン』を目指して激走中である。

 

「いやはや、空中走れると地上のモンスターやらギミックやらを無視して進めるのは有り難いねぇ………」

「こういうのもゲームの醍醐味だからね。やれるならやってみたいし」

 

ミルキーウェイで夜空を駆け、効果時間終了に際して深厳戟響脚(アンピィ・トゥルリテ)の機能を使って空中に踏み留まり、再び前へ前へとフォルティアンを目指して突き進む中、ペッパーはペンシルゴンに問い掛ける。

 

「なぁ、ペンシルゴン」

「なぁに、あーくん?」

「あの時ティルテェナ様に、王城へ入れる様にしたいって御願いしていたけど…………アレの『真の目的』は何なのかな?」

 

ペンシルゴンとの付き合いは其れなりだが、彼女の本質を知っているからこそ見える本当の狙いを、ペッパーは勘繰っていた。そんな彼に黒幕魔王はニッコリ笑って、種明かしをするかの様に答えを述べる。

 

「コレに関しては後で、旅狼(ヴォルフガング)のメンバーと共有する方針で行く事にしてるんだけど…………まぁ簡単に言うと『墓守のウェザエモンに関するアフターシナリオが件の王城の地下に在る』んだ」

「そうなのか?」

 

竜災大戦の前の七天極星(グランシャリオ)会談にて、クラン:ライブラリを味方陣営を確固たる物にする為、キョージュへ『ユニークモンスター・墓守(はかもり)のウェザエモンに関する情報にまだ続きが有る』と言ったが、どうやら其の続きというのがアフターストーリーであるらしい。

 

「ウェザエモンのユニークシナリオEXのクリア報酬で、私は花飾りのアクセサリー…………『遠き祈りの花飾り』を貰ったじゃん?」

「今も付けてるよね、白くて綺麗な」

「コレ実は『隠し効果』みたいなのが有ってね。セッちゃん………もとい『遠き日のセツナ』に関連する場所を装備者に知らせてくれる、一種の『ロケーター』みたいなモノなんだよ」

 

「目に見えるのは私だけだけどね〜」と、自慢気に語りつつも、其の実何処か懐かしみ想いを馳せる様に、彼女は言葉を紡ぎ続ける。

 

「ちょっと前までは、新大陸一直線のロケート()()示さなかったんだ。ジークヴルムとの決戦に備える準備期間中に並行して、リヴァイアサンやベヒーモスのデータベースで一通り調べたけど、新大陸の西方面に『何か在る』って事だけはハッキリしてる」

「新大陸の西方向ねぇ………」

 

新大陸の空中写真撮影で大まかに全体図を把握しているペッパーは、其の方角が『左方始源獣エレボスの尾羽に当たる部分』である事、そして少なからず『ゴルドゥニーネの一式装備の所在地』にも関係する気配を感じていた。

 

「でも今は『そんな事』はどうでも良い、重要な事じゃない。問題はジークヴルム撃破後に、更に追加で『四つのロケーション』が示された事…………此れが私からしても一番大きいのだよ、あーくん」

「え、四つも?」

「うん。最初から示されていた一つを除いて、フレーバーテキストが更新されたから其のまま抜粋するけど、こう書かれてた。内容は…………『(あお)聳弧(しょうこ)(あか)炎駒(えんく)(しろ)索冥(さくめい)(くろ)角端(かくたん)墓守(はかもり)残影(ざんえい)(たたず)む。(はら)われし無念(むねん)暗雲(あんうん)(ふたた)(ひろ)がりて』…………だってさ」

 

テキストに聞いた事の無い名前の、四色有る事から其れが四つ存在する事、墓守の無念が広がるというテキストから、少なくともワールドストーリーと関係する事は解る。

 

「因みにリヴァイアサンやらで調べたのか?」

始源存在(レイドモンスター)達が暴れ始めた以上、並行して調べなきゃならなくなったんだけどね…………。唯一つ解ってるのは『王城の真下には何らかのフィールドが在る』って噂が前々から有ったけど、其れが花飾りの新しく出たフレーバーテキストで『ほぼ確定した』って感じ」

「……………だからこそ調べられる時に調べる、と」

「そゆこと。あ、見えて来たよ、あーくん」

 

視線の先に見える巨大な四つのコロシアム、松明の灯に照らされて人々の声が街中から木霊す、旧大陸に在るPVPの聖地フォルティアンが見えたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャンフロ旧大陸、第十四の街・フォルティアン。

 

街の東西南北の其々にコロシアムが鎮護の如く在り、現実で言う四聖獣の役目を担う其処は、剣士系最上位職で今尚最も人気な職業の剣聖(けんせい)に、闘士(グラディエーター)系隠し最上位職業の鎧闘士(アームドレスラー)等の所謂『優勝系職』の就職や転職に必須とされ、新大陸が解放された今でも多くの開拓者(プレイヤー)がランドマークを更新し、定期的に訪れる街とされているのだ。

 

「夜の時間帯だが、人が多いね此処………」

「まぁねぇ。剣聖に就職目指してるプレイヤーが今も結構な人数居るんだよ」

 

裏路地を駆使し、ジークヴルムとの決戦を越えてノワが新たに習得した『影潜り』なる(スキル)によって彼女と共に影に潜り、其の影から影を渡り飛んで進み、ペッパーが彼女の毛並みや頭を撫でる事で殺気を抑えつつ、ペンシルゴンも撫で撫でする事で不公平を生まない状況を以て前へ往く。

 

そうして影潜りによるステルスムーヴを利用し、彼等彼女等はティルテェナが書いた紹介状の目的地である鍛冶工房の付近に到着、影の中から外を覗き見れば数人のプレイヤーと日焼け肌のタンクトップにシャツと厚底ブーツ、金髪碧眼の筋骨隆々の女鍛冶師というキャラデザを担当した人間の性癖がブチ込まれた様なキャラが、和気藹々な会話をしているのを目撃。

 

プレイヤー達が武器を預けて工房を出たのを尻目に、周りに他プレイヤーが居ない事も把握して影潜りより抜けて工房の扉を開けば、やはりリュカオーンの愛呪(あいじゅ)が放つ気配に、警戒の色を示した女鍛冶場が視線を向けて来た。

 

「……………いらっしゃい。何か用かい?」

「今晩は、そして初めまして。自分はペッパー、ペッパー・天津気(アマツキ)と申す者です。実はカルカダ=コラス商会の会長である、エリムス・ティルテェナ様から此の工房にいらっしゃる鍛冶師…………神の業を振るい偉業を讃える武器を作るという『マグヌスさん』に、謁見する為の紹介状を頂きました」

 

自己紹介と共に名前隠しの機能をオフにし、頭上にPNを表示しながらにティルテェナが書いた紹介状を彼女に渡す。

 

フォルティアンを訪れて、コロシアムにて武を競い合う開拓者達が噂し、他の市民や別の街から来た商人や吟遊詩人達も其の勇姿を語らう、かの有名な蒼空を舞う勇者の降臨は彼女からしても予想外だった様で。

 

「ちょっ、ちょっと待ってなッ……………!今直ぐ師匠を叩き起こして来るッッッッ!!!!」

 

紹介状を受け取り、大慌てで工房の入口扉に閉店の木札を下げるや、裏方に続く扉を力任せに開いた彼女は走って行き─────────

 

 

 

 

 

 

 

「おい起きろ馬鹿師匠!?ティルテェナ様から直筆の紹介状貰った、ペッパーさんが来たんだよッッッッ!!鼾掻いて寝てないで、さっさと起きて対応しろやアホンダラァァァァァァ!?!」

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?!?!」

 

 

 

 

 

 

 

其の数秒後に裏方から怒鳴り声に拳骨数発の音と、男の悲鳴がペッパー達に聞こえたのであった…………。

 

 

 






大混乱


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。