アルブレヒト 対 ペッパー
其れは彼が持つ強さの四本柱の一本、相手や自分の立ち位置を役柄として定めて演じる事で、敵の心情や行動への理解を行い、手の内を読み切る
アルブレヒトに一泡吹かせてやると決めた脳内タスク、アルブレヒトの相対と共に此処まで見てきた他の騎士団団員との戦い、其のデータ達を脳内で纏めて要らない情報はシュレッダーで裁断した後、真っ更な状態でアルブレヒトに対抗する為の情報収集を開始する。
(淀みない立ち方、確り置かれた重心、程良く力んだ腕と肩の置き位置。此の三つだけでも解る、アルブレヒトが此迄に『幾千の修羅場を越えた実力者』だと…………!)
思考と演算を行いつつ構えを取れば、アルブレヒトは此方の様子を察してか、騎士として決闘に臨むが如く名乗りを上げる。
「エインヴルス王国第一騎士団団長、アルブレヒト」
「ペッパー、ペッパー・
両雄共に口上完了、シン…………と静まった訓練所と、勇士と勇者の間に流れた空気の『ほんの僅かな変化』に気付けたのは、ペンシルゴンと第二騎士団団長セレス=フィリアだけで。
「「ッ!!」」
数瞬先、ペッパーが仕掛けた一閃を予測して寸尺で回避したアルブレヒトが、返しの木剣で襲い掛かった其れを想定していたペッパーが紙一重で回避し、即座に反撃へと転じる。
互いに一手、回避からの最速挙動の二手目の攻撃も躱され、反撃も空を切り、ならばと三手目に移りて木剣は振い、其処から四手・五手・六手と更なる剣戟を重ね合う。
『其れ』に最も早く、一番最初に気付いたのは第一王子のアレックスであり。
『其れ』を遅れて知覚したのは、木剣で斬り結ぶペッパーとアルブレヒト、預けられて離れた場所に居た大精霊のジゼルであり。
『其れ』の異質さに気付いたのは、ペンシルゴンと
そして僅かな後に騎士団の全てが、漸く『其れ』に気付くに至れた。
浮かび上がるは一つの疑問。今自分達は───────『二人が
(…………まさか、な)
アルブレヒトの手を予測し、戦いで起こり得る状況を想定し、挙動や癖を学んで思考に加える中で、五手目の木剣の激突した其の瞬間に、己と彼の目が丸くなったのを知覚した。
六と七に八の手を指し、九手目に鍔迫り、然してアルブレヒトの持ち得る力を前に押し込まれ、ペッパーは受け流すが如く自ら飛んで体勢を立て直す。
(…………アルブレヒトの表情、多分というか十中八九
ペッパー本人は気付いてないが、彼の両耳が考え事をしている時にピクピク動く癖は、シャンフロのアバターたる自分にも反映されている。
もし仮に彼がリュカオーンの
(断定、とはいかないが…………。其れでも後一手、此の一手でおそらく『確信』に到れると…………其れだけは『断言出来る』!)
アルブレヒトも同じ事を考えたのか、ペッパーが構えた様に彼もまた構えを取る。自身はスキルやジゼルの援護を受けずとも、己が持つ『異様に強過ぎる剣技』を用いれば、王権を揺がす悪意を抱いた大抵の者を撃滅出来た。
だからこそ─────────アルブレヒトにとって、おそらく『初めて』の。スキルも魔法も持ち要らずに行う、純粋な木剣の試合で此処まで食い下がれる者との相対と、其の相対者が振るう剣戟を演じ合ったからこそ、生じた疑問をハッキリさせなくてはならないと決意を抱き。
「「ッ!」」
十手目、奇しくも互いに選んだのは『最速最短で敵の急所を穿つ』事。接近、構え、行動、抜剣………一連の所作の中で二人の読みと剣閃が交錯し。
アルブレヒトの袈裟斬りがペッパーの胴貫より一瞬早く届き、彼の身体を地面に叩き伏せ。僅かに遅れて胴を打ち据えられたアルブレヒトが地面に膝を付いた事で、此の組手の決着が付いたのである。
「……………強いなぁ」
大精霊ジゼルが
木剣勝負かつ自力の時点で此の強さ、此れにジゼルが宿った剣と絶対防御を可能とする盾が追加されるのだから、もし仮に戦う事になった者には静かに合掌を送ると決めた所に、片膝を付いていたアルブレヒトが歩み寄って利き手を差し伸べる。
「良い試合だった、ペッパー・
「ありがとうございました、アルブレヒト」
手を取って立ち上がり握手を交わした両者に、第一王子アレックスは複雑な心境を抱きながらも、其れは其れとして健闘に対する拍手を送り、騎士達にティルテェナやペンシルゴンもまた拍手を送って。
「アルブレヒトよ、よくやった」
「有難き御言葉です、殿下」
胴貫を食らった痛みも有ろうに、王認勇士たる騎士は其れを顔に出す事は無く、アレックスの前に片膝立ちを以て答える。他の騎士達もペッパーも、ティルテェナにペンシルゴンもまた片膝立ちになる中、アルブレヒトはアレックスへ述べた。
「殿下。もしよろしければ、私の『願い』を聞いて頂けますでしょうか?」
「……………申してみよ」
「ありがとうございます。私、王認勇士アルブレヒトは蒼空を舞う勇者、ペッパー・
クエスト【騎士の挑戦。勇者の証明】。
其れはNPCの間でも高らかに謳われる程の
エインヴルス王国騎士団の騎士達を相手に、木剣による組手を通じて力を認められ、其の果てに当代無双の王認勇士アルブレヒトと戦い、彼が認める程の高評価を収める事によって、
本来アルブレヒト専用の職業ながら、其の実『特化アタッカー並の火力と特化壁タンク並の耐久力を両立する』、シャンフロプレイヤーをして『NPC
王認勇士直々のスカウト