さぁ、征こう
幕末というゲームでは基本的に、防御力はアクセント程度しか機能しない。
幕末というゲームでは基本的に、頭や首に心臓といった人体の急所を損壊すれば死ぬ。
幕末というゲームでは基本的に、腕や脚が完全に切断されればリスポーンするまで元には戻らない。
特にデスゲーム方式のバトルロイヤルルールで四肢の部位欠損という結果は、其の時点で対象プレイヤーの不利を確定させる事を意味する上、今回のレイドボス相手で真っ先に切られる存在なのだ。
「天誅─────」
「あ、サンラぎゃっ!?!」
「京ティメット、南無」
「清々しいまでの肉盾ムーヴ、流石外道」
既に串勝と十文字大福はレイドボスに斬殺され、片腕と片脚を失って最後はサンラクに背中を蹴っ飛ばされた
「……………とっても楽しい」
「俺もですよ、ユラさん!」
ユラが持つ斬星竿に搭載された能力は空気抵抗の軽減、斬馬刀とも言える大太刀のサイズを誇りながらも、其の実態は
ブラッドペッパーが持つ
「っ…………!」
「わぁ…………!」
今迄の戦いのユラの挙動に癖と重心、斬星竿を使った時の汎ゆる要素を記憶と結び、結んだ思考を一つ一つを繋ぎ合わせて、細い糸を束ねて大きく太い縄に変えるが如く、レイドボス攻略の糸口を探し出す。
斬星竿という武器は空気抵抗軽減を持つが、其れは十全な『距離』を以て振るう事により、始めて十全なる『破壊力』を得るに至るからこそ……………『一定距離まで踏み込まれる』と、鍔元から先の小太刀と同じ力のみしか発揮出来なくなる。
無論、そんな距離すらユラにとって『些細な程度』の問題でしか無いのだが、ブラッドペッパー・サンラク・当千の三人が相手の場合は、其の些細が『危険に変貌したのだ』。
「天!」
「誅!」
「だうぇい!?」
「わっ!!」
ブラッドペッパーが、サンラクが、当千が。そして此の戦いで散った者が遺し、引き出させたユラの行動を『重ね合わせ』、蓄積と収束を続けたデータから『決定的な刹那』を突く。
当千は此れに既視感が有った…………何度も何度も刃を交え、何度も何度も数え切れない戦いを重ねたからこそ、レイドボスが追い詰められていると。
嘗て行われたイベント『節分血風録』で、
相手の心情や理を知って理解する程に、エイリアンじみた勢いで成長するブラッドペッパーの存在が、レイドボスの思考に少なからず影響を与え、此方の付け入る隙が着実に産まれているのだと。
「斬星竿だと『相性悪い』………。だから此れから、
同時にユラもまた口角が吊り上がり、瞳孔が完全に開いて狩りに臨む肉食獣と言わんばかりの状態で呟いた後、彼は『斬星竿から別の武器に切り替えた』。
其れは柄尻同士を縄で繋ぎ、湾曲した刀身の短弧側に刃を持つ内反りと呼ばれる様式の刃物たる『ククリ刀』、刃の衣装は合わせる事で『二対の双魚』となる其れを見たサンラクと当千は、一瞬で血の気と勝機が『千切れ飛んだ』と悟ったのだ。
「オイオイオイオイ、嘘だろ!?マジか!?!」
「『
「え、何ですかアレ」
「節分血風録の一位報酬、此のゲーム唯一の『
「「は…………ッ?」」
ユラが一言、同時に江戸の街に風が吹き抜け、先程まで立っていた筈の当千がズタズタに斬り裂かれ、青天井で倒れながら
あまりにも呆気無い、あまりにも無情と言える、絶対不変の『死刑判決が下された瞬間』だった。
「本当に、本当に楽しい。だから─────『
「ハハハ……………!」
「コリャやべ…………「天誅ぅぅう!!!!!」ッ!?
そんな状況、勝機と捉えた幕末ランカーで範囲爆撃のスペシャリストが、着火した大玉花火を屋根の上から大量に放り投げて参戦し。
「天誅」
「ばぶれば!?!」
距離が離れているのにも関わらず、
「「うわぁ…………」」
恐怖や絶望、離れに離れた格、天賦の才の違い…………其れをまざまざと、残された二人は見せ付けられ。
「………………やる?」
「「ッ、当たり前だ!!!」」
ヤケクソ気味ながら、然して獰猛な飢えた獣の如く叫びて、サンラクとブラッドペッパーは走った其の光景に、ユラは屈託の無い素晴らしい笑顔の元、自分の本気の本気を引っ張り出させた事を嬉しく想い、感謝と共に惨影・三日月雙魚を振るい。
こうしてブラッドペッパーとサンラクの、極限月下での戦いは終わりを告げた。
ひゅ~、どろどろ……………
「あっ!俺より先に死んだ先輩の皆さんチーッス!」
「君は誰かを煽らないと生きていけないとか、そう言う類の病気なの?」
「サンラクぅ………!絶対許さないから………!絶対天誅してやるから………!覚悟しときなよッ………!」
「血煙ぃ………!次に会った時は、サンラク諸共天誅してやりますからねぇ…………!」
レイドボスのユラによって斬殺され、イベントから退場したと同時に怨霊となって合流すれば、天誅された者とした者で殺意やら関心やらを向けられつつも、常在戦場の殺伐状況と打って変わって和気藹々な会話をしてフレンド登録する、脱落済プレイヤー達が居た。
「いやぁ、まさか惨影・三日月雙魚をレイドボスさんが持ってたとは……………。飛んで来る錆光の斬撃とか、死ねますわよ」
「本気も本気って感じだったねぇ…………」
「アレ遠距離から首スッ飛ばせるから無法よな」
「其れを引っ張り出させたの、マジナイスっす血煙」
怨霊は生者に取り憑けど言葉を伝えられず、其の戦いを唯々見守る事しか出来ない。
其れ故に残された極僅かな生存プレイヤー達が、ユラと三日月雙魚の飛翔斬撃暴風雨によって斬り刻まれて、風に吹かれた桜花の如く散る様をブラッドペッパーや当千達は見つめ。
何時の日か双刃を振るうレイドボスを越え、完全攻略に至るべく怨霊ながらも追い掛け、血煙はレイドボスに取り付きはせず、間近で挙動を観察して情報を集め続けるのだった…………。
何時か届く為に