木剣組手の後
ガタガタゴットンガタゴットンと、カルカダ=コラス商会所有の馬車が揺れる。
「其れにしても凄まじい武勇でしたわ、ペッパー様。あのアルブレヒト様を相手に木剣とはいえ、僅かに遅れども届かせるとは…………」
「木剣とは言え、先に届いたのは彼の方。実物の剣なら負けてたのは自分でしたから」
「本当なら『当初の目的』を果たす筈だったのが、木剣組手になっちゃったからねぇ…………良い物を観れたのは確かだけど」
『クゥン♪』
『ウム。良い戦いであった』
エインヴルス王国騎士団との木剣組手、騎士団団員や団長との戦闘に加え、更にはアルブレヒトまでもが出て来た今回の一件は、ティルテェナからして『噂として流れているペッパーの実態がヤバい』という認識が更に強固な物と化し。
ペンシルゴンやリュカオーンの分け身のノワ、
「其れにしても、商会を運営する身としては何ですが…………。そちらの足下に顔を出しているのは『夜の帝王』と、其の剣は海の向こうの大陸で命を燃やし、灰より蘇ったという『黄金の龍王』…………なのでしょうか?」
「あー………簡単に言うと
『グルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル………………!』
最早恒例と言えるノワとペンシルゴンによる、火花を散らすバチバチの睨み合いだ。ティルテェナが困惑し、龍神楽は奇っ怪な物を見る目をしているが、ペッパーに関わるなら『何時もの事』だと割り切る方が一番良かったりする。
「…………ペッパー様。其の、良かったのですか?王認勇士の件ですけれど…………」
「…………とても魅力的では有りましたが、自分は後悔してませんよ」
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「……………御気持ちは嬉しく思います。ですが私に王認勇士の地位はとても重く大きな存在故、勧誘を受ける事は出来ません」
結論から言えば、ペッパーはアルブレヒト直々による
見学していたティルテェナにアレックス、更には騎士団の団員に団長達ですら、蒼空を舞う勇者として知られる男が、こんなビッグチャンスを自ら棒に振った其の理由を、どうにも解らないという表情で首を傾げて。
ペッパーが断った理由は、新大陸にてアレックス派の息が掛かった第三騎士団達と敵対したからという訳でも無く、単にアレックスやアルブレヒトが嫌いだからという訳でも無く…………彼はロールプレイと共に、自らの意志を言葉に紡いでみせた。
「私は木っ端の開拓者であり、恐れながらも勇者と呼ばれるに至った者ではありますが………元より風が吹き征く儘に世界を旅し、かの黄金龍王より世界に根付き蔓延る色災を討ち、生きる人類に勝利を託された者。王城に留まっては、災厄を討ち祓う事も出来ず。救える生命も救えねば、其れは勇者では有りません」
其れに…………と、ペッパーは横目でペンシルゴンやノワ達を見た後、アレックスやアルブレヒトを含めた騎士達を見て締め括った。
「『愛する者達と共に過ごす時間が減ってしまっては、自分が生きているという実感が無くなってしまいます』から。時は有限故にこそ、其の過ぎ去る中でどれだけ其の時間を大切に出来るか、私は其処を見誤りたくは無いのです」
大切な人と過ごす…………其れはペッパーからすれば、王認勇士という称号にも負けない、輝かしい栄光其の物。そんな彼の言葉に既婚者らしき騎士や、死別を経験した騎士は無言ながらも其の通りと、口には出さずともコクコクと力強く頷き、ペンシルゴンや影から見ているノワは雌の顔をしており。
そしてアルブレヒトは納得の、アレックスは随分不服な表情をしながらも、当代無双直々の推薦も有ってか「王認勇士に成りたければ何時でも申しに来い」と言われたのである。
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(プレイヤー初の王認勇士になる可能性も有ったけど、やっぱり俺は自由にやりつつも、其の都度目標を決めて動くのが一番向いてるだろうな…………)
来たる
現時点で討伐したのは旧大陸側の始源眷族たる
(あーくんとアルブレヒト君の動き…………私の予想が正しければ、二人の戦闘スタイルの根底は『同じ存在』の可能性が高い。──────うん、よし…………、とすれば『王権巡った戦争』が何時始まるかも注視しつつ、後は『RPA達』に連絡取ってサードレマ大公に取り入って相談役就任を目標に、敵対した場合のアルブレヒト君にあーくんを切札兼捨札として投入。其れから…………)
近い内に起きる可能性を秘めた、トルヴァンテ派とアレックス派の覇権争いを見据え、ペンシルゴンは今回の木剣組手で得て来た情報を元にして、先を見据えた更なる戦略と策を思考し講じ始める。
世界は流れて変わり往く、人々の思惑や理念に想起を乗せながら………………。
切札(魔王的には捨札にもなる)