呪術廻戦にTS転生した僕は死にたくない   作:なゆさん

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百鬼夜行、戦闘、そしてピンチ

 12月25日百鬼夜行当日 東京 新宿

 

「……おかしい」

 

開戦はまだしていないが、敵も味方も戦闘態勢でいつ戦闘が開始されてもおかしくない。そんな状況の中、直接戦闘はしないものの、指揮や相手の術式の看破などの為に百鬼夜行にやって来た五条さんは、そんなことを呟いた。

 

「おかしい、ですか?」

 

私は尋ねる。

 

「ああ。あの目立ちたがりがこの盤面で姿を現さない訳がない。京都の方からも連携はないし。何か別の狙いか…?」

「確かに……狙いは分かりませんが警戒しておくべきですね」

 

別の狙い、か。いったい何だろうか。これ程の呪霊の大群を解き放っている以上、全面戦争の言葉に嘘偽りは無いと思うけど。

――その時、

 

「五条さん!!」

 

伊地知さんが駆け寄ってきた。

 

「報告が!」

「どうした?」

「こんな時にとは思いますが、早い方がいいかと。以前調査を依頼された乙骨の件です。―――――――――」

「え!?」

 

優太君が!?つまり里香という呪いは……。

 

「パンダ!! 棘!! 愛里沙!!」

 

何かに気づいたのか、急に五条さんが焦ったように二人と私を呼ぶ。どうしたのだろう?

 

「どうし――」

「質問禁止!! 今から3人を呪術高専に送る」

「はあ!??」

「どういうことですか五条さん!!」

「夏油は今高専にいる! 多分絶対間違いない!」

「「どっちだよ(ですか)!!!」」

「勘が当たれば、優太が死ぬ!!」

「愛里沙が抜けた分はなんとかする! 優太を守れ、悪いが死守だ!!」

「「「はい(応)(しゃけ)!!」」」

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

――高専上空

 

「帳が降りてる!! 悟の勘が当たったのか!?」

 

高専は、帳で覆われていた。間違いなく、夏油さんの仕業だ。

 

「私は帳を破って先に行く!! 二人は後から追ってきて!!」

「分かった!!」

「明太子!!」

 

そして私は拳を振りかぶり、

 

『バキ』

 

帳を破壊する。そして速攻で乙骨君がいる場所まで向かった。

 

十秒も経たずに近くまで辿り着いた。そこには、やはり覚えのある気配があった。

 

「やはり来たか愛里沙。待っていたよ」

 

夏油さんは強そうな黒人の男とともに立っていた。

 

(待ち伏せされてたか!!)

 

だが、こちらとしても手間が省ける。

 

「夏油さん。大人しく捕まって下さい。私は、貴方と戦いたくはない」

 

「と言いつつも殺す覚悟はしている、と。成長したな愛里沙」

 

夏油さんが笑みを浮かべる。

 

「君はこう思っているだろう。私では君には勝てない。いくら手数があったとしても、所詮は呪霊。上からひねり潰せばどうとでもなると。気になっているのはミゲルの事だろう?」

 

「それは、夏油さんだって分かっているでしょう? いくら夏油さんが手数で攻めても私は火力でゴリ押せる。自然呪霊しか取り込めない夏油さんが持っている呪霊の振れ幅もたかが知れてる。使い方によっては苦戦するかもしれませんが、負ける確率は限りなく低い。だから、その人を私に当ててその隙に目的を達成する気だった。」

 

「――まぁ、半分正解だ。」

 

後ろから声。

 

「な!?」

「牙天の術式の良いところは、力が上の相手だろうと、一度気絶させてしまえば気絶させた時の性能そのままに複製できる点だ」

 

そこにいたのは、もう一人の夏油さんだった。

 

「呪霊操術で私自身を攻撃させる。やった事は無かったが、上手くいったよ。――悪いが、時間稼ぎは二人だ」

 

瞬間、夏油さんが大量の呪霊を一斉に繰り出す。私は全て吹き飛ばそうと術式を使う。しかし、

 

「俺ノコトヲ忘レルナヨ、特級!」

 

後ろから蹴り飛ばされる。咄嗟にガードしたが、吹き飛ばされてしまう。

だいぶ乙骨君から引き離されてしまった。

 

「くっ!!」

 

とりあえず体勢を立て直して――

 

「よそ見厳禁だよ!」

 

先程の大量の百足型の呪霊!

 

「【熱球】!!」

 

即座に全て蒸発させる。

 

「――君は大きな攻撃の直前と直後、少し隙ができる。癖がそのままでよかったよ」

 

咄嗟に振り返る。いつの間にか赤い三節棍を持った夏油さんが後ろに回り込んでいた。

 

「がはっ!!」

 

重い!! あの三節棍は確か原作にもあった――

 

「特級呪具【遊雲】。術式は持たないが、その分シンプルに破壊力に特化している。ノーガードで受けたんだ。流石の君でも効くだろう?」

 

単純な力の塊。威力に関しては言うまでもないが、えげつない術式効果があるわけではない。

当たる事に過敏に反応しなくてもいいな。

 

「いえ、まだまだですよ!!【光球】!!」

 

追撃を仕掛けてきたミゲルとかいう黒人に光の速度で熱球を放つ。だが、

 

「なっ!?」

 

「――フゥ、危ナカッタ。事前ニ直線ニシカ来ナイト分カッテイナケレバヤラレテイタ」

 

術式が、消えた?

 

「ハッ!!」

「ぐっ!!」

 

蹴り飛ばされる。その先には呪霊が数十体。

 

「くっ!【熱纏】!!」

 

灼熱に、呪霊達が焼け崩れる。その隙に、

 

「【不知井底(せいていしらず)】!!」

 

十種影法術の拡張術式で式神【鵺】と【蝦蟇】を呼び出す。鵺は鳥のような式神で、電気を纏った攻撃ができる。込める呪力次第で大きさも変えられるが、今回は的が広がるだけなので通常サイズだ。蝦蟇はそこまで突出した性能はないが、拘束や直接攻撃、撹乱など応用の幅は広い。また、複数体出せるのも強みだ。

 

私は普段、手の内を明かしたくないのと、十種影法術は死んだ式神は戻らないらしく、使いづらいのであまり使わないのだが、今回はそうも言ってられない。相手が二人どころか、夏油さんは無限に手数があるようなもの。そして、火力がミゲルに封じられてしまう可能性がある。拡張術式であれば壊されても問題ない以上、出し惜しみは無しだ。

 

「鵺!!」

 

鵺にミゲルの足止めをさせる。仮にも私の式神だ。出力はかなり高い。数秒程度なら稼げる。

 

「蝦蟇!!」

「ぐっ!!」

 

夏油さんを捉えた。蝦蟇の舌で拘束する。よし、このまま、

 

「はあああ!!」

「サセネエヨ!!」

 

フォローに入ったミゲルに攻撃が受け止められる。この一瞬で鵺を振り切られたようだ。その隙に、呪霊が蝦蟇の拘束を解いてしまう。

 

「【熱纏】!!」

「オット!!」

 

私が超高温を纏うと、ミゲルは手に巻いていた縄を振るう。すると、私の技が解除されてしまった。

 

「なるほど、その縄が」

「ソウダ。術式ガ乱サレテ、上手ク使エンダロウ?」

「――それと、私を忘れてもらっては困る」

 

背後から夏油さんの声。私は影から刀を取り出し、攻撃を受け止める。そして、そのままカウンターで蹴りを叩き込んだ。

 

「忘れてませんよ!!」

「くっ!! やるね、誘ったか!!」

 

よし、重いのが入った。

 

「シッ!!」

 

カバーに入ったミゲルの縄の攻撃を躱す。

 

「大丈夫カ? 夏油」

「それなりにダメージは貰ってしまったが、問題ない」

 

二人が体勢を整える。

 

「鵺!!」

 

その隙に、潜ませていた鵺を差し向ける。私にだけ警戒を向けていた二人は、一瞬感電する。

 

「【光球】!!」

 

その一瞬で、私は迷わず高速の熱球を放った。しかし、

 

『パシッ』

 

また、光球が消えた。

 

「そんな…!!」

 

私は絶句する。夏油さんの手に見覚えのある呪具が握られていたから。

 

「ふぅ。感電がもう少し長かったら、そしてこの呪具が無かったら危なかったな」

 

ソレはかつて伏黒甚爾が持っていた、術式の強制解除の効果を持つ特級呪具、天逆鉾だった。

 

「天…逆鉾…! 何故夏油さんが!?」

 

「あの男の呪霊と一緒に頂いたのさ。君達にはいつか驚かせようと思って伝えてなかったがね」

 

天逆鉾、その恐ろしさは身に沁みて分かってる。何かされる前に決着をつけないと。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

短期決戦のつもりだったが、戦闘は膠着状態が続いていた。

依然劣勢。二人のコンビネーションに呪霊。そしてその呪霊を殲滅する高火力は封じられている。

現状、私はずっと後手に回っていた。

 

「ぐっ!! このままじゃ埒が明かない!!」

 

こうなったら温存を考えずに【光纏】を!!

 

「むっ、来るか!!」

 

私の雰囲気が変わったのを感じ取ったのか、攻めるのを止めて距離を取る夏油さん。ミゲルも夏油さんの横で油断なく構えている。

 

「もう、出し惜しみは無しです。―――一瞬で、殺す」

 

そして、私が光纏を発動しようとした瞬間、

 

『ドクン』

 

私の総呪力量に匹敵する、膨大な呪力を感知した。

 

「これは…!!」

 

祈本里香!! つまり夏油さんの本体が優太君と!!

 

 

――私はその時、皆の心配で頭がいっぱいになってしまった。

夏油さんの狙いが優太君である可能性が高い以上、この展開は非常に不味い。パンダ君と棘君も心配だ。感知できる呪力が弱まっている。恐らく重症だ。早く助けに行かなければならない。

 

「気が動転するのは仕方がないとして、私から意識を離すのはどうなんだい?」

 

夏油さんの声。

 

(しまっ―――

 

『グサッ』

 

天逆鉾が、愛里沙の頭を刺し貫いた。

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