VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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夜闇の中を開拓者は往く




夜闇を駆ける者、其れは誰の物語(其の四)

オッス!オラ、サンラク!今日神ゲーたるシャンフロを、始めたばっかの初心者!現在セカンディル到着してセーブをしてから、色んな施設を巡って武器屋に来たんだぜ!

 

━━━━と、そんな主役を張る声優が冒頭ナレーションをするように、サンラクは防具屋の最安装備の『隔て刃シリーズ』で身成を整え、道具屋でレベリングで狩ったモンスター達の素材を売却し、現在は武器屋に居る。

 

「あ?こんなゴミ買い取れるかよ」

「ですよねー」

 

跳梁跋扈の森でドロップした『ゴブリンの手斧』を、武器屋で売れないか試したが、どうやら買い取ってくれない様だ。

 

「しょうがない。おっちゃん、武器のラインナップ見せてよ」

「おぅ、良いぞ」

 

表示される武器の一覧、何れも此れもイマイチかと思った矢先、サンラクは『籠脚(ガンドレッグ)』なるカテゴリーに目を付ける。

 

「なぁ、此のガンドレッグって何?」

「お、目の付け所が有るじゃねぇの兄ちゃん。ソイツはつい最近、新しく出来た武具でな。両足に固定して使い、防具として耐久上げたり、蹴りでの格闘に用いるんだとよ」

 

「へー」と答えつつ、サンラクは籠脚のラインナップに目を通す。しかしシャンフロの序盤の街と有って、性能は据え置きである。

 

「うーん…やっぱビミョーだなぁ」

「なら『作る』しかねぇなぁ兄ちゃんよ。俺達鍛冶師に素材を渡せば、武器を作れるぜ」

「えっマジで?」

 

「あぁ」と白髭を生やす鍛冶師が、マップを展開して其のエリアを指差す。

 

「此処から行ける『四駆八駆(しくはっく)沼荒野(ぬまこうや)』で採れる鉱石を持ってくれば、見合った武器を拵えてやれるぞ。其れと兄ちゃんが採掘するなら、ツルハシよりゃ小鎚の方が効率が良いかもな」

「そうなのか…じゃあ、此の鉄小鎚を2本頼むよ」

 

「あいよ」とアイテムインベントリに入った、鉄の小鎚を確認したサンラクは、四駆八駆の沼荒野へと走る。

 

時刻は午後7時を差し、夜は増していく………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すげぇな小鎚。打撃練習にもなるし、ツルハシよりもスタミナ消費が押さえられてる。おっちゃんが言ってたのは、こういう理由か」

 

夜闇の空に星が瞬く、四駆八駆の沼荒野。点在する採掘ポイントで、鉄の小鎚を振るい翳し、トンカラカンとリズミカルに、鉄面を岩山へぶつけるサンラクは、小鎚の有用性に感心していた。

 

傭兵(二刀流)は職業特性によって、連続攻撃の手数で押し切る事を戦闘の主としている。其れが小鎚を用いた採掘ともなれば、ツルハシを用いるよりも段違いのペースで掘れる。更に言えば打撃系スキルを覚えるのに、此れ以上に適正な方法は中々無いだろう。

 

「小鎚で採掘して、其の鉱石を売って小鎚を買って、また採掘をして、目当ての武器を作る……よし、整った!」

 

そうと決まれば話は早い。一昔前にゲームセンターで見た太鼓のゲームの様に、音ゲーでお気に入りの楽曲を奏で、リズミカルに鼻唄を歌うように、サンラクは次々と採掘ポイントを掘っていく。

 

およそ1時間半程が経過し、粗方の採掘ポイント巡りで、鉄鉱石等の鉱石アイテムを手に入れた彼は、颯爽と武器屋へ帰還する。

 

「おっちゃん、早速だが武器作ってくれ」

「おぉう…。こりゃまた……随分採って来たな、兄ちゃんよ」

 

アイテムインベントリから取り出され、カウンターに積み上げられていく、数多の鉱石を見た鍛冶師は目を丸くする。

 

「ふふん、小鎚様々ってね。ところで、作れる武器って何があるの?」

「待ってな、今出来るリストを出してやるよ」

 

そう言って展開される武器一覧に、目を通すサンラク。すると鍛冶師は『あるアイテム』を見て、こう言ってきた。

 

「おいおい、こりゃ『沼棺の化石』じゃねーか。珍しい」

「あぁ、ソレ?採掘ポイントで掘ってたら、幾つか出たんだよ。レアアイテム?」

「あぁ。コイツがありゃ、こんなのも作れるぞ」

 

そう言い、ピックアップした画面には『湖沼の短剣』や『湖沼の小鎚』と言った、クリティカル発生による耐久値減少を半減するという、手数とクリティカルの連打でモンスターを倒す自分と、相性抜群(ベストマッチ)な武器が在った。

 

「…良いね。じゃあ湖沼の短剣と小鎚、各々2本づつ頼むよ」

「おぅし解った!直ぐに作るから、適当に時間を潰しておけ!」

 

余った鉱石は一部を除いて換金し、道具屋で回復アイテムを幾つか購入。スキルを確認したり、夜の時間帯のモンスターとの戦闘で、レベリングをしながら時間を潰して、およそ1時間が経過。

 

サンラクが武器屋へと戻ると、白髭を生やす鍛冶師が彼の注文していた、湖沼の短剣と湖沼の小鎚を完成させており、アイテムインベントリに各々2本ずつカウンターに乗せて、腕組みをしながら待っていた。

 

「お~……神武器かよ………」

「また素材が手に入ったら持ってきな。武器を育てるのも、俺達鍛冶師の仕事だ。あと、俺はそろそろ寝るから、武器の修繕するなら明日以降に頼むぜ?」

「うーん…まぁ、しゃーない。あんがとな、おっちゃん」

「おう。あぁ、其れと夜の時間は危険だ、くれぐれもそんな装備で出歩くんじゃねぇぞ?」

 

武器を育てるという気になるワードも有ったが、サンラクが1時間程戦った、夜の時間帯のモンスター達を思い浮かべる。何れも一筋縄ではいかなかったものの、昼間とは変わって好戦的な連中も多かった。

 

そしてゲーマーならゲームの中で、思いっきり無茶をしたいと思うのも、逃れられないサガであり。

 

「フフフ…!無茶をするなと言われたら、無性に無茶したくなるのがゲーマーなんだよなぁ…!インベントリがパンパンになるまで、狩り尽くしてやろうじゃねーの!」

 

夜の時間帯にしか現れないモンスターならば、其れなりのレアアイテムも有るだろうと、サンラクは再び四駆八駆の沼荒野へと突き進むのだった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲギャギャギャギャ!」

「ギャキキー!」

「ギャギャキャー!」

「ゲギギーギギギ!!」

「ゲキャッ!ゲキャキャ!」

 

(仲間を呼ぶコマンドは昔っからザコ敵が呼ぶって、相場が決まってる筈だろが━━━━━!!!)

 

四駆八駆の沼荒野でレベリングをしていたサンラクは、現在赤頭巾を被る、通常のゴブリン達よりも遥かにグレードアップした武器を携え、本来は弱いモンスターが数的優位を作るために使う能力を使い、5体に増えたモンスター『レッドキャップゴブリン』と、生き残りを懸けた戦いを繰り広げていた。

 

昼間に戦ったゴブリンとは、明らかに挙動が違う。仲間を呼ぶという『弱者特権』を行使しながら、其れでいて1体1体が全員フェイントを絡めたり、常に此方の武器が届かない間合いを『判っている』立ち回り。

 

どうみても、ソロで攻略させるつもりが無いだろう、そんな調整が施されたゴブリン達に、袋叩きにされるか逃げ帰るかの選択が示され。しかしながらサンラクは、其所に新しい選択肢を作り出す。

 

「へっ…『イイね』。俺はこういうのが(・・・・・・)欲しかった所だ!」

 

クソゲーマー・サンラクは、誰よりも『理不尽な状況』を好む。逆境や一対多数、クソの様な調整を施したエネミーとの戦闘、ギミック必至の攻略………其れ等を楽しめるプレイヤー。

 

こんなシチュエーションを楽しめないで、己はクソゲーマーが名乗れるか!

 

「掛かってきな、レッドキャップゴブリン共!全員纏めて剥製━━━━━」

 

其の時だった。襲い掛かるレッドキャップゴブリン達が、突如として爆ぜてポリゴンと化し、目の前に吹き荒れる衝撃波で、サンラクも尻餅を付かされた。

 

一体何なんだと、彼は『其れ』を目撃する。

 

 

 

 

 

砂煙が開けるようにして、躍り出るは黒の。漆黒すら生温い、底無しの『闇』であり。

 

月と星達の放つ仄かな明かりが照らす、荒野の地を踏み締め、四足で歩む大型の『獣』を見た。

 

尖った耳と風に揺れる炎のような『黒毛』、敵を簡単に引き裂き、噛み千切る事が出来そうな『爪と牙』を。

 

 

 

 

 

サンラクは出逢った……否、出逢ってしまった。

 

真のシャングリラ・フロンティアに。

 

狼の形が成った、暗闇の権化に。

 

其の右目から(・・・・・・)黒の闇を溢し続ける帝王と(・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

『ユニークモンスター』

 

『夜襲のリュカオーンと遭遇しました』

 

 

 

月明かりの下で、鳥頭と夜襲が此処に相対す。

 

 

 

 






如何なる世界でも、定められた特異点


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