サンラク・オイカッツォ・サイガ-0、対面する
「ォォォォォォォ!宿屋何処だァアアアアアアアアア!!あと1分しかねぇちぎじょぉぉぉぉぉぉぉ!!」
現在、サンラクは焦っていた。貪食の大蛇を打ち倒し、最後ッ屁の毒ダメージに追われながらも、何とかセカンディルに辿り着いたまでは良い。しかしセカンディルに在るだろう宿屋が、走れど見付からないのだ。
ゲーマーにとっての『状態異常:毒』は、何時の時代も切っては切れないポピュラーなデバフで、プレイする以上は避けては通れぬ事柄である。時間経過によって起きるスリップダメージは、回復アイテムを持っていれば何の問題も無いが、持っていないとなれば『詰み』に匹敵する事になる。
(くっそ!毒ってのはコレが有るから、マジで厄介なんだよ!あの毒糞蛇はリスポンしたら、もう1回一人式パイルバンカーをブチ込んでやる!)
体力が残り5から4へと減る。残された時間はおよそ40秒。此れは流石に間に合わないか………サンラクは毒ダメージによる死亡も覚悟し、心の中で怨嗟の声を上げた。
が━━━━『其れ』は突如として夜空から。自分の目の前に落ちてきた。衝撃が走り、砂埃を引き裂いて、純白の鎧兜を纏う巨体が、サンラクの前に現れる。
(オイオイ…まさかPKか!?勘弁してくれ、此方はもう30秒したら死ぬんだぞ!)
毒によるスリップダメージで、此方の残り体力は僅か3。そして目の前には、如何にも最上位クラスの装備を着込んだ、最上位のプレイヤー。
まるで戦って死ぬか、毒の時間経過で死ぬか。そんなクソな選択肢を、仕掛けているかの様にも見えて。
だがサンラクは気付く。目の前に居る騎士が、其の右手に『何かを持っている』事に。そして木製の栓をキュポンと、力強く引っこ抜いた所を見た。
(何だアレ…青い、ポーション?フムフム、えーと栓抜いて?振りかぶって?)
「あ、あの!
「おぶぉつぼぼぼぼっほほふぉ!!??」
強化された筋力と敏捷で振り翳された薬液が、ハイドロポンプの如くサンラクへと叩き付けられ。凝視の鳥面の嘴、其の奥に在る『本体』の口の中にも、液体が放り込まれて喉を通り過ぎ。
次の瞬間、己を蝕み続けていた毒は綺麗さっぱり解除され、スリップダメージで削られていた体力は、全回復によってMAXまで巻き戻る。
「ゴホッ、ゲホッ!?……毒が、解除された?」
「え、っと……間に合って、良かった……です」
乱暴では有ったが、全回復ポーションで自分の命を救ったサイガ-0を見上げるサンラク。一方のサイガ-0はというと巨体に似合わず、両手の人差し指を合わせたり、突っ付いたりし、モジモジしている。
「あの………スイマセン。助けて貰っちゃって」
「あ、いえ…!その……礼には、及びま……せん……」
「おーい……ゼェ、ゼェ…!おーい、サンラクゥ…ゲホッ…ゴッホ…!」
御互いにペコリと頭を下げ合う、サンラクとサイガ-0。其処に息切れ気味で、オイカッツォが合流してきた。
「んぉ、カッツォじゃねーか!?セカンディルに来てたのか!……ってか『追い鰹』、ねェ」
「………まァな。てかサンラク、お前半裸鳥頭ってどんな変態だよ(笑)。とうとう人間辞めましたってか??」
「うっせ、勝手に言ってろノロマ魚類。セカンディルに2着だったクセになぁ????」
「オ?喧嘩売ったな?あとサラッと走ってる中で見てやがったな、サンラクテメェ!」
街中にも関わらず、ギャーギャーワーワーと言い争い、取っ組み合うクソゲーフレンズ2人。しかし端から見れば、ガワが金髪ツインテ少女アバターのオイカッツォと、半裸の鳥頭男のサンラクが痴話喧嘩というか、キャットファイトしてるようにしか見えず。
「━━━━━━━━━━━━━━━━━」
「「!!!!!」」
そしてクソゲーマーとプロゲーマー、両者共に全身を走る悪寒で、錆び付いたカラクリ人形の様に、ギギギと顔を前へと向け。其所にはサイガ-0が、純白の鎧の内側より漆黒の殺気を放ち続けている姿を目撃したのだ。
「あの…サンラク、サン。其所にイラッシャル、オイカッツォ……サン、とは………
あっコレ選択間違えたら、ガメオベラ一直線だわ。サンラクとオイカッツォは、同時にそう確信してアイコンタクト&ジェスチャーで会話をする。
(おい、どーすんだよサンラク!?明らかにヤベーだろ、さっさと答えてくれ!)
(おまフッざけんな!オレが指名されたからって、一人安全圏に逃げてんじゃねぇ!?)
「……………サンラクサン」
威圧感が増していき、道行く他のプレイヤーも修羅場か何かと、ヒソヒソ話をし始める。非常に不味い、これ以上長引かせたら、面倒な事にしかならない。
「えっと、此方のオイカッツォとは……『ゲーム友達』デスネ、ハイ」
「………!そ、そう…ですか!友達…トモダチ……フレンズ………」
サンラクの解答に、サイガ-0の纏う殺気は途端に引っ込んで、一気に落ち着いた物に戻った。どうやら、当たりの選択肢だったらしい。
「………………………………」
「………………………………」
「………………………………」
(((き、気不味い………ッッッッッ)))
ギスギスの雰囲気が、どんよりとした停滞へ変わり、場を支配する。
(ハッ!そうだ…そうだった!陽務君に会えたら、やらないといけない事を…しなくちゃ!頑張れ、頑張るのよ私!)
沈黙を破る様に、サイガ-0が画面を開き、サンラクに向けて『あるアクション』を取り。彼の前には其れが表示される。
『サイガ-0さんからフレンド申請が来ました』
『よろしくお願いし申す』
『フレンド登録しますか?【Yes】or【No】』
「フレンド申請?」
「は、はい……其の、えっと……お友達から、お願いします…!」
深々と頭を下げるサイガ-0。恋愛
彼をシャンフロで見付け、毒のスリップダメージから救い、あまつさえフレンド申請を出せた。心臓がバクバクと大きな鼓動を鳴らし続けて、今にも頭は緊張でパンクしそうになる。
「……毒から助けて貰ったし、いつか此の御礼は返しますね」
ふと頭を上げれば、サンラクが笑ったように見えて。目の前の画面には『フレンドにサンラクが追加されました』と、彼女の勇気と頑張りを称える結果が、其所に在った。
(や、ややや……ん、やったあああああああああああああああああああああああああああ!!!)
表面は冷静さを取り繕いながらも、心の中は今にも天に昇ってしまうような想いが、サイガ-0を満たす。
嗚呼、嗚呼……。本当に、本当に……。勇気を出せて、本当に良かった。
「えっと、大丈夫……?」
「はい!何の問題もありません!むしろ絶好調です!もし困った事が有ったら、伝書鳥を下さい!どんな場所に居ても、直ぐに駆け付けますから!」
其れでは!と、サイガ-0はルンルン♪とスキップしながら帰り、他のプレイヤーも一人また一人と各々の目的の為動いて。其の場には、サンラクとオイカッツォだけが取り残された。
「………フレンド登録しとくか、サンラク」
「………そーだな、オイカッツォ」
御互いにEメール以外の連絡を取り合う手段として、しかしながら御互いに煽り煽られの覚悟の元に、サンラクとオイカッツォはフレンド登録をし合う。
そうしてオイカッツォはギルドの方へ、サンラクは防具屋で装備を整えるべく、各々が行動を開始したのであった…………。
物語が交錯する時、新しい物語が産まれる