VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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深海へ向かいて




暗き海に灯を焚いて

海に潜るという行為は、何時だって命懸けだ。其の行動を人の身で行い、深い深淵に向かう事とは即ち、星の中心に向かう事と同義と言われ、余程の装備や準備が無ければ『道中脱落』の結末のみが残される。

 

『ゴガバババババババ!?!』

『オクトメンが悲鳴を上げてるー!?!』

『潰れるぅうううううう!!!』

『アビス・ベル=ニールの搬入口かエルドランザの近くに避難を!』

 

海に置ける表層と中層を越え、漸深層の中腹に差し掛からんとした頃、オクトメンを纏っていたプレイヤーに水中呼吸を行う海藻のオキシケルプが切れたプレイヤーが、海中で次々に悲鳴を上げ、スペリオルアビスが作りし渾身の海洋調査魔導推進征海潜水艇の中や、エルドランザが自身の能力で背中に作った海中セーフゾーンに逃げ込み。

 

海中での活動を想定したオクトメンのカスタム機や、フレームや装甲含めて耐久性が異常なまでに頑強なソードメンベースの水中仕様機を纏うプレイヤー、ウェザエモンの遺産に新たに産み出した水中海中仕様の戦術機と合体したルストに、海中サポート特化オクトメンの様相を持つカスタム機を纏ったモルド。

 

エルドランザとの友情を育み、彼女とのレベリングに付き合った報酬の素材と海中のモンスターの素材で作った一式装備・蒼水竜鱗鎧(スプリアス・ドラゴメイル)シリーズで水中呼吸及び水圧耐性:極を得たレーザーカジキ、マクティスシリーズの頭装備:マクティス・ヘルム&深海三強のアクセサリーで水中呼吸と水圧完全無効を獲得したペッパーとサンラクを含め、極僅かなプレイヤーのみが海中を進み続けている。

 

「友よ、大丈夫か?」

「めっちゃ寒いわ。半裸で潜るもんじゃねぇよなぁ………」

「マクティスシリーズ一式なら水と氷にも耐性は有るが………。ちょっと霊角(れいかく)残影(ざんえい)から封熱の撃鉄(ニッショウトリガー)(スペリオル)に変えるよ」

 

水中で燃える石やらが有れば良いだろうが、無い物を強請った所で何も始まらない。一度インベントリアに入って霊角の残影を封熱の撃鉄に変更から、再び海中に戻って指パッチンを行えば、海中にも関わらず緋色の炎を放つペッパーの周辺は明るく、そして沸騰して気泡が産まれ、暖かく熱を含んだ空間が出来上がる。

 

「此れで少しはマシになりそう?」

「大分(ぬく)いな、松明兼焚火になるぜ」

「其れだと魚も蒸し焼きに出来そう」

「確かにいけそうだね」

「ポカポカしますね!」

『随分と奇っ怪な術を使うな………』

「海の中で燃える魚人族の鍛冶師が使う、水熱源石(ブレイズストーン)の様な姿だな君は………」

『テブクロのホウセキ、スゴいチカラ………カンじる』

『オレは問題無い。既に此の熱と炎も適応済みだ』

 

ル・アラバの口から、地上で見た事も聞いた事も無い未知なる鉱石の名前が出て来た。種族の鍛冶師が居る様に、海中や水中で燃える特殊な鉱石なのだろうか?アルトランティアに着いて、一段落したら詳しく話を聞いてみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海中を潜れば実に様々なモンスターと遭遇し、其のレベルがサンラクかペッパーよりも低ければ、当然の様に逃走する結果が待つ。

 

サンラクがアクセサリーとして着けているスレーギウン・キャリアングラーの鰭産ダイビング・フィンこと女帝皮布の疑似鰭(キャリアングラー・フィン)に魅了されて引き寄せられた雄の魚やモンスターが、リュカオーンの刻傷(こくしょう)愛呪(あいじゅ)によって正気に戻って一目散に逃げ去るを繰り返す光景は、ある種の無限ループを見ている気分で。

 

そんな無限ループ状況を逆に利用し、引き寄せから逃げる間でアビス・ベル=ニールが海中探査用のアームを器用に使って海中の魚相手に漁を行い、エルドランザも海中の流れをほんの少し操って魚達を一箇所に留め、長い首を伸ばして魚を捕らえて咀嚼しエネルギー補強に勤しむ。

 

「アクセサリーの性能上、火加減は出来ないんだけど………どう?良い感じ?」

「海の中で魚を蒸し焼きにするって自体、初めての経験だが………案外悪くねぇな」

「………新鮮な体験が出来て良い」

「ゲームならでは、だね」

 

ル・アラバ達が魚を捕らえて、サンラクが海喰の剣(ブループレデター)を用いた活け締め、ペッパーが封熱の撃鉄で加熱調理の一手間を行い、ルストモルドが蒸し焼き魚をインベントリに入れ、アビス・ベル=ニールやエルドランザの背に乗ったプレイヤー達に食糧分配に勤しむ。

 

一定時間炎を纏う封熱の撃鉄、階級:(スペリオル)から成る出力も海中で暖を取り、魚を調理加工して補給手段の確保に繋がるのも悪く無い。ダルニャータに礼を含めた、何かしらの品を入れても良いだろう。

 

(とするとキャッツェリア視点で考えれば、海底にしかない鉱石や宝石が良いんだろうけど…………おっといけない)

 

思考が別の目的に引っ張られ掛けるが、兎にも角にも先ず優先するべきはアルトランティアへの到達だ。魚人族達の故郷は当然ながら海中に在るので、ファストトラベルするにはアイトゥイルやディアレを連れて来る必要は有る物の、海中装備と深海三強のアクセサリー全種を別途で用意しなくてはならず、やるとしても漏れが無い様にキッチリ準備をしなくては、話のはの字も無い。

 

「補充はそろそろ良いかな」

「生魚も蒸し焼き魚も手に入ったし、休憩もこんな所だな」

「ルルイアスに居たモンスター、深海なら会える気がする」

「い、一応借り物だから気を付けてよルスト………」

「漸深層の中腹より先は、深海の猛者が跋扈している。俺達が先に海路を往くが、くれぐれも深海の王や海の森含めた強者に『無闇な挑発』だけはしないでくれ」

 

魚人族にとっても此処から先は進むのも命懸けであり、大多数のメンバーを連れている事も理由なのだろう。何より『地上判定』で動けていたルルイアスとは違い、此の場所は『水中判定』…………即ち海洋生物側に圧倒的地の利(ボードアドバンテージ)が存在している。

 

「解りました。ただ相手が相手の場合、俺が囮になるのでル・アラバさん達はアルトランティアに全力で向かって下さい。時間稼ぎしつつ倒せるなら倒しますので」

「おうよ、アラバ。深海の王だろうが、俺達はルルイアスでアイツ等をブッ飛ばしたからな。大船に乗ったつもりでドンと居な」

「……………全く、敵わないな君達には」

 

強がりでは無い自信から成る言葉に、ル・アラバは肩を揺らしつつ苦笑いを浮かべた。

 

いよいよ此処からが本番、漸深層の先に在る深層領域………其の底に在る、魚人族の里・海底都市アルトランティアへの潜水行軍は続く。

 

 

 






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