VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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征け、征け、征け




目指す場所、至るべき場所

漸深層の中腹──────其れは魚人族(マーマーン)達にすれば『天国と地獄の境界線』とされている。彼等彼女等は弱肉強食の深海世界で生活し、深海三強の影に怯えながらも慎ましく、そして逞しく生きている…………らしい。

 

「深海は此の様に地上の光が届かない為に暗く、光源を放つモンスターは自身が喰う側とも、喰われる側とも承知の上で其の身を晒している。尤も、深海の王や海の森に海遊の女帝に見付かれば、死は避けられん」

 

蒼炎蒼雷の戦艦鯱(アトランティクス・レプノルカ)巨大要塞寄居虫(アーコリウム・ハーミット)大名行列空母鮟鱇(スレーギウン・キャリアングラー)を其々そう呼んだル・アラバに同調し、他の魚人族達も無言で頷きながらに『突き刺す様な視線』を送って来る。

 

「もし見定められたならば………他の強たる者との戦いが勃発するのを祈るか、他の猛者との共闘を演じるといった方法しか無い。…………何度も言うが『本当に避けられない戦い以外は避けてくれ』、友達よ」

 

まるで其の言い方からして、シャンフロシステムがNPCを介したプレイヤーに対する『警告』とも取れる其れを見て、ペッパーとサンラクは互いに『同じ答え』を抱いた。

 

「解りました」

「………あいよ」

「うむ。では此方だ」

『此の辺りは流れが速い。気を付けよ』

 

エルドランザの指摘を踏まえ、アビス・ベル=ニールも灯りを最小限の物としながら、魚人族達の案内を受けた潜水進軍は続いて行く…………。

 

 

 

 

 

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所変わって新大陸──────此の大陸のおよそ二割を占めるペンヘドラント大樹海地帯を越えた先のエリアが一つ、広大なる大砂海のディルトセオ大砂海を越えた先、新大陸では中心点に位置する大陸で五指に入る危険地帯『シグモニア前線渓谷(フロントライン)』。

 

僅かでも刺激が入れば、土の中で眠っている要塞蜘蛛のガルガンチュラ種と列車砲百足のトレイノル種が目覚め、不倶戴天の敵種族を前に生き残りを掛けた戦争が勃発、騒音が響き渡ってエスカレートし始めたが最後、隔絶された輝ける冠塔丘に住まう帝晶双蠍達がブチギレてビームを降り落として来る、文字通りの『地獄絵図』が展開される修羅の地である。

 

「此処がタンク職人権装備の素材が在ると、噂に名高いシグモニア前線渓谷…………!」

「やっと着いた…………長い旅路だった…………!」

「ドーナツ状の擂鉢地帯、そして彼処に見える輝きがツァーベリル帝宝晶…………か」

「綺麗………」

 

彼等は新大陸に到達したプレイヤー達、ジークヴルムのユニークシナリオEXに置ける決戦フェーズで、背中を預け合ったという繋がりを持ち。前線拠点で武器防具を直し、ティアプレーテンで身形を整え、樹海と大砂海のモンスターや地を踏破し、此処まで辿り着いた猛者達なのだ。

 

「胡椒さんが撮った新大陸のマップからして、大体中心に有るんだねシグモニア…………」

帝晶双蠍(アレクサンド·スコーピオン)のビームはヤバいらしいし、セーブテントは節約したけど心許無いのがな………」

「其の為にリヴァイアサンでチェストリアを確保して、木材やら何やら色々詰め込んで来たんだから」

「あんまり声出すなよ。前線で戦争が始まったら、此方も大変なんだから」

「じゃあ…………掘り始めましょ〜」

 

『ラジャー』の掛け声は同時に、そして小さく。各自が持つスコップやツルハシを取り出し、地面をザクザク掘り始める。

 

掘削開始地点は外縁部から離れた場所、土や小石を擂鉢状の危険地帯に放り込まぬ様に細心の注意を払い、ワッセワッセと地面を掘り、坑木で支えて坑道を構築し、掘り出した土を外へと運び、己等が抱きし地下空間を構築を成すべく、手を止めずに掘削道具を振るい続ける。

 

「此処にはタンク職が待ち望む、タンク職人権装備の原材料要塞蜘蛛と其の女王個体が居る訳だが………。此方は列車砲百足と女王個体が気になるのよな」

「確か前にペパ子ちゃんスレで、くノ一装束ペパ子ちゃんが居たけど其のモンスターが材料だとか」

「ツチノコさんが持ってる甦機装のハルバートの原材料が、列車砲百足の女王個体のトレイノル・センチピード・ドーラなんだよね………」

「女王個体は通常種の五倍は有るとか言うらしいし、MVM誘発させて落ちた素材を掻っ攫うのが良いのかも」

「「「「「「だね〜………」」」」」」

 

武器商人を含めた第三者視点に置ける勝利の定義として、戦い争う勢力の状況を逐一見定めつつも、如何にして『勝ち馬を引き寄せるか』という部分が問われる。

 

此の世界(シャンフロ)で名高く広まった胡椒さんとツチノコさん(とある二人のプレイヤー)からしても、シグモニア前線渓谷というフィールドは下手を打てばフルボッコ並びに死亡の運命は避けられず、更には女王個体相手は片方の陣営を上手く利用した果てに、やっと討伐に到れた難敵で強敵だったのだと。

 

「──────取り敢えず俺達がやるのは、此処からシグモニア前線渓谷の側面に通じる『地下駐屯地』を作って、此処での狩りを『より良くする環境を構築する』事だ」

「そして時期が来たらプレイヤーに情報流して、やって来たプレイヤー相手に此方が狩りで得た素材と物品のトレード、違うプレイヤーに言伝を頼んで素材と物品トレード以下繰り返し!」

「まさに経済を回すとは此の事…………!」

「タンク職にとってガルガンチュラ種の素材は、喉から手が出るくらいに欲しい逸品だ。即ち此方が其れを用意して市場に流せば、ウッハウハになるのは間違い無し………!」

「兎にも角にも、先ずは地下駐屯地製作ね。夢を語るのは良いが、作り終らなきゃ話は始められない」

「「「「「「「其れはそう」」」」」」」

 

夢は大きく、現実は過酷。夢半ばで諦めぬ様に、断崖絶壁に楔を打ち込み一歩ずつ、地道に前へと進む事こそが『一番の近道になると』、彼等彼女等は確信しているのだ。

 

 

 

 

 

 

そんな商機を自ら産み出し、新たな夢を産み出さんとする者達に『骨太な御得意様』が出来るのだが…………其れはまだまだ先の話になる。

 

 

 

 

 






到達点は其々

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