「ガルマ……ザビ……」
脱出艇には、1人でガルマ・ザビが乗っていた。彼は狭い中で揺られていたからか中で気を失って倒れていた。
「あれはもしや……ザビ家の……」
「ガルマ・ザビじゃないか!!」
避難民の1人が呟いた。彼は拳を強く握りしめていた。それを聞いた他の者達にもその怒りは伝搬する。
「マズイな……」
グリュックは簡易的な食事を手に、ガルマを抱え独房まで走った。
「お、おいどこに行くんだよ!」
「お前なら分かんだろジャン!!」
一方その頃、イセリナはガルマの訃報を聞きつけ、ジオンの生き残り部隊と合流、ホワイトベースへの攻撃に参加したのだった。そしてその日の夜、グリュックは1人ガルマの独房を訪れていた。
「ん……? ここは一体……」
「起きたか、随分と長く気絶してたがどうだ気分は?」
「お前はあの時の連邦兵……まさかここは……!」
「あぁ、連邦の船だ」
「何だと……? 私は確か……そうだ、シャアは! シャアはどうした!」
「シャア? あぁ、あの赤い彗星か、それは知らないが……まぁ、まだ死んではいないだろうな」
「……そうか、あいつは……私たちザビ家を……」
「ん?」
「いや、なんでもない、それよりも……私は何故傷を負っていないのだ? 私はザビ家の人間なのだぞ? 暴動が起こっても仕方の無いはず……」
「そこらへんは俺の仲間が……な」
"あの"戦いを経験したジャンは不用意にガルマに暴行をはたらいたりなどはせず、避難民達を抑えていたのだ。
「まぁまだお前の処遇は決まってはいないが……」
────そして翌日、夜も開ける頃にイセリナの乗る機体を含む3機のガウは襲撃を開始した。
「各員第一戦闘配備! アムロはガンダム、リュウはガンキャノンで出撃だ!」
「「了解!」」
「ちっ……俺の出番はなしかよ……」
出撃した2機のモビルスーツは先導していたガウの両翼に飛び乗り姿勢制御用のスタビライザーを引きちぎった。それを失ったガウは地面へと激突、爆発四散したのだった。続きもう1機のガウに飛び乗るガンダムだったが、そこへルッグンと呼ばれるジオンの戦闘機が現れる。
「戦闘機だと!? クソッ! 直ちにグリュックを出撃させろ!」
「了解、グリュック! コア・ファイターに乗って!」
通信でそうナナバに呼びかけられた彼はすぐにコア・ファイターに搭乗、出撃した。
「ちっ、動きが早いな……!」
「何だ、連邦は戦闘機までもがバケモノだと言うのか!?」
「あの声は……まさか敵パイロットの声!?」
生まれつきの耳の良さで敵機に乗るパイロットの声まで聞こえるようになってしまったグリュック。
「まさかあれに乗っているのは赤い彗星のシャアか! 通りで動きが早い!!」
ミサイルでは埒が明かないと判断し、機体前部に備えられたバルカンで応戦するグリュック。
「チィっ!!」
しかしシャアはコア・ファイターを振り切り、ホワイトベースまで近づく。
「クソッ!! なんであんな戦闘機まで早くなるんだよ!!」
ルッグンはホワイトベースのエンジン部に狙いを定める。
「マズイ……!! クソッタレ!!」
エンジン部を損傷し徐々に高度を失っていくホワイトベース。遂には不時着し、止まってしまう。そしてそれを好機と見たシャアはルッグンを降下させ降りるのであった。
「ナナバさん!! ホワイトベースの状況は!!」
「まだ無事だよ!! ……でも今避難民が出ていこうと……」
「クソッ、ならこう呼びかけてください!! 今ホワイトベースの近くにはジオンの兵士がいるって!!」
「っ、やってみるさ!!」
(ジャンだっているんだ……大事にはならないだろう……きっと)
グリュックはそう自分に言い聞かせ、ガウの方に向かう。
「外は危険ですから!」
「だいたいジオンはこのホワイトベースを狙っているんだろう? なら外に出た方が安全じゃないか!!」
そう言って数人の老人は荒野をずんずんと進んでいく。
「勧告します! 外にはジオンの兵士がいます! 今すぐ戻ってきてください!!」
「へっ、ハッタリさ、我々は進むんだ」
しかしそんな勢いはシャアの放った銃弾によってかき消される。撃たれ倒れていく数人の避難民。
「クソッタレぇ……!」
真っ先にジャンが飛び出した。シャアが銃弾を放つよりも前に銃を撃ち、退却させるのであった。
「おい! 大丈夫かよ爺さん!!」
しかし勧告を無視し出ていった老人たちは既に全員息絶えていたのであった。
グリュックが着いた時には既にガンダムはもう1機を落とし、イセリナが乗るガウだけがかろうじて高度を落としながら残っているという状況であった。
「ギャロット!!」
操舵手のジオンの正規兵ギャロットは腕を負傷してしまった。代わりにイセリナが舵をとり、ガンダムへと体当たりを仕掛ける。
「まだ来るのか!?」
ビームジャベリンを投擲、突き刺してもまだ向かってくる。
「モビルスーツ、ガルマ様の仇!!」
地面を擦りながら、ガウはガンダムへと体当たりする。それによりガンダムは計器を一部故障、アムロはコクピットの外に出て修理する羽目となった。しかしそれは迂闊であった。死んだ兵士の銃を手に取り、外に出るイセリナ。
「ガルマ様の仇……」
「か、仇……?」
アムロは困惑を声に出す。
「あれは……」
その光景が見えたグリュック。
「何だあれは……軍服を着ていないようだが……?」
イセリナはアムロへと銃を放つ直前で足を滑らせ、ガウから落ちてしまう。
「クソッ! 行くしかないじゃないかよ間に合わなくても!!」
グリュックはコア・ファイターのコクピットハッチを開け、彼女に向かって機体を飛ばす。
幸いにもガウは不時着の形をとっている上、コクピットが上向きとなっている。しかし身体にかかる風圧をモロに食らうため、耐G用のノーマルスーツを着ているとはいえ負担は少なくはなかった。その上イセリナはパーティーに参加した際のドレス姿のままであった。
「なら……!」
彼女が機体に入った瞬間に急速ブレーキをかければいい。しかしそれはグリュック自身の身体に多大な負荷をかける行為。
「でも死なないなら……やるしかないだろ!!」
予想通り、イセリナは助かった。しかしグリュックの身体に異変が訪れる。
「うっぷ……」
不幸中の幸いか、イセリナは気絶していた為機体の外へと吐き出すグリュック。
「グリュックさん!?」
「グリュック!?」
それを近くで見ていたアムロとリュウは困惑の声を漏らすのであった。そして無事ジオンの驚異が去ったということで連邦の船が避難民を引き取るのであった。