魔法少女の居る世界で美少女にTS転生したけど、美少女要素がまるで活かせてない件   作:魔法少女(フル武装)

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(美少女)イケメンを拉致る

 あれは、俺が幼稚園児のゆり組から卒園したての小学生だった頃。求婚して来た男がいた。

 

 高身長で金髪碧眼、おまけに白い軍服を来た一刀一銃の軍人だった。胸には勲章みたいなのがぱっと見10以上はついていた気がする。

 

「その力、ただ敵として摘み取るには惜しい」

「……大層にご高説か? 見下してくれるなよ」

 

 あの時の俺は力を手に入れたばかりでそれを教導してくれる奴も居なかったから、しんどい戦いになった。アイツら詠唱とか無しでバンバン魔法使ってくるし、魔法の効果を弱化させる銀の鎧が無かったら速攻で死んでたか魔法少女らしく薄い本コースだったかもしんない。

 

 地球と他の次元を繋ぐゲートとか言うヤバい代物を破壊した時は、地球(こっち)に居た敵がゲート接続直後に大部分が補給に戻った所を強襲しただけだし、真っ当に強い奴とやり合うのはこれが初めてだった。

 

 ああ、もう一本の剣を使うのもあれが初めてだったな。

 

 ともかく、奴は俺が初めて会った強敵、みたいな存在だった。

 

 幼稚園児から小学生になるまでに戦う事都度3回。完敗、負け寄りの引き分け、最後が辛勝。俺が紫電一閃を開発してやっと奴に勝つ事が出来た。

 

 その時の言葉を、今でも覚えている。つい数ヶ月前の事だが。

 

『このローゼングラム・アッシュバルツ、私の名において貴公と尋常なる決闘を申し込む』

『……ああ、この一敗一分一勝、こんな結果じゃお互いに納得しないだろうしな。受けて立ってやる』

『いや、待て。私が挑戦者側なのだぞ? 其方が断り、仲間と共に戦う事も出来る。決闘の対価も聞いていない。そんな不平等は許されない。どうか聞いてくれ、名もなき女騎士よ』

 

 奴は、折れた軍刀一本とバレルが破損した長銃一丁を捨てなかながら俺に話しかけて来た。心なしか、そのゾッとする程美しいラピスラズリの様な瞳を揺らし、その耳を紅くしていた様に思う。今でもどうなっていたかは覚えていない。

 

『次相(まみ)える時、私が貴公に勝てば、貴公を、いや、君を私の妻とする』

『……は?』

『貴公が勝てば、私の身柄も、私が知りうる情報も好きにして良い。大人しく拘束される事も構わない』

 

 奴は言い切った。小学生になりたての少女をつかまえて妻にすると。正直言って3回も戦ってくると相手の気性も分かってくる。奴は嘘をつかない男だと言うのも。

 だからこそ、俺が負けて本当の姿を晒したらどんな面白い顔で慌てふためくのかと思いもしたが、まだ後進の魔法少女が育ってない以上ここは勝つ以外に無かった。コイツだって野放しにしとくと野良の魔法少女十人くらい束でねじ伏せそうだったしな。

 

『決闘場所の指定は其方に任せよう』

『……なら、廃棄地区。ああ、お前には分からないか? あのゲートをぶっ壊した所で再戦だ』

『決闘は受諾されたものと認識して良いのか?』

『それ以外にあるか?』

 

 そう言うと、奴は露骨に安堵した様子だった。よくその裏表の無さで軍人っぽい事やってんな。そんな事を内心で感じながら、来る日に向けて用意して来た。

 

 奴に一度打ち勝った紫電一閃は不完全だった。奴の魔法は言ってしまえば加速魔法である。その魔法を捉える為に土壇場で編み出したのが紫電一閃だったが、あの時は廃線のレールを使わなければ加速出来なかった。

 

 今回は違う。あの河原での決闘で手答えは得た。風で相手を止め、雷撃はあの()()()()で生み出す。それを加速魔法が本調子になる前に撃ち込めば勝ち目は無くはない。何をするよりも早く、だ。

 

 その結果俺は──

 

 

 

 ──✳︎──

 

 

 

『紫電ッ、一閃!』

 

 ──勝った。今地面には奴が膝を突き、俺の剣を首筋に添えられている。

 

 運にも恵まれただろう。ビル風を当てにして廃棄地区を選んだのはあったが、火花を用意するよりも先に凄まじい強風が吹き込んだ事で、俺は先んじて奴を拘束する事が出来た。後は流れで強く当たるだけ。防御に特化していない奴にとって、真っ向からの打ち合いは分が悪かった。

 

 尋常な決闘とは言っていたが、あっさりとした結末だった。お互いに速さを求めた戦い故に、こうなるとは感じていたが。悪くは思わない、格ゲーの十割コンボの初手を決めた様なものである。やられた方が悪い。ましてや世界の危機だ、使わない手はないだろう。

 

 そう言う訳で、さてどうしようか。

 

「はぁ……っ、私の負けだ。好きに、すると良い」

 

 ──まず思った事は、こいつ顔が良い。目鼻立ちは言わずもがな、金髪碧眼、性格も真面目だ。ホストやらせたらNo.3くらいまでなら行けるだろう。それ以上は本音と建前の使い分けが出来ずに頭打ちになるだろうが。

 

「……そうだな」

 

 これは世紀の大発見かもしれないが、ここまで顔が良いと『好きにしろ』と言われた時に相手が男女関係なく如何わしい事を想像してしまうと言う事に気付いた。俺が女の子になった影響でもあるのだろうか。

 

 だがコレは不味い。不味いぞ。

 

 もし野に返して他の魔法少女がコイツと戦って勝ってしまった時、年頃の少女達は正気で居られるだろうか。いや無い。年頃の少年少女など、常に脳内でイチャコラするピンク脳である。大人であった俺だから耐えられたものの、妙に着崩れた軍服から覗く肌なんて歩く猥褻物だ。18禁コーナーの暖簾の奥に収容されてもおかしくはない。

 

 それに加えて、多分コイツは何をされても抵抗しないだろう。字面に起こすのも憚られる様な陵辱の憂き目にあったとしても、唇を噛んで必死に涙を堪えて……いや、俺まで染まるんじゃない。

 

「……クッソ、仕方ねえなあ」

 

 コイツの持ち物には何があるだろうか。

 

 ──通信魔法の類は? 使えない? 発信機とか埋め込まれたりは? え? そもそも発信機を知らない? 魔力の隠蔽とか認識阻害は? なるほど出来ると。

 

 じゃあもう、こうするか。

 

「えー、ローゼン、グラン・アッシュ……バルク」

「すまないが、訂正させてくれ。ローゼングラム・アッシュバルツだ」

「あ〜そうそう。アッシュ君、いやアッ君で良いだろもう」

「アッ君?!」

 

 イケメンは驚いても美形なんだな。羨ましいぜ。

 

「何だ、何も知らないのか? 地球では勝負事に負けた相手にはペットみたいに勝者から名前が与えられるんだぞ」

「……そうだったのか。すまない、私はこの世界の常識には疎く、無知を晒したな。私、いやアッ君はこれから未来永劫アッ君として生きよう」

 

 ──やっぱコイツ野に放ったらダメだわ。何考えてこんなの送り込んで来たんだよ()()()()

 

 めっちゃ悲痛な顔してんだけど。俺、◯と◯尋の◯隠しの婆さんみたいになってんじゃん。いやこれ……面白いけどちょっとやり過ぎたな。貴族の名を奪うのは死よりも重いとか言うしな。

 

「悪かった悪かった。冗談だよ、そんな文化精々百年前くらいまでしか無かったしな」

「あったのか百年前には!?」

「まあ安心しな、お前は変わらずローゼングラム・アッシュバルツだ」

「……いや、俺は決闘に負け、家名に疵を付けた。今の私、いや、()はただのアッシュバルツだ」

 

 生きて来て貴族なんて歴史の教科書かサブカルくらいでしか見た事無かったが、こうして見ると難儀な生き物だな。名前すら自由に出来ないとか。そうじゃないと人の上には立てないのか。

 

「ただ、地球にはこんな文化がある。戦った相手も1度目は敵、2度目はライバル、3度目以降は友達ってな」

「……友達? 俺が、か」

「ま、話の通じる相手に限るがな」

 

 俺は、膝を突くアッシュバルツの手を引き、無理矢理に立たせる。背は俺より少し低い、と言っても185は超えているし、鎧の分俺が嵩増しされているだけで、実際にはそんなに差は無いだろう。

 

「……だから、あだ名としてアッ君って呼ばせてもらう。良いだろ良いよな拒否は受け付けるぞ」

「あ、ああ、構わない」

「じゃあ──」

 

 俺はアッ君を思い切り抱きしめた。俺にとってこの世界でも数少ない男友達だ。嬉しいに決まってる。どんな馬鹿をコイツと一緒にやれるか、ワクワクしてくるぞ。

 

「っな──君の様な婦女子がこんな破廉恥な事を!」

「鎧だし良いだろ別に? 肌も触れねえし」

「いや、抱きしめたと言う事実がだな──」

 

 まあ、聞き流そう。お堅い貴族様もいつかはこの喜びも分かち合えるさ。さて、そろそろ俺も帰るとしよう、基本的に緊急時以外は晩御飯までに家に帰るのがルールだ。

 

 変身解除、と。

 

「き、消えた?」

「? いや、ここ、なんだけど」

「すまないが、君は?」

 

「さっきの、騎士、ですが」

 

「今、何と?」

「耳、悪いのか、てめえ」

「……まさか本当に君なのか?」

 

 いやコイツ大概失礼な奴だな。そうだよ、こんな女子児童がさっきまで決闘してた奴なんだよ。

 

「まさかこの地球と言う星は、年若い少女であればある程強い戦士となるのか……?」

 

 困惑するアッ君をよそに、俺は歩いて帰る。認識阻害魔法、複雑過ぎて使えなかったからこれで大分生活が楽になる。俺はホクホク顔だったが、次の瞬間、顔から血の気が引いていた。

 

 家に帰った瞬間、温和な親父が眼鏡を光らせ待っているビジョンが見えた。普段怒らない人を怒らせたら不味いんだってばばばばっ!

 

「おおお、親父になんて説明すれば」

 

 ノリと勢いで生きているのが女であり、その場凌ぎと空元気で生きるのが男である。その二つが合わさった俺は今、行き当たりばったりの最悪を見せつけられた気がした。

 

 

 

 ──✳︎──

 

 

 

「紫苑、この方は──」

「彼女に全てを捧げ、今は彼女の()()()であるアッシュバルツと──」

「それダメぇぇぇェェェェッ!」

 

 その日の夜、少女の悲鳴がこだましたとか。

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