VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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アルブレヒト 対 ペッパー




燕頷でなぞる筆先の如く

五条 梓(ペッパー)という人間(プレイヤー)は得て来た情報と、脳内記憶に保管した情報の結び付けによる反映と行動、即ちはインプットアウトプットの速さが他の者よりも『速い』。

 

其れは彼が持つ強さの四本柱の一本、相手や自分の立ち位置を役柄として定めて演じる事で、敵の心情や行動への理解を行い、手の内を読み切る役割行動(ロールアクション)と絡める事で、凄まじい出力を発揮。時間の経過と共に敵に対するメタが構築され、完全に読み切られたが最後、将棋で言えば王手・カードゲームならロックの、所謂『詰み盤面』に持って行かれる。

 

当の本人(五条 梓)は睡眠中に反復学習を行う体外離脱と同時並行で習得し、数年の時間を掛けて習熟に至らせた事も有ってか、此れを『同様に誰にでも習得出来る技術』との持論を語るも、そもそも其の領域に数年で辿り着けている時点で『普通では無い』のが、一般的な人々の見方なのだ。

 

アルブレヒトに一泡吹かせてやると決めた脳内タスク、アルブレヒトの相対と共に此処まで見てきた他の騎士団団員との戦い、其のデータ達を脳内で纏めて要らない情報はシュレッダーで裁断した後、真っ更な状態でアルブレヒトに対抗する為の情報収集を開始する。

 

(淀みない立ち方、確り置かれた重心、程良く力んだ腕と肩の置き位置。此の三つだけでも解る、アルブレヒトが此迄に『幾千の修羅場を越えた実力者』だと…………!)

 

思考と演算を行いつつ構えを取れば、アルブレヒトは此方の様子を察してか、騎士として決闘に臨むが如く名乗りを上げる。

 

「エインヴルス王国第一騎士団団長、アルブレヒト」

「ペッパー、ペッパー・天津気(アマツキ)

 

両雄共に口上完了、シン…………と静まった訓練所と、勇士と勇者の間に流れた空気の『ほんの僅かな変化』に気付けたのは、ペンシルゴンと第二騎士団団長セレス=フィリアだけで。

 

「「ッ!!」」

 

数瞬先、ペッパーが仕掛けた一閃を予測して寸尺で回避したアルブレヒトが、返しの木剣で襲い掛かった其れを想定していたペッパーが紙一重で回避し、即座に反撃へと転じる。

 

互いに一手、回避からの最速挙動の二手目の攻撃も躱され、反撃も空を切り、ならばと三手目に移りて木剣は振い、其処から四手・五手・六手と更なる剣戟を重ね合う。

 

 

 

『其れ』に最も早く、一番最初に気付いたのは第一王子のアレックスであり。

 

『其れ』を遅れて知覚したのは、木剣で斬り結ぶペッパーとアルブレヒト、預けられて離れた場所に居た大精霊のジゼルであり。

 

『其れ』の異質さに気付いたのは、ペンシルゴンと龍神楽(ドラグマ)にティルテェナであり。

 

そして僅かな後に騎士団の全てが、漸く『其れ』に気付くに至れた。

 

 

 

浮かび上がるは一つの疑問。今自分達は───────『二人が()()()()()()()戦っているのを観ているのか?』───────という、摩訶不思議な光景だったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…………まさか、な)

 

アルブレヒトの手を予測し、戦いで起こり得る状況を想定し、挙動や癖を学んで思考に加える中で、五手目の木剣の激突した其の瞬間に、己と彼の目が丸くなったのを知覚した。

 

六と七に八の手を指し、九手目に鍔迫り、然してアルブレヒトの持ち得る力を前に押し込まれ、ペッパーは受け流すが如く自ら飛んで体勢を立て直す。

 

(…………アルブレヒトの表情、多分というか十中八九()()()()()()。瞳孔がさっきよりも『強まってる』と同時に、表情は動揺を隠してるけど『ブレ』が現れた)

 

ペッパー本人は気付いてないが、彼の両耳が考え事をしている時にピクピク動く癖は、シャンフロのアバターたる自分にも反映されている。

 

もし仮に彼がリュカオーンの呪い(マーキング)を受けず、狐か狼の獣人族(ビーストマン)改宗(コンバージョン)していた場合、面白い程に判り易く『其の無意識の癖が表面化』していたのは間違い無い。

 

(断定、とはいかないが…………。其れでも後一手、此の一手でおそらく『確信』に到れると…………其れだけは『断言出来る』!)

 

アルブレヒトも同じ事を考えたのか、ペッパーが構えた様に彼もまた構えを取る。自身はスキルやジゼルの援護を受けずとも、己が持つ『異様に強過ぎる剣技』を用いれば、王権を揺がす悪意を抱いた大抵の者を撃滅出来た。

 

だからこそ─────────アルブレヒトにとって、おそらく『初めて』の。スキルも魔法も持ち要らずに行う、純粋な木剣の試合で此処まで食い下がれる者との相対と、其の相対者が振るう剣戟を演じ合ったからこそ、生じた疑問をハッキリさせなくてはならないと決意を抱き。

 

「「ッ!」」

 

十手目、奇しくも互いに選んだのは『最速最短で敵の急所を穿つ』事。接近、構え、行動、抜剣………一連の所作の中で二人の読みと剣閃が交錯し。

 

アルブレヒトの袈裟斬りがペッパーの胴貫より一瞬早く届き、彼の身体を地面に叩き伏せ。僅かに遅れて胴を打ち据えられたアルブレヒトが地面に膝を付いた事で、此の組手の決着が付いたのである。

 

「……………強いなぁ」

 

大精霊ジゼルが()り憑いた剣を用いずとも、己が持つ自力のみで此方を打倒せしめた王認勇士、最強クラスの人類NPCに地面に伏しながらも、心の内にて浮かんだ言葉を口にして見上げる。

 

木剣勝負かつ自力の時点で此の強さ、此れにジゼルが宿った剣と絶対防御を可能とする盾が追加されるのだから、もし仮に戦う事になった者には静かに合掌を送ると決めた所に、片膝を付いていたアルブレヒトが歩み寄って利き手を差し伸べる。

 

「良い試合だった、ペッパー・天津気(アマツキ)。噂に違わぬ実力者であると知る事が出来た」

「ありがとうございました、アルブレヒト」

 

手を取って立ち上がり握手を交わした両者に、第一王子アレックスは複雑な心境を抱きながらも、其れは其れとして健闘に対する拍手を送り、騎士達にティルテェナやペンシルゴンもまた拍手を送って。

 

「アルブレヒトよ、よくやった」

「有難き御言葉です、殿下」

 

胴貫を食らった痛みも有ろうに、王認勇士たる騎士は其れを顔に出す事は無く、アレックスの前に片膝立ちを以て答える。他の騎士達もペッパーも、ティルテェナにペンシルゴンもまた片膝立ちになる中、アルブレヒトはアレックスへ述べた。

 

「殿下。もしよろしければ、私の『願い』を聞いて頂けますでしょうか?」

「……………申してみよ」

「ありがとうございます。私、王認勇士アルブレヒトは蒼空を舞う勇者、ペッパー・天津気(アマツキ)を──────」

 

 

 

 

 

 

 

 

王認勇士(キングス·パラディン)へ推薦したいと思っております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クエスト【騎士の挑戦。勇者の証明】。

 

其れはNPCの間でも高らかに謳われる程の強さ(歴戦値)誠実さ(高潔度)信ずるに値する(信頼値)の、三つの特定マスクデータが累積値を超過、及び騎士団団員や騎士団団長達にも届く程の名声と武勇を有した上で、王国との関わりを持つ商会長やギルド長等の、正式な言伝を以て王城に入城し。

 

エインヴルス王国騎士団の騎士達を相手に、木剣による組手を通じて力を認められ、其の果てに当代無双の王認勇士アルブレヒトと戦い、彼が認める程の高評価を収める事によって、()()()()()騎士系職業に就職後、王国所属の騎士たる『王認騎士』となって様々なクエストとシナリオを経て名声や武勇を認められた果て、プレイヤーが漸く到れる謂わば『特殊な職業(ユニークジョブ)』の一つで有り。

 

本来アルブレヒト専用の職業ながら、其の実『特化アタッカー並の火力と特化壁タンク並の耐久力を両立する』、シャンフロプレイヤーをして『NPC()()()()()許されているブッ壊れ職業』、其の過酷なる過程をスッ飛ばして就職出来るという、王国所属のプレイヤーからすれば『垂涎の的な方法』を示すシナリオだったのだ。

 

 






王認勇士直々のスカウト


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