VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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騎士組手にて力を示せ


※あけました、おめでとうございました





百人無双、一騎当千

エインヴルス王国第二騎士団団員のエーデリウス・ゴウナー、二刀流の騎士とも言える其の(NPC)からの手合わせと共に発生したクエスト【騎士の挑戦。勇者の証明】は、単発の組手クエストもしくは連戦型組手クエストかによるが、王国側への信頼にも関わりそうな()が有るとペッパーは見ている。

 

(さて、どうしようか……………)

 

左足を後ろに右足を前へ、空手や武術の世界で言う所の『左構え左打ちの体勢』を取って向かい合えば、向こうもまた『正眼の構えらしき体勢』を以て向き合って来る。

 

(……………よし、決めた)

 

木剣を逆手持ちに変更から、其のまま真っ直ぐ前に出て、エーデリウス・ゴウナーと距離詰め。同時にコンパクトな挙動で剣を振るえば、エーデリウス・ゴウナーは受けて逆に一撃を食らわせに来たので、此方もまた相手の攻撃を回避し再び打ち合う。

 

プレイヤーと違ってNPCはリスポーン出来ない世界の真理(此のゲームの設定)、訓練ながら本気を感じた一合の前故に、自分には『木剣を覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)に見立てて、スキルを使わずに相手に降参を言わせるスタイルで挑む』という脳内タスクを構築。

 

幕末・剣道教室・ギャラブレ含めたETCで得て、培い育てた己の剣と経験からエーデリウス・ゴウナーの横一閃に合わせた突撃と、木剣の柄本を斜めにして受けて滑らせながらに横を取り、首筋へと僅かに当てて王手を取る。

 

「……………どうしますか」

「………………っ、参った。…………降参だ」

「ありがとうございました」

 

相手が降参の意思を見せたなら、其の組手は其処で終わり。首筋から剣を離して逆手に持ち直し、数歩離れて御辞儀をすればエーデリウス・ゴウナーは悔し気に下がって行く。

 

「エーデリウスに降参を述べさせるとは…………中々の兵の様だな」

 

第一王子のアレックスが後方で腕組みしながら呟くも、ペッパーは続いて出て来た挑戦者の女騎士に向き合う。

 

「エインヴルス王国第一騎士団所属レイン・ウィンディ。蒼空を舞う勇者殿………我が挑戦、受けて貰おう」

「よろしく御願い致します」

 

大ボスが控えているかも知れない此の無限組手、騎士達で苦戦している様では先が思いやられるのは必然、なので此処からは巻き&速攻で無力化して進めていこう。

 

受けて相手の手や心情を知るのも大事だが、時に自ら飛び込まなければ事態は進展しない、なんて事も多々有る訳で。……………誰に言ってるのかって?リアルで全一とチームメイトとフラグを建てたのに、未だに進展してる様子が見えない、負けず嫌いの日本最強のプロ格ゲーマーに対して、だ。

 

 

 

 

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「ハァッ!」

「踏み込みは良いが、体幹が危うい。下半身の重心を意識する様に。其処」

「ッ!?く……………あ」

「チェック」

「参った…………!」

「ありがとうございました」

 

 

 

 

 

 

 

「くっ、何故当たらない………!?」

「貴方は順手から逆手に変える時に、左肩が少し浮く癖が有る。其処に自分は、脚の移動を合わせている。其れだけです」

「なっ…………あっ!」

「剣は落とした。…………どうしますか」

「…………降参です」

「良い試合でした」

 

 

 

 

 

 

「ぐぬぉおお!!!」

「フィジカルによるゴリ押し。攻め立てて手を出させないのは悪くはないですが、技巧派は其の勢いすらも利用します。例えばこんな形で」

「ごぬぶ!?ぬおっ!?」

「…………どうします?」

「…………私の負けだ」

「ありがとうございました」

 

 

 

 

 

 

 

「勇者、御主は予知能力者なのか!?」

「予知能力って………相手の動きを見極めて、頭で戦略を作り出して、敵に最も有効になる一手を導いてるだけです」

「……………達人か何かなのか」

「積み上げた物の重さだとは思いますが………其処です」

「っ、ぬぅ!?……………降参だ」

「良い剣筋でした。またの機会に是非」

 

 

 

 

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千差万別とは言えど対人戦、其れも王国の騎士団に属するNPCの動きや剣筋には、色々と学べる事が多い。

 

ある者は力を主とし、ある者は機動力に比重を置き、ある者は人中線の一点を崩す事を極意とする者、或いはヴォーパルバニーと同じく致命となる部位を叩いて倒す者。

 

個性や心情に思考が有るからこそ変化が生まれ、其れを突き詰める事で流れが生まれ、そして数多の流れが軈て大河へ変わり紡がれていく、謂わば其れは『人間讃歌』ではなかろうか。

 

「まさか此処までとは…………!」

「ありがとうございました、良い剣筋でした」

「ぐっ…………此の敗北、忘れはしない…………!」

 

第二騎士団団長のセレス=フィリアが出っ張って来たり、盾と剣で突撃戦法を仕掛けて来たり、其れをせずとも強い相手に降参を言わせる縛りプレイを、ペッパーは此の戦いでも貫き通し。

 

ギリギリの戦いの果てに、危うい場面に幾度も見舞われながらも、最後は剣を巻き上げ飛ばし、木盾突進の勢いにカウンターを合わせて詰ませた事で、漸く彼女に降参を言わせた彼はホッと一息付く。

 

「な、何と言う…………!」

 

開拓者達が声高らか叫ぶ蒼空を舞う勇者の実力を前に、アレックス本人も動揺を隠せず目を丸くし、ペンシルゴンや彼女の足下にいるノワと、帽子に擬態しているアイトゥイルがドヤ顔、覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)とマントに擬態したディアレは喋らず動かずとも仲間達と同じ様子で、エリムス・ティルテェナは此方の実力に唖然となっていた。

 

「ちょっと休みたい…………」

 

縛りプレイは緊張感を以て挑める反面、物凄く神経を使う。其処にタイムアタック要素まで加えると、縛りを破らない為のチャート構築とサブプランを幾つか用意等も加え、破綻すれば即終了の恐怖も加算されるので心臓に悪い。

 

何より此の組手イベントの性質が無限組手タイプと確定した時から、確実に副団長や団長クラスが出て来るとの認識の元に戦っていたが、流石に限界が近いのでそろそろ切り上げたい所。

 

 

 

 

 

 

 

ペッパーの抱いた想いを、まるでシャンフロという世界が空気を読んで答えを示す様に。

 

アレックスを構築するAIの思考が、ペッパーというプレイヤーの力の限界、底の底までを引っ張り出させんとするが如く在って。

 

そして其の実、ペッパーが此のクエスト内で騎士団団員や団長相手に、降参を言わせ続けるという高評価を繰り出しまくったという事実によって、クエストのルートは『エインヴルス王国第一騎士団団長との確定エンカウント』へと定まっており。

 

「ッ……………!()()()()()()よ、居るかッ!」

「「「「「「「「「「アレックス王子!?」」」」」」」」」」

「呼びましたか、殿下」

 

アレックスの一言、騎士団団員や今し方下がったセレス=フィリアすらも声を上げる中、其の騎士はまるで転移魔法でも使ったかの様に現れた。

 

風に揺れる金髪に海の様に透き通った蒼眼、凛とした顔立ちと顔以外に騎士鎧を纏いて、手に持つは水晶で作られた堅牢なる盾と、腰に吊るすは業物たる剣の柄と鞘。

 

数多くの騎士達が羨望や尊敬、一部が嫉妬に彩られた視線を向ける中、ペンシルゴンやティルテェナは驚愕に駆られた表情で呼ばれた騎士を見た後、此方に視線を向けて居る。

 

「……………殿下。もしや彼は、蒼空を舞う勇者殿ですか?」

「あぁ……。此の通り、騎士達との木剣を用いた組手で幾度も勝利を重ねた。お前の力を以て、勇者に武を示せ」

「御意。ですが、相手をするならば『同じ条件』で。其れが騎士として、此の組手に臨む心得ですから」

 

騎士達が武器や鎧を預かり、彼は木剣を持って蒼空を舞う勇者へと歩み寄る。

 

誰が呼んだか『当代無双』、誰が呼んだか『王認勇士』。

 

エインヴルス王国第一騎士団団長にして、栄光在る王国騎士団最強のNPC。

 

王が認めし最も勇猛なる騎士の称号を、王より直々に授かったという設定を持ち、ペンシルゴンをして何れ起きるだろう、新旧の王権による内戦で『最大の手札とも障壁とも成り得る存在』が。

 

 

 

『王認勇士アルブレヒト』が己の恋人(ペッパー)の前に立ち塞がったのだ。

 

 

 






登場、アルブレヒト


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