『宝鍠趙弩剣という武器は此の武器に鉱石系や鉱物系、宝石系や結晶系のアイテムを喰わせる事で一定時間、其のアイテムの特性を武器に付与する能力に、装備者のMPを消費する事で言霊か手動で武器を変形させ、武器種を変更する能力が有ります。
宝鍠趙弩剣は鉱物系のアイテムは一種類しか食べれませんが、鍛冶師や宝石匠に他にも合成系の職業持ちのスキルか魔法を使って混ぜ合わせた物なら、複数種を一つに纏めている物として判定される可能性を持っています』
別天律の隕鉄鏡が浮かんで視点を向ける中、宝鍠趙弩剣の説明を続けるペッパーは鉱物特性付与能力を実演する為、インベントリアから一つのアイテムを出す。
『此れは水晶巣崖で採れる鉱物の一つ、其の手の界隈では『コーティング剤の覇王』と呼ばれ、塗装すれば武器や防具に高い魔力抵抗を与えるアロンカレス瑠璃硬晶。宝鍠趙弩剣に食べさせた場合は一定時間強力な対魔能力を得て、魔法で有れば斬り裂く事も可能となります』
宝鍠趙弩剣の持ち手たる柄と剣身の間に在る、不自然な空間にアロンカレス瑠璃硬晶を入れた瞬間、バリボリバリボリ!と咀嚼する音が鳴り響いた次の瞬間、弩弓剣の刃はギラギラ輝く黄金から艷やかな水晶色に変色を遂げたのだ。
『御覧の様に宝鍠趙弩剣は食べた鉱物や宝石の特色を、一定時間反映し戦闘に用いる事が可能です。また水晶群蠍や金晶独蠍に帝晶双蠍といった、全身を構成する物質の殆どが鉱石のモンスターの核や部位も、此の武器や皇金剣は取り込み、其の性質を吸収して力に変えられますので。
さて前置きは此の辺りとし。……………其れでは本命の検証開始と参ります』
封雲の撃鉄を鳩尾に叩き付けて起動、雲の鎧と羽衣を全身に纏えば観客席から歓声が挙がる。雲の羽衣は両腕を…………まるで天使の羽の如く広げ、宝鍠趙弩剣の両サイドを掴んだ後、言霊を持って其の力を実行に移す。
『分かれよ』
たった一言、其の一言のみで宝鍠趙弩剣を繋ぐロックが外れる様に………弩弓剣の剣モードだった其れが、二振りの刃たる『双剣』へと切り換わった事で、プレイヤーにNPC達とウェポニア全員、そしてライブラリの一部が大興奮気味に声を荒振らせた。
『今し方、宝鍠趙弩剣は双剣形態になりました。其れと今は二刀流で使ってますけど、片方だけを変形させる事も可能で、持ち方を変えると『湾曲剣形態』にもなります』
そう言ったペッパーは、右手の雲の手に持った片割れを刺し、左手の雲の手に持った片割れに『伸びろ』と一言述べれば、刃の中に収まっていた更なる刃が『スライド』する様に飛び出し、其の形状は『刀』に近しい物へと変わる。
『宝鍠趙弩剣の刀形態、此の状態でもう片方を持つと対刃剣形態。因みに此の刀形態から出て来た刃を、90度内に折り畳む事で『鎌形態』に変形して、此の状態で『重なれ』もしくは手動で柄尻同士を合わせれば『大鎌形態』。もう片方も同じ鎌形態にして、別方向を向かせた状態にすると『両刃鎌形態』へと変形して、回転による防御や周辺薙ぎ払いと言った戦闘スタイルを取り行えます』
一つ一つを丁寧に、要点を踏まえつつも武器が持つ力を解き明かす様に述べ、其の度にウェポニアのプレイヤー達が物凄い勢いでメモを取っていくのが見えた。
おそらく此の後に大量の質問会が待ち受けているのだろうと頭痛を覚えつつ、自分がやるべき事を果たす様にペッパーは宝鍠趙弩剣の事を話し続けていく………………。
あれから変形・合体・分離を繰り返して口頭で説明を行なった事により、今回の参加者達や自分自身も宝鍠趙弩剣の事をより詳しく知る事が出来ていた。
片方を刀形態の片方を手斧形態として、手斧形態に刀形態の柄を差し込む事で『大太刀形態』へ、両方を手斧形態としつつ両刃鎌形態と同じく刃を別方向に向かせる『両刃斧形態』。
手斧形態から持ち手を45度内側に曲げる事で派生する『銃形態』に、片方を手斧形態にして柄尻を差し込む事によって至る『長銃形態』、手斧形態から柄を90度まで稼働させて逆手持ちによる『旋棍形態』、畳まれた刃を伸ばして長さを調節する事により斬撃属性に変えた『斬旋棍形態』。
そして刀形態の二振りを『回れ』と『重なれ』と『合わされ』の三言の言霊を乗せ、重ね合わせる事で姿を見せる『対刃鋏形態』と、鋒を弦で繋ぎ結んだ物理弓である『弓形態』に、収納された刃を伸ばした『長弓形態』、魔力で弦を繋ぎ合わせて魔法弓とした『魔弓形態』に、長弓形態と同じながら魔力の弦を以て弓とする『魔長弓形態』。
宝鍠趙弩剣の通常時の剣モードたる雑種剣形態に、刀身を引き出して更に射程を伸ばした『長大剣形態』、二振りに分けて持ち手を剣刃がハンドガードをする様な形態の『闘拳形態』、其の闘拳形態に片振りを『単剣形態』で柄尻を合体した『曲剣形態』を提示し、一つの形態が産まれる度に観客席から関心の声が挙がり、羨望の眼差しを向けられる。
特に巨人族からは随分熱々な視線が注ぎ込まれ、何故そうなったのかと理由を考察してみれば、自分がジークヴルムとの決戦にて白竜ブライレイニェゴのラストアタッカーになった者である事も含め、良くも悪くも『様々な意味合い』が込められていると考えた方が良い。
『……………と、こんな形で使い手のイメージが武器種の総数と出力に直結しますので、宝鍠趙弩剣を製作した方は今回の検証実演会を参考に、自分なりの戦闘スタイルが確立出来る様に応援します、頑張って下さい。
最後に質問の有る方は大勢居ると思いますが、時間が押してますので誠に勝手ながら十名までとさせて頂きます。では…………』
ペッパーの言葉をトリガーにバババッ!とプレイヤーにNPCが一斉挙手という光景に、ペッパーは遠い目になりながら最後まで役割を果たし切って一礼の後に退場。
舞台裏に戻ってみれば、マーニを搾り取られたライブラリとウェポニアの面々と、ホクホク顔でマーニの山を数えるペンシルゴンと其の仲間達、キラッキラな瞳とダルンダルンの幸福顔をしたイムロンとSOHO-ZONEが居り、今回の一件で旅狼は五億近いマーニの獲得が約束され。
更には別天律の隕鉄鏡によるリアルタイム同接者数は、なんと脅威の三百万人越えの大記録を達成した事で、ペッパーはドッと大きな疲労と目眩に襲われる事になったのである…………。