FGO 仮面ライダー/THE ALTNATIVE   作:ジュンチェ

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プロローグ 

 

 ……風が吹いている

 

 

 荒野は砂塵を巻き上げ、小さな礫が寝転がる俺を埋めようとしていく…。うつ伏せになった地面と平行な視界は乗り捨てた愛車のバイクが既に砂埃に汚されている様を映していた。かつて白かった車体は乾いた茶色に覆われ見る影もなくなりつつある…まあ、どうでもいいか。

 

 取り敢えず、酷く疲れた。

 

 もう眠らせてもらいたい。

 

 

 せめて、夢の中では幸せに…… いや、それすら赦されない。夢では血濡れた悍ましい過去が自分を呪い続け、現実は容赦なく理不尽な今を突きつけられる。堪らないじゃないか…この救いの無さ。俺が何をした? 救ったじゃないか、人も、街も、世界も…… 守ったじゃないか、望まれるがままに……

 

 なのに、どうして『化け物』と後ろ指をさされ追われなくてはならないのか……

 

 

「ならば、せめて……」

 

 

 夢にも現実にも、救いが無いのなら…

 

 

 男は腹のベルトに手をかけた。バックルの風車も傷だらけだが、絶望して尚も彼を生かす心臓部。ここから体中に異形の呪いが伸びている…神経と動脈にも絡み癒着しているこれが壊れれば……

 

「…ッ!」

 

 一思い、息を吸い込み男は強く握り…ッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 ノウム・カルデア…… 新たなる人類史の新たなる敵・異聞帯とその統治者たるクリプターとの戦いをするための拠点であり、最後の砦。人類史や極々稀だが異聞帯のサーヴァントが藤丸立香をマスターとして集っている。現状の活動は異聞帯の攻略と散発する特異点などの対処で、多くの犠牲を払いながらもその任務は確かに進みつつあった……のだが…

 

 

「……また…消えましたね、サーヴァントが。」

 

 

 事件発生、まさにこの場所。管制室にシオンの落ち込む声。藤丸やマシュも頭を抱えている…無論、サーヴァントの消失は戦力の喪失と同義だからだ。今後の生命線に直結する非常に厄介な問題である。1騎や2騎などならまだしも複数となれば流石に看過は出来ない…せめて、共通点があればと消えたサーヴァント一覧を読み上げるはダ・ヴィンチちゃん。

 

「これで何騎目かな?ジャンヌ姉妹に刑部姫、マリー・アントワネットと葛飾北斎…あとは作家系サーヴァントの面々に今回は更に牛若丸やロビンフット……彼・彼女らの共通点と言えば…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、フツーにサバフェスの人気サークルの面々じゃんそれ。」

 

 

 

 

 

 たまたまいた黒髭ことティーチの一言…。実際、その通りだった。サバフェスとはいわばサーヴァント同士のコミックマーケット…同人活動の催しで、主に一時的に発生させた特異点で様々なサーヴァントが創作物を持ち寄る一大イベントだ。

 

 

 ―――その存在を知らされた寝起きカドックくんは『お前、馬鹿にしてるのか?』の真顔でキレかけた。

 

 

 サバフェスには藤丸やマシュも紆余曲折あって参加することになり、ジャンヌオルタのサークル『ゲシュペンスト・ケッツァー』にて延々とループする一週間で同人誌を創り上げ、見事に誉れあるサークル売上1位に輝いた。そして、当時のサバフェス主催兼、黒幕のBBちゃんを叩きのめしたのである。

 

 

 

 ―――その無限ループの際に生み出した創作物と戦利品に記録、並びに皇女の自撮りをカドックくんに見せたところ顔が困惑を通りこして虚無と化したとのこと。無理もない。

 

 

「先輩、マズイですよ。私たちだけならまだしも、他の方々の創作活動がストップしたら…」

 

「今年のサバフェスは看板サークルが殆ど空席になりかねない。…考えたくはないけど。」

 

 マシュと藤丸が懸念するのは看板を担うサークルが無くなればサバフェスの盛り上がりは欠けるものになるだろう。そうなれば、斬ったはったの任務に協力するカルデアのサーヴァントの息抜きも不十分になりかねないし、何よりも2人もこのイベントは楽しみにしていたのだ…。特にマシュは顔に焦りが見え隠れしていた。

 

「今回は何徹してか分からない謎のテンションのジャンヌオルタさんに掴まったことで参加が決まった身ですが、引きずりこんだ本人が何処かに行ってしまうなんて…」

 

 そう、今回は久しぶりの『出展する側』だから。

 

 ジャンヌオルタに巻きこまれる形で再結成したゲシュペンスト・ケッツァーだが、言い出しっぺは愚か他数名まで居なくなる始末。これでは作業の進めようがないではないか。

 

 

 現状を整理すべくティーチは考える。

 

「集団でバックレ…流石に無いよねぇ? ジャンヌ殿と姫はそもそも根が真面目だから原稿落としたりしないし、おっきーには鬼の担当きよひーが居る。他作家陣はともかく、創作に躍起だったジャンヌオルタ氏までもがほぼ同時に居なくなるとか有り得なくない?」

 

 創作活動しているサーヴァントの同時失踪。プロからアマチュアまで男女問わずに忽然と姿を消す……似たようなサーヴァント失踪事件は前にもあったが、その時の元凶である女神は『今回は無関係で〜す。』と気怠げに斬って捨てた。

 

 …じゃあ誰が? 明らかに人為性を感じる事件の真相は?

 

 ここで、さらなる情報が追加するシオン。

 

「ある特異点で消えたサーヴァントの方々のレイシフトの痕跡はあります。ただ、明らかに正規の方法では無いのは確か…やり口は喩えるなら拉致。取り敢えず、こちらとの魔力のリンクは切れてはいないですが……何処まで持つか。」

 

「場所は?」

 

「日本。ただ、どういうわけか場所も時代も絞り込めないんですよね〜。ああ、時代に関しては少々訂正。1971年から2023年までの間を推移しているみたいなんですが…なんか今ひとつ絞り込めないんです。なんでだろ?」

 

 

 日本。幾度となく特異点が発生し、冒険の舞台となった。現代に特異点が発生するというのも前例が無いわけではない。が……失踪したサーヴァント全員に共通する要素かと言えば別。藤丸の頭はもっとこんがらがっていく。

 

「なんで日本なんだ…。特異点の規模は?」

 

「規模はそんなに大きくはないです。ただ構成は極めて不安定… ただ消えそうになる直前まで収束すると突然復活しするんです。まるで燃料を足されたみたいに。」

 

 特異点は必ずしも介入を必要としない。歴史の『分岐点』であるがその規模が小さければその分岐から歴史は続くことなく、自然消滅することが常。つまり、人理に影響は無い……その一方でそんな特異点に出現した野良サーヴァントと縁を結ぶ機会を失ってしまう側面もあるのだが。

 今回は件の特異点にカルデアのサーヴァントが存在する以上、調査は必至…もし彼・彼女等が帰還出来ずにいるのなら救助の必要もある。

 

「取り敢えず、観測はもう少し続けつつレイシフトの準備に入ろう。微小特異点とはいえ油断は出来な……あれ新所長は?」

 

 ふと、ダ・ヴィンチちゃんが気がついた違和感…ゴルドルフがいない。いつもなら、何かしら意見するなりボヤくなりしてくるはずなのに…

 

「取り敢えず、報告しないと。捜してきます。」

 

「先輩、ご一緒します。」

 

 責任者なしで物事は進められない。藤丸とマシュはその場を後にする… それに応じて集まっていたサーヴァントたちも散り散りになっていく中でティーチがふと足を止めた。足許に漫画とおぼしき単語本が落ちている…

 

「む? 誰でござるかぁ〜? 本を大切にしないと、作家系のサーヴァントからシバかれちゃい……うん? うううん??」

 

 パラパラとなんの気なしにページ捲って…

 

 奇妙な点に気がつく。

 

 

「この絵のタッチ、見覚えが…。でも、ヒーローものなんて描いてたっけ? タイトルは…」

 

 

 

 

 

  ――― 仮 面 ラ イ ダ ー

 

 

 

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 

 

 ――ゴゴゴゴォ!!!

 

 

 …雷鳴、雨。 まさに容赦ない悪天候。

 

 立つことすらままならない殴りつけるような暴風とマシンガンのような水の雫が殴りつけてきて、思わず手摺りに捕まってしまう。その際に見えた眼下の光景は荒れ狂う濁流…いくら都市圏の整備された区画とはいえ、いつ洪水を引き起こしてもおかしくなさそうだ。

 

「…演出としては随分な盛り上がりだ。プロローグにはピッタリだよ。」

 

 まあ、軽口は言っていられない。もう時期『奴』がくる……雷鳴も雨音も斬り裂いてバイクの轟音が聞こえてきた。眼鏡がビショビショのせいで視界は無に近いが確かに感じる。

 捕まるわけにはいかない…橋の柵を乗り越え… 

 

 

「やめてくれ、『先生』。死んじまうぞ。」

 

 

 来た。

 

 暗闇に浮かぶ紅い眼、腕に走る紅い2本ライン、嵐になびく紅いマフラー……飛蝗のマスク。それでいてシルエットは人間、『怪人』と呼ぶべきか。

 いや、『彼』はこの世界ではヒーローだ。現代の民が求めた英雄譚の具現化…サーヴァントだ。バイクを駆り、正義と自由を愛し、世界を揺るがす悪と戦い続ける存在の原典たる男。

 

「なあ、帰ろうぜ。また差し入れとか持ってきてやるからよ… だから…」

 

「『先生』? ハハッ、悪い冗談だ…

 

 

 

  僕は『仮面ライダー1号・オルタ』なんて描いたつもりは無いんだけどねぇ!」

 

 

 

 ただひとつ……コイツが僕が描いた英雄譚じゃない。

 

 無論、それは彼自身も解っていて…親に突き放された子供のような顔をしていることが仮面越しでも窺える。残酷かもしれないが、『悪の1号』なんて僕は思いつかないしその物語に加筆するのも御免被る。

 

 …だから、再び荒れ狂う川を見下ろす。

 

「どうしても、物語を描いてほしいなら…他所を当たれ。『先生』は他にもいるだろ?」

 

「!」

 

 捨て台詞。あとはこの身を運に任せよう…

 

 

「では、さらば!!」

 

「石ノ森先生!?」

 

 そして……僕は身を投げた。

 

 

 

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