高専に到着した。
「皆、お疲れ様。高専の結界内だ」
「これで一安心じゃな!!」
「……ですね」
五条さん以外はホントにただ沖縄を満喫しただけだったが、無事着けてよかった。まぁ、本番はここからだけど。
「悟、本当にお疲れ。」
「二度とごめんだ。ガキのお守りは」
と、五条さんが術式を解いた瞬間、
『トス』
五条さんが刺された
「……アンタ、どっかで会ったか?」
「気にすんな。俺も苦手だ、男の名前覚えんのは」
瞬間、五条さんが夏油さんに目で合図をし、瞬時に『青』で相手を空へ、夏油さんの呪霊が伏黒パパを丸呑みにする。
「悟!!」
夏油さんと僕が駆け寄る。
「問題ない。術式は間に合わなかったけど内臓は避けたし、その後呪力で強化して刃をどこにも引かせなかった。ニットのセーターに安全ピン通したみたいなもんだよ。マジで問題ない。天内優先。アイツの相手は俺がする。愛里沙と傑は天内達連れて先に天元様の所へ行ってくれ。」
「油断するなよ。」
「誰に言ってんだよ。」
「あの人が僕が前回撃退した人です。天与呪縛のフィジカルギフテッド持ち、妙な呪具をいくつも持ってます。気をつけてください。」
一応情報を渡す。
「お前が勝てたんなら、俺が負けるわけねぇだろ。安心しろ。――さぁ行け!!」
僕達は、急いで天元様のいる薨星宮へ向かった。
◇◆◇◆◇
薨星宮 参道
「理子様、私は―――。」
黒井さんが別れを告げようとする。それに僕は、
「待ってください」
待ったをかけた。
「夏油さん。ここで聞きましょう」
「……そうだね」
夏油さんはゆっくりと天内さんに近づく。そして、
「理子ちゃん。黒井さんと一緒に、帰るかい?」
「え?」
「な!?」
黒井さんと理子さんが声をあげる。
「担任からこの任務の話を聞かされた時、あの人は同化を抹消と言った。あれはそれだけ罪の意識を持てということだ。うちの担任は脳筋のくせによく回りくどいことをする。悟と愛里沙とも話し合いは済んでいる。」
夏油さん以外の二人の視線が僕に向けられる。僕はただ頷く。
「私達は最強なんだ。理子ちゃんがどんな選択をしようと、君の未来は私達が保証する。」
「……私は」
ポツリ、と天内さんの口から言葉が漏れる。
「生まれた時から
天内さんの目から涙があふれる。
「でもやっぱり、もっと皆と…一緒にいたい。」
それが、天内さんの本音だった。原作で知っている事だったのに、胸がいっぱいになる。
「もっと皆と色んな所に行って色んな物を見て……もっと!!」
「帰ろう。理子ちゃん」
「帰りましょう! 理子様!」
夏油さんと黒井さんが手を差し出す。
僕は――
「夏油さん!! 理子さんと黒井さん連れて安全な所に!!」
そう言い残して呪力強化最大出力で走り出し、銃を構えようとしていた伏黒甚爾に向かっていく。
「チッ。お前五条の坊より勘が良いんじゃねえか?」
舌打ちをしながら素手で構える伏黒パパ。
「一応聞きますけど、五条さんは?」
「俺が殺した。」
分かっていてもかなり苛つく。だが、あくまで冷静に、体内から呪霊を吐き出す暇を与えないようにそのまま突っ込む。
正直、先の戦いからそこまで時間が経って無い上身辺を警戒して術式で辺りを常に探っていたので僕の呪力はまだ半分も回復していない。ある程度の技ならまだまだ使えるが、相手が伏黒パパな以上、できればこのまま武器無しの伏黒パパを押し切りたい。
だから死角や隙を作ってしまう可能性のある術式は使わずに単純な呪力強化と体術だけで攻める。
「ハッ、ガキが。俺相手に素手同士で勝てると?」
伏黒パパが動く。
伏黒パパの神速の拳を紙一重で躱し、懐に入る。すぐさま蹴られそうになるが、その足を低姿勢で避けて、みぞおちに拳を繰り出す。
だが、伏黒パパが少し体を後ろにさげるだけでその拳は空を切る。
「腕、短いなぁ。」
嘲笑いながら僕の拳を掴んで投げ飛ばす伏黒パパ。
「フッ!!」
距離を与えないように吹き飛ぶ先の壁を蹴ってすぐ伏黒パパへ向かう。
「チッ! しつけえなぁ。しつけえ女は嫌いなんだが」
嫌そうな顔をしながら拳を構える伏黒パパ。
◇◆◇◆◇
膠着状態が続く。どちらも攻撃が当てられないのだ。
「クソッ。いい加減にしろよガキ。星漿体見失っちまうじゃねえか」
「なら攻撃の一つでも当ててみればどうですか?」
そうだ。僕達がこんな膠着状態になっている間に天内さんは遠くに逃げられる。今日が終われば天内さんに価値はなくなるのだから、伏黒パパにとっては冗談じゃないといった状態だろう。
私は、身長さえあれば術式なしの対決なら五条さんや夏油さんと互角だ。スピードだけなら上回っているまである。まぁまだ5歳なので手足が小さ過ぎて勝てないが。逃げに徹すれば伏黒パパにだって遅れはとらない。まぁ手足が小さ過ぎて攻撃が当たらないが。手足が小さすぎて……まぁそれはいい。
ただ、そろそろ限界だ。伏黒パパに動きを見切られつつある。このままではいつか攻撃を当てられて負けだ。――勝負に出るか。
「【多重熱球】」
拳大の熱球をいくつも出現させる。
「いいぜ。来いよ!」
伏黒パパが呪霊を吐き出し、天逆鉾を構える。
熱球を射出する。スピードはもちろん光速だ。しかし、
「嘘!?」
体捌きと天逆鉾で、熱球を躱しまくる伏黒パパ。
「射出される球は微妙に光るから分かる。球は直線にしか進めない。こんだけ射出される球すべてを曲げるなんて不可能。だから後は射線を予測し、回避するだけだ」
そんな力技で!? と叫びたい気持ちを我慢する。
……まだだ。まだあの技がある。
そのまま攻撃は避けられ続け、熱球が後一つになった。
「ふぅ。危なかったぜ。」
かすり傷や火傷はいくつかあるが、五体満足で伏黒パパが立っている。
「まだ後一つありますよ?」
「曲げれるんだろ? ただそれだけだ。直角にしか曲がれないのなら軌道の予測は出来る。コイツを当てちまえば終わりだ。」
天逆鉾を掲げて伏黒パパは言う。
「それはどうでしょう? ――フッ!!」
僕は熱球を伏黒パパに向けて放った。熱球は光速で伏黒パパへ向かい―――
伏黒パパの間合いの手前で止まる。
「は?」
「【偽・超新星】」
そして、弾ける。原作の脹相からパクった技。ただの血液であの威力なのだ。僕が真似すれば凄まじい威力になる。
「……ふぅ。さてと、後は―――」
伏黒パパが倒れたのを確認してから夏油さんの所へ向かおうとしたその時、
『グサッ』
腹から、天逆鉾が生えてきた。
「ゴフ。あーあ、腕が、上がら、ねえや。ハァ、足と、頭と、心臓は、無事か。ハァ、これじゃ、星漿体、殺せねえな。ハァ、大損、だぜ。ゴハッ――」
どうやら運良く急所が外れたらしい。ぶっつけ本番だったので精度がイマイチだったようだ。
意識が薄れていく。天逆鉾が腹に刺さったままだからか、反転術式が使えない。あぁ、思考がぼやける。
薄れていく意識の中で、僕は左腕内側に右手拳を押し当て、言葉を紡ぐ。
「布瑠部、由良由良(ふるべゆらゆら)。」