VR初心者ゲーマーが往くシャングリラ   作:ガリアムス

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三つの王達




(おう)(おう)(おう)の饗宴 〜其の八〜

アトランティクス・レプノルカ"覇頭衝角(プロモスピア)"二体と、アトランティクス・レプノルカ"憑依一体(エピタフ)"の襲来。

 

冥府の深海に置けるレアエネミーにして頂点捕食者、魚人族(マーマーン)達からも『深海三強』と言われ恐れられる絶対的な、或いは圧倒的な強者達が深海の暗闇たる帷を引き裂き現る光景は、魚人族に改宗(コンバージョン)した開拓者達からしても、まさに『絶望的盤面』と言い表すに等しい光景である。

 

何せ深淵のクターニッドのユニークシナリオで招かれる、反転都市ルルイアスにてアトランティクス・レプノルカと接敵し、反転した環境下で開拓者優位の戦闘で尚も蹂躙されたプレイヤーともなれば、此処での戦闘領域が『海中』という、深海生物の潜在能力(ポテンシャル)全力全開(120%以上)で解放可能な場所なのも、此の状況に拍車を掛けているのだから。

 

「アバババババ…………!!」

「ひぇぇ………」

「此の世の………、終わり………」

 

ライブラリの、ウェポニアの、SF-Zooの、スペリオルアビスの、其々のクランに属するプレイヤーやソロで活動するプレイヤー達も、此の状況を前にして尻込みや恐怖が勝り、覇頭衝角が宿した命の生誕を邪魔させない為に構築した、海中防衛線が徐々に後退していく。

 

そして何よりアトランティクス・レプノルカの持つ『最大火力の大技』を、蒼炎として燃やす魔力の灯を蒼雷へ変換し、胸と背の扇薙鰭で増大・三角形の陣形状態(トライアングルフォーメーション)にして口へ収束から放つ、大火力かつ超高速の『蒼雷光閃』を知っているからこそ。

 

おそらく蒼雷光閃()()の威力に速度を繰り出し得る覇槍を掲げた帝王が二体、そして其の帝王と違って覇槍は無い物の、六枚のサイボーグフィンとトサカを海流に靡かせる、アトランティクス・レプノルカ"憑依一体(エピタフ)"は、其の二体の帝王以上に『ヤバい雰囲気』を宿しており。

 

自分達は此の化物達を相手に戦えるのか?其れ以前に此の海中という環境下で奴等に勝てるのか?─────────そんな『敗北イベント』の()が漂い始めて。

 

 

 

「アトランティクス・レプノルカは百メートル以上離れてると、燃やしている蒼炎を雷エネルギーに変換してビームを撃ってくる!五十メートル圏内は放電攻撃を行う以上、奴の巨体から繰り出される格闘戦の間合いで戦わないと、甚大な被害が出るから俺が前線を張る!!」

 

 

 

声の主はペッパー・天津気(アマツキ)であり、七つの最強種(ユニークモンスター)が一柱・深淵のクターニッドの権能を人が人の身で振るえる様に、神代人類が創り出した大いなる遺産たる深淵を見定む蛸極王装(オクタゴラス・アビスフォルガ)を、両脚に甦機装(リ·レガシーウェポン):深厳戟響脚(アンピィ・トゥルリテ)を纏った彼が、人類の守護者の如く三体の深海の王達を前に現れ。

 

蛸足の一つに赫炎を宿した刃と鋒に蒼氷を宿した峰を持つ、魚人族の英傑ル・ゲネテレの得物アスカロン・リペアを翳し、蛸足の一つに意志を宿して自己進化と変革を行い、汎ゆる事象に適応する覇刀(はとう):龍神楽(ドラグマ)を握り締め。

 

暗闇に泳ぎて何時襲い掛かるかも解らない三体の強者に立ち塞がる姿たるや、『御伽噺で神が与えた聖剣と妖精の加護が宿る盾を握りて、邪悪なる竜王に立ち向かう勇者の挿絵』が此程までに似合う光景も早々無い。

 

そして当然ながら、魚系や海洋系モンスターのヘイト引き付け効果をパッシブされている疑惑を持った、アスカロン・リペアを不世出存在の深海の王相手に示し、開拓者からすれば自ら先陣を切って前に出た勇者、三王からすると自ら食われに来た愚か者とでも言いたげな小さな蛸の魚人に、王達は蒼炎を燃やし滾らせ、蒼雷を迸り帯電させながらに突貫。

 

「今の内に体勢を立て直して!俺はアトランティクス・レプノルカズを此処から離れた海域まで引き剥がす!」

 

水圧という事象の中ではまともに動けぬ海中領域を、まるで空中とほぼ同等の挙動で軽やかに、かつ本場の魚人族にも負けない機動力でペッパーが海を掛け、アトランティクス・レプノルカ達を開拓者達から己一人に狙いを絞らせ、五十メートルを維持してマウアナ海窟近辺から引っ張り離す。

 

リュカオーンの愛呪(あいじゅ)により他亜人種への改宗(コンバージョン)が封じられているペッパーは、魚人族に改宗したプレイヤーと異なり水中呼吸と水中機動、水圧耐性を持たない為に、こうして装備やアクセサリーを使って呼吸と機動力を補っている。

 

前者は文字通り水中海中で酸素を取り込む、魚系海洋系モンスターに魚人族が持つ『呼吸方法』。中者は水中海中の領域下で武器を振るって戦闘や、擬似的な宇宙空間に等しい領域での『姿勢制御と移動の両方』に関わり。後者は『海の底の底を目指すならば絶対必須の要素』と、此の三つが無ければシャンフロ世界に置ける深海エリア:冥府の深海での活動は、実質『不可能』に等しい。

 

此等の対策を持たない者達は、海中で採掘可能な素材や浅瀬で狩猟出来るモンスターを狩り、海中の中層領域でアルクトゥス・レガレクスを釣り上げて狩って、深海での活動を可能にする水圧耐性や水中呼吸を補助する装備や、アクセサリーを作製。

 

更に深い深海の、更なる其の先の深層深海に向かう為には、深海三強を討伐して其々の素材で作った冥王鯱の護鏡(レプノルカ・ミラー)女帝鮟鱇の秀玉(スレーギウン・ジュエル)要塞寄居虫の結剣(アーコリウム・ソード)の…………日本神話に置ける、鏡・勾玉・剣の三種の神器をモチーフとした物が必須だ。

 

また冥王鯱の護鏡には『装備者の水中での行動補正』、女帝鮟鱇の秀玉は『装備者の水深に応じた水温耐性』、そして要塞寄居虫の結剣は『装備者に掛かる水圧に応じたモーション感度補正強化』と、其れ単体でも水中でのアドバンテージを得られ、三種揃ってアクセサリースロットにセットする事により、始めて超重水圧下での活動が可能になるのだ。

 

蛸極王装の水中呼吸+深厳戟響脚の海中キック挙動+深層海域下で十全に動ける三種のアクセサリーの恩恵に支えられ、三体のアトランティクス・レプノルカの放つ放電攻撃には、『雷撃の悉くを霧散せよ』の言霊で発動した状況改変(じょうきょうかいへん)で退け。

 

マウアナ海窟近辺から引き離し、引き離し、引き離し、途中でアスカロン・リペアの引き付け効果に惹かれた、数多の生物達をも連れて、進み続け───────周りが開けた海域と暗闇が満ちる場所に、三体の深海の王に数多の兵と盟主の威光を授かりし勇者が一同に介した。

 

「其れじゃあ…………全員捌いて、海鮮祭りにしてあげよう!!!」

『我が刃も奮えるぞ、ペッパーよ………!』

 

我先にと牙を剥く敵達を前に、たった一人の生き残りを掛けた大一番は幕を開け、其の勇者を追う様に数十分後に数人の勇士が、此の戦場へ援軍として突入し。

 

そして此の戦いは、後に此の光景を目の当たりにしたプレイヤーを通じ、魚人族の英雄たるル・アラバと魚人族の英傑ゲネテレの子孫で鍛冶師のジニシィ、他のプレイヤーに伝播して此の世界(シャンフロ)で高らかに語り継がれる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

───────『大深海決戦』、と。

 

 

 






勇者は如何にして語られるか


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