また、来年度から諸事情により忙しくなりますので、更新頻度は大分下がると思います。
エタらないように頑張りますので、気長にお待ちください。
うん、えっとー。久しぶり?
今私の目の前にいるのは前世でのクラスメイト、竜田仁美。
彼女は転生して赤ん坊になってた。
そして!私は今!目の前の彼女に会話を求められている!
はっはっはっ、ぼっちであるこの私に?会話?
ないわー。
まあ、まず私はここケレン領に来たら神獣様扱いされて、崇めよー状態になっていた。これは私の行動と女神教の教えのせいなんだけど、そのおかげで、お供え物でいろんな食べ物をゲットしたぜ!
いや、ほんと、まじで感動した。迷宮暮らしだと周りにいるものはゲテモノばっか。それが今では、毎日甘いものを食べられるなんて、贅沢が出来ちゃうわけですよ。
ふははは、魔王にも追われなくなったし、私の時代来たり!
とは思ってるんだけど、前世でもボッチ!今世でもボッチ!コミュニケーション苦手!のこの私。前世でもそれが原因か何なのかいじめ?みたいなのを受けていたし。
崇められていて土地神的な扱いを受けているんだけど、人に近づかれると緊張するし、ましてや私から近づくとか考えられんわ。
そして、私はヒッキーとなった。
うん、林の中は領主が入っちゃダメよー、ってしてくれたから、林に居れば民衆から逃げ出すことができるし、ちょいと治療するだけで甘いものが手に入るしっていうこの現状に甘んじているわけです、はい。
本当ならもっと会話とかして、美味しく調理されてある食べ物を手に入れたいところなんだけど、私には難しい話なんすわー。
決して日和ってるわけではない。
ないったらない。
そしてそんな生活をしていたとある夜のこと。
一人の赤ん坊がじっとこちらを見つめているのを発見した。
うん、軽くホラーだったよ。まだ一人で歩ける年齢に見えない赤ん坊がしっかりと自分の足で立って、見つめられるのは。
というか、そもそもこの時間帯は暗くて危ないから人間は外を出歩かないしいないし。
そんな状況下で、赤ん坊を見つけた時の私の心境を述べよ。
A,怖い。
命の危機!って感じではないけど、ホラー映画を見る時の恐怖を感じた。あれだね、私かなり強くなったっていう自負があったけど、非現実なことっていつまで経っても怖いよね。
うぇ、ちょ。
なんで赤ん坊がこっちをガン見してんのさ。
えー、どうしよ、これ。
そしてこっちが戸惑っている間に、そのままこちらに近づいて来る赤ん坊!
ホラー!圧倒的ホラー!
暗い中、二足歩行でキビキビと近づいて来る赤ん坊はホラーだよ!
私、『恐怖を齎す者』っていう周りを無差別にビビらせる称号持ってるのに、こっちがビビるんですけど!
えー、おぉん、おん。
ヤベェ、狼狽えている間にもう目の前まで来た。それでも2メートルくらい距離を置いてくれてるのは、なんか、その、ありがとう。
えー、これ私どうすればいいんだ?なんか知らない赤ん坊と目と目が合っちゃってるんですけど。
やめてください!人を前にすると、ボッチはフリーズしちゃうんです!
っていうかホントに誰だよ、この子。見たことないんだけど、私の知り合いにこんな赤ん坊いたっけ?
うん、絶対にない。だって私エルロー大迷宮生まれエルロー大迷宮育ちの蜘蛛よ?赤ん坊との出会いは、うん、ないっすね。
って、あ!そうか!今世じゃなくて、前世での知り合いか!?
で、この時期に赤ん坊ということは…、前世のクラスメイトか!私の噂を聞いて、転生者だと思ってここまで来たんだな。
それを確定させる方法はただ一つ、
『鑑定』!
……。
この世界は残酷だ。
なんで!ねぇ、なんでさ!?
今まで会った転生者って『吸血鬼』と『竜人族』、そして私は蜘蛛!種族の格差ヤバくない?
そして、なによりスキルポイントが88000!吸血っ子も75000あって、私はたったの100!
羨ましい!妬ましい!というかおかしいだろー!
スキルポイントがこんなにあったら、あんなスキルやこんなスキルが取り放題じゃないか。ぐううう、私もせめて1000あったら良かったのにいい。
ふう、落ち着くんだ私。
うん、あと、転生特典のスキルも私は『韋駄天』という理不尽。いや、ね、すごくお世話にはなったんだよ、このスキルがなかったら私死んでるし。
でも『吸血鬼』と『竜人族』に比べたらやっぱり劣ると思うだよな。
おぉー神よ、何故私にこのような試練をお与えになったんじゃクソがー!Dなら面白半分でこんなことやっても不思議じゃない!おのれDめー!
はっ!落ち着け私、クールになるんだ。私の様子も含めてDは面白がっているに違いない。つまりこのまま、取り乱していてはあの性根が腐った邪神の思う壺!
そうだ、私、クールになるんだ。
スー、ハー、ハー…。
よし、落ち着いたっと。
あ、そういえば名前のところ見てなかった。
そっちの方が本題だったのにすっかり忘れてた。
えーと、名前はーっと
名前 アテナ(竜田 仁美)
竜田仁美って、あっ!
前世で私に話しかけてきてくれた子だ!
いじめとかの悪い意味じゃなく、良い意味で話しかけてくれた人。あの魔の「二人組を作ってください」という指示で、「私と組もう」と言って来てくれたり、いじめから守ってくれた。いやー、あの時はほんと助かったわー。
えっとー、元気ー?
何しに来たんですかね?
あっ、鑑定したんだからそっちから話せと。
あっ、そうっすよね、そりゃあね。
……。
おーう、前世のクラスメイトから会話を求められるー!
ヤベェ、混乱して来た。えーと、何を話せばいいんだ。定番の天気の話とか?
本日はお日柄も良く…、ね、空も心地の良い青空が広がって…、いないね!いや今、夜だし!空の様子が分かりにくいから天気のよくある定型文が使えねー。
そして、絶対に今話す内容じゃない!くそう、他になんか話題とかないのか、えーと、えーと…、
ボッチには思いつかないよ、うがーーー!
そして、こうしてる間にも時間は進んでる!『思考超加速』というスキルで思考時間の引き伸ばしを今現在もしてるから、言うほどの時間は経ってないけど、それでも赤ん坊と蜘蛛が無言で見つめあう時間はあまりにも不自然。
えー、うん、これ客観的に見てもどういう状況だ。
これ、私とんずらしていいですかね?
あっ、ダメっすか、そうっすか、…向こうも「あれ?何にも話さないな?」みたいな顔になってるって!
というか、へー前世の名前が“竜田 仁美”、ドラゴンと人が合わさって、『竜人族』ってことになると…。
…安直じゃね?Dのセンスはどうなってるんだ、マジで。
それにしても『竜人族』か…、転生して、ドラ、ドラゴンって、ドラ子ってこと?あー、なーるつまりドラ子になってしまったのか。おー、ドラ子ねー。
私は蜘蛛、領主の娘は吸血っ子、目の前の赤ん坊はドラ子と。
ここら辺の転生者の人外確率高くね?
…いやいや、こんなことを考えても仕方ない。
マジでどうしよ、この状況。
と、思ってたらドラ子から動いた。木の棒を掴んで地面に日本語で「こんばんは」と書いたのだ。
えー、あーなるほど、確かに筆談ならまだいけるかもしれない。えーと、えーと、こういう時はなんて返したらいいんだっけ?
…ええい、いったれ!
「こんばんは、仁美さん」
こんばんはという呼びかけに応じつつ、こちらはあなたの名前を知っていますよアピール。どや!私だってやればできるんだ!
と、ドラ子はそれを確認してコクンと頷いた後、次の文字を書き始める。
…ええい!こうなったらヤケクソじゃあ!
どんどん答えてやんよぉ!
……………
その後も、ちゃんと会話は続いた。
あれだね、これ私が会話出来てるっていうより、向こうの質問の仕方が上手いね。ほとんど「はい」か「いいえ」で返せる問いで投げかけてくれるし、うんうんと頷きつつこっちの書いている文字を見てくれるから書きやすい。
うおーやべぇ、私会話出来てるわ。
ドラ子、マジ優秀。
でも、そんな呑気な思いは、次の質問で吹っ飛んでいった。
「あなたの前世の名前はなんですか?」
おかしくも、なんともない質問。むしろ彼女はこっちが誰かを知らないんだから当然の質問だろう。
でも、何故か、私の手が止まった。
名無しの蜘蛛、という言葉が頭をよぎった。
あれ、なんでだ。
なんで私はここで動揺した。
いや、私は私だ。私以外の何者でもない、…。
それは、絶対に揺るがない。私は、誇りを持って生きて来た。
だから私は、前世の記憶から、自分の名前を引っ張り出して、書いた。
「若葉姫色」
こう書いたことでドラ子がどんな反応をするのかが、何故かわからないけど、すごく気になった。
ポカンとするとか、びっくりするとか、そんな反応を私は期待していたのだろうか。ドラ子は、私の書いた文字を見て頷くと、「久しぶり」と書いた。逆にこっちが呆気に取られるほどの、ごく普通の反応だった。
え、えー、反射的にこっちも「久しぶり」って書いといたけど、毒気を抜かれたっていうか、なんか、うん…。
ちょっと心ここに在らずって感じになりながら、頑張って返答を書いていく。
あれ、私なんか流暢に書けてるくね?
うわー、すげぇ私、会話出来てるぜ私、なんてことをどこか他人事のように考えている。
うん、あれだ。もしかしたら、今世初の会話に疲れてるのかもしれん。
これ終わったらゆっくり休も。
「鑑定してもいい?」っていう頼みに関してはちょっと驚いたけど、こっちが先に鑑定してるんだし、ちゃんと許可を求めてきたから「どうぞ」って返しといた。
あ、やべ、支配者権限の鑑定拒否外しとかなきゃ。
えーと、えーと、ここをこうしてっと。
ふぅ、ドラ子が鑑定する前に間に合ったぜ。
ドラ子は私の鑑定結果をじっとみてるのか、真剣そうな顔で数秒固まった後、「ありがとう」と書いた。
よくわからんけど、私はこの時、ドラ子とは長い付き合いになりそうだなーと思った。
知らんけど。
その後は、ドラ子が「いろいろ教えてくれてありがとう」と、美味しい果物をくれて、解散って流れになる。
そして、ドラ子はバイバイという感じで手を振って来た。
おー、おぉ。
あ、これ私も振り返した方がいいよね?
よーし、やるぞーやるぞー。
私は右手をあげて左右に揺らす。その間に、ドラ子は木の影に隠れて、肉眼では見えなくなる。
えー、もういないね?見えなくなったし、探知でも真っ直ぐ街の方向に進んでるね?
よし、やりきった!人との交流をやり切った!いや、ドラ子は人族じゃないから人ではないんだけどさ。
そして、やりきった以上に嬉しいお知らせが一つある。
果物をもらった私の反応があまりにも嬉しそうだったのか、ドラ子が気を利かせて、もうちょっと成長したら美味しい料理を持って来れるからまた会おうねと言ってくれた。正確に言うなら書いてくれたんだけど、それはともかく。
念願の美味しい料理が、手に入る!
ふはは。
うふふふ、うほほほほほ、はーはっはっはっ。
やったぜ!頑張って会話して良かったー。